とあるアンリエッタのお話   作:cameletter

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第三話 お仕事は大変。マザリーニ主人公になる。

三話 お仕事は大変。

 

「ちぃねぇさま! 姫様が皇太子になったんだって!」

「あらそうなの? お祝いしないとね」

「でも皇太子になったらもう遊べないのかな?」

「大丈夫よルイズ。今まで通りお友だちでいてあげて」

「うん!」

 

 ラ・ヴァリエール公領。後のゼロのルイズと呼ばれる虚無の使い手、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはアンリエッタ王女の立太子礼で巫女になるよう要請がきていた。家柄だけは立派とはいえ年端もいかぬ、しかも魔法の才能が乏しいと噂されている少女を友達というだけで指名したアンリエッタに待ったの声があがる。

 

 ラ・ヴァリエール公爵も、ルイズを人前に出すのをよしとしなかった。

 そしてその事をルイズに知らせもしなかった。

 

 そんなこんなで各陣営の思惑が交差する中、立太子礼が行われる。各国から参列者がトリスタニア入りをする。

 

 アンリエッタは思うように事が進まないことにため息を吐きながらも、自身の皇太子礼の準備に精を出していた。自身が正式なトリステインの後継者として催す初めての国際イベントである。失敗は許されない。

 出費の金額を見れば頭が痛くなる思いだが、最初が肝心とそこは割り切っていた。もちろん予算はできる限り圧縮しろ、と下部に圧力をかけるのも忘れない。

 

 そしてアンリエッタに気苦労がさらに降りかかる。

 

 ガリア国王が招待状を送る前に参列を表明。ついでに諸国会議を開いちゃおうぜ、と世界に発信。あれよあれよと思うまに、アンリエッタは皇太子即位と同時に外交の場へと引きずり出された。

 アンリエッタ、そしてトリステイン政府としては、内政に集中したいタイミングなので一杯食わされたことになる。

 

 またお前かガリア! とアンリエッタはハルケギニア一の大国に主導権を奪われたことに、自身の未熟さを痛感していた。

 

 

 アルビオンからはジェームズ一世にウェールズ王子。

 

 ガリアからは国王を初めとしてジョゼブ第一王子、シャルル第二王子が参列。

 

 ゲルマニアからはアルブレヒト三世自身が乗りだす。

 

 ロマリアも近く交代が噂される老齢の教皇がわざわざでむいてきた。

 

 

 ハルケギニア中の国家権力者がトリスタニアに一堂に会し、街は大騒ぎだった。

 

 アンリエッタとしては伯父のジェームズ一世はともかく、他の国には代役をたててもらった方が楽だったのだが。

 

 

   ***

 

「眠たい」

「いけませんぞ、姫様。今から諸国会議ですぞ。屹然と対応しなければなめられますぞ」

「わかっています。マザリーニ枢機卿。では行きますよ」

 

 会議室のドアを開け放ちマザリーニとともに、堂々とトリステインの席につく。

 マリアンヌは出席を拒否していた。アンリエッタはそんな母に少し苛立つものの、仕方がないと割りきる。

 

 アンリエッタの立太子礼は大きな問題もなく無事終わり一夜開けていた。下々ではまだ祭り騒ぎだろうが、この会議室には関係ない。

 アンリエッタにとってこれからが本番だと言える。

 

 主催者として、アンリエッタが諸国会議の議長に押し付けられていた。12歳を少しばかり過ぎたか弱い少女に議長を押し付けるのはどうにかしていると思うのだが、マリアンヌが出席してくれなかったのだから仕方がない。

 

 アンリエッタをこのような立場に追い込んだ張本人は、人良さそうなの好々爺のように、にこやかな笑みを浮かべていた。

 アンリエッタはその顔を全力で蹴りたくなり、相手がガリア王と思いだし諦める。

 

「この度の招待に応じてくださり感謝しますわ。今回の会議がハルケギニアをさらなる繁栄に導く物になると私は信じております。忌憚のない意見を交わせるとうれしいわ。ではアンリエッタ・ド・トリステインの名において諸国会議を今開きます」

 

 先ほどのだるそうな態度と打って変わって、アンリエッタは恥ずかしくないよう堂々としていた。前口上も早々打ち切り本題に持って行く。

 

 とはいっても、この場にいる人間はアンリエッタ以外海千山千のやり手。さりげない会話での腹の探り合いを始める。アンリエッタはこれが高度な情報戦か! と現実逃避をしつつ、一言一句聞き逃さないよう聞き耳を立てていた。のだが、

 

「おぉ、マザリーニ枢機卿。久しいな」

「はい。猊下。ご無沙汰しています」

「どうじゃ? 次の教皇の座にはソチを推そうと思っているのだが?」

「ありがたいお言葉感謝します。ですが私はこのトリステインでやるべき事があるので今はロマリアに戻るつもりはありませぬ」

 

 

「そういえばマザリーニ枢機卿。わしの妻がそちに会ってみたいと言っておたのだがどうだ? ガリアにきてみんか?」

「はぁ、皇后様がですか?」

「なに、一度くるだけでいいのじゃ。リュティスに来て妻に会ってくれないか? 歓迎するぞ」

「いずれは”アンリエッタ様”と訪れさせてもらいます」

 

 

「そうだ、マザリーニ枢機卿。一つ相談にのって欲しいのだが、我が国ゲルマニアにはブリミル教を軽率に扱う民衆が多くてな。どうか枢機卿の力で民衆にブリミルの教えをしらしめて欲しいのだ」

