ありふれた職業だがとりあえず蹂躙するものたち   作:アホな就活生

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「戦闘」

構えをとりながらベヒモス達を牽制する戌子、そしてベヒモス達も戌子を本格的な敵と判断したのか今にも飛びかかりそうだ。そんな両者の中心に宝石が投げ込まれた。すると、

 

ピカッ!

 

宝石は砕けると同時に眩しい閃光を放った。視界が晴れるとベヒモス達の周りにドーム状の半透明な障壁が展開されていた。

 

戌子(・・)も含めて、

 

「ちょっ!なんですかコレっ?」

「『ですまっちウォール・β-type』だよ〜。」

 

戌子の問いに、先程の宝石を投げ入れたであろうアールが答える。

 

「もう名前からして嫌な予感がする!?」 

「まあ、簡単に説明すると戦って勝者が一人にならないと出られないってタイプだよ〜。がんばれ〜。」

「最低!このMAD発明家!!」

「え〜?じゃあ『勝敗が決まっても問答無用で最後に全員爆死☆da☆ze』の《α-TYPE》の方がよかった〜?」

「慈悲はないんですかッ!?」

 

その様子を見た逆差はポツリと呟く。

 

「さて、検証開始といこうか」

 

その言葉と同時に痺れを切らしたベヒモスが飛びだす。

 

「あ゛あ゛もうっ!!」

 

とりあえず目の前の障害に対して拳を突き出す。

 

「セイッ!」

 

ドゴンッ!

 

衝撃音と共に華奢に見える戌子の拳と突進してきたベヒモスの角がぶつかり合う。

 

「痛ったぃ!?」

 

しかしそんな音から一拍あげて戌子の方が吹き飛ばされる。

 

「おーい戌子、お前何か弱い乙女アピールしてんの?あんなやついつもなら余裕で粉砕できるだろうが。もっと力入れろー。」

「だからぁっ!!私皇帝さんと戦っている時も言いましたが弱体化してるの忘れてません!?とゆうかアナタわかって言ってるでしょうが!!」 

「その通りだが、何か?」

 

もういっそ清々しいほどのゲス顔で言う逆差。

 

「本当に外道ですよねアンタァ!」

 

あまりの下衆発言に思わず敬語も忘れかける戌子。

 

「あぁもうっ!《強化付与》!」

 

しばらく殴るも埒があかないと思い自分の拳と両足に強化して連打する。しかしベヒモスの角の硬度と戌子の拳が互角になっただけでベヒモスの甲羅を砕くには至らない。

 

『あぁもう本当に困りました!とゆうか弱体化がここまで酷いとは…今の私じゃこの程度の甲羅も粉砕できなくなって………』

 

ここでふと、今の自分の発言を改めて振り返る戌子。

 

『……とゆうかこんなバイオレンスなこと実行できるくらいになってしまったな私……さらば普通の人生と普通の体…』  

 

 いつのまにか本格的に人外になってきた己の思考と身体に対しておもわず心のなかで涙目になる戌子。そんな心中を知らないベヒモス達は、目の前の敵が飛びかかるように前脚を上げる。どうやらこのままだと決着がつかないと思い持ち前のパワーと体重で押しつぶそうとベヒモスの前足が戌子に向けて迫る。

 

ズドンッ!

 

ベヒモスの巨体が小柄な戌子の体に叩きつけられる。しかし、

 

「な、ん、のぉぉっ……!」

 

 普通なら抵抗できず潰されるであろうその少女はなんと、その一撃を己の四肢を用いて受け止めていた。

 

「ふぎぎぎぎっ!」

 

グッ、グガァ!?という声がベヒモスから発せられた。それもそのはず、自分の足の大きさにも満たない少女一人に押し負けて始めたのだ。

 おまけにずるずると後退させられる。『まっ、負けるかぁぁ!』とばかりになんとか押し変えそうとするが全く動く気配もない、それどころか、

 

「ふぬぬぬぬっ…!」

 

さらに驚くべきことに足元から地面の気配が遠ざかっていく。なんと前足からそのまま逆立ちをするかの如く、持ち上げられていた。

 

「今の私の拳で砕けないほど硬いのなら…コレならどうですかっ!」

 

せぇーのぉ!という掛け声とともに、哀れベヒモスの巨体は天地が逆さの状態になり、近くにいたもう一体のベヒモスの脳天に背中の甲羅が直撃する。お前に投げられたベヒモスも仲間の硬い甲羅のトゲによって頭部が突き破られた。お互いの甲羅にお互いの頭部を潰されたベヒモス達は、自分の死因も分からず一瞬で絶命する。

 

「ハァッ…ハァ……………なるほど…やっぱり弱体化しても貴方達くらいなら純粋な力負けはしないようですね。」

 

 その発言を聴いた残る二体のベヒモスは気付く。勝ち目がないことに。自慢の突進は素手でうけとめられ、押し合いでも勝てず、おまけに質量も戌子を止める手段にはならない。はっきり言って詰みである。しかし時はすでに遅くーー

 

「…申し訳ありませんが、早々に決着をつけさせていただきます!」

 

そういった瞬間、目の前の少女(脅威)は自分たちに向けて飛びかかってきた。

 

 

ーー2分後ーー

 

 

「お疲れさーん。まぁ今のお前じゃこの程度か」

 

拍手をしながらとりあえず由香を労いながら戦った感触を聞く逆差。すると息を荒くしながらもなんとか答える戌子。その周りには事切れた四体のベヒモスの魔石が転がっていた。しかし戌子の姿も酷いもので左足は受け止めるときに支点にしたせいか裂けるように骨ごと折れており右肩は外れて、おまけに頭から血を流していた。

