幸せになって欲しくて   作:Cross Alcanna

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どうも、Cross Alcannaです。

さて、物語も、とうとう終わりになる雰囲気になってきています。今回と次回は、とても見応えがある話になるかと思います。期待して見て下さい。

では、本編を開始します。



【本編】想いが交差する時

[花咲川病院 集中治療室前]

 

 

『…………』

 

 

「……」

 

 

静けさが支配するこの空間には、刄の無事を願う者が6人。涙を流す者もいれば、険しい顔をする者もいる。しかし、その空気は今終わる。

 

 

「椿!」

 

 

「…!轍か!」

 

 

「私と信也も来ましたよ、椿さん」

 

 

「華穂も来てくれたのか!」

 

 

「……信也君も、来てくれたんだね」

 

 

「刄さんには、お世話になったから」

 

 

月峰の一家がRoseliaと椿と合流を果たす。しかし、彼らも焦っている(パニクっている)のだ。が、それ以上に焦っている者が1人。

 

 

「椿!刄は無事なの!?」

 

 

『まりなさん!?』

 

 

「えぇ!?Roseliaの皆が!?どういう事!?」

 

 

「落ち着け!ここは病院だ!事情は今から話す!」

 

 

そうして、月峰家(信也を除く)とまりなへ、椿は事の顛末を説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……じゃあ全部終わったって事なのか?刄の一件は」

 

 

「そうなるね。彰は少なからず死刑は免れないだろうし」

 

 

「……っ」

 

 

「あら、まりなちゃん……大丈夫かしら?」

 

 

「……うん、少し力が抜けて…」

 

 

「……呼んでおいて申し訳ないけど、少し休んだ方が良い。刄の手術はもう少しかかると思うから」

 

 

「……そんなに、重症なのか?」

 

 

「……心臓にナイフが刺さっていた。助かるかどうか……私もわからないんだ」

 

 

「……刄さんは、高校生の時から無理をする方でしたからね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

父さん達が、昔のバンド仲間と話をしている。……刄さんの事、知ってたんだ。

 

 

「信也君、お兄ちゃんについて……話したい事があるの」

 

 

「……わかった。頼む」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…予想していたよりも、とても悲惨な話だった。刄さん、どうりで妙に大人らしかったんだ。

 

 

「燐子は……大丈夫なの?」

 

 

「うん……助かるって、信じてるから」

 

 

「……そうだね、きっと助かるよ」

 

 

刄さん……皆、貴方を待ってますよ!どうか……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一同『!!』

 

 

治療室の扉が開く。そこから堤 丈助(つつみじょうすけ)と書かれた名札を首にかけた1人の医師が現れる。

 

 

「刄は!?無事なんですか!?」

 

 

「……手術は成功しました。しかし、目を覚ます気配がありません」

 

 

「……まだ…生きているという事ですか?」

 

 

「はい、生きてはいます。ただ、目を覚ますかどうかは、本人次第です」

 

 

『…………』

 

 

沈黙が、再びこの空間を支配する。……すると、病室に運ばれるであろう1つのベッドが横切った。

 

 

「!刄っ!」

 

 

「ま、まりな!?」

 

 

途端に、まりなは走り出した。ここが病院だという事を忘れて。

 

 

「すみません、堤さん!まりなを追いかけます!」

 

 

「……わかりました。ですが、極力他の患者さんに迷惑をかけないよう配慮して下さいね」

 

 

「助かります!いくよ、皆!」

 

 

『はい!/おう!』

 

 

数多くの足音が響き、先程の空間には堤ただ1人だけだった。

 

 

「……君は、これだけ愛されているんだ。……どうか…生きてくれ」

 

 

()()()()()()()()()堤は、彰が狂う前から刄について彰から話をたくさんされた。可愛い息子に会いたいとか、とても賢く将来が楽しみだとか、嫁に似た活発的な雰囲気だとか……。堤は、彰の一件を知らない。しかし彼は一個人として、刄がどうにか目を覚ます事を、ただ祈っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[病室]

