そのライブは6時から始まり、終わりが8時だった。
開始からボルテージが上がっていたが、Roseliaが出てくるラスト前にいたっては最大値まで上がっていた。
「ねぇ、恋……」
「なぁに? おにーさん?」
「俺たちもさ、また近いうちにライブをしよう。他のバンドも誘ってさ……」
「そうだね! そして僕たちももっともっ〜と会場を盛り上げようよ! 目標を会場全体にしてさ!」
「あぁ……そうだな!」
そんなことを話しているうちに、Roseliaの1つ前のメンバーは演奏を終えて、ステージを離れていた。
そして、空席になったステージは暗転し、ゴソゴソと大小様々な5人組がステージに次の演奏のセッティングをおこなっていた。
そして、セッティングを終えたのか、暗転したステージ上から離れ、また戻ってくる。
その時には、自分たちが担当する楽器を持ち、ステージ上に立つ。
暗転していたステージに光が満ちる……
「こんにちは、Roseliaです」
その声から始まりを告げていた。
その声が耳に入り、会場全体が盛り上がりを見せる。
その声は中央にたつ、銀髪の女性から放たれていた。
その女性は周りを見渡し、バンドメンバーに目配りする。
茶髪のポニーテールの雰囲気の柔らかいベース。紫髪でツインテールでどこまでも元気に溢れているドラム。黒髪で、全体を支える様な落ち着きを持つキーボード。そして、1つ心の殻を壊し成長を告げたギター。
メンバーたちの雰囲気を感じられたのはこのくらいだろう。
曲順としては、【BLACKSHOUT】【残酷な天使なテーゼ】そして、新曲の【Determination Symphony】
その曲は、この前の心境を表現しているのだろう。
ずっとずっ〜と、妹の才能によって悩み……悩み悩み抜いて限界を迎えて雨空の中飛び出した……その苦悩を感じられる曲だった。いつか貴方と隣会えるように……約束を違えない様に……世界で大切な人だから……
「なんだ……笑顔、良い感じじゃないか……なぁ? 恋……」
「うん……っ! うんっ…………!」
そういいながら恋は涙をボロボロ流しながら聞いて、ブレードを振っていた。
恋の心に繋いでいた鎖もまた、砕けたようだった。
Roseliaの曲は全て終え、会場の熱が高まりきって、完璧に燃焼していた。
メンバーたちは退出するが、紗夜は少し目線をコチラともう一方に向け、立ち去る。
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「恋、そろそろ泣き止みなって……観客だった人たちが見てるよ?」
「だっでぇ……だっでぇ"……!!」
「姉さんの関係でずっと悩んでたのは知ってたけど、落ち着きなさい!」
「あれ〜? どうしたのかな〜?」
そんなことをしていると恋とは別方向か、声がかけられる。
その声はRoseliaのベースだろう。
「いえ、貴方たちの演奏を聞いて、号泣しているだけですよ? Roseliaのベースさん?」
「あ、あはは〜そんなに感動してくれるなんて、なんだか嬉しいなっ! あ、アタシ……」
「知ってますよ? 今井リサさん?」
「なんだ〜知ってたんじゃん〜」
「流石に聞きに行くのならメンバーを知る必要あるでしょう。私は、初谷真澄です」
「初谷真澄……最近聞いたような……?」
「きっと、メンバーから聞いたんでしょう」
「そういえば、紗夜が言ってたような……あ! 真澄さん、演奏どうでした?」
「えぇ、1人1人……良い音をしていました。良かったと思います。すごく楽しめましたよ」
「そうでずよね……」
「ありがと〜あっ、ハンカチいる?」
「いえ、大丈夫ですよ。お気になさらず」
「そう? でもずっと泣いてると……」
「ハンカチ3枚目ですから、使い続けて」
「それ泣きすぎじゃないっ!?」
「いつものことですよ、この子感動するとまるで、身体中の水分全て流し切ってしまうんじゃないかってぐらい、泣いてしまいますから」
「え……えっと……それ大丈夫なの?」
「いつものことですよ」
