この素晴らしい奉仕部に祝福を!   作:149

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#8 襲来

ウィズとの邂逅があった翌日。カズマと話し合いをして今日は休みにしてもらった。理由としては正直昨日いろいろしすぎて疲れたのもあるが一番大きいのは小町だ。小町はまだこの世界を知らない、俺たちもきて間もないが小町よりは知識はある。それに冒険者登録もしていないしあとは色々説明しようと思っていた。思っていたのだが。

 

「…やべえ…昼じゃん…」

 

疲れていたせいかめちゃくちゃ熟睡してた。

 

「あら起きたのね寝坊谷君おはよう」

 

俺が目を覚ますとそれに気付いた雪ノ下が、俺に声をかける。

 

「…おはようぐっすり寝てたわ…あれ由比ヶ浜と小町は?」

 

「あの二人ならあなたより早く起きてちょっとスキルが出たから試してくるって言ってどっかいったわよ」

 

「まじか…あの二人大丈夫か?」

 

「一応ついていくとは言ったのだけれど大丈夫って言ってたから多分大丈夫だと思うわ」

 

「なら俺たちも準備して行こうなんかあってからじゃ遅いしな」

 

あの二人特に小町は戦闘経験もないし、心配だな…どこ行ったか知らんけど。俺は準備を終え雪ノ下と宿から出ようとすると

 

「あれ?ヒッキー起きたんだ」

 

「八幡おはよ〜!」

 

ちょうど小町たちと鉢合わせた。てゆうか小町の下の名前呼びはすげえ違和感するしなんかちょっとやだ…。

 

「…おはよう。その小町…呼び方を戻してくれないか?その…違和感とゆうかなんとゆうか…」

 

「えぇ〜。まぁ…お兄ちゃんがゆうなら…」

 

そう言いつつも戻してくれた。さすが小町。

 

「ヒッキー今日はなんかするの?」

 

「ああ、とりあえず小町の冒険者登録をしてこの世界について説明しようかと思ってる」

 

「冒険者登録?」

 

「その辺もギルドへの道すがら説明するよ」

 

俺たちは宿を出てギルドへと向かった。

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「はい今日はどうされましたか?」

 

「えっと冒険者登録をしたくてきたんですけど」

 

「…冒険者登録ですか?」

 

「はいその」

 

そういい小町の方を向く

 

「小町の登録を…」

 

「はいわかりました。では…」

 

受付の人は俺がきたときの同様の説明をし、小町は書類に特徴などを書きカードに触れる。

 

「……はい、ありがとうございます。ヒキガヤコマチさん、ですね。ええと、生命力、魔力に知力、幸運は平均値ですね。でも筋力と敏捷性がとてつもなく高いですね。まぁハチマンさんのパーティーですしあんまり驚かないですけど、とんでもないですねええ」

 

何故か目が死んでいる受付の人を気の毒に思いながら

 

「な、なんかすいません…」

 

「いえ別に非はないですよ。ただ常識外れなだけですから」

 

いやほんとにすいません…

 

「話を戻しますがこれだと職業は……?拳闘士?とゆうのがありますね」

 

拳闘士?確か拳で戦う職業か…小町が拳で戦うのか…

その姿を想像するとなんか…うん…拳血塗れの小町なんて見たくないな…ここは断って別の職業を…

 

「それでお願いします〜!」

 

「え」

 

「はい拳闘士として登録しました。この職業は私たちもよくわからないのでなにも助言はできませんが…。では冒険者ギルドへようこそコマチ様。スタッフ一同これからの活躍に期待してます!」

 

勝手に登録して小町の職業は決まった。待って俺の話を聞いて!

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俺たちは冒険者登録をすますといつも通りの平原に来ていた。

 

「はい今日も色々試します」

 

「…なんでそんなげんなりしてるのかしら」

 

いや別に?小町が拳血だらけでモンスター狩ってる姿を想像して萎えてるとか別にそんなんじゃない。まぁ結局可愛いんですけどね!