 

 

「刄!」

 

 

「…………」

 

 

……当然の事ながら、彼は目を閉じていた。あの時、燐子ちゃんと一緒にCiRCLEに来て、私と再会した彼は、今動いていない。

 

 

「起きて……よぉ……」ポロポロ…

 

 

涙が零れる。止めようとしても止まらない。降りやまない雨のように、ただただ零れ続ける。……どうして?あの時は()()()()、出来たのに。どうして今、出来ないの……

 

 

ま「まだ…ヒック……気持ち……伝えて…ウッ…ないのに……」

 

 

嗚咽を漏らすなかで、私は声を絞って言う。今言わないと、もう言えない気がしたから。

 

 

「…………」ピクッ

 

 

「…!今!左手の指が!」

 

 

「まりな!探したぞ!?」

 

 

皆が来た。……そうだった、私……病院内を走ってたんだ。……後で謝らないと……。それより!

 

 

「皆!刄が指を動かしたの!」 

 

 

「本当ですか!?」

 

 

「うん!」

 

 

そうして彼の方を見ると、偶然なのか、また指を動かした。皆は急いで刄の近くに行き、声をかける。

 

 

「刄さん!起きなさい!貴方には、まだお礼ができてないわ!Roseliaの皆だって!言いたいことが沢山あるのよ!?」ポロポロ

 

 

「そうです!Roseliaが立ち直れたのは、貴方のおかげでもあるんです!せめて、お礼の言葉くらい言わせて下さい!」ポロポロ

 

 

「アタシも!Roseliaを助けてくれた刄さんには!とても感謝してます!お礼、せめて聞いて下さいよ!」ポロポロ

 

 

「あこも!刄兄がいなかったら!今のあこは……Roseliaはなかったんです!それにあこ、自分の"カッコいい"を見つけたんです!だから、起きて下さい!刄兄にお礼がしたいから!」ポロポロ

 

 

「起きて下さい!刄さん!あの時助けてくれた貴方に、強くなった自分を見せたいんです!次こそ、燐子さんを守れるって事!貴方に伝えたいんです!!」ポロポロ

 

 

「起きろよ!せっかくの再会なんだ!せめて笑って話しようぜ!?皆、待ってたんだぞ!なのに、お前は!呑気に寝るってのかよ!」ポロポロ

 

 

「起きて下さい、刄さん!再会したら、同級生水入らずで話をしようと思っていたんです!貴方がいなければ、ダメなんです!この5人いてこその!幼馴染みです!」ポロポロ

 

 

「起きてくれ!僕はまだ、君に何もしてあげられてない!君は沢山私達を助けてくれた!

なのに!私は、何も!出来てない!お願いだ!せめてお礼の1つ、言わせてくれ!」ポロポロ

 

 

「お兄ちゃん!帰ってきてよ!また、お出かけしたり!ピアノ教えたり!Roseliaの皆と話したりしたいよ!だから、起きてよ!お兄ちゃんっ!」ポロポロ

 

 

皆が心の底から叫ぶ。心の内に秘めた本音を晒しながら。それが届いたのだろうか、

 

 

「…………っ」

 

 

『…!刄!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──随分と、賑やかだな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が、目を覚ましたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…起きてみると、皆が泣いていた。……ああ、心配してくれたのか。嬉しい限りだ。…そういえば、最近よりも感情を感じるようになってきたな?どうしてだ……?

