魔王軍の幹部襲撃からダクネスに何事もなく1週間が経ったある日。
「クエストよ!キツくてもいいから、クエストを請けましょう!」
「「えー…」
突然そんなことを言い出したアクアに、カズマとめぐみんが不満の声を漏らす。俺も声には出さなかったが不満を抱いた。だって働きたくねえもん。
「私は構わないが…」
「私も構わないわよ」
「私も!」
「小町も大丈夫です!そろそろ戦ってみたいし!」
やめろこまちだけは戦わせない。血塗れなんてみたくない。血も滴るいい女的な?黙れやかましいわ
「「ええー…」」
それでも不満の声を漏らす二人に
「お、お願いよおおおおおお!もうバイトばかりするのは嫌なのよぉ!コロッケが売れ残ると店長が怒るの!頑張るから!今回は、私、全力で頑張るからあぁっ!!」
そういい二人に泣きつくアクア。流石に思うところがあるのか二人は顔を見合わせ
「しょうがねえなあ…。じゃあ、ちょっと良さそうだと思うクエスト見つけてこいよ。悪くないのがあったらついてってやるから」
そう言うとアクアは嬉々としてクエストボードに向かって行った。
「…なあ、アクアだけ行かせて大丈夫なのか?何というか、とんでもないの持ってくる気がするけど…」
その言葉に付き合いの浅い小町は首を傾げ(可愛い)他のメンツはそれぞれが顔を合わせ
「「「「「ハチマン(比企谷君)(ヒッキー)よろしく」」」」」
丸投げかよこいつらまぁ見に行くんですけど。クエストボードでうろちょろしているアクアのもとへ向かい様子を見る。
やがて一枚の紙を剥がし…
「……よし」
「待ってそんなの死ぬ軽く死ぬ」
『マンティコアとグリフォンの討伐』
「ええーでもめぐみんが爆裂魔法を食らわせれば一撃よ?」
「…これを請けたってカズマが知ったらどうするだろうな」
それを聞くとアクアは無言で張り紙を戻し、クエストを吟味する。普段なにしてんだよあいつ。
「ちょっと!これこれ!これならどう!」
俺は手を引かれアクアがさすクエストを見る。
『湖の浄化町の水源の一つの、湖の水質が悪くなり、ブルータルアリゲーターが住み着き始めたので水の浄化を依頼したい。湖の浄化ができればモンスターは生息地を他に移すため、モンスター討伐はしなくても良い。※要浄化魔法習得済みのプリースト。報酬は三十万エリス』
「……浄化魔法使えるのか?」
多分使えるだろうけど一応聞いてみると鼻で笑い
「ふふっ〜ん私を誰だと思ってるの?水よ水の女神様よだから浄化なんてちょちょいのちょいよ!」
「ちなみに浄化には何日かかるんだ?」
「……半日?」
「ながいな…」
半日か…その間ずっと守りきれる自信はないな…
「…一応カズマたちに相談してみよう」
そう思いクエストの紙を持って行き、カズマたちのもとに戻り、クエストを見せる。それをみるとカズマが首を捻り考え始めた。少しすると何か思いついたのかアクアの方を向き
「おいアクア。多分、安全に浄化ができる手があるんだが、お前、やってみるか?」
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町から少し離れたところにある大きな湖。なるほど。確かに濁ってる。みんなで湖を眺めているとおずおずと声がかけられる。
「……ねえ…。本当にやるの?」
「俺の完璧な作戦になにが不安なんだよ」
「…私今から売られていく、捕まった希少モンスターの気分なんですけど…」
…希少モンスターを閉じ込めておく、鋼鉄製のオリの中で体育座りをしながらアクアは言った。カズマが立てた作戦はオリに入れたアクアを湖に投入し、その中からアクアが湖を浄化するというものなのだが…どう考えても
「クズだな」
「クズですね」
「か、カズマ…あとで私も…」
「だ、誰がクズだ!あと黙れ変態!」
「んっ!」
「……小町湖の近くまで行ってつけるぞ」
「あいあいさー!」
そういうと小町はアクアの入ったオリを軽々と持ち上げ、俺と一緒に湖の近くまで歩いていく。
「聞いてはいたんだがその…規格外だな」
「ええ…あれはやばいですね」
「何というか絵面がやばいな」
そんな各々が感想を述べていく中アクアがポツリと呟く。
「…私、出汁をとられてる紅茶のティーバッグの気分なんですけど…」
