ありふれない結界師は比較的優秀   作:灰色パーカー

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今日は早い時間に投稿できました。


4.不安

現在僕たちはイシュタルさんから話を聞いた広間から移動し、別の場所へと向かっていた。

 

イシュタルさん曰く、今僕らがいる聖教教会総本山がある【神山】の麓に【ハイリヒ王国】という国があるという。

 

そこで僕らを受け入れ知識や力の使い方を教えてくれるそうだ。

 

建物の外に出るとそこには雲海が広がっていた。高山特有の息苦しさなどは無かったので、魔法で都合よく環境をいじっているのだろう。

 

イシュタルさんについて行くと、円形の大きな台座が見えてきた。そして促されるままにその台座に乗ると、おもむろにイシュタルさんが何かを唱え始めた。

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん―“天道”」

 

すると、足元の台座が光だし、ゆっくりと地上に向けて動き出した。

 

よく見れば台座にはなにやら術式が刻まれていた。いやおそらく術式ではなく、これが魔法陣というやつなのだろう。

 

初めて体験する魔法にクラスの皆はキャッキャキャッキャと騒いでいた。雲海に突入する頃にはもう大騒ぎだった。

 

雲海を抜けると眼下に大きな町、いや国が見えてきた。どうやらあれがハイリヒ王国というやつなのだろう。その山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町は、さながらファンタジーに出てくるような、得も言われぬ美しさだった。

 

だったのだが、

 

(遅いな~この乗り物。結界を足場にして降りた方が速いじゃん)

 

僕だけこんなことを考えていた。雰囲気もへったくれも無かった。

 

 

================

 

 

城に着くと、僕らはまっすぐ玉座の間へと案内された。

 

教会に負けないくらい煌びやかな内装の廊下を歩いていると、鎧を着た騎士や文官のような人にメイド等の使用人など多くの人間とすれ違った。

 

その全員が僕らに期待の眼差しを向けていた。僕らがどういう立場の者かはある程度知っているらしい。

 

玉座の間に着くと、おそらくこの国の王様であろう、威厳と覇気を纏った初老の男性が玉座の前に立っていた。

 

その隣には王妃であろう女性、更には十歳前後の金髪碧眼の少年と十四、五歳のこれまた金髪碧眼の少女が立っていた。

 

僕らを玉座の手前に残し、イシュタルさんは国王の前まで進みおもむろに手を差し出した。

 

すると、国王はその手を取り、軽く触れない程度のキスをする。イシュタルさんが国王よりも立場が上ということは、この国のトップはエヒト神で間違いないようだ。

 

そこからはただの自己紹介だった。国王の名前はエリヒド・ハイリヒといい、王妃がルルアリア、少年がランデル王子、少女がリリアーナ王女ということだ。

 

あとは、騎士団長やら宰相やら位の高い人の紹介だったが、ほとんど聞いていなかった。

 

 

紹介が終わったら晩餐会が開かれ、異界の料理をご馳走になった。元の世界と変わらない料理から、びっくりするような色の料理が出てきたりと色々あったが、割と食べれた。

 

 

食事をしている間、ランデル王子が白崎さんにしきりに声を掛けっていたのをクラスの男子はみなヤキモキしながら見ていたとか。

 

全く気が付かなかったが。

 

 

晩餐会ではこの世界での僕らの衣食住は保障されている事と、訓練における教官の紹介もなされた。

 

教官は現役の騎士団や宮廷魔法師から選ばれたらしく、親睦を深めておけとのことだった。

 

晩餐がお開きになると明日の朝から早速訓練と座学を始める旨を伝えられ、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。

 

部屋の中も豪華な造りになっており、天蓋付きのベットまであった。落ち着かないなと思いつつも今日あったことを整理しようとベットに腰を下ろした。

 

 

ようやく一人になれた。今日の事を整理した後、結界術が十全に使えるかどうか確認する。

 

ここまであまり深く考えないようにしていたが、ぶっちゃけ結界術が使えるかどうかが一番の不安要素だった。

 

もし使えなかったら、エヒト神に与えられた力とやらで上書きされていたら、これまでの努力がすべて水の泡になってしまったら、そんな不安がずっと胸の内にあった。

 

かと言ってクラスの皆がにいる所で結界術を使うのはリスクが大きかったため試せなかった。

 

何だそれはと、なぜいきなり魔法が使えるのかと、騒ぎになる恐れがあったからだ。

 

だが今は一人、誰も見ている者はいない。実は監視されているのではとか、盗聴されているのではとかは、もう考える余裕は無い。

 

一刻も早く確認しなければ、不安に押しつぶされそうだ。

 

 

「すぅ~~~、はぁ~~~。よし!」

 

深呼吸をし、覚悟を決めて、いざ!