「あ、あはは……」
「それに、今日来て良かったと思います。この子も成長しました。貴方たちのおかげで……」
「この子って……紗夜と日菜の妹かな?」
「恋は男性です。可愛いけどね」
「へぇー? こんなに可愛い子がね〜」
「見た目で全部騙されちゃいけないですよ? そのせいで先入観が邪魔して大切なことにも大事な事にも気づかないですからね」
「なるほどね〜」
「おにーさん、そろそろ行きましょう?」
「あぁ、そうだね……っと……」
話に夢中になっていたためか、Roseliaのメンバーと日菜たちが後ろに立っていた。
紗夜は周りを見渡していたが、少ししてため息を吐く。
銀髪の女性は、何か考え事をしていた。
紫髪の小さな子は黒髪の女性と話している。
日菜は、一緒に来ていたのであろう、千聖と彩と話をしていた。
「リサさん、そろそろメンバーの人たちと予定があるのでは? だから待ってるのでは?」
「あっ! そうそうこの後ライブの反省会なんだ〜キミたちも来る?」
「そうですね……恋。どうしますか?」
「ぼ、僕は……」
そんな話をしていると後ろから彩たちと誰かの話し声が聞こえてきた。
「えっと、パスパレの丸山さんですよね? あっ! 白鷺さんと氷川さんも!」
「え? えっと……」
「彩ちゃん……すいません。今プライベートなので申し訳ないのですが……」
「そ、そんなことより! はやく逃げてください! 丸山さんを探してる怖い男の人たちがいるんですよ!」
「えっ?」
そうしていると、彩たちに話しかけてきた弱々しい男性とは別に近づく男性たち
その容姿は、誰から見ても普通じゃなさそうな怖い姿であった。
「すいません、丸山彩さんですね?」
「は……ふぁい!?」
「すまないがこちらに来てもらおうか?」
その声を聞いた真澄は恋に話しかける
「そういえば恋……このあとお姉さんたちに話しがあったのでは?」
「え? ……!? そ、そうだね。そしたら一緒にいってもいいですか? リサさん!」
「う、うん。大丈夫だよ」
「そうしたら早めにいきましょう。千聖さんや、日菜さん。彩……さんも一緒に連れて」
「そうですね!」
そういうと、真澄と恋は彩たちのところに向かう。
まだ、男性たちと話しをしているところに割り込む。
「すいませんが、これからRoseliaと私達、千聖さんたちと話し合いなのでそれでは」
そうして、恋に日菜を任せて自分は千聖と彩と手を繋ぐ。
そして、この場を離れようとRoseliaと合流しようとするが、男性たちが止めにはいる。
「おっと、そういうわけにはいかないぜ? その子はこっちに来てもらわないといけないんでね」
「そういうことですか……なら!」
「恋! 合流先は分かってるね?」
「う、うん! 大丈夫だよ!」
「それじゃ!!」
「………………」
「………………」
「…………待てぇ!! おいコラァァ!!!」
その言葉を発すると同時に恋と真澄は別方向に走り出す。
弱々しい男性も一緒に走り出し、真澄たちについていく。
怖い面相をした人たちは唖然としていたが、少しして状況を理解したのか、走り去る真澄たちを追いかける。
「さて、どうするかな……」
「ど、ど、どうしよ! 千聖ちゃん!」
「落ち着いて彩ちゃん! とりあえず警察に……」
「交番は反対側だよ、だったら逃げ回って撒いたほうがまだ安全だよ。とりあえずこの手、離さずにね? 2人とも」
「わ、分かりました!」
「でも、これ長くは続かないわよ?」
「たしかにね。とりあえず千聖さん。貴方にこの手紙を渡しとくね? あとで確認してちょうだい」
「えぇ、でも貴方なんで……」
「お静かに、その訳も手紙に書いてあります」
「えっと……そういえば貴方は……?」
「彩ちゃん、この人はね……」
「真澄と、今は呼んでください」
「えっと……真澄ちゃん!」
「呼び捨てでお願いします。またはさん付けで」
真澄ちゃんって言われた瞬間千聖は顔を逸らし、笑いを堪えていた。
その事に気付くと即座に訂正を求める真澄