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アクアを湖につけてから2時間弱がたった。だが、未だにモンスターの気配はない。カズマとダクネスとめぐみんと雪ノ下と由比ヶ浜と小町はアクアから20メートルほど離れた陸地でアクアの様子を見守っていた。そして俺はというと
「アクアー異常はないかー!」
湖の付近で待機し、いつでも助けに入れるようにしていた。それと同時に指と指の間で電気を発生させたりして、体に慣らす練習もしていた。
「特に異常はないわー!浄化のほうも順調よー!」
「おーいアクア!トイレ行きたくなったら言えよー!」
「アークプリーストはトイレなんていかないわよ!!」
昔のアイドルかよ。
「ふふ〜んこれなら楽勝そうね!」
どう考えてもフラグとしか思えないことを言うアクア。そんなこと言ってると…その直後湖の一部が揺れる。そして姿を現したそれは地球のと比較しても変わらない程度の大きさのワニ。一つ違うとすれば群れで行動していることだ。
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浄化開始から4時間後
その場には一生懸命魔法を唱える叫び声に似たアクアの声が響いていた。
「『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!」
アクアが入っているオリを大量のワニたちが囲みオリをガジガジと齧っている。
「『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』っっ!ギシギシいってる!ミシミシいってる!オリが、オリが変な音立ててるんですけど!」
そもそもこの作戦の前に一応他の作戦を立てていたんだがアクアが『いやよ!今回は私が活躍できる場所なの!これだけは譲れないわ!!まぁないと思うけど、もし私が助けを求めたらその作戦でいいわよ!ないと思うけどね!』と言っていたためずっと俺たちは手を出さずにいた。
「『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』っっ!!…わああああーっ!メキッていった!今オリからなっちゃいけない音がなった!!」
「アクアー!ギブアップならそう言え!」
「いやよ!ここまできたら一人で………。…ハチマン!!助けてええええええええ!!!」
アクアがそう叫ぶのを確認すると
「小町!!」
小町に合図を送り、例の作戦を開始する。
「了解っ!ほい!」
「いいいいいやあああああああっ!!」
小町はオリをつないでいる鎖をもつと自分のもとに一気に引っ張り込む。すると湖にあったオリは猛スピードで陸の方に引っ張られて行き、俺はオリが陸に上がったのを確認すると湖に手を突っ込み
「ふっ!!!!」
思いっきり湖に向かって放電する。すると俺が放った雷が湖全体に広がり、こちらに向かってきていたワニは感電し、死体が湖に浮かぶ。
「…ハチマンのたたかい?は初めて見たんだがすごいな」
素直に感嘆するダクネス。
「ええ…正直一番規格外だと思ってます。持ち前の頭とセンスがいいのでしょう。だいぶ使いこなしてますしね。」
「あいつチートだからなマジで」
ちょっと引き気味に言うめぐみんに悪態をつくカズマ。それと反対に少し誇らしげにしている奉仕部三人。そこに八幡が帰ってくる。
「多分終わった。一応湖に薄い電気張って確認したけど、特に反応もなかったし多分大丈夫だろ」
雷帝を使い過ぎると疲れるんだよなぁ…帰って寝たい…
「そうか、それじゃあアクアを湖に戻すか。おーいアクアー?」
みんながアクアを覗き込むと俺並みに目が死んでる奴がいた。
「ええ…今から浄化してくるわね…コマチ…はこんで…」
「わ、わかりました」
小町は少し遠慮しながら慎重に持ち上げ湖に入れアクアは浄化を開始した。そのあとさらに三時間が経過し、あのあとワニが出てくることもなく無事(?)終わったんだけど
「あ、アクア?もう帰るからオリから出てきてほしんだけど…それとみんなで話し合ったんだが、報酬は全部アクアのものでいい。」
「……おいアクア、いい加減オリから出ろよ。もうアリゲーターはいないから」
カズマの言葉にアクアが小さくつぶやく
「…まま連れてって…」
「何だって?」
「……オリの外の世界は怖いから、このまま街まで連れてって」
……どうやらアクアに相当なトラウマを植え付けてしまったらしい。
