ありふれない結界師は比較的優秀   作:灰色パーカー

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25.直感が導く先

商隊の警護について四日。ようやく彼らの目的地である中立商業都市フューレンへと到着した。高くそびえる外壁がどこまでも続いており、商隊の人に聞いた話では大陸で一番の商業都市であるらしい。

 

「ここまでの道中、我々を守っていただき感謝いたします」

「いえ、こちらこそ助かりました。僕らだけじゃここまで来られなかったと思うし」

 

都市の正面ゲートを抜け、商隊の人達が積み荷を下ろしている隣で、リーダーさんに声を掛けられた。当初言われていた謝礼金を受け取りながら、リーダーさんと話を続ける。

 

「それで、ハジメ殿はこれからいかがなさるのでしょうか?」

「そうですね……どこか、色々と話を聞ける場所があったら、そこへ行こうかと思ってます」

「左様ですか。ならば、中央区にある冒険者ギルドに行くのがよろしいかと」

「ギルド?」

「はい。ギルドであればこの街の大概のことは把握しているでしょう」

 

聞きなれない『ギルド』という単語。話を聞く限り、元の世界の市役所とかに近い施設なのかな。

 

何はともあれ、当てがない以上まずはその『ギルド』を目指すことにした。リーダーさんや他の人たちとも別れを済ませ、ユエと一緒に街の中心部へと向かう。

 

 

「まあ実際、聞きたいのはフューレンのことじゃなくて王都への行き方と、この世界の何処かにある迷宮のことなんだけどね」

「ん……一応、聞けば教えてくれると思う」

 

(……大迷宮を出てから、たぶん10日以上は経ってる‥‥早く状況を整理して式神を飛ばさないと)

 

王都への正確な方角がわからないため式神を使ってクラスの皆、特に白崎さんや八重樫さんに現状を伝えることができていなかった。何とか今日中には送りたいなと考えながら、僕らは『ギルド』を目指した。

 

 

***

 

 

「…………つまり、中央区に近いほどその店の信用度が高く、品質も保証されているとお考え下さい。逆に離れているほど―」

 

幸いにも、メインストリートと呼ぶべき大通りがそのまま『ギルド』に続いていたため、迷子になることは無かった。今はこうしてギルドで紹介された案内人のリシーさんにこの街の基本を教わっていた。

 

「………ですからお泊りになる際には中央区ではなく観光区で宿を探すことをお勧めします」

「そうなんですか。色々とありがとうございます」

「いえいえ!これが仕事ですので」

 

絶えずにこやかに対応してくれるリシーさんに低下価格帯の宿を教えてもらいつつ、本題に入る。

 

「あの、この街から【ハイリヒ王国】の王都にはどう行ったら良いんでしょうか?」

「王都ですか?」

「はい。元々そこを目指していたんですけど、道に迷ってしまって…………」

「え……………お、王都でしたら―」

 

リシーさんの顔から営業スマイルが消え、唖然とした表情に変わった。『この人マジか』という顔にいたたまれなくなる。穴があったら入りたい。

 

何とか恥ずかしさに耐えながら王都への行き方を教えてもらい、数日あれば到着できそうだとわかった。

 

「ありがとうございます…………それから、あと一つ」

「はい?」

「この街に図書館というか、資料館のようなものはありますか?七大迷宮についての資料があったら見てみたいんですけど」

 

七大迷宮とその所在については、本来王都に戻ってから調べようと思っていた。けれど、この街で調べられるなら調べておきたい。ともすれば王都にはない情報もあるかもしれない。

 

(というか、王都で調べものを出来るのかっていう疑問もあるし)

 

異教徒扱いであること、迷宮に島流しにされたこと、何より王都の人たちには僕の顔はかなりの確率で覚えられている。王都の図書館に忍び込むのも難しいだろう。

 

白崎さんや八重樫さんに代わりに調べてもらう方法もあるが、何がきっかけでバレるかもわからない。下手をすれば彼女達にまで異教徒の烙印が押されかねない。フューレンで済ませられるならそれに越したことは無い。

 

「図書館ですとギルドが管理しているものがありますので、そちらをご利用ください。ただフューレンは商業都市ですので、七大迷宮の研究書類などについてはそれほど多くは無いかと」

「いえ、あるだけ見られれば十分です!」

 

そう言って、ギルド直営の図書館へと案内してもらい目当ての資料を探し回る。ユエにはリーダーさんと共に喫茶店でお茶を飲みながら待ってもらっている。

 

「さて、七大迷宮についての書物は……」

 

三十分ほど回ってそれらしい本を数冊見つけ出す。それからそれなりに詳細に書かれている地図も棚から取って一緒に持っていく。場所と方角、大体の距離を見ておけば今回のように迷うこともないだろう。

 

「さて……現状見つかっているのは【オルクス大迷宮】と【ハルツェナ樹海】、それから【グリューエン大火山】の三つ…………」

 

資料によると、七大迷宮のうち所在がわかっているのはこの三つだけであるらしい。残りの四つに関しては明確にはわかっていないものの、いくつかのアタリはついているらしい。

 

「地図で言うと、ここがフューレンで…‥‥…ああ、ここが王都か。それでこっちが【オルクス大迷宮】……樹海がここで……ん?」

 

場所がわかっている迷宮を地図で照らし合わせていると、あることに気がついた。

 

「【グリューエン大火山】が…………なっ!?」

 

思わず立ち上がってしまう。何度見直しても【グリューエン大火山】が、ここフューレンから()()()()にある。別の地図で照らし直してもやはりそうだ。

 

(王都に戻ってから向かうよりも、先にこっちの【火山】に行った方が良いんじゃ?)

 

思っていた以上に次の迷宮が近くにあることに内心驚いてしまう。途中砂漠を越えて【アンカジ公国】に立ち寄る必要はあるが、王都に戻ってから樹海と火山のどちらかを目指すよりも効率がいい。

 

「………怪我の功名、か」

 

ドサッと椅子にもたれ掛かりながら天を仰ぐ。峡谷をひたすら歩き続け、何日も森を彷徨った甲斐があった。結果的に、あの時の直感に従って良かったと言うべきだろう。

 

(……【グリューエン大火山】に行こう。ここまで来たら、とことん直感に委ねてやる)

 

次の目的地を王都から【グリューエン大火山】に切り替えることに決め、席を立つ。果たして【グリューエン大火山】に目当ての神代魔法、結界術に類する能力があるかわからないが、こればかりは行ってみるしかない。

 

最悪、全ての迷宮をしらみつぶしに巡る必要はあるが、闇雲に修行するよりは良いだろう。

 

「ん……おかえり」

「ただいま」

 

ユエ達が待つ喫茶店に戻った時には既に日が落ち辺りは暗くなっていた。

 





これからは16~18時の間に投稿するようにします。
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