まりなをバイクでサークルに送り届け、そのまま花咲川女子学園に向かう真澄。
学園につくと、門の前に警備員が立っていた。
警備員は自分に気づくと近づき話かけてきた。
「あー、君。ここに何しにきたの?」
「すいません、こちらに紗夜……氷川紗夜という方がいるのですが。呼んでもらってもよろしいですか? 自分、初谷真澄といいます」
「んー、ちょっと待ってね。とりあえず君のこと聞いて……ん?」
「?」
「少し聞いていいかな? 前にNFO社の時会わなかった?」
「NFO社の時……? あー!! あの時の警備員さんですか!」
「やっぱりね……。君のことは社長から聞いてるよ。それでここに派遣されてきたんだ。ここの理事長、社長とめっちゃ仲良いらしくってね」
「なるほど……。話切ってしまうのですが、紗夜に連絡をお願いできますか?」
「はい、大丈夫ですよ。すぐお伝えします」
そう言って警備員は自分から離れ、門の所に戻ると受話器をとり、何処かに連絡を入れていた。
少し待っていると、此方に向かい走ってきていた。その手には何やら札を持っていた。
「お待たせ。すぐ案内がくるからこれを首にかけてここで待っていてくれるかい?」
「あ、ありがとうございます。それじゃ、ここで待ってますね」
「いいよ。君は我が社の英雄だからね!」
「……英雄……ね……」ボソッ
「ん? どうかした?」
「いえ、此方の問題なので。案内も来たっぽいので、そろそろ……」
「うん、あ、札を返すときは一度ここにくるか、理事長に聞いてね?」
「あ、分かりました」
そうすると校舎の方からパタパタッと急いで向かってくる女性がいた。
「どうも、真澄さん……でよろしかったですよね?」
「ええ、初谷真澄です。『はじめまして』」
「ええ、『はじめまして』私はここ、花咲川で理事長をしてます。華崎霞といいます。アナタのことはあの人からも聞いてますよ」
「なるほどね。それじゃ案内お願いします」
「ええ、氷川さんにも連絡はいれているから安心してね。それにしても……」
「ん?」
「……いいえ、なんでもないわ。ついてきて」
「? ……ええ」
そうして理事長に連れられ、花咲川に入っていく真澄。
教師専用の入り口を通って、校舎に入っていく。
向かった先は理事長室であったが、迷わず二人とも入っていき、理事長は正面にある机をまわり、椅子に座った。
「さて、それで? ここにきたのは紗夜ちゃんに会うだけなの?」
「んー。まぁ、さっきまではそうだったな。今は違うけど」
「そう……なら、これ渡しておくわ」
そうすると机の中から一つの札を出し、此方に向けて投げてきた。
────ー思いっきり勢いよく────ー
その札は高速回転しながら、此方に向かってくるが真澄はそれをヒラリとかわす……
「あぶなっ!! いきなり投げてくるなよ!」
「なにも言わずに来たのが悪いわよ。アンタ。名前も変えてることから自宅にも帰ってないんでしょ?」
「正解……まぁ、仕方がないことだからな。死んだことにされてるし。今出たとしても『はい、じゃあ元に戻しましょう』って訳にもいかないだろう?」
「アンタ……はぁ。まぁいいわ。とりあえず紗夜ちゃんに会うなら風紀委員室に向かいなさい。これ地図だから」
そう言って机の上にポンっと地図を出された。
その地図を貰い、部屋を出ようとすると……
「私が今、ここで理事長になっているのにも理由はあるわ。まぁ祖母から代替わりというのもあるけどね」
理事長が語り始める
「アンタも知っている通り、私は子どもが好きよ? でもね、小学生とか中学生より高校生の子どもが好きなの。だって、小学生や中学生はね夢っていっても【仮面ライダーになりたい】とか【アニメのキャラと結婚したい】とか非現実なものばっかじゃない? でもね、高校生ってのは現実も見ないといけないの。私の学校はね、その夢が何なのかを面接で聞いているわ。まぁ、それが合否に関わってるとは言わないけど、でもね?」
そのいつにも増して真剣さが表れる様子をみて、しっかり聞き逃すことのないよう、聞く体制を整える。