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「ドナドナドーナードーナー……」
「……そのアクア、ものすごく注目されてるから、やめてほしんですけど」
「そ、そうだぞ。街中でボロボロのオリに入って膝抱えた女を運んでる時点で、注目集めてるんだからな?というかもう安全だから出てこいよ」
「嫌。この中こそが私の聖域よ。外の世界は怖いからしばらくでないわ」
すっかりワニのことがトラウマになったアクアは街についても未だにオリの中に引きこもっていた。俺たちは当然注目を浴び、そんな生暖かい視線を向けられながらギルドに向かっていた。頑なにオリから出ようとしないアクアを引っ張っているため、俺たちの歩みも遅い。最初は小町と俺で引こうと思ったのだがよく考えて欲しい、可愛い女の子が人の入ったオリ引いてるんだよ?やばくない?そんなことを歩きながら考えていた時
「め、女神様っ!?女神様じゃないですかっ!何をしているのですか、そんな所で!」
いきなり叫び出し、折に引き篭もっているアクアに駆け寄り鉄格子を掴む男。そして掴んだと思ったら、いとも容易くオリをねじ曲げた。
(おいおい誰だよバケモンかよ)
俺たちが唖然とする中、その見知らぬ男は、アクアに近寄り手を……
「……おい、私の仲間になれなれしく触るな。それに貴様何者だ?」
「ええそうね。気軽に触らないでもらえるかしら。アクアさんの反応を見る限り、明らかに知り合いではないでしょう」
手を取ろうとした男に、雪ノ下とダクネスが詰め寄った。こいつ普段は変態なのに、何でこんな時こんなかっこいいの。普段もそうであってください。アクアに詰め寄ろうとした男は、二人を一瞥するとため息を吐いた。まるで厄介ごとには巻き込まれたくないけど仕方ないと言った感じで。男のその態度にうちのパーティーメンバー全員がイラッとしていた。
(…おかしいなぁ…まだ暑いはずなんだけどなぁ…)
明らかにこっちの空気が凍り付きつつある中、カズマがアクアに話しかける。
「……おい、あれお前の知り合いなんだろ?女神様とか言ってたし。お前があの男を何とかしろよ」
アクアは一瞬は?みたいな顔を浮かべたが
「……ああっ!女神!そう、そうよ、女神よ私は。それで?女神の私にこの状況をどうにかしてほしいわけね?しょうがないわね!」
そう言いながらようやくオリから出てきて男の顔を見ていた。てかおい女神なの忘れんなよ。
「……あんた誰?」
知り合いじゃねえのかよ。…相手すごい驚いてんじゃん…絶対知り合いだろお前忘れてるだろ
「何言ってるんですか女神様!僕です御剣響夜ですよ!あなたに、魔剣グラムを頂いた!!」
それでもなお、首を傾げているが俺はピンときた。名前的に日本人だろうし概ねアクアに特典をいただいたんだろう。ミツルギと名乗ったその男は、茶色い髪をしたイケメンで漫画の主人公みたいなやつだった。それに美少女連れてるし、リア充滅びろ。
「ああっ!いたわね、そう言えばそんな人も!ごめんね、すっかり忘れてたわ。だって結構な数の人を送ったし、忘れたってしょうがないわよね!」
どうやら、ミツルギの説明で思い出したらしい。相手若干顔引きつってるけど。
「ええっと、お久しぶりですアクア様。あなたに選ばれた勇者として、日々頑張ってますよ。職業はソードマスター。レベルは37にまで上がりました。……ところで、アクア様はなぜここに?というか、どうしてオリの中に閉じ込められていたんですか?」
ミツルギはチラチラとこちらを見ながら言ってくる。こいつ俺らが閉じ込めたと思ってやがるな。まぁそう見えるのが普通なんだろうけど。それにこいつ多分ほんとのこと言っても信じないだろうし…カズマも同じ考えなのか顔をしかめている。それでもカズマはこれまでのことを全て説明するが……
「…ばかな。ありえないそんなこと!君は一体何考えているんですか!?女神様をこの世界に引き込んで!?しかも、今回のクエストではオリに閉じ込めて湖に浸けた!?」
ミツルギはいきりたちカズマの胸ぐらを掴む。それをアクアが慌ててとめる。
「ちょちょ、ちょっと!?いや別に、私としては結構楽しい毎日を送ってるし、ここに一緒に連れてこられたことは、もう気にしてないんだけどね?それに、魔王を倒せば帰れるんだし!今日のクエストだって、怖かったけど途中でハチマンが助けてくれたし、結果的には誰も怪我せず無事完了したわけだし。しかも、クエスト報酬三十万よ三十万!それを全部くれるって言うの!」
