未踏召喚://ブラッドサイン Un-usual_Life   作:白滝

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第1話

 簾堂(れんどう)明也(あきや)の何気ない一言だった。

 

「じゃあ、みんなでガキの頃の家族写真とか持ち寄るか」

 

 

 

愛歌(あいか)、お願いがあるんだ」

「おおおおおおおおおおお兄ちゃん!?壁ドンですか…!?そんな玄関開けた瞬間にいきなり、そんな、お兄ちゃんらしからぬ大胆さなのです!ま、ままま待ってくださいなのですそう知っていれば然るべき入念な準備を――――ハッ、長い歳月を経て遂に”あれ”の封印を解く時が来たのですね…!!ごくり」

「年中ビキニを着ているあなたに勝負下着も何もない訳だが」

「ガガーン!?確かに布面積が逆に増えている…!?私とした事が、この場面は想定していなかったのです…不覚…自分のキャラ付けのアプローチをとても後悔しているのです…」

「愛歌、ふざけている場合ではないんだ。緊急の案件なんだ。事態は一刻を争う」

「はいはい、何なのですか…全くもう、お兄ちゃんは妹の私がいないと本当に駄目駄目ですね…本当は今から朝ごはん(注:昼夜逆転しているため現在は夕方)だったのですが、愛しのお兄ちゃんのためならば、朝飯前にかるーく仕事を片付けてやるのです…で、どんな用件なのですか…?」

 

「僕の、父親と母親を用意してくれないか」

 

「………………………はい………?」

 

 事態を、説明しよう。

 物語はやはりトイドリーム35のR区画。その、とある学校の1教室での何気ない会話が始まりだった。

 

 

 

 

 

 召喚儀礼における形無き報酬『アワード』を授かるという事は、つまり人ならざるものへ昇華する階段を一段一段上る行為を意味している。事実だけを簡単に告げるならば、獲得アワード数が100を超えた召喚師は魂が『被召物(マテリアル)』側へ寄ってしまい、一般人の認知から消え去ってしまう事態に陥るのだ。

 このあどけない顔をした少年、城山恭介もまたそんな召喚師の一人だった。彼はあらゆる人々から視界の外に外された時点で”存在を忘れられてしまう”のだ。

「家族写真を偽造したい。最低でも5、6枚は欲しい。けれど、一般人から協力者を募集したとしても、僕を毎度忘れてしまう人物を複数人も連れての写真撮影は難しい訳だが」

「そこで、私に召喚儀礼に関わる人物を複数名、用意して欲しい、と…」

 はぁ、と愛歌は大きなため息をついた。

「適当に誤魔化せば良かったんじゃないですか?写真は撮らないタイプの家庭だったとか、もしくは写真のデータを修めたPCが壊れてしまっている、とか」

「最初はそう思ったよ。けど、どのみち学校の課題で班員全員分の写真が必要になる。嘘をついても最終的に困るのは僕だ」

「……じゃあ、父親と母親はいないって言っちゃえばよかったんですよ…」

「それは『普通の学生』ではないだろう?」

 キョトンとした顔で城山恭介はそう言った。

「…お兄ちゃん、確かに両親がいない事は普通ではないですし、ちょっと不幸な境遇にあるのかもしれません…でも、だからと言ってそんなに過剰に『普通の学生』を演じる事に固執しなくても、」

「別に演じていないさ。召喚儀礼の界隈について話せない事も多いけど、僕は学校ではとても自然体で過ごしているつもりな訳だが」

「そうですか…?私には、お兄ちゃんは学校で生活している時の方が、なんだか窮屈で堅苦しそうで、息が詰まっている表情に見えるのですが…」

「……どうして僕の学校内での様子をあなたが知っているんだ…?」

「ギクゥ!?」

 このヒキコモリ少女、サイバー系に強いだけではなく部下を何人も子飼いにしているので、「実は部下を使って城山恭介を監視させていた」とかやりかねない。本当にやりかねない。

 まぁ、やりかねないという事実があるだけで、彼に気付かれずに監視できる程の能力を持った人間が果たしてこの界隈に何人存在するのかという問題はまた別の議題ではあるが。

「ともかく、次の日曜に誰か雇っておいてくれ。アワード100以下の人間なら誰でもいい」

「…はぁ。じゃあ、できるだけお兄ちゃんに似てそうな人を探してみますけど…」

「頼むね。報酬金の相談はまた今度に」

 用件だけ話し終えたら、さっさと部屋から出ていってしまう城山恭介だった。

(…参りました…お兄ちゃんの地雷を踏まなければいいのですが…)

 実を言うと、愛歌は城山恭介の家庭事情をよくは知らない。

 何かしらの実験を受け、数少ない生存者となった事。その実験で白き女王と強い繋がりがあった事。

 そんなうすぼんやりとした情報だけを把握しており、「家庭」なんて言葉が城山恭介の周りにチラついた事は一度もない。

 だからこそ踏み入ってはいけないラインだと思っていたし、ふざける事の多い愛歌や(リュウ)娘藍(ニャンラン)もそこだけは決して触れなかった。

 そこを、まさか自分から切り出すとは。

「…まぁ、大丈夫ですよね…まさか、今回もあの女王が絡むなんて事が…まさか、ね……」

 

 

 

 

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