とあるアンリエッタのお話   作:cameletter

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第二話 またの名はアンリエッタの野望。まさかの続けてみた。

二話 アンリエッタさんの野望。

 

「では、マザリーニ枢機卿。私が王になることを反対するのですね?」

「反対とは言ってませんぞ。姫様。今は時期尚早だと言っているのです」

「では、いつ頃がいいのかしら?」

「それは姫様が成人なされてからの方がよろしいかと」

「遅すぎます。今すぐ即位する必要があるのです」

 

 アンリエッタは焦っていた。それに対するマザリーニも内心『姫様が乱心したのではないかと』焦っていた。先代の国王に頼まれているゆえ、アンリエッタの突如言い出した暴挙を止めないといけないと思ったのだ。

 

「マザリーニ枢機卿。あなたは巷(ちまた)で王位を簒奪する気ではないかと噂されているそうですね」

 

 マザリーニもその噂を知っていた。が、トリステインのため。そう思えば誉め言葉だとさえ思っていた。

 しかし、民衆や自分の身のことしか顧みない貴族たちに言われるのでなく、アンリエッタその人から言われたことは、マザリーニに相当なショックを与えていた。自分の信じてきたものから裏切られたと思ったからだ。

 

「姫様! そんなわけありませんぞ。私はこのトリステインの事を思ってこそ――」

「わかっています。私もマザリーニ枢機卿の事は父のように思っていますわ。トリステイン王家のために、そして未熟な私のために支えてくれるかしら?」

「もちろんでありますぞ。姫様」

 

 アンリエッタのまとう空気がかわる。マザリーニはこの突然の変化に動揺した。

 

「では、間をとって皇太子でいいわ。立太子の件をよろしくお願いしますね」

 

「姫様……」

 

 マザリーニは言葉を失った。アンリエッタはわざとマザリーニを激昂させたのだ。感情が高ぶればそれだけ思考が低下する。施政者としてもっとも忌避しないといけない事にはまったのだ。

 マザリーニはトリステイン王家のために、アンリエッタのために支えることを言質してしまった。もちろんそのつもりであるのだが、この場合王となったアンリエッタを支えるというようにも考えられる。

 

 そしてアンリエッタは妥協点としての皇太子になることを用意していた。

 

 マザリーニはこの場がオフレコだという事で無視することもできる。

 しかし、その気はすでになくなっていた。

 

「わかりましたぞ。姫様。いますぐ、貴族院に話を通しますぞ」

 

 マザリーニはアンリエッタがただの王女ではなく、立派な王家の人間として成長していることに目頭が熱くなった。同時に胸に寂しい風がふいた。

 

「ごめんなさいね。心にも無いことを言ってしまって。頼りにしているわよ。マザリーニ枢機卿」

 

 アンリエッタは今の宙ぶらりんである己の地位から脱却しようとしている。

 それは自ら、国家の問題・貴族達の政争や陰謀に飛び込むことを意味している。マザリーニは目の前の少女、アンリエッタを守るために成人するまでは、政争から遠ざけようとしていたのだが、アンリエッタ自身がそれをよしとしない。

 

(この姫様なら、フィリップ三世を越える女王になれるかもしれない)

 

 自ら茨の道を進むことを決心したアンリエッタをなお一層支えることに、マザリーニは堅く信じた。

 

 

 

   *

 

『トリステイン王国、アンリエッタ王女が皇太子に』

 

 その知らせは世間を騒がせた。

 

 トリステインの民衆は我が事のように喜んだし、一部の貴族は「鳥の骨のやつめ。何を考えている」と疑心暗鬼となった。また、素直にトリステインの跡取りが正式に決まったことに安堵した貴族も少なくない。お祝いの贈り物に頭を悩ます貴族も残念ながら多いが。

 

 外国となるとどうだろうか?

 

 まず一番驚いたのは各国の施政者たちだった。トリステインは外国から始祖の血につながる王族を婿にとって、そのものを王位につけると思っていたからだ。

 

 しかしアンリエッタ王女自身が王位に就くという意思を示した。

 

 この急激な政策の変更にトリステインに何か政変があったのではないかと勘ぐった。

 しかし、マザリーニ枢機卿は宰相の立場で健在であるし、重要なポストの変更はまったくない。

 

 言葉ではお祝いの言葉を口に出すが、裏で情報合戦が行われていた。

 

 そこで一つの情報が彼らにもたされる。

 

 杖をもっていて九死に一生を得たが、アンリエッタ王女が城から突き落とされて暗殺されかけたらしい。

 

 アンリエッタが自室から落ちたという真実はトリステインが箝口令を出して隠していた。王女がそんなまぬけなミスをしたことが漏れれば、一大事と珍しくトリステインの暗部ががんばったらしい。

 

 しかし遠くからそれを見ていた人間ももちろんいる。近衛騎士の騒ぎに隠した事も相俟って、真実を知らなければそこから導き出される答えは暗殺であり、各国の施政者達もそれに納得した。

 

 アンリエッタを暗殺すれば、王位継承権はマリアンヌ大后とラ・ヴァリエールなどの公爵家に限定されていく。

 下手人が誰か探るもののそれ以上の情報が出てこず、首をかしげながらも、アンリエッタの立場を強固にする必要があった、と判断した。

 

 下手人などいないのだから出てくるはずもない。

 

 当のアンリエッタが聞いたら「あれ?」と思うことだろう。

 

 

 

 アンリエッタ・ド・トリステインの挑戦が始める。

 アンリエッタの次の手はなんだろうか?

 

 

 

 

 

 

あとがき

「あばばばばばばばばば」を数話だけですが久しぶりに読み返してみたら、非常に書きたくなった。

いや名作ですよねぇ。初めて読んだときの衝撃をを思い出してニヤリ、そんなcameletterです。

 

時間ができたらゆっくりと読み返したいものです。

 

それにしても三人称神の視点便利だなー。とこれ書いてて思う。

転生・憑依者を神の視点で描く、というのは数年前から思っていたことですけど(それようの案もある)

このゼロ魔でやるとは思っていませんでした。

 

短編連作という形をとるので、話は飛ばしまくります。そして隠しまくります。短い文ですが、これ以上書く必要もないでしょう?

 

 

あ、質問です。アンリエッタの父親て誰でしょう? そして没した歳は原作開始何年前でしょうか? wiki見てものってないし、原作を引っ張り出す気力もない。そもそも売ってしまった記憶があるようなないような……そんな感じです。

 

それによっていろいろかわってくるでしょうから。




>「あばばばばばばばばば」を数話だけですが久しぶりに読み返してみたら、非常に書きたくなった。

この「あばばばばばばばばば」を指し示す小説の存在を、今ここハーメルンで見て理解できる人はどれぐらいいるのだろうか。

読者も世代交代しているでしょうから。。。
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