海軍専門の泥棒   作:小狗丸

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麦わらとの冒険2

 嫉妬に狂ったサンジの八つ当たりによって最初はルフィ達を船に乗せないと言っていたディボスだったが、最後にはルフィの「頼むよ。俺達友達だろ?」という言葉にあっさりと船に乗せることに決めたのだった。

 

 また、このやり取りを見ていたモニカが「ウチの船長、チョロすぎない?」と呟いたのだが、それはまた別の話。

 

「おー! スッゲェー! これがディボスの船かー!」

 

「潜水艦なんて初めて乗ったぜ!」

 

 ディボス達の船である潜水艦シールス号の中を見てルフィとウソップが大きな声を上げる。ゾロやナミ、サンジも声を出してはいないが、初めて見る潜水艦の艦内に興味を示していた。そして自分達の船を褒められたディボスはやや自慢気に話す。

 

「これは海軍から盗んだ最新の潜水艦の試作艦、それを改造したものだからな。性能は保証するぞ?」

 

「えっ!? これって海軍から盗んだものだったの!?」

 

 ディボスの言葉にディボスグループに入ったばかりのモニカが驚いた顔となる。しかしルフィ達は興味がないのか予想していたのか特に驚いた様子はなかった。

 

「やっぱり……。流石は海軍専門の泥棒〝幽霊船〟のディボス。……そういえば前から聞きたかったんだけど、何でアンタってば海賊をしている上に海軍から盗みなんてしているの? そんな事したら二重の意味で海軍に目をつけられるじゃない?」

 

「ん? 俺は別に自分から海賊を名乗った覚えはないぞ?」

 

『『え?』』

 

 ナミがディボスに前から聞いてみたかったことを聞くと本人は何でもないように言い、それを聞いたルフィ達とモニカが驚いた声を出す。

 

「俺は学者の家系の出身でな、機械や兵器が大好きなんだ。だからまだ見たこともない機械や兵器を見るために海に出たんだ。だけどその中には世界政府が研究を禁じているものもあるし、何より俺の『宝物』は所持しているだけで重罪となる危険な兵器だからな。いつかは世界政府や海軍に目をつけられるのは分かっていたから、開き直って海軍から活動資金やら色々いただくことにして……そうしたらいつの間にか海賊扱いになっていたんだ」

 

「そうか。じゃあ仕方がないな」

 

「いや、それでいいのかよ!」

 

「ていうか、そんな適当な理由で海軍から盗みをしていたの!?」

 

「なんか色々おかしいだろ!?」

 

「所持しているだけで重罪となる兵器が宝物……? 一体何だよ、それは?」

 

 ディボスが自分が旅に出た理由と海賊扱いになった理由を話すと、それを聞いたルフィは納得したようだったがゾロ、ナミ、ウソップ、サンジの四人は納得がいかなかったようでそれぞれツッコミを入れる。

 

「あー……。やっぱりディボス船長も『この世界』の住人なのね……。色々と無茶苦茶だわ」

 

『『……………』』

 

 ルフィ達の横でモニカがどこか呆れたような顔となって呟き、更にその隣ではアマゾース姉妹が嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

 ディボスが言う宝物とはアマゾース姉妹を製造した古代兵器、兵器製造戦艦アーレースのことである。主人であるディボスが自分達を生み出した存在を「宝物」と呼び大切にしてくれていることはアマゾース姉妹にとって嬉しいことだった。

 

「まあ、それはどうでもいいや。それよりディボス、これって潜水艦なんだろ? だったら海の中に潜ってくれよ」

 

「それはいいけど……。海の中から船を探す事が出来るのか?」

 

 シールス号を潜航させろと言うルフィの言葉にディボスがナミの方を見ると、麦わらの一味の航海士である彼女は少し考えてから首を横に振った。

 

「ごめん。私も潜水艦で海に潜っての航海はしたことがないわ。だからこのまま潜らずに船を進めて」

 

『『ええ〜〜!』』

 

 シールス号を潜航させないで進めるように言うナミにルフィとウソップが明らかに不満そうな顔となり、それに対してナミが怒鳴る。

 

「うるっさい! アンタ達! メリー号を探す気があ「前方に船が見えるわ」……え?」

 

 ナミの言葉を遮って前方を双眼鏡で監視していたアマゾース姉妹の一人カミラが声を上げ、その場にいる全員の視線が彼女に集まる。

 

「船! メリー号か!?」

 

「いいえ。前方にある船は二隻。そのどちらにも麦わらの一味の海賊旗は見えないわ」

 

「だったら海軍か?」

 

 ルフィの言葉にカミラは首を横に振り、続くディボスの言葉にも首を横に振った。

 

「海軍でもないわ。海賊船が小船を追いかけているみたいね」

 

「海賊船が小船を……略奪か? それでどうするんだ?」

 

 ディボスがカミラの報告を聞いてからルフィ達に意見を求めると、最初に反応したのはウソップだった。「海賊船」という単語を聞いてから彼の顔色は一目で分かるくらい青くなっており、足も震えていた。

 

「ど、どうするってそりゃ、俺達にはゴーイングメリー号の捜索という重大任務があり、海賊船にかまっている暇なんかないというか……」

 

「でもメリー号が向かった方向もこの先なのよね……。もしかしたらメリー号の事を知っているかもしれないわ。……行ってみるべきかも」

 

『『……』』

 

 ウソップの言葉を遮ってナミがゴーイングメリー号の行き先を推測して言い、ゾロとサンジも彼女の意見に賛成のようで無言で頷く。

 

「よおっし! それじゃあ全速前進っ!」

 

「はいはい……」

 

 どうやらゴーイングメリー号の情報を得るために海賊船と小船がいる方向へ進むことが決まったらしく、ルフィが大声で号令を出してディボスはそれに内心でため息を吐きながら従いシールス号を進めるのであった。


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