 

「…取り敢えず小町カード見せてくれ」

 

「はいはーい!」

 

そういいカードを俺に渡す。あと小町ちゃん?はいは一回よ

そんなことを言いつつ小町のカードに目を通しあることに気づく。

 

(受付の人も言ってたけど敏捷と筋力俺より高くないか…?いやそれどころか倍近くないか…?)

 

いくら見ても筋力と敏捷の高さがおかしい。どうゆうことだ…?

 

「どうしたのヒッキー難しい顔してるけど…」

 

どうやら考え込みすぎて顔が強張っていたらしい

 

「いや…これを見てくれ」

 

俺はカードを由比ヶ浜達に見せる。

 

「どれどれ…へぇー…あれ?」

 

「…気のせいじゃなかったらとんでもなく筋力と敏捷が高い気がするのだけれど」

 

「ああ男であるはずの俺の倍はある」

 

「なになに?もしかして小町ってすごいの?」

 

そうゆう小町に俺はステイタスカードをだし、小町に見せる。

 

「へぇ〜確かに小町のおかしいですね…」

 

「……もしかして小町さん猫の特性をついでるのじゃないかしら…」

 

…なるほどそうゆうことか。確かにそうかもしれん。

 

「なるほど敏捷は猫の素早さ、筋力はそれをこなすだけの力ってわけか…」

 

しかし…体格は前の小町とも変わってないしそんな力あるのか…?試してみるか…

 

「……小町ちょっとそこの岩を持ち上げて見てくれ」

 

まぁ無理だと思うけど岩の大きさ俺たちより断然大きいし流石に…

 

「わかったやってみる!ええっとこう?」

 

小町は岩に近寄り岩を持つと可愛い掛け声とともに…そのまま持ち上げた。

 

「「「「え」」」」

 

持ち上げた小町自信も驚いている。そりゃそうだ可愛い女の子がいきなり自分よりでかい岩持ち上げたら驚くわ。

 

「お、お兄ちゃん…」

 

「…取り敢えずその岩を下ろそうか…なんとゆうかものすごく絵面がやばい」

 

「う、うん」

 

そう言い小町は岩を下ろした。

 

「…ヒッキーこの世界に普通ってないんだね…」

 

「いやそんなことはないはずなんだが…」

 

てゆうかあのパワーで殴られるモンスターが…しかし

 

「…小町…何回も聞くがほんとに良かったのか?」

 

「?」

 

「この世界に来たことだよ。いきなりいなくなって親父たちも心配してるだろ」

 

由比ヶ浜と小町はそれを聞きはっとし、

 

「そういえばそのことなんだけど…小町ちゃん自由にあっちとこっちを出入りできるみたい」

 

「……え」

 

話を聞くとどうやら召喚魔法を媒介として小町はどっちの世界も行き来できるらしい。朝スキル欄を見てそれらしいのが見つかったから試してわかったみたいだ。

 

「朝試して見てあっちに帰って親には当分引きこもるって伝えたから大丈夫だと思うよお兄ちゃん」

 

娘の引きこもる宣言を受け入れるなよ

 

「それが許されちゃうのかよ…」

 

「最初は反対されたけどお父さんにお願いしたら許可してくれたよ」

 

それでいいのかよ親父…甘すぎだろ…

そのあとは小町のスキルを試しその日はもう終わりにし街に帰った。

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キャベツ討伐から数日。あのキャベツの報酬が支払われることになり、久しぶりにカズマたちと集合していた。

 

「カズマ、ハチマンみてくれ。報酬が良かったから、修理を頼んでいた鎧を少し強化して見た。…どう思う?」

 

報酬を受け取ろうとする冒険者たちによってひどい混雑していた。そんな中ダクネスが嬉々として鎧を見せてきた。

 

「まぁいいんじゃないか?」

 

…ここで主人公とかは気の利いたセリフを言えるのだろうが俺には無理だ。

 

「…なんか、成金趣味の貴族のボンボンがつけてる鎧みたい」

 

「…カズマはどんな時でも容赦ないな。私だって素直に褒めてもらいたい時もあるのだが」

 

