これからも頑張ろうと思います!
『さっ! 食べよーッ!』
『あ、多恵手伝うよーっ』
青空姉と多恵ちゃんが、厨房から朝ごはんを配膳する。白米、味噌汁に野菜炒め……地味ではあるが非常に美味しそうな臭いが漂ってきた。
『あんた……料理できたんだな』
『あー私両親を幼い頃に亡くしちゃってさ……それで、妹と一緒にお祖母ちゃんに引き取られたんだけど……私が高校生の時に、お祖母ちゃんもなくして……それからは私がご飯を作ってたりしたんだ。まぁ慣れってやつだよ』
『多恵、洋食が好きなんだけど……でも、美味しいッ!』
『多恵ちゃん、もう食べ始めてるよ……』
『え? ダメだった?』
皆が皆多恵ちゃんに呆れつつも微笑していた、その様子はまるで一つの家族風景のようだった。
『あれ? そういえば夢喰さんは?』
『あー……夢喰ちゃんは……』
と、村戸さんが困惑しながら口を開く。
『部屋、隣なんだけど廊下で寝ようとしたところを、私がギリギリのところで止めて……部屋まで運んだら"脱出する時まで起こさないで"……って』
『あぁ……校則、寮部屋以外で寝るの禁止だもんね……』
『全く……こんな時だというのに、呑気な奴だ』
『ここにいる以上、少しは役に立ってもらいたいのですが……』
『門目君ッ! ソフィアさんもっ……全く、じゃぁご飯は私が部屋まで運ぶよ』
さすが【超高校級の睡魔】だ……もはや永眠レベルだろう。
『じゃぁ夢喰ちゃんは抜きだけど……それ以外はそろってるし、食べようかっ!』
『おー! 多恵ちゃんお腹すいたー!』
『先に食ってたろうが……ちっ』
『まぁまぁ……じゃぁっ、いただきますっ!』
──いただきます
言ったのは数人だが、皆と交流が深まったような気がした。
〇
朝食を食べ終わった後、僕は食堂を後にし、学園の散策を行う事にした。
『……あ、佐藤君』
『ん? 青空姉? どうしたの?』
『夢喰ちゃんの部屋ってわかる? 村戸さんに聞こうと思ったんだけど、もうどっかいっちゃって……』
『え、電子手帳に場所記載されてなかったっけ?』
『部屋に置いてきちゃったんだよね……はは』
『成程……じゃぁ僕が案内するよ』
『ごめんねっ』
僕は青空姉と一緒に、夢喰さんの部屋まで移動した。個室の扉には、ドット絵でできたプレートが貼られているが、割とわかりづらいので、皆はあまり見ていなかった。
『ここかな?』
『そうだね……起こすと機嫌損ねちゃうからなぁ』
『ここは腹をくくるしかないよ』
僕はそう言って、インターホンを鳴らした。
『……』
『反応……ないね』
さらに5回鳴らす。
……しばらくすると、扉がゆっくりと開かれた、そこには寝ぼけ眼を擦りながら、こちらを睨みつける夢喰さんがいた。
『……うぅ~』
『ごめんごめん……朝ごはん、持ってきたよ?』
『……ありがと……あのさ』
『ん? どうしたの?』
『ご飯の時は、5回ノックして……その方がわかりやすいから……』
『わ、わかった』
夢喰さんは、朝ごはんを受け取り、それだけ告げて扉を閉めた。
『……悪い子じゃない……んですよね?』
『うん……そうなんだけどね……』
●
青空姉と別れて、また一人になった。
『……さて、どうするか……食堂に誰か残ってるかな……』
食堂に戻ってみると、そこには倉家姉弟とソフィアさんが、枢木君が使っているパソコン画面をのぞき込んでいた。
『皆? 何しているの?』
『あら、佐藤さん? 青空さんと一緒に夢喰さんの部屋に行かれたはずでは……』
『あ、ああ、用は済んだから、また戻ってきただけだよ』
『おや……夢喰さんの死体報告かと思ったのですが……その口調だと違うようですね』
『し、死体? 僕らが殺すなんてするはずないじゃないか! 僕は信じてるからね!?』
『本当にやかましいですね……そんなに信じてばっかいると、何時か足元をすくわれますわよ』
『ま、まぁまぁ……それで、何をしているの?』
『おお!! 佐藤君来ていたのか! 見ての通り我々は、学園の状況を整理していただけだよ!』
『そ、そうなんだ』
ソフィアさんは相変わらず口が悪いな……言っている事は正しい事なんだろうけど、何もそこまで言わなくても……。
『それで、何かわかったの?』
『何も……だな、先ほどから我の情報解析能力をフル稼働しているが、どの情報も非常に厳重でね……調べるのに時間がかかりそうなんだ』
『貴方が言うならそうなのでしょう……情報バカでも、役に立とうとしている姿勢は評価します』
『ソフィアさん……何かと上から目線ですね』
『悪いですか?』
『まぁまぁ、ソフィアさんも……志津姉は只気になった事を……』
『はぁ、もういいです』
ソフィアさんはしびれを切らしたかのように、食堂を後にした。
