ありふれない結界師は比較的優秀   作:灰色パーカー

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諸肌脱ぎ
→和服を脱いで上半身だけ裸になった状態


27.第二の迷宮【グリューエン大火山】

フューレンから数日かけて【アンカジ公国】へと到着し、更にそこから100kmほど北へ進んだ場所に【グリューエン大火山】はある。直径5km、標高3000mの火山であり、周りを巨大な砂嵐が覆っている。

 

「うわ~入りたくない」

「ん……目に入る」

 

最悪なのは火山の中に入るにはあの砂嵐を超えて一度火山の頂上まで行かなくてはならないことだ。いくら結界を駆使して砂嵐を超えて行けるとは言え、飛んでくる砂はあまりに多く鬱陶しい。せっかく着替えた和服も、すでに砂だらけである。

 

「行くよ」

「ん」

「包囲!…定礎!…結!」

 

いちいち足場を作って登るのも面倒なのでまずは足元に位置指定し、そのまま結界をありったけ上へと伸ばしていく。

 

流石に一回で3000mの高さには届かないが、数回同じことを繰り返すことで火山と砂嵐を見下ろせる高さまで飛び上がる。

 

「ふぅ………よっ!」

 

そして、今度は砂嵐の中心。台風の目のようにぽっかりと口を開けている渦の真ん中へとダイブする。

 

「きゃあー」

 

傍らに抱えているユエの本気かどうか判別しにくい絶叫が響く中、砂嵐の中心にして火山の頂上へと落ちていく。

 

「………結!」

 

あと十数mというところで頂上の地面に位置指定し、結界をクッション代わりにして着地する。

 

「おっと!」

「………歩きにくい」

 

頂上は無造作に乱立した大小様々な岩石で埋め尽くされた煩雑な場所だった。尖った岩、丸まった岩、滑りやすい岩、多種多様な岩々に足元を取られなんとも歩きづらい。

 

「ん……ハジメ」

「階段………入り口か」

 

歪なアーチを形作る全長十mほどの大岩の下に、火山内部へと続く階段が見えた。危険渦巻く烈火の迷宮、その内部へと続く道。

 

「行こう」

「ん!」

 

いざ、二度目の迷宮制覇へ

 

 

***

 

 

「あっつ~い」

 

火山内の暴力的な暑さに、踏み入ってすぐに泣きが入った。暑すぎる。いや、熱すぎる。和服なんて着ていられない。速攻で諸肌脱ぎになったものの大して変わらない。

 

それもこれも、この迷宮の一番の特徴であるマグマのせいだ。川に流れる水のようにマグマが通路や広間の至る所で流れている。

 

さらに驚くことに、このマグマが流れているのは地面だけではない。空中さえも、このマグマは流れているのだ。うねりながら空中を流れる赤熟した溶岩はまるで竜が飛び交っているようにすら見える。

 

そして、一番厄介なのは

 

「ッ!危ない!」

「え、きゃあ!」

 

壁の至る所から前触れなくマグマが噴き出してくることだ。無想状態で探査用結界を壁の内側まで広げていなかったら回避するのはほぼ不可能だった。

 

「ありがとう、ハジメ」

「気にしないで」

「ホォー」

 

迷宮自体は【大迷宮】ほどの広さではないが、この暑さとマグマのせいで進む速度がなかなか上がらない。

 

僕もユエも互いに玉の汗を流しながら、慎重に進むこと約1時間。八階層へと続く階段を降り切った時だった。強烈な熱風と共に巨大な火炎が襲い掛かった。

 

「ッ結!」

 

咄嗟に展開した結界で防御し、火炎の射線にいる敵を注視する。火炎を放ったのは、一言で言えば燃える雄牛であった。全身にマグマを纏わせ、息を吐く度に口から火炎が漏れ出している。しかも立っているのがマグマのなかだ。

 

「火耐性極振りって感じだな………結、滅」

「ギュオオ⁉」

 

だが火を噴こうが、マグマの中に立っていようが関係ない。射程内にいるなら、囲ってしまえばそれで終わる。

 

ウソだろぉ?とでも言いたげな断末魔を上げ炎牛は消滅した。

 

そのままさらに下の階層を目指すが、徐々に多くの魔物が出現し始める。コウモリにウツボ、カメレオンにハリネズミ。それらすべてが体にマグマを纏い、マグマを利用した攻撃を見舞ってくる。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

暑さも階層を下るごとに酷くなっていく。流石に休まなければ危険と判断し、広間の中心に陣取って多重結界製の急造の待避所に逃げ込む。結界内ではユエの魔法で氷塊を出してもらい、しばらくの間涼を取る。

 

「んー……生き返る」

 

魔物よりも迷宮の熱さの方がよっぽど難易度が高い。前情報でこの迷宮に挑む冒険者が極端に少ないということはわかっていたが、それも頷ける。

 

【大迷宮】の住居で拝借した指輪から水を取り出して一気に飲み干し、出発する。降りた階層は27。火山全体が迷宮になっているとして、頂上から下っていることを考えればもう中腹も過ぎているはずだ。この暑さもあと半分の辛抱だと自分に言い聞かせ先へと進んでいく。

 

 

***

 

 

あれから更に階層を降りて今は50層へと続く階段にいる。やはり下の階層に行くほど魔物の出現数も増えて行ったが、【大迷宮】の時のように魔物の種類までがらりと変わることは無かった。

 

強さも大きく変化することも無かったため苦戦することは少なかった。問題なのはやはり暑さ。もはやサウナどころの話ではない。蒸し焼きにされている気分だった。暑さばかりはさすがの絶界でもどうにもならない。

 

「はぁ……はぁ……」

「………ハジメ、大丈夫?」

「………あ、うん………大丈夫」

 

正直な話、かなりヤバイ。水分補給はこまめに取っているが、すぐに汗となっているのか補給が追い付いていない感じがする。

 

(ぐっ!……クソ、頭が……割れる……)

 

それに先ほどから激しい頭痛と吐き気が襲って来ており、眩暈まで起こす始末。

 

だがすでに引き返そうにも引き返せない所まで来てしまっている。むしろ最下層まで降りてそこから外に出た方が早い。幸い標高的にはもう麓のあたりまで来ているはずだ。

 

(もう少し……もう少し、だ)

 

頭を抑えながら痛みに耐えつつ階段を降りていく。

 

 

けれど、この時点で僕は自分の状態を見誤っていた。頭痛や吐き気よりも、もっと根本的で、致命的な変化に………

 





続きは明日
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