あの後、
「おお、これも入った。凄いな、コレ」
中には四次元ポケットの指輪版のような道具まであり、かき集めた道具を持ちだすには苦労しなさそうだった。
「♪♪♪」
ユエも数百年ぶりの外の世界に向けて身支度を整えていた。永劫出られないと思っていた暗闇の迷宮からもうじき出られるからか、やや口角が上がっているような気もする。
準備の途中で迷宮内の魔物からありったけの血を吸い取って来たユエは、完全に力を取り戻していた。
「さて、そろそろ行くか。ユエ」
「ん……準備OK」
互いの支度が済んだところで、いよいよ外へ通じている魔法陣へと向かう。
建物内の部屋を見て回っている時に、あの部屋の魔法陣とガイコツがつけていた指輪を使えば外に出られることがわかった。
「何日かぶりの外だ。早く日差しを浴びたい」
「ん……私も何百年ぶりかの外。待ちきれない」
三階の例の部屋で指輪を使い魔法陣を起動させる。ホログラムが起動したときとは違う光が僕らを包む。
光が治まり、身に入ってきた景色はあの部屋のものではなく洞窟の岩肌だった。そのまま道なりに進むにつれて徐々に外の光が差し始める。
「……ハジメ、外!」
差し込む僅かな光へと一目散に走っていくユエ。子供のようにはしゃぎながら先に進む彼女を無理に追いかけず、ゆっくりと光指す方へ向かう。
ユエほど外に出たい欲が強いわけではないのだ。迷宮に入ったのつい最近だし。
「んん……外か」
少しずつ強まる光に目を細めながら、遂に僕も洞窟の外に出た。見上げれば青い空と白い雲。洞窟や迷宮とは違う新鮮で澄んだ空気。断崖に挟まれた谷底ではあるようだが、間違いなく地上であることを確信する。
「さて、まずはここが何処かだけど…………ユエ?」
先程まで元気だったユエがずっと黙り込んでおり、どうも様子がおかしい。空を見上げながら立ち尽くしている。そっと覗き見た彼女の相貌は……涙であふれていた。
「…………」
外に、地上に出られたことで胸が一杯であるらしい。僅かに嗚咽を漏らしながら、ただただ涙を流している。
(しばらくそっとしておこう)
ここでユエの感動に水を差すほど野暮ではない。他の人よりも濃い人生を送ってきたとは言え、しょせん僕は十数年しか生きていない。ユエはきっと僕には及びもつかないほどの感動が押し寄せている。
ましてあの地の底の、暗闇に満ちた場所で封印されていたのだ。照り付ける光はきっと、彼女に温もりとやすらぎを与えているはずだ。まるで光がユエを抱きとめるように。
少し離れたところに腰掛けて、ユエが落ち着くまで時間を置く。断崖に吹く風に身を任せながら………
****
「ごめん、ハジメ………もう大丈夫」
「そっか……」
程無くしてユエは調子を取り戻した。目元は腫れているが、その表情は朗らかだ。
「ここ谷底だけど、どっちに行く?」
「そうだな……………あれ、付いて来るの?」
話の流れでユエはついてきそうな雰囲気だが、良いのだろうか。勝手に封印を解いた手前、最後までユエを監視する責任が僕にはある。だからついて来てくれると言うなら非常にありがたい。
けれどようやく地の底から出られたのだから、やりたい事や行きたい所くらいあると思っていた。
「ん……外で生きられるなら、他にやりたいことも無いし………それに」
「それに?」
「……一緒にいた方が、良いことありそう」
良いこと…………まあ、ユエの力は強力だ。手を貸してもらえるならば、非常に心強い。
「たぶん、大変なことが多くなると思う」
まずは空間干渉系の異能、もとい神代魔法を求めて各地の迷宮を巡ることになる。多くの魔物や、この世界の人間と敵対している魔人族ともそのうち遭遇することになるだろう。
さらに言えば、僕はエヒトに逆らった異教徒扱い。教会連中に気づかれれば、追われる立場にもなる。それを伝えてもユエの意思は変わらなかった。
そこまで意思が固いのならば無下にすることも無い。改めて協力関係になったことで、互いに握手を交わす。
「それで、どっち行くの………」
「どうしようかな」
土地勘も地理もわからないため、にっちもさっちもいかない。それでも進まない訳にはいかない。
「じゃあ—」
いざ、情報収集のため、王都へ。
誤字脱字の指摘ありがとうございます。
また最近気温が急に低くなっております。
読者の皆様、体調には十分お気を付けください。
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