ダクネスはちょっと凹んだ顔をしていた。カズマも主人公には向かないな確実に。

 

「…なぁカズマなんかダクネスを超える変態がいる気がするんだけど…」

 

「あれは…多分手遅れだほっとこう」

 

俺とカズマはそのダクネスを超えそうな変態の方を向く。

 

「はぁ…はぁ…。た、たまらない、たまらないです!魔力溢れるマナタイト製の杖のこの色艶…。はぁ…はぁ…っ!」

 

めぐみんが新調したであろう杖を抱きかかえ頬擦りしていた。その杖にはマタナイトと言うのを使ったらしい。マナタイトとかいうのは希少金属で杖に混ぜると魔法の威力を上げるらしい。どうやらキャベツの報酬で杖を強化し、めぐみんも朝からこの調子らしい。正直側から見てもヤバいやつなので放置している。俺たちもすでに換金を終えており意外に報酬があり財布がホクホクになっていた。キャベツ狩りの報酬はそれぞれ自分の分をそのまま報酬にしようとアクアが言い出し、そうすることになったのだが

 

「なんですってえええええええ!?ちょっとあんたどういうことよっ!」

 

ギルドに響き渡るアクアの叫び声。ギルドの受付のお姉さんの胸ぐらを掴み、何やら揉めている。…別に揺れる胸なんて見てないよ別に見てないからポロリしないかななんて考えてないからだから俺を睨むのやめてね三人とも

 

「なんで五万ぼっちなのよ!どれだけキャベツ捕まえたと思ってんの!?10や20じゃないはずよ!」

 

「そそ、それが、申し上げにくいのですが…」

 

「何よ!」

 

「…アクアさんの捕まえてきたのは、殆どがレタスで…」

 

「………なんでレタスが交じってるのよー!」

 

「わ、私に言われましてもっ!」

 

少し文句を言い続けてたが無駄だと踏んだのかアクアが後ろに手を組み、にこやかな笑顔で俺たちに近づいてきた。

 

「カーズマさん!ハーチマンさん!今回のクエストの、報酬はおいくら万円?」

 

「百万ちょい」

 

「「「「「「ひゃっ!?」」」」」」

 

「俺もそんくらいだな」

 

「「「「「「なっ!?」」」」」」

 

どうやらカズマのとったキャベツは質が良かったらしく俺は単純に数を取りまくり俺とカズマはいきなり小金持ちになったのだ。

 

「カズマ様ー!ハチマン様ー!前から思ってたんだけど、カズマってその、そこはかとなくいい感じよね!ハチマンもその、その目が魅力的ね!」

 

「特に褒めるところが思い浮かばないんなら無理すんな。言っとくが、この金はもう使い道決めてるからな、分けんぞ」

 

「お前にこの目見てアンデッドって決めつけられた気がするんですけど…」

 

先手を打ったカズマの言葉と俺の言葉にアクアの笑顔が凍りついた。

 

「カズマさあああああん!ハチマンさああああああん!私、クエスト報酬が相当な額になるって踏んで、この数日で、持ってたお金、全部使っちゃったんですけど!ていうか、大金入ってくるって見込んで、ここの酒場に十万近いつけまであるんですけど!!今回の報酬じゃ、足りないんですけど!」

 

半泣きで俺とカズマに交互に縋り付いてくるアクア。

 

「知るか、そもそも今回の報酬は『それぞれが手に入れた報酬をそのままに』って言いだしたのはお前だろ。と言うか、いい加減拠点を手に入れたいんだよ。いつまでも馬小屋暮らしじゃ落ち着かないだろ?」

 

まぁ十万くらいならいいかと思い、お金を出そうとすると

 

「そんなああああ!カズマ、ハチマン、お願いよ、お金貸して!ツケ払う分だけでいいからぁ!そりゃカズマもハチマンも男の子だし、カズマは馬小屋でたまに夜中ゴソゴソしてるの知ってるから、早くプライベートな空間が欲しいのはわかるけど!五万!五万でいいの!お願いよおおおおお!」

 

「よし分かった、五万でも十万でもお安いもんだ!分かったから黙ろうか!!」

 