『ま、不味いよ……僕以外皆人の事を信用しようとしないよ……』
『ぼ、僕も皆を信じてるよ』
『そうだといいんですけど……』
『はっはっは、信用できない……って結論を出してしまうね』
『そんな……』
『誰かを殺せば外に出られる……なんて事を言われてしまっては、しょうがない事でしょうね』
そうだ、今も誰かが殺害を計画しているのかもしれないんだ……あのモノクマという存在……一体何が目的でこんなことを……。
『……誰かが殺して、その犯人を疑いあう事に喜びを感じている……なんて道理かもしれませんね』
『はっはっは、快楽殺人鬼みたいな思考じゃないか』
『そ、そんな……僕、殺されるのか?』
『殺されないよっ、皆の事信じてるんでしょ?』
『そ、そうだよ! そうだよなっ!』
会話をしていくにつれ、倉家姉弟と、枢木さん……この3人は一先ず人を殺すような人たちじゃない、そう思えてきた。
そう……誰が信用に足りる人物なのか……それを知る為にも、こうやって交流を深めていくのも悪くない。
そう思える一日だった……。
●
キーン、コーン。カーン、コーン
『えー、校内放送です。午後10時になったため、只今から夜時間となります。食堂は封鎖されますので、ご注意ください! それでは、おやすみなさーい』
夜時間となった、皆は既に自室へと戻っていたようだ。
『……そういや、自室の調査、まともにやってなかったな』
改めて確認するが、学生の個室にしては、やけに高級感があふれる空間だった。
浴室とトイレも完備しており、ベッドも質のいい物を使っているのか、超ふかふかだった。
これだけなら、ただの快適な空間なのだが、それを邪魔するかのように……。
模造刀、工具ツール……そして板が打ち付けられた窓……。
不穏な空気を漂わせる物が少なからず配置してあった、そして浴室の入り口には以下の張り紙が貼られていた。
モノクマ学園長からのお知らせです。
それぞれの個室の扉には、ピッキング防止加工が取り付けられているので、安心してください。
鍵は絶対になくなさないようにしてください。
浴室のシャワーですが、夜時間になると水が出なくなるので、ご注意ください。
……お気楽に書きやがって。
僕は、その紙を勢いよく破り、ゴミ箱に捨てた。
『クソ……』
苛立ちを募らせ、ベッドの中へと潜り込んだ。
『……どうして……こんな事になったんだ……?』
苛立ちと不安が入り混じって、今にもどうにかなってしまいそうだ……。
そしてそのまま……誰かを殺してしまうかもしれない。
……
『いや、それだけは絶対にダメだ』
僕は心に何度も言い聞かせた、自分の中に潜む悪魔を追い出すように……。
次第に僕は……目に涙を流しながら、眠りについた。
●
──3日目。
キーン、コーン。カーン、コーン
『えー、オマエラ。午前7時です、朝です、朝です、今日も一日頑張りましょう、それと今日は僕からささやかなプレゼントを用意したよ、自分の机の下を確認してみてね! 』
この学園に来てから3日がたった、この殺し合い学園生活と形容できるような地獄の生活が始まってから……そう、3日だ。
『……ささやかなプレゼント?』
僕は机の下の引き出しを開けた……。
俺は一瞬目を疑った。
そこにあったのは……。
腹部を刺され倒れている家族の写真だった
『皆!?』
何が……いったい……どういう……。
僕はその写真を眺めたまま、数分固まった。どう言葉にしたらいいかわからなかった。
信じられない光景が……突然目の前に現れたのだから……。
『……み、皆は!?』
僕は部屋を飛び出し、食堂へと向かった。
〇
息を切らせ、食堂の扉を開けると、既に全員集まっていた。昨日来なかった夢喰さんも、不機嫌そうな顔をしながら椅子に座っていた。
『皆……』
『さ、佐藤君……』
青空姉が真っ先に反応してくれた、だがその声に何時もの元気はなかった。
『お前も見たのか? あの的を射ていない写真を』
『お前も……ってことは、皆も?』
『(フッ) せっかくの朝が台無しだよ、子猫ちゃんも不機嫌そうな顔をしているだろう?』
『離せ……よ……』
『どうして……どうしてなの……』
『志津姉……これ……』
『えぇ、わかっていますよ』
『私……猫の死体を見るのが一番キツいの……』
あ、睦月さん猫の写真だったんだ。いやそこじゃなくて……。
『全く……とんでもなく不謹慎な写真ですわね』
『はっはっは……さすがに大声を出す気力がなくなってくるねぇ』
『あぁ……俺が一番力を注いでいるアイドルグループが……』
『……』
ソフィアさん、枢木くん、緑川くん……そして、浦川さん。
皆皆が写真の事を口にし……うつ向いてしまった。
モノクマ……いったい何が理由でこんなものを……。
真相を、確かめないといけないな。