海軍専門の泥棒   作:小狗丸

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麦わらとの冒険3

「……さて。ルフィ達の船の情報を求めて海賊船と小船に接触しようとしたのはいいんだが……」

 

 疲れた表情でディボスがそこまで言ったところで轟音が起こり、シールス号の周囲にいくつもの水柱が立った。

 

「やっぱり俺達も襲われる対象になるか。相手は海賊だものな」

 

「何冷静に現実受け入れているのよ!」

 

「そうだぜ! 反撃しろ、反撃! ほら、前にやってみせた『奪艦(ゲットシップ)』とかいう技であの船消しちまえ!」

 

 先程の轟音と水柱は海賊船が放った砲弾によるものであり、海賊船が小船だけでなくシールス号も襲う対象としたことをディボスが冷静に指摘すると、ナミとウソップが面白いくらい慌てた様子で叫ぶ。しかしディボスはウソップの言葉に首を横に振る。

 

「『奪艦(ゲットシップ)』をするには一度相手の船に乗り移らないといけない。だけど流石にあんなに大砲を撃たれていたら、向こうの海賊船まで乗り移るのは無理だ」

 

「じゃあどうするんだよ!? まさかこのまま沈められろってか!?」

 

 ディボスの言葉とこちらへ近づいてくる海賊船にウソップは顔を青くして言うが、それに対してディボスは特に焦った様子もなく海賊船を見ながら口を開く。

 

「それこそまさかだ。向こうが大砲で撃ってくるならこっちも大砲で反撃するまでだよ。……シールス号、出番だ」

 

 ディボスはそう言うとフネフネの実の能力を使いシールス号を操作し、シールス号の前方の装甲が展開して二門の大砲が現れる。そして現れた二門の大砲の砲門に光が集まり、その異様な光景にルフィ達とモニカが目を見開く。

 

「おいおい……! 一体何が起こるんだ?」

 

「ビームだ……! 絶対ビームだ……!」

 

「んなわけねぇだろ、このクソゴム!」

 

 ゾロの言葉にルフィが緊張した表情で言い、それにサンジがツッコミをいれるのだが……。

 

「ルフィ、正解」

 

『『えっ!?』』

 

 ディボスが言うとルフィ達、そしてモニカが驚いた顔となり、そうしている間にシールス号の大砲が発射された。

 

「シールス号、『城壁破壊砲アレウス・レイ』発射!」

 

 シールス号の大砲から放たれた二本の光線は、海賊船の船体をあっさりと貫き、そのはるか後方で大爆発を起こした。そして船体を大きくえぐられた海賊船は海に沈み始め、もはや戦闘は不可能だろう。

 

 城壁破壊砲アレウス・レイ。

 

 ディボスが持つ古代兵器、兵器製造戦艦アーレースが製造した光学兵器。内部に取り込んだ光のエネルギーを、対象を爆発させる数千度の熱線に変えて放ち、乱発は出来ないがその威力は一度で戦艦を沈めることが可能。

 

 ディボス達に盗まれた後、改造をされたシールスはこのアレウス・レイが十門以上備え付けられていた。

 

『『ビームじゃん! カッコい〜〜!』』

 

「だろ!? 見たか、シールス号の大砲の威力!」

 

 ルフィとウソップがアレウス・レイが発射された光景を見て瞳を輝かせ、ディボスもまたドヤ顔となって二人にサムズアップをする。

 

「マジでビームを撃ちやがった……!?」

 

「ビームを撃つ潜水艦って、どこの夢の国から来た船だよ?」

 

 ゾロとサンジも驚いた表情をしながらも、その目の奥に興味の光を宿していた。しかし……。

 

『『……………』』

 

 ナミにアマゾース姉妹、そしてモニカは全く興味を覚えないのか、無表情ではしゃいでいるディボスとルフィ達を見つめていた。

 

 ……この男性陣と女性陣の温度差は一体何なのであろうか?

 

「まさかこんな序盤からビーム兵器が出てくるだなんて……。これって原作崩壊が凄いことになるんじゃないの? まあ、でも……」

 

 モニカは誰にも聞かれない小声で呟いてから、シールス号が来るまで海賊船に追われていた小舟に視線を向けた。

 

「まずはアッチを何とかしないとね」

 

 

 

 ディボスが海賊船を沈めてから十数分後。海賊船に追われていたと小舟を保護したディボス達は、海賊船と戦った海域から少し離れた所へ来ていた。

 

「あ、ありがとう。助かったよ」

 

 海賊船に追われていた小舟、それに乗っていたのは一人の少年で、少年は助けてもらった礼を言うと自己紹介をする。

 

「俺はアキースっていうんだ。この近くで海賊用の罠を仕掛け……じゃなくて、用事で来ていたらさっきのトランプ海賊団に襲われていたんだ」

 

「トランプ海賊団? なんだそりゃ?」

 

 小舟に乗っていた少年アキースの言葉にルフィが首を傾げる。

 

「知らないのか? この辺りの海で暴れている凶悪な海賊さ。そいつらは強いし数も多くて海軍でも全く敵わないんだ」

 

「ああっ。多分そいつらのせいだわ」

 

 アキースがトランプ海賊団について説明をすると、ナミが納得したように手を叩いた。

 

「どういうことだ?」

 

「私達が会ったあの島、メリー号が向かった方角へ誰も船を出してくれなかったのよ。恐らくそのトランプ海賊団を恐れていたのね。ディボス達に会えなかったらどうしようもなかったわ」

 

 ナミがディボスに、彼と再会するまでリゾート地があった島で海に出るための船を探していたことを説明をすると、そこにルフィも話に加わってきた。

 

「まあ、その時はあのアヒルの船に乗れば良かったけどな。ハハハッ!」

 

「……それって、あの二人乗りの足漕ぎボートのこと? イヤよ、あんなので海に出るなんて」

 

 笑いながら言うルフィにナミは半眼となって返事をする。

 

 確かに二人乗りの足漕ぎボートに四人で乗って海に出るなど、冗談を通り越して自殺行為しかないだろう。……しかしルフィ達ならいよいよとなれば実際にやりそうなイヤな予感がディボスにはあった。


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