「比企谷八幡さんあなたは死んでしまいました」
真っ白な部屋の中、俺は唐突にそんなことを言われた。部屋の中には事務机に椅子があり目の前に銀髪の美人な同い年くらいの女性がその椅子に座っていた。その女性は俺をじっと見つめていた。こんなに美人に見られるなんて何これ新鮮など場違いなことを考えていると
「私はエリスと言います。俗に言う女神です。あなたと私が今いるところは死後の世界です。恐らくまだ混乱しておられると思いますが現実です。あなたはナイフに刺され死んでしまいました。」
そう言われると俺は少し前の記憶を思い出していた。
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俺は帰りながらもずっと考えていた。葉山と戸部の依頼そして海老名さんの依頼この矛盾ともいえる二つの依頼を解決させる方法が他にあったのかを。海老名さんの依頼に気付いて告白の時間まで猶予は1日となかった。そして俺はその短時間で戸部の告白を絶対に成功させたいという依頼と告白を阻止してほしいという海老名さんの依頼の解決ではなく解消をする為「嘘告白」という方法をとった。おそらくこれが最善策。誰も傷付かず一番穏便に平和に終わる。…はずだった。戸部が告白をする前に俺が告白をすることで依頼を解消し、2人のもとに戻った。しかし俺に待っていたのは賞賛でも労いでもなく「拒絶」の言葉だった。雪ノ下は根拠もなく俺のやり方が嫌いだと言い、由比ヶ浜とは途中まで一緒に歩いていたが人の気持ちを考えろと言い雪ノ下の後を追った。
(そもそも引き受けたのは由比ヶ浜で任せたと言ったのは雪ノ下だ。なんで否定されるんだ。あの方法以外で何か方法があったのかよ。あれが最善のはずだろ。)
俺はそこまで考えて思考を無理やり切った。これ以上考えても答えは出ない。何よりこのまま考えれば黒い感情に心が支配される気がしたからだ。
(確かこの辺りで不審者情報が出てたな…。)
そんなことを考えながら俺は早足で歩を進めた。
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「ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください。」
比企谷八幡の口から確かにそう聞こえた。驚いたただ単純に。そしてその次に私を襲ったのは得体の知れない嫌悪感。あれは嘘だそうに違いない。戸部君の絶対に告白を成功させてほしいという依頼が成功する見込みはゼロ。だからその告白を先延ばしにするためにしただけ。それは頭では分かってる十分すぎるほどに。なのに心がそれを許さない。ずっと心を言い知れない何かが蝕む。
(なんなのかしらこれは)
分からないこれが何か分からないただ嫌なことはわかった。そして彼が帰ってくる。その何事もなかったかのような顔を見た瞬間、確実に蝕んでた何かが溢れ
「あなたのやり方嫌いだわ。」
そして私は彼を拒絶して逃げるようにその場をさった。
(なぜ、何故?任せたのは私なのに彼を拒絶したの?)
分からない分からないわからない。彼が告白した瞬間何かが嫌だったそれがわからない。何故拒絶したのかもわからない。そんなことを延々と考えていたら、後ろから声が聞こえた。
「待って!ゆきのん!」
声の主は唯一友人とも言える由比ヶ浜さんだった。走ってきたのか肩で息をしながら
「一緒に帰らない?」
今はなんでもいいから気を逸らしたかった私は
「いいわ一緒に帰りましょう」
了承し一緒に並んでゆっくりと歩を進めた。
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ヒッキーが嘘告白をした。その瞬間姫菜に嫉妬した。難しいことはわかんないけどヒッキーのことだからいろいろ考えてのことでやったんだろうなってわかった。それでも嘘でも状況が理想的なところで告白される姫菜に嫉妬した。なんで私じゃないの?なんで姫菜なの?そんな考えで頭がいっぱいになりそうになった。嫌だったのはゆきのんも一緒みたいでなんとも言えない表情をしてヒッキーを睨んでた。それからヒッキーが戻ってきた時ゆきのんは
「あなたのやり方嫌いだわ。」
って言ってた。ゆきのんは多分…ヒッキーのことが好き自分で気付いてないだろうけど。ゆきのんは不器用でどこまでも真っ直ぐだから。そんな女の子に好かれてるのに気付かないヒッキーは鈍感だ。それに私の気持ちにも。それなのにあんなのやだ。だからやめて欲しいって頼んだ。でもあれが効率が良かったって言われた。それを言われてもう限界になって心で思ってたことが溢れて
「もっと人の気持ち考えてよ」
私もヒッキーを拒絶した。
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「ヒッキーのあれびっくりしたね」
あれとは十中八九嘘告白のことだろう。また胸がざわつく。それを誤魔化すように
「どうでもいいわ」
この話は終わりとでも言わんばかりに早足で行こうとすると