 

「方囲! 定礎! 結!」

 

ビシィッ!と思い浮かべた大きさで、いつも通りの速度で結界は見事に形成された。

 

(ああ~~~よかっったぁ~~~~~)

 

安心した、安堵した、胸を撫で下ろした。最悪の事態ではないことがわかったところで更に確認を続けていく。

 

 

というか、落ち着いて考えればなんてことは無い。

 

正当継承者の証である右手のひらにある方印、これが残っている以上結界術が使えないなんてことは無いはずなのだ。

 

方印を持つ者しか結界術を使えないという訳では断じてないが、その印がある限り正当継承者であることに変わりは無い。

 

だから正当継承者であるならば結界術もそのまま使えるのではという考えに至っても良いはずだ。

 

 

自分が如何に余裕がなかったか、今となってはアホらしくなってくる。

 

確認作業が終わり、これまでの修行で培った能力が元の世界と同じように、寸分違わず使えることを確認すると、そのままベットに横になってしまった。

 

 

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翌日朝食を食べ終わると、早速訓練が始まった。

 

皆が訓練場に集合すると銀色のプレートが配られた。全員に配られると騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 

 

「このプレートはステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化してくれるものだ」

 

スカ〇ターかよと思ったのはきっと僕だけではないはずだ。

 

「これは最も信頼のある身分証明書でもあるからな!無くすなよ!」

 

非常に気楽なしゃべり方をするメルドさん。城にいる人達は皆、恭しい態度で接してくるので、メルドさんのようにフレンドリーに話してくれる方が僕らとしても接しやすかった。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される」

 

(・・・大丈夫、それ?気が付いたら自分のクローンが二万体製造されてて、変な実験に参加させられてたりとかしてない?)

 

そんな不安を抱えているのは僕だけなようで皆次々に血を垂らしていく。

 

「“ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ?そんなもん知らんからな。神代のアーティファクトの類だ」

「アーティファクト?」

 

メルドさんの言った言葉に天之河くんが反応する。

 

「アーティファクトっていうのは現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法道具のことだ。神やその眷属が地上にいた神代に創られたとされている。ステータスプレートもその一つでな、()()()()()()()()()()()と共に昔からこの世界に存在する唯一のアーティファクトだ。本来は国宝級の物なのだが、一般にも普及知っている。身分証に便利だからな」

 

メルドさんは快活にアーティファクトの説明をしてくれていたが、わざわざ針で刺して血を出そうなんてことやりたくなかった。雑菌とか色々あるし・・・

 

そうは言っても、皆やっている以上僕もやらざるを得ない。針を指先にチクッと刺し僅かに出てきた血をプレートに垂らす。するとプレートの魔法陣が淡く光った。

 

(これでいいのかな?)

 

辺りを見回すと皆口々に「ステータスオープン!」と唱えていたので、僕もそれに倣うと

 

================================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル1

天職:結界師

筋力:10

体力:10

耐性:10

敏捷:10

魔力:10

魔耐:10

技能:結界術・言葉理解

===============================

 

このように表示された。

 

ジーッとステータスを見ているとメルドさんがステータスの説明を始めてくれた。

 

「全員見れたか?説明を始めるが、まず一番上に“レベル”があるだろう。それは各ステータスの上昇と共に上がっていく。レベルの上限は100、それが人間の限界だ。つまりレベルはその人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ってことは人間としての潜在能力をすべて解放した極地だからな、そんな奴は滅多にいない」

 

つまりレベルが上がるからステータスも上がるのではなく、ステータスが上がるからレベルも上がる・・・ということらしい。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上がるし、魔法や魔道具で上昇させることもできる。また、魔力が高い者は自然と他のステータスも高くなる傾向がある。詳しいことはわかっていないからなんとも言えんがな。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ!なんせ救世の勇者様御一行だからな、国の宝物庫大解放だぞ!」

 

メルドさんの話だと、一気にステータスが上がる訳では無いらしい。

 

「次に“天職”ってのがあるだろう?それは言うなれば才能だ。末尾にある“技能” と連動していて、その天職の領分では無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系と非戦系に分類されるが、戦闘系じゃ千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが、……百人に一人はいるな、十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職を持っている奴は結構いるな」

 

僕の天職は“結界師”だ。当然と言えば当然か。これでなければ逆にびっくりする。‟呪術師”という表記ならまだセーフか。

 

 

ただ一つ気になるのは、技能の欄だ。

 

結界術はわかる、体に染みついているし、昨日の夜試したし。

 

言語理解もわかる。昨日からイシュタルさんや王様、メルドさんなどの多くの人の話を聞いて全部理解できているのから。

 

 

問題なのは、この二つしか無いことだ。念糸とか修復術、式神は何処に行った?絶界は?無想は?

 

結界術として一緒くたにされているのだろうか?

 

だとしたらこのプレート全く信用できない。いきなり間違えてるじゃないか。

 

ごちゃごちゃ考えていると、メルドさんの次の言葉が僕の頭をさらに悩ませた。

 

「あとは………各ステータスは見たままだ。だいたいレベル1の平均は10くらいだが、お前たちならその数倍から数十倍は高いだろう!まったく羨ましい限りだ!ああ、ステータスプレートの内容は報告してくれ、訓練内容の参考にせねばならんからな」

 

(え?この世界の平均が10?その数倍のステータスがあるはず?・・・僕全部10なんですけど?あれ?これは、でも、、、アレ?)

