突然なんでもできるようになった結果wwwww 作:geeeee
興奮が収まらない。
心臓がバクバクと鳴っている。
同士たちも目をギラつかせて呼吸を荒げている。
落ち着こうにも落ち着けないので能力で感情を整えよう。
興奮を消せと念じる。
頭は落ち着かない。興奮に隠れていた恐怖や怒り、不快感がじんわりと染み渡ってゆく。
だが確かに興奮は消えた。
こんなトラウマ映像大量に見せつけられるとは思わなかった。
やはり異民族は悪だ。
周囲を見渡すと今もまた起き上がった同士がいた。
彼もまた呼吸を荒げている。
部屋の奥では激臭さんが足を組んで俺たちのことを眺めている。
しばらくして部屋にいる全員が起き上がってから、激臭さんが立ち上がった。
「あなた達は特殊部隊諜報部門56期の訓練生となるわ。我が諜報部隊では異民族が蔓延る敵対地域での諜報活動が主よ。諜報には名誉も称賛もないわ。
今までの人間関係をすべて切り捨て、血を流してでも目的を遂行し、命をかけてティルスに忠誠を誓いなさい」
えぇ...そんなの聞いてないんだが。
周囲から雄叫びが上がったので見てみると、みんな顔を歪めていた。
激臭で強制顔芸状態だ。
諜報って大変そうだな。
確かに異民族が敵であるということを改めて認識できたが、やりがいがなさそうな仕事を好き好んでやろうと思えない。
あとでこっそり別部隊への異動願いを出せないだろうか。
「早速、訓練を受けてもらうわ。付いてきなさい」
そう言って激臭さんは部屋を出ていった。
説明少なすぎだろ。なんだよいきなり訓練って。今度は爪とか剥がれて痛い思いするんだろ。嫌なんだが。
そう心のなかで思っても、同士たちが激臭さんについていくから一緒になってついていくことになってしまった。
まわりに合わせていく性格をどうにかしたいものだ。
廊下の景色はまた違った。いかにもラボの廊下みたいな感じでそれなりの人が行き交っている。
俺たちは激臭さんについて1列に並んで歩いてるからか、すれ違うおっさんに家畜部隊と鼻で笑われた。
自分が歩いている速度に比べて景色が高速で動いている。
景色が動いているのだろうか。それとも自分の速度が上乗せされているのだろうか。
違和感のある廊下を少し歩いて到着したのか先頭の人がぞろぞろと部屋に入っていく。
部屋はかなり広く大量の椅子と最近流行りのVRヘッドセットが置いてあった。
肉体に影響があるやつじゃなくて安心した。
最後尾まで部屋に入りきったので激臭さんが声を上げた。
「椅子の上にあるヘッドセットを着けて座りなさい」
隣の奴が顔をしかめている。
視点を飛ばしてみると、激臭さんと俺以外のすべての人が顔を歪めていた。
どうしようか、俺も便乗しようか。だけど俺まで臭いアピールしたら激臭さんがかわいそうだよな。
人を傷つけることはあまりしたくないので、平気な顔のままでいることにする。
前のやつが奥の席に座ってヘッドセットを着けていく。
近い方から座っていくのかと思ったのに統率がとれていてびっくりした。
実はこいつら既にある程度訓練受けてるんじゃないかとすら思える。
俺も椅子に座って着けてみる。
着けた途端に体の感覚が敏感になって、ヘッドセットを着けていることさえ感じられなくなった。
景色は真っ暗な状態から少しずつ明るくなっている。
本当に仮想世界に入ってしまったみたいで技術の進歩に感心する。
手の甲を爪を立てて軽くつまんでみると想像以上に痛かった。
痛覚が異常なまでに敏感になっている。
シュコシュコが捗りそうだ。
座っているはずなのに立っている感覚があるし、事実立っている。
景色は部屋と同じなのに椅子とヘッドセットはどこにもない。
同士たちもどこにもいない。激臭さんもいない。
この部屋には俺しかいないのか。
よく見ると床には時計が描かれている。
そして今も針が動いている。オシャレだ。
今の時間はこの時計によると3時17分。
本当にあっているのだろうか。
仮想世界で能力を使えるかどうかという実験も兼ねて試してみる。
普通に使えた。能力によると半日遅れているようだ。
わけがわからない。一体何を訓練するというのか。
することがなくて時計の上で体育座りをしてぼんやりしていると、床が湿り始めたことに気づいた。
これ段々水没し始めて溺れるやつだ。
少しずつ水の増加量が増えていっている。
早く部屋を出よう。
そう思って部屋を出ようとしても開かない。
よく見るとすぐ側に数字キーがある。
脱出ゲームかよ。
何桁の数字を打てばいいのかもわからない。
高難易度くさいな。
悠長にしている時間はない。早くしないと溺れてしまいそうだし、まず水圧でドアが開かなくなる。
時計か?今の時間は3時25分なので325と入力する。
数字キーが赤く光ってボタンが押せなくなった。
数秒したら押せるようになったがこれはまずい。
まさかのクールタイム。
あんまり間違えすぎるとクールタイムが伸びまくって、一生かけてもボタンが押せなくなりそうだ。
落ち着け。能力を使えばいいじゃないか。
このドアを開けるには何をどうすればいい?
開ける方法はないと答えてきた。
どうすんのこれ。