「はぁ。その事ならここにいる猊下に頼んでもらった方が的確かと」

「マザリーニ枢機卿だと見込んでこその頼み事なんだ。礼をはずむぞ」

「私には”トリステイン”の民も導く使命があるので残念ながらゲルマニアまではできませぬ」

 

 

「今まで言う機会がなかったのだがマザリーニ枢機卿、我が弟が生前は世話になったの」

「もったいないお言葉です。先王には私も世話になりましたので」

「そこでじゃ、兄として感謝を意味を込めてマザリーニ枢機卿をアルビオンに招待をしたいのだ」

「言葉だけで十分であります。先王も喜びましょうぞ」

 

 

 マザリーニの引き抜き合戦が始まっていた。マザリーニの頬は盛大に引きつっている。アンリエッタが助け船を出さないといけないのだが、経験の少ないアンリエッタである。怒濤の勢いに口を挟む機会をなかなか得られず口をパクパクしていた。

 

 そんな時に意外なところから助け船が入る。ガリアの第一王子ジョゼフである。

 

「それぐらいにしたらどうでしょう。マザリーニ枢機卿はトリステインのことを愛されているらしいし、アンリエッタ姫も困っていますぞ」

「そうです。兄さんの言うとおりだ。父上も調子に乗りすぎです。アンリエッタ姫に失礼ですよ。みなさん」

 

 第二王子シャルルもそれに追随する。

 ガリア側からこの兄弟も出席していた。兄のジョゼフが一応上座に座っていたが、二人は同列で参加している。つまりガリア現王はいまだに次の王を決めていないということ示していた。魔法の才能が乏しい”無能の王子”ジョゼフと、類い稀なる魔法の才能を発揮した”天才の王子”シャルル。

 ガリアでは第一王子を王につけるべきだという貴族とシャルルを王につけるべきだと貴族が派閥を作って争っている。

 

「ありがとうございますわ。ジョゼフ王子にシャルル王子。でも私は殿下ですわ」

 

 皇太子と王子では立場上アンリエッタの方が格式が高い。

 アンリエッタとしては”アンリエッタ姫”でもよかったのだが、マザリーニから自分より立場の低い人間に”姫”と呼ばせてはならないと再三注意をうけていた。同時に国王が何と呼ぼうがそれを甘んじて受け入れないといけないということであったが。

 

「それは失礼、私はガリア第一王子ジョゼフです。改めてよろしくアンリエッタ殿下」

「シャルルです。先ほどは失礼しました。アンリエッタ殿下」

「よろしく。ジョゼフ王子にシャルル王子」

 

 二人とも青髪が似合っているとアンリエッタは思った。王族には見目麗しい人間が生まれやすいがそれはガリアも例外ではないらしい。

 

 アンリエッタはジョゼフ王子を見つめる。その顔から感情は読み取れない。世間から”無能”とさげすまされてきた王子だが、アンリエッタはそうでないと知っている。本当のジョゼフを知っている人間は弟のシャルルだけだった……。この人の本質はなんだろうか? アンリエッタは知ってみたいと思った。

 

「アンリエッタ殿下。私の顔に何かついていますか?」

 

 アンリエッタは、ジョゼフの顔を凝視していたことに気づいて慌てて顔をそらす。その顔は赤くなっていた。傍目からならば、美少女が美男子に見とれていた構図にも見て取れた。

 

 それを見ていたガリア現王がニヤリとしたことをアンリエッタは知らない。

 

 

 

 

 

あとがき

この物語の主人公はマザリーニです。もてもてですね。下は12の少女から上は還暦ぐらいのお爺さん婆さんまでよりどりみどり。マザリーニにも春がきたようです。

 

 

というのはおいといて、どうもcameletterです。

本来書く予定なかったのですが急遽入れてみました。といかなぜかこうなっていた。なんででしょう?

時間軸的には原作5,6年前に設定しようかと思っています。アンリエッタ12歳というところでしょうか。

 

 

 

とあるアンリエッタの受難の軌跡 第三巻(第一巻と第二巻は失伝)

 

ちぃねぇさま……19歳。まだまだ胸成長中かもしれません。魔法学園の進学はあきらめて自宅で療養中のシスコン。癒やしですね。

 

ルイズが巫女……11歳に巫女はつとまらない。しかもヴァリエール公爵が消極的ということでお流れ。覚醒イベント前倒しならず。

 

ラ・ヴァリエール公爵……ルイズのお父さん。魔法の使えないルイズをできるだけ社交の場に出さないようしている人。最近加齢臭で娘に嫌われないかと恐れている。巫女の事を秘密にしていたことがあとでばれてどうなるかは、アンリエッタにはどうでもいい。

 

立太子礼……立太子の儀式。お金が足りません。

 

ガリア国王(現王)……ジョゼフとシャルルのお父さん。まだ元気だが国内貴族の跡継ぎ派閥闘争にお疲れ気味。今回のアンリエッタの立太子礼は気分転換にいいや! というアンリエッタにとってありがた迷惑の爺さん。

 

諸国会議……ハルケギニアの主要各国のブレインが集まって陰謀ごっこする場所。

 

猊下……ブリミル教教皇の事。ダングルテールの虐殺を命令した人だと思われる。名前しらね。

 

アルブレヒト三世……置物。

 

ジョゼフとシャルル……ガリア第一王子と第二王子。シャルルはお兄さん一筋のブラコン。ジョゼフもうざいと思いながらも、突き放せなく弟に依存状態。どちらも重度なブラコン中毒である。放っておくと大変なことになりますよ♪

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