 

昨日部屋で確認したとき、体に変化は見られなかった。たぶん日本にいた頃と同じように、妖と戦っていた頃と同じように動けるはずだ。

 

そのステータスが10?それがこの世界では普通?

 

じゃあ皆のステータスってどうなってんの?皆夜行の人たちみたいな身体能力になってるの?

 

噂に聞く裏会十二人会の化け物並みになってたりしてないよね?

 

なんだかすごく不安になってきた。すると、天之河くんがメルドさんにステータスを報告していた。その内容は、

 

=====================================================

天之河光輝 17歳 男 レベル1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言葉理解

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さすが天之河くん、まさにチートと言えるステータス。

 

単純に僕の十倍のステータス。この時点で夜行のトップと同じくらいの強さということになるのか?

 

「ほぉ~さすが勇者様だな、レベル1で既に三桁とは!技能も普通は二つ、三つなんだがな………規格外な奴め!頼もしい限りだ!」

「いや~あはは……」

 

メルドさんの称賛に頭を掻く天之河くんだが、そりゃそうだろう。

 

もし本当に僕の予想通りなら、夜行のトップになれる力量なのだ。

 

天之河くんだけが特別なのかと思ったが、他の皆も往々にしてチートだった。

 

(なんか泣きそう)

 

順番が回ってきたのでメルドさんにプレートを見せる。他の皆のステータスを見てホクホクな笑顔のメルドさんだったが、僕のプレートを見た途端、笑顔のまま固まった。

 

「見間違えか?」という感じでプレートを凝視している。見間違えではないとわかったのか、僕にプレートを返してきた。とっても微妙な表情で。

 

「………ああ、その、なんだ。結界師の天職は他にも()()いたが、主にパーティーの後衛で結界を張ってパーティーを支援・援護するのが主な役割だからな………そのステータスでも、まあ、戦えなくは………ない………と、思うが」

 

なんとも歯切れの悪い。メルドさんも予想外なんだろう。

 

まあ仕方ない、一人だけやたら低いステータスなのだから。

 

そんな様子を見て、僕を目の敵にしている連中が黙っているはずもなく、檜山くんがニヤニヤしながら声を張り上げた。

 

「おいおい、南雲。もしかして非戦系かぁ?結界師なんかでどうやって戦うんだよ?メルドさん、結界師って珍しいんすか?」

「まあ、珍しいことは珍しいんだが、戦闘にはあまり、というか全く向かないな…………」

「おいおい、南雲~。そんなんでお前戦えるわけぇ~?」

 

檜山くんがなんともウザい感じで肩に手を組んでくる。見回すと周りの、特に男子が僕をニヤニヤと嗤っている。

 

「お前、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボくてもステータスは高いんだよなぁ~?」

 

そう言って無理やり僕からステータスプレートを奪い取ると、檜山くんは大爆笑した。そして取り巻きの他の男子にも内容を見せていた。

 

「ぶっはははは~なんだこれ?完全に一般人じゃねえか!」

「ぎゃははは~むしろ平均が10なんだから、下手したらその辺の子供より弱いんじゃねえの?」

「ひゃははは~無理無理!すぐ死ぬよこいつ!肉壁にもならねえよ!」

 

(うわ~、笑い方気持ち悪)

 

今時こんな笑い方する奴いるのか、とか考えているとウガーっと怒りの声を発する人がいた。誰あろう愛子先生である。

 

「こらー何を笑っているんですか!仲間を笑うなんて先生が許しませんよ!早くプレートを南雲くんに返しなさい!」

 

先生の一言で毒気を抜かれたのか、プレートが僕のところまで投げ返されてきた。

 

人の物を投げないでほしい。

 

僕がプレートを拾うと、愛子先生が駆け寄ってきた。

 

「南雲くん!気にすることなんてありませんよ!先生も非戦系?とかいう天職ですから。南雲くん一人ではありませんよ!」

そう言って先生は自分のステータスプレートを見せてきた。

 

==================================

畑山愛子 25歳 女 レベル1

天職:作農師

筋力:5

体力:10

耐性:10

敏捷:5

魔力:100

魔耐:10

技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混材育成・自動収穫・発行操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解

==================================

 

例に漏れず、先生もチートだった。主に技能が。

 

「あははは……」

「えぇ、どうしてそんな空笑いなんですか南雲くん?」

「あ~あ、愛ちゃん止め刺しちゃったわね」

「な、南雲くん!大丈夫?」

 

八重樫さんが苦笑いでこちらを見つつ、白崎さんがこっちに駆け寄ってくるのが見えたが、もう反応する元気は無かった。

 

 

 

 

僕、大丈夫だろうかこの先。割とあっさり死ぬんじゃないかと不安になる。

 

 

 

そんなことを延々と考えているといつの間にか日は暮れていた。

 




次の投稿はたぶん明後日以降だと思います。
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