「待って何で俺今その話に巻き込まれたの」

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結局あのあと俺とカズマで半々払い一件落着し、みんなでクエストを受けようとゆうことになったのだが、どうやらこの近くに魔王の幹部が住み着いたらしくクエストが激減していた。なのでまた当分は休みとゆうことになったのだ。なったのだが。

 

「なんで俺まで…」

 

「いいだろ俺とハチマンの仲なんだし、めぐみんの日課に一緒に付き合うくらいさ!」

 

そう俺たちは今めぐみんの日課である一日一爆裂に付き合わされていた。休みが貰えた俺は当分だらだら怠惰に過ごす気だったのにカズマのやつ『ハチマン暇だったらちょっと付き合ってくれないか?』とか言いやがってついてきたらこれか。ただ道連れにしたかっただけだろこいつ。あぁ…働きたくない。ちなみに雪ノ下と小町と由比ヶ浜は街で何やら買い物をしているらしい。

 

「もうその辺でいいだろ。適当にうって帰ろうぜ。」

 

そう提案するもめぐみんが首をふり

 

「駄目なのです。街から離れたところじゃないと、また守衛さんに叱られます」

 

待て今こいつまたって

 

「今お前、またって言ったな。音がうるさいとか迷惑だって怒られたのか」

 

めぐみんがこくりと頷く

 

「前にやって怒られてんのかよ…」

 

そんなめぐみんに呆れながら、歩を進める。すると

 

「……?あれはなんでしょうか。廃城?」

 

遠く離れた丘の上。そこにポツンと佇む、朽ち果てた古い城が見えてきた。

 

「薄気味悪いなぁ…。お化けでも住んでそうな…」

 

確かにお化け屋敷みたいではある。

 

「あれにしましょう!あの廃城なら、盛大に破壊しても誰も文句は言わないでしょう」

 

そういい魔法の準備を始めた。風が気持ちの良い丘の上で明らかに似合わない爆発音が響き渡った。

こうして俺とカズマとめぐみんの新たな日課が始まった。くる日も来る日もかかさず俺とカズマが交互にめぐみんをおぶって帰り、そしていつの間にか

 

「『エクスプロージョン』ッッッ!」

 

「おっ、今日のは良い感じだな。爆裂の衝撃波が、ズンと骨身に浸透するかの如く響き、それでいて肌を撫でるかのように空気の振動が遅れてくる。相変わらず、不思議とあの廃城は無事なようだが、それでも。ナイス爆裂!」

 

その日の爆裂魔法の調子が分かるようになり、カズマに関してはソムリエみたいなことを言い出した。しかしあの廃城ほんとに壊れない。何日も連続で撃っているが微塵も壊れる気配がない。なんかおかしいよな…。そんなモヤモヤを抱えながら1週間がたった、ある日の朝。

 

『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっっ!』

 

街中に緊急のアナウンスが響き渡り、そのアナウンスを聞いた冒険者たちは急いで正門に向かった。そしてそこについた俺たちは凄まじい威圧感を放つモンスターの前で呆然と立ち尽くしていた。そのモンスターは自らの首を腰に掲げ馬に乗った騎士風のモンスターつまりデュラハンである。そしてデュラハンは自分の首を前に出し話し始めた。

 

「……俺は、つい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部のものだが…」

 

やがてプルプルと震え始め…

 

「まままま、毎日毎日毎日っっ!!おお、俺の城に、毎日欠かさず爆裂魔法を打ち込んでく頭のおかしい大馬鹿は、だれだああああああー!!」

 

爆裂魔法?爆裂魔法といえば…。自然とめぐみんに視線が集まる。そして当の本人は横にいる魔法使いに視線を送りそれに釣られ全員がその魔法使いを見る。

 

「ええっ!?あ、あたし!?なんであたしが見られてんのっ!?爆裂魔法なんて使えないよっ!」

 

まぁそりゃそうだこの街で習得してんのめぐみんくらいだろうし。それにしても城ってもしかして…やがてめぐみんが前に出てそれに伴い冒険者たちが道を開けめぐみんとデュラハンが対峙する。

