【依存】から始まるヒーローアカデミア   作:さかなのねごと

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08.少女、服を着る。

 

 雄英高校ヒーロー科。ヒーローを養成する学校の最高峰とはいっても、高校は高校。午前中は現代文、古文、英語、数学……といった、普通の授業が行われる。

 

(プレゼントマイクが普通に英語の授業をしてるのは、驚いたけど……)

 

 いや普通ってのは決して悪口じゃない。ただ、あまりにもプロヒーローとしての印象が強い彼が、当たり前のように教壇に立って当たり前のように英文を教えてくれるのは、なんというか、不思議な気分だった。

 しかし午後からはヒーロー基礎学の時間。ヒーローになるための素地を培う訓練を行う、最も単位の多い科目。

 

「わーたーしーがー!! 普通にドアから来た!!!」

 

 その記念すべき第1回目の講師は、あのオールマイトだった。HAHAHA!!と高らかに笑いながらやって来たNO.1ヒーローは、テレビ越しに見ていた彼そのもので、夢みたいな光景にどきどきしてしまう。

 

「オールマイトだ……! すげぇや本当に先生やってるんだな……!!」

銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームだ……! 画風が違いすぎて鳥肌が……」

 

 ざわざわとするみんなの前で、オールマイトはグググ……と溜めた後、腕を突き出してプレートを掲げた。そこに書かれているのは──戦闘訓練。

 

「早速だが今日はコレ!! 戦闘訓練!!

 そしてそれに伴って……こちら!!」

 

「「「!?」」」

 

 オールマイトが何かのリモコンを操作すると、教室の前方の壁がせり出てきた。そこはロッカーとなっていて、1から21……このクラス全員分の数が割り振られている。

 

「入学前に送ってもらった【個性届】と【要望】に沿ってあつらえた、戦闘服(コスチューム)!!」

「「「おお……!!」」」

 

 思わず立ち上がったみんなに向けて、オールマイトはニッと力強く笑って告げる。

 

「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!!」

 

 

 

 

 

 【被服控除】とは、入学前にサポート会社へ【個性届】と【身体情報】を出し、【要望】を伝えると、自分に合ったヒーロースーツを用意してくれるというシステムで、わたしも入学前には色々と頭を悩ませた。

 わたしは【翼】での飛行がメインとなる。だから羽根の動きを邪魔しないのが第一で、その次は防御性能、防寒性能、ゴーグルをして目を風から保護しなきゃ──と、色々考えているうちに、……なんだかホークスに似てきたと気づいてしまい、慌ててデザイン画も付け加えたのも記憶に新しい。いや意識してるとかじゃなくて、“個性”が同じだから求めるものも同じだし……。

 

「百面相してる! どったの?」

「! う、ううん。大丈夫、なんでもない」

「そー?」

 

 首を傾げてこちらを覗き込んできたのは芦戸三奈さんだ。薄桃色の肌と黒目がちの大きな目が印象的な女の子で、同じA組のクラスメイト。彼女はヒーロースーツに着替えたわたしを見て、わ、と目を輝かせた。

 

「へー、空中(そらなか)のヒーロースーツ可愛いね!」

「そ、そうかな?」

「うん! なんかアレだ、戦闘機に乗ってる人みたいな、あれのワンピースみたいで!」

 

 芦戸さんが評する通り、わたしは暗い紺色のインナースーツの上に白いレザー生地のフライトジャケットに似たワンピースを着ている。もちろん背中には羽根を出すための穴も空いていて、飛行の邪魔にならない、ぴったりとした動きやすいデザインだ。尚且つ全力で飛んでも寒くないように露出を無くし、手首や首元にファーをつけた。まだ改良はそのうちしていくだろうけど、初めて自分で考えたにしては気に入っている。

 褒めてくれた芦戸さんにありがとうと返して、ロングブーツを履く。これで準備完了だ、と立ち上がって顔を上げると、他のみんなも一通り着替え終わったところだった。

 

「芦戸さんのも可愛いね。迷彩すごく似合ってる」

「えへへー、でしょー!」

「ノースリーブも動きやすそう……でも剥き出しだといざという時防御しづらくない?」

「あたしの“個性”は【酸】で、肌から出すんだよね。だから腕部分はなるべく肌見せときたくって!」

「ああ、そっか、なるほど……」

「わかりますわ。防御力は下がりますけど、個性が最大限に発揮できる方がいいですもの」

「……!?」

 

 頷いた八百万さんのヒーロースーツは、足も手も、なんならへその辺りもがっつり肌を見せるタイプのレオタードだったので、思わず言葉を無くしてしまった。

 

「八百万さんの、その、なんというか、すごいね」

「これでも要望より布の面積が多くなってしまいましたの」

「これで!? ……でも、似合うからやっぱりすごい……」

 

 明け透けに言ってしまえば、八百万さんのプロポーションは抜群だ。背もすらりと高いし、手足も長いし、出るとこはしっかり出てる。とてもじゃないけど高校1年生……わたしと同い年だとは思えない。

 

「発育の暴力だよあんなの……」

「……正直、わたしもそう思う……」

「ね……」

 

 耳郎さんの密やかな呟きに心の底から同意する。彼女のヒーロースーツはそこまで露出が高いわけでもなく、体の線が出るものでもないから、なんだか親近感がわく。パンキッシュ、というのだっけ。耳郎さんの雰囲気にぴったりだ。

 体の線が出るもの、といえば。視線を動かすと、梅雨ちゃんの大きな目と目が合って、わたしはわあ、と思わず歓声を上げてしまう。

 