 

「…はっきりいって……ここまで弱体化した状態では………ーーー(・・・)を倒すまでには…いけない気がします。」

 

「ばーか、んなことわかってんだよ。こっちは元々()取られてんだから当たり前だろうが。」

 

「それにしても参ったね〜。戌子ですらここまで弱体化してんだから〜、私たちなんてそーとーだよ〜?マジやばくね〜?」

 

 今の戦闘からの感想を述べるながら結界が解除されて元の状態になった宝石を拾うアール。

 

「…ッ!」

 

 すると戌子が何かに身をよじると体の怪我から白い煙が出始める。シューっという音を立てながら骨ごと折れていた左足が元に戻り右肩も元の位置に戻り額の傷も元どおり塞がっていた。

 

「治りが遅ぇな。」

 

「それはそうですよ。何せ力が十分の一以下なんですから。再生も含まれているんでしょう。」

 

 ここらか少し話を変えよう。

 今の会話の通り、駒井戌子を含む6人は普通ではない。

 今はこの傷の治りが明らかに異常な少女。駒井戌子について話そう。

 彼女の主な力はこの尋常ではない身体能力と、それを支えている再生能力である。ちなみに今の彼女の本来のステータスプレートの内容はこうなっている。

 

===============================

駒井戌子  16歳 女 レベル:3

天職:武闘家・▪️▪️

筋力:998【弱体化】

体力:975【弱体化】

耐性:359【弱体化】

敏捷:752【弱体化】

魔力:409

魔耐:200

技能:言語理解・先読・気配察知[+第六感]・剛力・縮地・身体再生[+高速化【弱体化】][+回復阻害耐性【弱体化】]・▪️▪️の加護・

対神耐性・竜耐性・消耗軽減【弱体化】・反撃[+自動察知]・痛覚遮断[+乾坤一擲]・

五感能力強化【弱体化】・束の呪い・限界突破・暴走【弱体化】・金剛・念話・追跡・獣殺し・威圧・瞬歩・窮地の閃き【弱体化】・感情抑制・体力配分[+蓄積]

 

 

ー【状態】:弱体化ーーーーーーーーーーーーーー

 契約者である▪️▪️▪️▪️の生死不明、又は存在不明になっている可能性あり。

ペナルティとして全て能力が10分の1以下に低下します。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

===============================

 そう、皆さんも思うだろうが現時点でもチートである。他の前話でさらっと出ていた逆差を除く四人も似たようなステータスとなっているが開示は次の機会ということで。

 

その後無事?ベヒモスを倒したあと、進んでいくことちょうど百層目、そこには巨人が通るかのような巨大な扉があった。そしてそこに刻まれた文面と六つの窪みがある。

 

「なにこれ〜?」

「『全ての証を持ちし者(・・・・・・・・・)のみ開かれん』?」

 

王都の図書館から学んだ知識を使い解読すると文面がわかった。

 

「……なるほど、そーゆーことかよ。」

 

何か納得がいったのか逆差が言う。

 

「この迷宮の難易度的にどう考えても初見殺しのトラップとか、難易度高い魔獣が多いと思ったら、ここ以外の全ての迷宮をクリアした後(・・・・・・)に行くコンセプトだったのかよ。道理でめんどくせぇと思った。」

「えぇっ!?じ、じゃあ今の勇者さんたちじゃあ…」

「どうあがいてもクリア不可能だろうな、いきなりラスボス戦なんてクソゲーにもほどあんだろ。これじゃああいつらがいくらチートだからってクリアできるわけもねぇなこりゃあ。」

 

 そう言いながら右手でゆったりと扉に触れる。

 

「そう言う俺たちもまぁ証とやらなんでもってねぇんだが、いちいち戻るなんてめんどくせぇことしてる暇はねぇんだよ。」

 

 そういった瞬間逆差の掌から魔力の光が溢れ出す。その色は大きく見れば紫に見える。しかしよく見ると様々な色が混じり合ってたまたま生まれたようなどす黒い紫色だった。

 魔力を流し込んだ瞬間、扉からも光が溢れ出す。どうやら扉を力尽くで壊されない細工がされているようだった。逆差の手がだんだん燃えていく。するとギザ歯をむき出しにして一言言った。

 

驍ェ鬲斐□縲、縺」縺ィ縺ィ髢九¢(ひらけゴマってな)

 

バギュッ!!

 

まるで鉄が引きちぎられるような音がしたと同時に扉全体が砂のようにバラバラになった。しかしそれらが床に落ちることなく空中で浮いていると言う歪な光景だった。すると戌子が一言、

 

「…本当に貴方弱体化してます?」

「縺ッ縺?シ溘a繧薙←縺上○縺?°繧峨d縺?」

「また文字化けしてますよ先輩。」

「繧?∋縺」

 

こほんっ

 

「縺ッ縺?シ溘a繧薙…じゃなくて、あっ、戻ったわ。」

「やっぱり逆差先輩の能力も弱体化してるようですね。口調が文字化けしたのなんて久々では?」

「それなんだよなぁあーあ、とっとと元に戻りてぇな。」

 

そう言いながら扉があった場所を通りながら話す。

 

「でもまぁ、この程度の難易度(・・・・・・・・)ならリハビリにはちょうどいいんじゃねぇか?」

 

そう言いながら指を鳴らすと次の瞬間、彼らが通った場所は元どおりの扉があった。

 

 

 

 

 

【タイムリミットまで、後一日と12時間26分】

 


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