その言葉にミツルギは憐憫の眼差しでアクアを見る。
「……アクア様、こんな男達にどう丸め込まれたのかは知りませんが、今のあなたの扱いは不当ですよ。そんな目に遭って、たった三十万…?あなたは女神ですよ?それがこんな……。ちなみに、今はどこに寝泊りしているんです?」
今にもキレそうなミツルギに少しイラつく。
「え、えっと、みんなと一緒に、馬小屋で寝泊りしてるけど…」
「は!?」
ミツルギはカズマの胸ぐらを掴む手に力が込められる。俺は流石に見過ごせず止めようとするが
「おい、いい加減にその手を離せ。お前はさっきからなんなのだ。カズマとは初対面のようだが、礼儀知らずにも程があるだろう」
…ほんとこうゆう時かっこいいな。普段物静かなダクネスは見るからに怒っていた。見れば、めぐみんは詠唱をはじめ、由比ヶ浜はスライムを召喚し、雪ノ下と小町はそれぞれ杖と拳を構えていた。って待てほんと待ってシャレになんない死ぬ全員死ぬ。ミツルギは手を放すと、興味深そうに観察する。
「…クルセイダーにアークウィザードが二人…?しかも未知の職業まで…それに随分と綺麗な人達だ。パーティーメンバーには恵まれているんだね。それなら尚更だよ。君は、アクア様やこんな優秀そうな人達を馬小屋で寝泊りさせて、恥ずかしいと思わないのか?それにそこの君も、さっきから何も言わないし何一つ関わろうとしない。さっきの話じゃ君は最弱職、君も似たようなものだろう」
…自分がばかにされるのは構わないが何も知らないくせにずけずけとこちらに干渉するその姿勢にまた少しイラっとする。そしてさらにこいつは俺をイラつかせる。
「君達、今まで苦労したみたいだね。これからは、僕と一緒に来るといい。もちろん馬小屋なんかで寝かせないし、高級な装備品も買いそろえてあげよう。というか、パーティーの構成的にバランスが取れていていいじゃないか。ソードマスターの僕に、僕の仲間の戦士と、そしてクルセイダーのあなた。僕の仲間の盗賊と、アークウィザード二人にアクア様。そして未知の職業の子二人。まるであつらえたみたいにぴったりなパーティー構成じゃないか!」
すると身勝手な提案に後ろの女性陣はひそひそ話を始めた。
俺はダメだとわかっているが聞き耳を立てる。
「ちょっと、やばいんですけど。あの人本気で引くくらいやばいんですけど。ていうか勝手に話を進めるしナルシストも入ってる系で、怖いんですけど」
「ええそうね。少し関わりたくはない人種ね。それになんだか比企谷君に声が似ててムカつくのだけれど」
「確かに似てる…。でもヒッキーはもっとこう陰気な感じで…」
褒めてるんだよな?それは褒めてるんだよな?
「そうですよお兄ちゃんの声であんな爽やかやってるとちょっとうざいです。きついですよ。お兄ちゃんはもっと根暗でネチネチしてますよ」
おいなくぞお前
「確かにそうだな。それにあの男はなんだか生理的に受け付けない。攻めるより受けるのが好きな私だが、あいつだけはなんだか無性に殴りたいのだが」
「撃っていいですか?あの苦労知らずの、ハチマンもどきのスカしたエリート顔に爆裂魔法を撃ってもいいですか?」
案外大不評なミツルギさん。ていうかボロクソすぎだろ俺だったら泣いてるぞ確実に。と、アクアが俺とカズマに近寄り
「ねえ、もうギルドに行こう?私が魔剣あげておいてなんだけど、あの人には関わらない方がいい気がするわ」
まぁ俺もそれに賛成し、カズマも賛成したので
「あー。満場不一致で拒否みたいだ。じゃあ俺たちは行くから…」
俺とカズマは馬を引き、立ち去ろうとした。
……。
「どいてくれます?」
カズマの前に立ちはだかるミツルギにカズマはイライラしながら告げる。でもこいつの性格的に絶対
「悪いが、僕に魔剣と言う力を与えてくれたアクア様を、こんな境遇の中に放ってはおけない。君達にはこの世界は救えない。魔王を倒すのはこの僕だ。アクア様達は、僕と一緒に来た方が絶対にいい。」
「いい加減にしろ」
「「「「「「「!?」」」」」」」
小町達は少し怒気を孕んだ俺の声に驚く。
「お前がこっちの事情の何を知ってる。何お前といる方がみんな幸せって決めつけてんだよ。さっきから聞いてるとそれはお前の意思だろう。一つもこいつらの意思が入ってねえじゃねえか。それに俺から見たらアクアはあんたと話してるよりもカズマと話してる方が幸せそうに見えるけどな」