「ほんとに?」
そう言われ思わず私は振り返った。そこにはまっすぐとした眼差しで私を見ていた。由比ヶ浜さんは…ずるい。そんな真面目な雰囲気で言われれば逃げられない。
「どうでもいいわ、ええどうでもいいわ彼のことなんて」
「嘘だよゆきのんだって嫌だったんでしょ?」
私は由比ヶ浜さんの目を見て動けなかった。
「ゆきのんは気付いてないかもしれないけど。」
やめてそれ以上言わないで
「これまで縁がなかったのかもしれないけど。」
彼女は鋭い。私が気付いてないような気付きたくないようなことに気付いて
「ゆきのんは…」
そしてその事実を容赦なく
「ヒッキーのことが好きなんでしょ。」
叩きつけてくる
「わ、私が彼を?冗談にしては「ゆきのん」」
また真剣な眼差しで私を見る。その眼差しに私は自分に嘘をつくのをやめた。
「…わからないわ彼を好きかなんて」
「ゆきのんはさ、ヒッキーが嘘告白をしてどう思ったの?」
まるで子供が無邪気に問いかけるようにきく。
「それも…わからないわ。ただとても嫌だった」
「それはさヒッキーが告白したことが嫌だったの?それともヒッキーがまたあんな方法とったから嫌だったの?」
私は言葉に詰まった。その問いに答えることはもう自分で認めるようなもの。別に認めるのが嫌なのではなく、それを認めてしまえば恐らく彼の前では私が私ではなくなってしまう気がする。だから言葉にしたくない。でも本心を言わなければ彼女はきっと気付いてしまう。それでも今の私にそんな覚悟はない。
「も、もういいでしょいきましょう」
そういい私は早足で信号を渡った。前から走ってくる男に気付かずに…
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信号機の前に雪ノ下と由比ヶ浜が見える。はやく歩きすぎたみたいだな。ちょっとペースを落とすか…何をやってるんだ俺は。周りの目を気にしないのが比企谷八幡のはずだ。なのに。そう考えると何故か気まずくなり目を逸らしてしまった。
(ほんとに何やってんだろ俺…)
そして目を逸らした先には全身黒ずくめの男がいた。
(人を見た目で判断しちゃダメとは言うがあれは明らかな不審者だろ…)
その男を見ているとどうも視線が雪ノ下たちに向いている気がする。
(気のせいか…?……いや気のせいじゃない確実に雪ノ下たちの方を見てる。)
俺はこの時点で嫌な予感がし走り出していた。男は俺に気付いたようで目があった。すると男はにやけ、おもむろにポケットに手を突っ込みナイフを取り出し雪ノ下の方に走り出した。
(なん…!でも雪ノ下なら合気道が…。何でそのまま突っ込んでんだ!?まさか気付いてない…!?)
雪の下は何かを考えているのかまっすぐと早足で歩いている。男と雪ノ下が接触するまでの距離は短い。俺は無我夢中で走り叫んだ。
「雪ノ下ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
雪ノ下はいきなり大声で呼ばれたことに体をびくっと震わせこっちを振り向いた。俺は振り向いた雪ノ下の肩を持ちその瞬間おもっきり後ろへ投げ飛ばした。顔は見てないが恐らく怒ってるだろう。やだな怖いななんて思っていると左腹部に激痛が走る。どうやら黒ずくめに刺されたようだ。男は俺を刺した後ナイフを俺の腹から抜き、そのまま後ろへと走っていった。雪ノ下を襲いにいったんだろう。させるかと思い後ろを振り向くと地べたに転がってた。黒ずくめの男の方が。何なら泡吹いてる。どうやら合気道で倒したみたいだ。男が倒れたことに安心したのか足に力が入らなくなり、そのまま俺は重力に従った。
「ヒッキー!!!」
「比企谷君!!!」
二人が泣きそうになりながら駆け寄ってくる。
「だめ!死ぬのなんてだめ!許さない…許さない!だめ…お願い…」
「そうだよヒッキー!だめだよ…ほんとに許さないんだから!こんな別れ方やだよ…」
涙で顔を歪めながら叫ぶ二人。そんな二人に俺は最後の力を振り絞り
「すま…ん。さい…ごまで…お前らの…嫌い…なやり方…しか…できなかった…。」
「違うの…!謝るのは私の方なの!何の事情も聞かずにあなたを否定してしまった!任せたのに拒絶してしまった謝るのは私の方なの!ごめんなさいほんとにごめんなさい!」
「私も何もできなかったのにヒッキーを勝手に否定した!私たちなの謝るのは、だからごめんなさい!」
俺は奉仕部の空気、時間が好きだった。そんな時間が壊れた気がして、怖かった。でも二人の言葉に情けないながらも安堵した。あぁ死にたくないでも自分の体のことは自分でわかる。どんどんとなくなる感覚。痛覚すらなくなっていってる。そして体が冷たくなろうとしてるのがわかる。もうすぐ死ぬのだろう。なら最後くらい素直に雪ノ下と由比ヶ浜に感謝を…
「雪ノ下…由比ヶ浜…ありが…とう…奉仕部が…お前らが…好きだったぞ…」
そう言い俺は限界が来て瞼を閉じた。
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