 

「お前が…!お前が、毎日毎日俺の城に爆裂魔法ぶち込んでいく大馬鹿ものか!俺が魔王軍幹部だと知っていて喧嘩を売っているなら、堂々と城に攻めてくるが良い!その気がないのなら、街で震えているが良い!何故こんな陰湿な嫌がらせするの!?この街には低レベルの冒険者しかいないことは知っている!どうせ雑魚しかいない街だと放置して居れば、調子に乗って毎日毎日ポンポンポンポン撃ち込みにきおって…っ!!頭おかしいんじゃないのか、貴様っ!」

 

よほど怒っているのかプルプルと震えていた。流石に気圧されめぐみんが怯むがマントをひるがえし

 

「我が名はめぐみん。アークウィザードにして、爆裂魔法を操るもの…!」

 

「…めぐみんってなんだ。バカにしてんのか?」

 

「ちっ、ちがわい!」 

 

ツッコミを入れられたが気を取り直し

 

「我は紅魔族のものにして、この街随一の魔法使い。我が爆裂魔法を撃ち続けていたのは、魔王軍幹部のあなたを誘き出すための作戦…!こうしてまんまとこの街に、一人で出てきたのが運の尽きです!」

 

ノリノリでデュラハンに杖を突きつけるめぐみんとは逆に

 

「…おい、あいつなんか言ってるぞ。毎日爆裂魔法撃たなきゃ死ぬとか駄々こねて俺とハチマンをあの城の近くまで連れ出しただけなのに。いつの間に作戦になったんだ」

 

「…うむ、しかもさらっと、この街随一の魔法使いとか言い張っているな」

 

「しーっ!そこは黙っておいてあげなさいよ!今日はまだ爆裂魔法使ってないし、後ろにたくさんの冒険者が控えてるから強気なのよ。今いいところなんだから、このまま見守るのよ」

 

囁き声のつもりなんだろうが確実に聞こえてるぞだってほらめぐみんの顔があかくなってるし、あと俺連れ出したのお前だろカズマ。

 

「めぐみんってそんな変な名前かな?」

 

「バカ今は静かにしとけ」

 

デュラハンはといえば納得したような雰囲気で

 

「…ほう、紅魔のものか。なるほど、なるほど。そのいかれた名前は、別に俺をバカにしていたわけではなかったのだな」

 

「おい、両親からもらった私の名に文句があるなら聞こうじゃないか」

 

デュラハンの言葉に言い返すめぐみんだが当の本人は微塵も気にしていないそれどころかこれだけの冒険者の大群を見ても気にしてすらいない。さすがは魔王軍幹部だ。

 

「…フン、まあいい。俺はお前ら雑魚にちょっかいかけにこの地に来たわけではない。この地には、ある調査に来たのだ。しばらくはあの城に滞在することになるだろうが、これからは爆裂魔法は使うな。いいな?」

 

「それは、私に死ねと言ってるも同然なのですが。紅魔族は日に一度、爆裂魔法を打たないと死ぬんです」

 

「お、おい聞いたことないぞそんなこと!適当な嘘をつくな!」

 

デュラハンは器用に、やれやれと肩を竦めて見せた。

 

「どうあっても、爆裂魔法を撃つのをやめる気はないと?俺は魔に身を落としたものではあるが、元は騎士だ。弱者を刈り取る趣味はない。だが、これ以上城の近辺であの迷惑行為をするのなら、こちらにも考えがあるぞ?」

 

有無を言わせぬ雰囲気にめぐみんが後ずさるが、不敵な笑みを浮かべ

 

「迷惑なのは私たちの方です!あなたがあの城に居座っているせいで、私たちは仕事もろくにできないんですよ!…ふっ、余裕ぶっていられるのも今の内です。こちらには、対アンデッドのスペシャリストがいるのですから!先生、お願いします!」

 

そう啖呵を切ったあとアクアに丸投げをした。お前はそれでいいのか自称最強。

 