 

 

「……起きたのか?」ポロポロ

 

 

「……ああ。だが、いつまでもつかはわからん。長くは話せないぞ。……てか、いい加減泣き止め。病院を水浸しにする気か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が泣き止み、1人ずつ話しかけてくる。

 

 

「……刄さん、お久しぶりですね。……もっと、いい形で再会したかったのですけれど…」

 

 

「……そうだな。久しぶり、華南。……迷惑をかけたな」

 

 

「いえ、話が出来たので、水に流しますよ」

 

 

……相変わらずしっかりした奴だ。高校の頃から変わってないな。……恐らく、一番苦労をかけた奴だ。俺らのバンドで、ストッパーになるのは椿と華南だった。華南は、まりなの相手までしていた上に、スケジュール管理を担当していた。……そう考えると、本当に申し訳ないな。

 

 

「……久しぶりだな、刄」

 

 

「……そうだな。まさか、華南と結婚してるとは思わなかったが」

 

 

「おい!どういう事だ!」

 

 

……昔からいじられ役だった轍は、華南と結婚したらしく、さっき椿から初めて聞いた。……意外だな。俺が高校生の頃は、結構バカやってたからな。……また懐かしいな。

 

 

「……すまない。今まで刄に、何もしてやれなくて」

 

 

「……お前は、十分やってくれた。長い付き合いのお前は、とても信頼していたからな。だいぶ助かってた」

 

 

「……ありがとう」

 

 

……椿は、他の奴らより付き合いが長く、その分信頼が強かった。……俺がほとんど全ての過去を打ち明けたのも、椿が信頼できるからだ。……本当に、何度助けられた事か……。数えるのは野暮だが。

 

 

「……刄さん。俺、燐子さんと付き合う事になりました」

 

 

「……そうか。どうか、燐子を幸せにしてやってくれ。……俺の分まで…な?」

 

 

「…っ!はい!!」

 

 

……そうか。燐子、彼氏が出来たのか。……信也なら、安心して任せられるな。……きっと、燐子も幸せになれるだろう。……そんな気がする。

 

 

『刄さん(刄兄)!ありがとうございました!!』

 

 

「……立派な顔付きになったな。……頑張れよ」

 

 

『はい!!』

 

 

……色々あったな。今となってはしっかりしたバンドだが、あの時はどこか心配だったな。……また、Roseliaのライブが見たい。あの気持ちを、また味わいたい。……叶うかな?

 

 

「……刄、私ね?ずっと、ずーっとね、貴方の事がが好きなの。昔から、ずっと。今も…ね」

 

 

「……そうか。……俺も、好き……だった。言うのが怖くて、言い出せなかった。……すまなかった」

 

 

「……ううん!好きって言ってくれたから、許してあげる!」ポロポロ

 

 

……今まで、ずっと好きだった、俺の初恋の人。とても元気で、頑張り屋で、少しおっちょこちょいな、俺の初恋の人。……初恋の人から、好きと言われるのは、こんなにも嬉しいんだな。……少し、切ないな。

 

 

「……お兄ちゃん」

 

 

「……燐子、すまなかった。沢山の事を隠してきた。……許してくれ」

 

 

「……色々な事情があったんでしょ?……良いよ」

 

 

「……そうか。……良い妹を持ったな、俺は」

 

 

……引き取られてから、俺の心の拠り所だった。あの頃は、少しながら気が滅入っていた。……最初は中々話が出来なかったけど、段々話してくれるようになってきて、俺自身、とても心が救われてた。……何だかんだいって、今までの人生、どれも楽しかった。

 

 

「……燐子。明日にでも、俺の机の中の物を…皆で見てくれ。……ここにいる、皆で…な」

 

 

「……うん」

 

 

「……なぁ……燐子…」

 

 

「……何?お兄ちゃん」

 

 

「……俺はな……燐子に……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……幸せに…なって……ほし…く……て………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『っ!』

 

 

皆が泣く。ただ泣く。自分が高校生であることも、大人であることも、忘れているみたいに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──今この瞬間をもって、1つの命が現世を離れた

 




ということで、第28話が終わりました。

結局、彼は、助かりませんでした。刄の最後の秘密と、小説のタイトルの伏線回収をしましたが、小説のタイトルについては、まだあります。今のアンケートの締め切りは、最終回投稿時とします。次回は、彼の死後、彼の机の中にあったものとは?それを見た彼らは、何を思うか。

次回『亡き者の想い』
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