「私が心惹かれるような……そんな夢を語ってくれる子たちもいるの。【ブシドーを目指したい】【ランドをつくりたい】とかね。でも、その中に輝くものがあったの。【キラキラドキドキしたい】っていういつまでも忘れない輝くナニカを持ってる子、【アイドルを目指したい】って思いながら、もう一つの本心を隠しながら進んでいく子……。私はそんな子たちをね支えてあげたいと思って理事長になったの」
その瞳は真澄の目を……心の中を通し見るようにじっと見つめていた。
「アンタにも今、目標はあるんでしょ? でも、その方法はほぼ全てを傷つけることになるわよ? その覚悟はあるの?」
「覚悟ならとっくにできてるよ。暴走した車のようにブレーキは壊れてる。もう止まれないんだよ」
そう言って、理事長室から出て行く。
扉はだんだんと閉まっていき、パタンと完璧に閉まったあと理事長はため息を吐く。
「はぁ……。別に暴走してるわけではないでしょ……人に育てられて、飛び方を忘れた鳥のようにアナタはブレーキの押し方を忘れて止まれなくなってるだけなのに……なんのために仲間たちがいると思っているのよっ……!」
理事長室の中では悔しがる声と涙が溢れ落ちる音が響きわたる。
────ー風紀委員室前────ー
とりあえずここまで来たけど、紗夜って風紀委員なんだな……まぁたしかに真面目さもあるし適任なんだろう。
ひとまずノックからして反応を待つとするか。
「すいません」コンコン
「はぁ〜い。どうぞ〜」
「ここに紗夜……氷川紗夜さんがいると聞いたのですが、いらっしゃいますか?」
「紗夜ちゃん? ちょっと待ってね……あっ君の名前は?」ガチャッ
「あぁ、初谷真澄です。どうも」
「あら? どうも〜風紀委員の華崎雫です。紗夜ちゃんなら今は見回り中だからこの中で待っててね〜」
「あぁ、すいません」
そう言われ、中に入るといくつもの机があり、2つの机には書類がいくつか溜まっていた。その片方は書類が少しと金属製の箱がのっており、もう片方は山がいくつか溜まっていた。
「……仕事中だったんですね。すいません忙しいときに」
「いいのよ、話し相手もいないと書類も進まないし。それに気になったこともあるし……ね?」
書類の山がある方の机に向かい話してくると、その書類を捌きながら続きを話していく。
「それにしても……紗夜ちゃんにこんな男性がいるなんて……!! もしかして……彼氏?」
「いえいえ、自分に紗夜は合いませんよ」
「そんなこといって〜、それで! どこで紗夜ちゃんと出会ったの?」
「出会い……か。んー、たしか。カフェにいて、それで帰ろうとしたらぶつかってきて、何も言わずに走り去ったんだよ。で、偶々紗夜の弟と面識があってな? 姉がいることを聞いていて、外見がそれに合ってたからこの人が紗夜なんだなって……まぁこのくらいかな」
「へ〜、他にはないの〜?」ニヤニヤ
「あとは紗夜自身に聞いてね」
そんな話をしていると扉からノック音が聞こえる。
「あっ、帰ってきたかな? 初谷くん、開けてもらっていいかな?」
「え? まぁいいですけど……」
そうして、扉の前に立ち、扉を開けようとしたその時……
扉の側から懐かしい感じを体に浴び、扉から離れると扉が二つ折りになるように山側が此方に飛んできた。
それは空気を切り、速度にのせ此方を貫こうとする勢いであった。
そのことに気づくと急いでそこから回避しようとするが、扉の飛ぶ先をみると華崎雫にあたるような軌道で飛んでいた。
腰に下げていた鞭を取り出し、壊れた扉に向かい振りかざす。
すると鞭は破片に巻きつき、絡め取られる。
鞭の反対の手で、扉の破片を乗せると……今は無き扉の先から華崎雫と似たような女性と氷川紗夜がいた。
紗夜は女性のしたことに驚き、女性は蹴り破いたであろう足を戻すとズカズカと部屋に入ってくる。
「おい、アンタ。ここになんかようか? ここ男性厳禁なんだが」
「もー、零ちゃんったら……また扉壊して〜! また直さないといけないのよっ!」
「黙ってて、姉さん。それで? アンタ何者? さっさと話してくれない?」
「……はぁ……」
どうやらまだ連絡は届けられそうにないようだ……