「しょうがないわねー!魔王の幹部だか知らないけれど、この私がいるときに来るとは運が悪かったわね。アンデッドのくせに、力が弱まるこんな明るいうちに外に出てきちゃうなんて、浄化してくださいって言ってるようなものだわ!あんたのせいでまともなクエストが受けられないのよ!さぁ、覚悟はいいかしらっ!?」

 

先生呼ばわりされたせいかまんざらでもない感じで前に出る。そしてアクアはデュラハンに片手を突き出す。それを見たデュラハンは自分の首をアクアに向かって突き出した。おそらくまじまじとみる行為なのだろう。

 

「ほう、これはこれは。プリーストではなくアークプリーストか?この俺は仮にも魔王軍の幹部の一人。こんな街にいる低レベルのアークプリーストに浄化されるほど落ちぶれてはいないし、アークプリースト対策はできているのだが…。そうだな、ここは一つ、紅魔の娘を苦しませてやろうかっ!」

 

デュラハンはアクアが魔法を唱えるより早く左手の人差し指をめぐみんへと突き出した。

 

(っ!まずい!)

 

そう思い飛び出そうとすると俺より早く飛び出した奴がいた。そしてデュラハンはすかさず叫ぶ。

 

「汝に死の宣告を!お前は1週間後に死ぬだろう!!」

 

デュラハンがそう叫ぶと同時に俺より早く出ていたダクネスがめぐみんを俺の方へ投げ飛ばす。

 

「なっ!?ダ、ダクネス!?」

 

「っ!?あっぶな!」

 

俺は投げ飛ばされためぐみんをキャッチする。ダクネスは呪いを受け身体がほんのりと、一瞬だけ黒く光る。

 

(くそっ間に合わなかった…!あれを使ってれば間に合ったかもしれないのに…!)

 

「ダクネス!何か異常は!?」

 

パーティーメンバーが駆け寄る中俺は慌てて聞くも

 

「……ふむ、なんともないのだが」

 

特に問題はなさそうに言ってのけた。でもデュラハンは死の宣告ができるモンスターつまり

 

(確実に1週間後に死んでしまう…)

 

そんなダクネスをアクアはずっとペタペタ触る中、デュラハンは宣言する。

 

「その呪いは今はなんともない。若干予定が狂ったが、仲間同士の結束が固い貴様ら冒険者には、むしろこちらの方が応えそうだな。…よいか、紅魔族の娘よ。このままではそのクルセイダーは1週間後に死ぬ。ククッお前の大切な仲間は、それまで死の恐怖に怯え、苦しむこととなるのだ……。そう、貴様の行いのせいでな!これより一週間、仲間の苦しむ様を見て、自らの行いを悔いるがいい。くはははっ、素直に俺のゆうことを聞いておけばよかったのだ!」

 

めぐみんが青ざめ杖を握りしめる。そんな中ダクネスが叫ぶ。

 

「な、何てことだ!つまり貴様は、この私に呪いをかけ、呪いを解いて欲しくば俺のゆうことを聞けと!つまりそういうことなのか!」

 

「えっ」

 

…人の話聞いてたの?違うよ確実にほらデュラハンの人驚いてんじゃん。目の焦点があってないじゃん。てゆうかほんとブレねえなこの変態。

 

「くっ……!呪いぐらいではこの私は屈しない…!屈しはしないが…っ!ど、どうしようハチマン!カズマ!見るがいい、あのデュラハンのカブトの下のいやらしい目を!あれは私をこのまま城へと連れて帰り、呪いを解いて欲しくば黙って言うことを聞けと、凄まじいハードコア変態プレイを要求する変質者の目だっ!」

 

ほんとにどうしてやろうかこいつ。さっきまでどう助けるか考えてたのがバカらしくなるんですけど。てゆうか何言ってんのこいつ。そんな変質者扱いされたデュラハンはと言うと

 

「…えっ」

 

ご愁傷様です。

 

「この私の体は好きにできても、心までは自由にできると思うなよ!城に囚われ、魔王の手先に理不尽な要求をされる女騎士とかっ!ああ!どうしよう、どうしようカズマっ!!予想外に燃えるシチュエーションだ!行きたくはない、行きたくはないが仕方がない!ギリギリまで抵抗してみるから邪魔しないでくれ!では行ってくる!」

 

「ええっ!?」

 

「「待て待て待て待て!」」

 

俺とカズマの二人がかりでノコノコついていこうとするダクネスを止める。てかこいつ力強いんですけど!