そんなことをしているうちにほんの少し片腕に力が加わる。その腕は千聖と繋いでいたのだ。
「ご、ごめんなさい。あまり運動を好まなくて……」
「わ、わたしも……」
そう、走り続けていたためかスタミナが切れ始めていた。
やはり、バンドをしているためいつもよりは体力は持つが、走り続けるとすぐに疲れてしまうのだろう。
「いえ、このことは想定内ですよ。あと少し持つことは可能ですか?」
「ほんの少しなら……だ、大丈……ぶよ…………」
本当に長くは持たないだろう。だったら、もともとの作戦を変更すればいいのだ。この時、認識阻害する魔法【インビジブルカーテン】を使用する。
この魔法は触れている相手を意識外に置くことにより、認識しにくくなる魔法である。そして、小声で千聖ち話しかける。
「なら千聖さん、このあとこれの指示に従ってください。いいですね?」
「で、でもこの後って……」
「大丈夫、安心して……キミたちは見つからない。ゆっくりでいい。呼吸を落ち着かせて時間通りにしてくれれば」
「…………分かったわ」
「千聖さん、少し手を離すので彩の手を握って……」
「…………」コクリ
そして、千聖と繋がれた右手を離し手紙を渡す、左手で繋がれた彩を千聖に近づける。
千聖は空いている彩の左手を掴み取る。
そのことを確認すると、ポケットからナニカが包まれたものを取り出し地面に叩きつける。ボフンッと音がするとあたりに白い煙が充満する。
「ブラインドスモーク」ボソボソッ
煙玉だけでなく、魔法も使い煙を作り上げる。近くにいた、千聖や彩の姿はもう目視できない。それを確認するともう一つの魔法を唱える。
「…………」ボソボソッ
そして、弱々しい男性の居場所を見た自分は彩と手を離し、男性の手を取り走り出す。
「こちらです! ついてきてください!」
「えっ! あ、彩ちゃん!?」
千聖にとって聞き覚えがあり、彩にとっては毎日……いや毎回聞いている声が耳に入ってくる。その事に困惑する。何故なら……
少し煙も晴れて、周りを確認できるようになる。その先には、【もう一人の丸山彩】と手を繋ぎ、走り去っていく弱々しい男性の姿とそれを追いかける男性たち
「な、なんで……? 彩ちゃんはここに……」
「わたしが、もう一人……?」
「そうよね? てことは、変装? でもこんなにはやくできるのかしら?」
訳もわからず、つい手を握りしめると手の中からクシャッと音がなる。
手紙の存在を思い出すと、手紙を開き読み出す。
「彩ちゃん、とりあえずこの手紙の指示に従いましょう」
「その手紙って、真澄さんからのだよね?」
「ええ。何故だか分からないけど、私たちは今、安全に行動ができるようになったわ」
「う、うん。そうだね!」
そして、手紙の内容を見始めようとする二人。すると鍵が一つ音を立てて落ちる。それを拾い、内容を確認すると二つの指示が書かれているだけであった。
『1つ.鍵は彩さんがしっかり持ち、二人ともRoseliaと恋たちとファミレスで合流すること。きっと使う 事になるでしょう
2つ.千聖さん、あなたは彩さんを送ってください』
「……行きましょう彩ちゃん」
「で、でも……」
「真澄さんにもしっかり作戦もあるみたいだし、恋君……だったかしら? その子も信じていたのよ? それに日菜ちゃんも心配だし……」
「そう……だね…………いこう!」
二人は無事、ファミレスに着くことができ、彩たちはRoseliaと恋たちと食事をとることになる。
だが、途中匿名で千聖にメールが届く。それはGPS情報と一言。『1人でこの場所へ』とだけ……
先に食事を終えた千聖はみんなと別れ、指定されていた場所へ向かう。
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千聖が目的地である廃工場に着く
中に入ると中央周りに気絶した怖い男性たちとその中央に立つ二人の男性。
二つは重なるようなくらい近くに立っているが、片方は驚き、片方は笑みを浮かべる。
その足下には血溜まりができていた。