今回は、若干シリアスがちらつくかもしれません。日常系は書くのが大変ですね、やはり。因みに、まだ日常編自体は終わりませんので、悪しからず。
では、本編を開始します。
[帰り道]
「ふむ……全員の基礎はあがってきたな。後は……」
…今は、パスパレの指導が終わり、帰路についているところだ。俺が指導を始めてから、各バンドはかなり成長していた。俺としても、結果が出るのは嬉しい。
「……そろそろ本当に休みたいな……」
ただ、明日に仕事が控えている身としては、自分で気付くくらい働きづめな身体を休めたいところだ。
「……久々に、行ってみるか」
…家に連絡を入れ、俺は目的地に向かう事にした。
[羽沢珈琲店]
最近よく来るようになった店の扉を開ける。紹介してくれた巴には感謝だな。
「いらっしゃいませー!」
「……ふむ、やはり良い雰囲気だ」
「あっ!刄さん!」
「本当ですか!?つぐみさん!」
「……羽沢と……若宮?何故ここに?」
…イヴがどうしてここにいる?それも、ここの制服のようなものを着ているが…?
「私、ここでバイトをしてるんです!」
「……指導の後にバイトか。あまり無理をするなよ」
「はい!ありがとうございます!」
「……あの、刄さん」
「……何だ?」
…いつも以上に真剣な表情を浮かべているな。……イヴは接客に戻ったか。
「相談したいことがあるんです……」
「……マスターから休憩を貰ってこい、話は聞いてやる」
「はい!」
…キーボードを教えるのは疲れてるから勘弁だが、何となく、そんな感じじゃない気がする。まぁ、大人の勘みたいなものだが。
「で?相談とは何だ?」
「……実は…」
…言うのに覚悟でもいることなのか?……だとしたら、結構重大な悩みなのか?
「…次のライブに向けて練習してるんですけど……私だけ上手くいかなくて…………」
「……凹んでる、と?」
「……はい」
「…………はぁ」
「……?」
…………はぁ。もっと面倒な事だとは思わなかった。だから、どうしてそんなに
「……で?」
「……え?」
「……それだけか?
「…っ!」
「……じゃあ1つ聞くが、
「楽……しむ…」
「……ついてこい、お前に案内する場所がある」
「……」
俺はアイツに連絡を入れる。……よし、許可はとれたな。……行くとしよう。
[CiRCLE 3番スタジオ]
「……CiRCLE?」
「あっ!つぐだ!」
「……香澄ちゃん?」
「……急に申し訳ない、戸山………と、誰だ?」
「あっちゃんだよ!私の妹!」
「初めまして、戸山 明日香(とやま あすか)です。宜しくお願いします」
「……白金 刄だ、宜しく頼む。……名前で呼んだ方が良いか」
…どっちかと言えば、香澄の方が妹な感じがするな。……あの姉を持つと、妹はしっかり者になるのか。納得。…とはいえ、1つ気になるな。
「……香澄、何故妹を連れてきた?別に構わんが」
「連れて行きたかったから!」
「……悪い、明日香」
「い、いえ……」
「…あの……刄さん?そろそろ説明してくれませんか?」
…今回、香澄を呼んだのには理由がある。羽沢のそれを解決するキッカケくらいにはなると思うが……どうだろうか。
「……羽沢、お前と香澄には…………
2人で演奏して貰う」
「……どうして2人で、なんですか?」
「……楽しむ事を忘れた演奏に、上達は見込めない。だから、香澄と楽しめ」
「良くわからないけど、つぐと演奏すれば良いの?」
「……そうだ、頼めるか?」
「うん!宜しくね!つぐ!」
「う、うん!」
「あの」
「……何だ?」
2人が演奏し始めると、明日香が尋ねてくる。随分と及び腰だな。…俺が怖い、とかじゃないと良いのだが。
「どうしてこんな方法で?他にもあるんじゃないですか?」
「……ない訳じゃない。だがな、それが有効なのは
「?」
「バンドをやっている人の悩みは、一般的な悩みとは少し違う。一般的な方法をとっても、いい結果になる方が少ない。」
…バンドをやっている人の側に立った方法は極めて少ない。それに、そういうのは自分で掴んで貰いたい。その方が後が楽になる。
「……バントの悩みに一番効果的なのは"演奏する事"だ」
「……そんなんですか?」
「そうだ。バンドマンが悩んだ時は、ひたすら演奏するのが良い。バンドマン以上に
「……動ける?」
「うむ。バンドマンは、音楽の事となると行動力が上がる。香澄がいい例だろう」
あいつは、己の探し物を見つけるためにバンドという選択肢を選んだ。なら、あいつには
「音楽は、音楽を始めた動機を知らしめるものでもある。……本人には一層だ。」
「……じゃあ、お姉ちゃんに頼んだのは……?」
「……香澄には"周りを自分と同じ気持ちに引き込む"力がある。あいつのライブに一度行けばわかるが、自然と楽しくなる」
「そうなんですか……お姉ちゃんが…」
「……つぐみには今一度"楽しい"を思い出してもらう。思い出したら、後は羽沢次第だ」
その後に関しては、俺はどうとも言えん。俺は道を教えるだけ。歩くのは、本人にしか出来ないからな。
「なんだか、音楽の道に携わってた人みたいな意見ですね」
「……そうか」
「……どうだ。何か思った事はあったか?」
「…………」
…疲れているのか、少し息が荒いな。さて、言い反応が返ってくると良いのだが。
「……楽し…かった」
「うん!私も!」
「そう、それだ」
「えっ?」
…やはり、呆気にとられた顔をしている。悩んでいる時は、考えが狭まるからな。というより、自分で言っておきながら言うのもあれだが、高校生には少し難しかったか。
「……いいか?演奏で大事なのは、"楽しさ"だ。続けるにも、上達するにも、楽しまなければ出来ない事だ」
「楽しさ……」
「それを思い出すには、俺より香澄が適任だった。だから香澄を連れてきた」
「そういえば、どうして私を連れてきたんですか?」
「……お前には、周りを自分と同じ気持ちに引き込む力がある。……1つ聞こう。演奏している時、香澄は楽しいか?」
「はい!とっても楽しいです!」
…そうだろうな。こんなに満面の笑みを浮かべているからな。今の演奏も、相当楽しんでいたのだろう。
「……羽沢、お前は悩んでいた故に楽しむ事を忘れていた。今回俺は、改めて楽しさの重要性をお前に教えた。……どうだ?解決の目処はついたか?」
「……はい!何か掴めた気がします!ありがとうございました!」
「……ここからは羽沢、お前の意志で進め。俺はあくまで道を教えるだけだ。…良いキーボーディストになることを祈っている。燐子がいるから、大変だとは思うがな」
「はい!!」
「凄い……もう解決しちゃった」
「凄いでしょ!刄さんは凄い人なんだ!演奏も凄く上手いし!」
「……そうなんだ」
…にしてもあの人、
ということで、第23話が終わりました。
意外な組み合わせでしたね。結構見切り発車でしたが、今回の日常回はうまい感じに話を進めれたかなと思っています。次回は、刄と燐子の両親がいない中、とある2バンドが出会う。そこで明かされる衝撃の事実とは?
次回『その姓は夜ノ神』