 

「と、とにかく!これに懲りたら俺の城に爆裂魔法を放つのは止めろ!そして、紅魔族の娘よ!そこのクルセイダーの呪いを解いて欲しくば、俺の城に来るがいい!城の最上階の俺の部屋まで来ることができたら、その呪いを解いてやろう!…だが城には俺の配下のアンデッドナイト達がひしめいている。ひよっこ冒険者のお前達に、果たして俺の所まで辿り着くことができるかな?くくくくくっ、くははははっ!」

 

デュラハンはそう宣言すると笑いながら城まで帰っていった…そんなデュラハンを眺めながらみんな呆然としていた。

そんな中俺はずっと考えていた。

 

(どうする…今からでも奥の手を使ってあいつを…いやでも使っても勝てるかどうかわからないそれに反動が凄すぎる…)

 

ずっと考えていると俺を裾がひかれる。

 

「「「比企谷君(ヒッキー)(お兄ちゃん)…」」」

 

俺の裾をひいている三人は少し震え、俺を見ていた。おそらく仲間が死ぬかもしれないことに恐怖が芽生えたのだろう。…迷う必要はなさそうだな。

 

「おいハチマンどこいく気だ」

 

デュラハンの後を追うように歩いていく俺を見てカズマが声をかける。

 

「……別にただの気晴らしの散歩だ」

 

そんな俺をみてカズマ達は少し笑い

 

「…今回の件は私の責任です。私が行ってきます」

 

どうやら嘘は通じなかったらしい。

 

「俺もいくに決まってんだろうが。大体俺とハチマンは幹部の城だって気付かなかったまぬけだしな」

 

間抜け言うな間抜け

 

「……じゃあ一緒にいきましょう。でも相手はアンデッドナイトがひしめいてるらしいですから、武器ではなく魔法攻撃が効果的なはず。…なのでこんな時こそ私とハチマンを頼りにしてください」

 

なるほど魔法攻撃かならアークウィザードの劣化版みたいな俺でも大丈夫か?その時にチラッと雪の下達をみるとニヤニヤして俺をみていた。なんだこいつら

 

「お兄ちゃんも素直じゃないなぁ〜。しょうがない!散歩に小町もついて行ってあげるよ!あ、今の小町的にポイント高い!」

 

くっそ…筒抜けなんだろうけど腹立つ可愛いから許すけど

 

「そうだね!私もついてくよちょっと怖いけど」

 

「私もついてくわ比企谷君が迷子になったらいけないもの」

 

お前にだけは言われたくないんだけど超絶方向音痴

 

「なにか?」ニコッ

 

「ナンデモナイデスエエ」

 

うわぁすごくいい笑顔なのになんでだろ怖いなーナンデダロー。

 

「これなら魔王軍の幹部も怖くないですね」

 

「そうだな。…おいダクネス!呪いは絶対になんとかしてやるからな!だから、安心…」

 

「『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

全員で乗り込む覚悟を決めカズマが声をかける最中。それを遮る形でアクアが唱えた魔法を受けてダクネスの体が淡く光る。そしてアクアが嬉々として

 

「この私にかかれば、デュラハンの呪いの解除なんて楽勝よ!どう、どう?私だって、たまにはプリーストっぽいでしょう?」

 

「「「「「「………えっ」」」」」」」

 

……空気読めばか俺たちのやる気を返せ。

 

 




後書き
おはようございます。今回はみなさんが懸念してらした八幡と小町の親のことなんですけど、その点はちゃんと考えてありました。そしてようやくデュラハン襲来なんですが、今日から学校が始まるため更新頻度が下がると思います。なのでその点は申し訳ないです。ではまた次回お会いしましょう。

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