ありふれない結界師は比較的優秀   作:灰色パーカー

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ボチボチ書いて行きます。


20.最深部のオアシスにて

「・・・んん」

 

目が覚めた。どのくらい眠っていたのだろうか。200階層近い迷宮を下りきった疲労もほとんど取れている。

 

(なんか・・・バカって言われたような気がする)

 

声が聞こえたわけでも、夢の中に誰かが出てきたわけでもない。ただ、何となくそう思っただけ。

 

普段からキモオタだのと口汚いことを言われているけれど、ストレートにバカと言ってくるのは一人しかいない。

 

(元気かな・・・早紀)

 

ずっと一緒に戦ってきたもう一人の結界師のことを思い出しながらソファーから起き上がる。ベッドでは今もユエがスヤスヤと寝息を立てている。

 

「さてと」

 

この建物に入ってすぐに眠りについてしまったため、まだここが何なのか調べていない。ユエが起きてくる前にざっと見ておこうと立ち上がる。

 

「ここ、二階あった気が・・・なっ⁉」

 

部屋のドアを開けると数体の岩人形のようなものが動き回っていた。各々僕を一瞥するも、すぐに僕から目線を外し各々の動きに戻る。

 

「何やってるだ?・・・掃除?」

 

良く見れば箒やちり取りといった掃除道具を持っている。ある人形は川に手を突っ込んで異物をすくい上げていたり、ある人形は庭の芝生を整えたりしてる。

 

「まあ・・・良いか」

 

全く敵意を向けてこないことから害はないと判断し、建物の捜索を始める。

 

意外と広い建物内、書斎らしき部屋、鍵がかかった部屋。色々見て回っているうちに三階部分があることに気づく。

 

三階に一つだけある鍵がかかった部屋。少々強引に入ると、中にあったものに驚いた。

 

「が、骸骨?」

 

ローブを纏った白骨死体が椅子の上に座っていた。反射的に妖ではないかと警戒するが、妖気を感じない。本当にただの白骨死体(ガイコツ)なのだろう。

 

部屋を調べてみようと中に足を踏み入れると、途端足元が光りだした。それと同時に何かが頭に流れ込んでくる。

 

「ぐぅ!」

 

眩しい光と激しい頭痛に耐え兼ね膝をついてしまう。幾ばくかして光が治まると、そこには・・・

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「・・・何やってるの、ハジメ?」

 

起きてきたユエに開口一番そう言われた。

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・別に、大した、ことじゃな・・いよ・・」

 

上半身半裸で息を切らし、やたらと石に向かって叫んでいる男がいたら誰だってそう言うだろう。

 

「何かあったの?」

「実は、ちょっと・・・」

 

僕はあの部屋であったことをユエに話した。光が治まった後、あのガイコツの前に人間のホログラムが投影されていた。そのホログラムはメッセンジャー的な役割を担っていたようで、色々と情報を得ることができた。

 

かつて『解放者』と呼ばれた集団が、争いが絶えなかった世を救おうと立ち上がったこと。その『解放者』達はこの世界の神の介入によって、救おうとした人々に迫害されてしまったこと。そういった事を詳らかに教えてくれた。

 

正直この世界の歴史だとか真実だとかはどうでもいい情報だったのだが、二点有益なものがあった。

 

一つ、かつての『解放者』の生き残りたちがこの世界に迷宮に創り、その迷宮を踏破した者に彼らの力である神代魔法を譲渡する意思を固めたこと。

 

二つ、【オルクス大迷宮】を踏破したことで神代魔法の一つである生成魔法が譲渡されること。

 

地上にある残りの迷宮にも神代魔法なるものが眠っている。もしかすればそこに結界術に類する能力があるかもしれない。

 

独力だけで結界術を極めて元の世界に帰る道を創らなくてもいいかもしれない。外に出たら他の迷宮を探そうと大雑把に考えていると、ふと思いついた。

 

折角だから生成魔法なるこの世界の異能を試してみよう。どうせ一生使うことは無いのだ。試しに一回くらいやってみるのも悪くないと思った。

 

生成魔法は鉱物に魔法特性を付与する異能。そのためそのへんから石ころを持ち出して生成魔法を発動しようとした。

 

が、

 

「生成!生成!!生成!!!!」

 

何をやっても、何度やっても、一向に発動しなかった。頭に流れ込んできた情報をもとにやっているのに一つも上手くいかない。

 

「セイセイ!SEI☆SEI!Say☆Say!」

 

やはり変わらない。こう何度も叫んでいれば、寝ていたユエも起きてくるだろう。

 

「ハジメ・・・その石貸して」

 

僕の話を聞き終わったユエも例の部屋へ向かい生成魔法を取得してきたらしく、石に向かって発動しようとした。

 

すると何やら魔法陣が石に刻み込まれた。ユエがいとも簡単にやってのけたことが信じられなかった。

 

「んん~?」

 

目を見開き間抜けな顔で石の魔法陣を見ていたのだが、ユエは唐突にその石を遠くに放り投げた。そして地面に落ちた直後、

 

ドカーン!

 

その石は爆発した。しっかり芝生を破壊している。

 

「・・・え、何で?何でユエは出来るの?」

「・・・・・・・才能?」

「ぐはぁ⁉」

 

大ダメージだった。僕の心は傷ついた。

 

「よくわからないけど・・・ハジメは結界術に関しては、右に出るものはいないけど・・・・・逆に他のことはほとんどできないんじゃない?」

「がはぁ⁉」

 

膝から崩れ落ちた。一芸に秀でる者は多芸に通ずというが、ここまで結界術を修めていても他の異能には通じないらしい。

 

 

 

「それで・・・ハジメはこれからどうするの?」

 

ショックで屍になっていた僕だったが、ユエの言葉で正気に戻る。

 

「とりあえず他の迷宮に挑戦するよ。運がよければ目当てのものが手に入るかもしれない」

 

川を泳ぐ魚を捕まえ、腹ごしらえの準備を進めながら今後の方針を詰めていく。

 

(その前に一度皆に連絡した方が良いかな?だいたい迷宮がどこにあるかもわからない訳だし・・・)

 

外に出てもすぐには迷宮探索を始められそうにないなと、前途の多難さに溜息をもらす。もはやあの聖教教会のことは眼中に無い。異教徒なんて言われていることもどうでも良い。

 

重要なのは皆の安全と、元の世界に戻ることだけだ。

 

(教会の人達は僕が最下層まで踏破したなんて絶対に思ってない。そこを利用する)

 

迷宮内で死んだか、今も生きようと必死に抗っているか。教会が考えていることなんてそんなところだろう。

 

その思い込みを逆手にとって、裏で動く。気取られないように注意しながら。

 

 

 





少しずつ書いて行きます。
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