「梅雨ちゃんのヒーロースーツ、蛙モチーフだよね?」

「ええそうよ。小学生の頃から温めてきたデザインなの」

「すっごく似合ってる! 可愛い」

「ケロケロ、ありがとう」

 

 照れたように微笑んだ梅雨ちゃんだけど、本当に似合ってる。緑を基調としたボディスーツ。足元は蛙の吸盤みたいな形で、頭のゴーグルも蛙の大きな目を模している。動きやすさと可愛さとモチーフが合致していて、素敵だなあと思う。

 可愛い、モチーフがぴったり、といえば麗日さんもだ。視線を送ると、彼女はたはは、と苦笑めいた笑顔を浮かべた。

 

「要望ちゃんと書いてなかったから、パツパツスーツんなった……恥ずかしい……」

「そう? 宇宙飛行士みたいで、色合いもすごく素敵なのに……」

 

 ブーツなんかも丸みがあってすごく可愛いと思うのにな、と首を傾げると、視界の端にグローブが浮いているのが見えた。……グローブが、浮いている?

 

「……葉隠さん?」

「んー? どしたの愛依(あい)ちゃん」

「あ、やっぱりそこにいるんだよね、グローブとブーツがあるし。……えと、ということは、その、」

 

 葉隠透さんの個性は【透明人間】。その名の通り透明人間なので、姿はまったく見えない。だから身に付けているものが浮いて見えるというのが普通なのだけれど、……今はグローブとブーツしか見えない。

 

「……あっ、そうだ。体と同じく透明になるスーツを着てる、とか」

「んーん。なーんにも着てないよ!」

「着っ、!?」

「ちょ、葉隠あんた真っ裸なわけ!?」

「だってこれが一番個性を活かせるし!」

「根性やねえ……」

 

 葉隠さんがあっけらかんと笑い、麗日さんがしみじみと呟く。……個性を活かすためには恥ずかしさは捨てるべきなのかもしれないな、なんて、新しい価値観を学んだ。

 

 

 

 

 

 なんだかんだで着替え終わって演習場に出たわたしたちを、オールマイトが出迎える。彼は先ほど言った。『形から入るのも大切なことだぜ少年少女!!』と。──『今日から自覚しろ!!』と。

 

(“今日からわたしも、ヒーロー”……!)

 

 真新しいヒーロースーツに身を包み、意気込んで進み出るわたしたちを見て、オールマイトはニカッと笑う。

 

「いいじゃないか皆、かっこいいぜ!!

 さァ始めようか有精卵共!!! 戦闘訓練のお時間だ!!!」

 

 初めてのヒーロー基礎学。講師はオールマイト先生。授業内容は【戦闘訓練】。昨日の今日でいきなり戦闘だなんて、と驚く人も、喜ぶ人も、疑問を持つ人もいて、反応はさまざまだった。今も戦闘訓練とはいっても何をするのか、勝敗のシステムはどうなるのか、チームの組分けはどうするのか、ブッ飛ばしてもいいのか、このマントよくない?とか──最後の方はよくわからないけど──質問責めに合ったオールマイト先生は、口許をひくつかせながら詳細を話し出した。

 

「君らにはこれからヴィラン組とヒーロー組に分かれて、2対2の屋内戦を行ってもらう! いいかい? 状況設定は、ヴィランがアジトに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしている! ヒーローは制限時間内にヴィランを捕まえるか核兵器を回収する事。ヴィランは制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえる事」

 

 ヒーローとヴィラン、それぞれの勝利条件を述べて、オールマイト先生はくじを取り出した。チーム分けはくじ分けにすると聞いて、飯田くんが驚いたように声を上げる。

 

「チーム分けは適当なのですか!?」

「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップすることも多いし、そういうことじゃないかな……」

「なるほど……先を見据えた計らい! 失礼致しました!」

「いいよ!! 早くやろ!!」

 

 ……今思えば、入試のあの質問の声は飯田くんだったんだろうなあ、と。ぼんやり思い出しながら、これからに思いを馳せる。

 緑谷くんが言った急造チームアップ。どんな個性とも、どんな人とも協力して任務に当たらなければならない。これも未来に繋がる大事な訓練、と、気持ちを引き締めた。

 

「えっと……葉隠さん、尾白くん。改めまして、わたしは空中愛依です。よろしくね」

「うん、空中さん。よろしく」

「私のことは透でいーよ! よろしくね!」

「う、うんっ」

 

 わたしはIグループで、葉隠さ……透ちゃんと尾白くんと一緒になった。全員で21人だからどうしてもどこかで3人になってしまい、数の上で有利不利ができてしまうのだけれど、

 

「問題ない」

 

 対戦相手の轟くんは、ただ一言それだけ言った。それは静かな自信に溢れてる気がして、……たったそれだけで気圧されてしまったような気がして、わたしは頬をぱちんと叩いた。

 

(気持ちで負けちゃ駄目。……頑張るんでしょう、わたし)

 

 気を取り直して、前を向く。ここは屋内戦闘が行われるビルの地下にあるモニタールームで、前にはビル内にあるらしい定点カメラの映像が幾つも映し出されている。

 

「さあ君たちも考えて見るんだぞ!!」

 

 画面には爆豪くん、飯田くん、麗日さん、緑谷くんの姿が映し出されている。ぐっと手を握り締めて、彼らの戦いの様子を見守った。

 ──わたしたちの初めての戦闘訓練は、こうして幕を開ける。

 

 

08.少女、服を着る。

 

 


 

 まるで今まで服着てなかったかのようなタイトル。

 オリ主のコスチュームのイメージはTOAのノエル・ニークスが一番近いのですがそれを文章で上手く表現できませんでした。ふわっとイメージして見てくだされば幸いです。

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