「……そんなのわからないじゃないか」
「わからない?さっきパーティー全員が拒否って言ったはずだけど。聞いてなかったのか?」
「……なら、君かそこの君は僕と勝負をしよう。僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ、君が勝ったら、何でも一つ、言うことを聞こうじゃないか」
こいつはやっぱり何もわかってない。まぁこうなることはわかってたけど俺も
「よし乗った!!じゃあ行くぞ」
いい加減俺と同様我慢の限界だったのだろう。その言葉を聞くや否やカズマはすぐに襲い掛かった。カズマは左手で怪しい動きをしながら、右手で剣を鞘ごと引き抜き、殴りかかる。
「えっ!?ちょっ!待っ…!?」
慌てたミツルギだが、咄嗟に腰の魔剣を抜き、それを横にしてカズマの剣を受け止めようとする。するとカズマは剣が当たる寸前に、左手を突き出し
「『スティール』ッッッっ!」
そう叫ぶと同時にカズマの手には魔剣が握られており、魔剣でガードするはずだったミツルギの頭にカズマは剣でおもっきり強打し、ミツルギは気を失った。
「ひ、卑怯者!卑怯者卑怯者卑怯者ーっ!」
「あんた最低!最低よ、この卑怯者!正々堂々勝負しなさいよ!」
ミツルギの仲間はカズマを罵倒する。
「…最上位職が最弱職に勝負を挑んだ時点で卑怯なのはどっちだ。その実力差を埋めるための作戦だろ。文句を言うのはお門違いじゃないか?」
初対面の女子の前で噛まないよう気をつけながら言う。
「「うっ…」」
そう俺に言われ黙り込む二人。
「それじゃあ俺の勝ちってことで。こいつ、負けたら何でも一つ言うこと聞くって言ってたな?それじゃあ、この魔剣をもらっていきますね」
「なっ!?バ、バカ言ってんじゃないわよ!それに、その魔剣はキョウヤにしか使いこなせないわ。魔剣は持ち主を選ぶのよ。既にその剣は、キョウヤを持ち主と認めたのよ?あんたには、魔剣の加護は効果ないわ!」
…へぇ〜、そんな決まりがあったのか。まぁ奪われて好き放題されたら意味ないもんな…
「……マジで?この戦利品、俺には使えないのか?せっかく強力な装備を巻き上げだと思ったんですけど」
「マジです。残念だけど、魔剣グラムはあの痛い人専用よ。装備すると人の限界を超えた膂力が手に入り、石だろうが鉄だろうがさっくり切れる魔剣だけれど。カズマが使ったって普通の剣よ」
「…じゃあな、そいつが起きたら、これはお前が持ちかけた勝負なんだから恨みっこなしだって言っといてくれ。…それじゃ、ギルドに報告に行こうぜ」
「ちょちょちょ、ちょっとあんた待ちなさいよっ!」
「キョウヤの魔剣、返して貰うわよ。こんな勝ち方、私たちは認めない!」
二人の少女がカズマにそう言うと、カズマは手をなんかすごい動かし方をしながら
「別にいいけど、真の男女平等主義者な俺は、女の子相手でもドロップキックを喰らわせられる公平な男。手加減してもらえると思うなよ?と言うか女相手なら、この公衆の面前で俺のスティールが炸裂するぞ」
カズマの言葉に少女達は後退り、俺たちは
「「「「「「「うわぁ……」」」」」」」
単純に引いた。
__________________________________________________________俺たちは借りていたオリを引きずって、ようやくギルドへと帰ってきた。そして俺はクエスト完了報告をしにいき、カズマは魔剣を手にとある所に向かった。
「……ハチマンって怒るとあんな感じなんですね。正直ちょっと怖かったです」
「確かに怖かったわ。カズマさんの比じゃないくらい」
「そうだな。その何というかあのハチマンにちょっと攻められ…じょ、冗談だ!だからそんな目で見ないでくれ!」
パーティーメンバーの冷たい視線に狼狽えるダクネス。
「でも私たちも彼が怒るところなんて見たことないわ」
「ね、ヒッキーは優しいから」
「今回は多分小町達のために怒ってくれたんでしょうけどね」
「「「「「え?」」」」」
「多分今回小町達が物みたいに意思を聞かずに、扱われていたことにイラついてたんでしょう。どうせ、聞いたところで単にムカついたとしか言いませんけど。」
「…やっぱ優しいですねハチマンは」
「ん?俺がどうかしたか?」
「「「「「「っ!?」」」」」」
「?」
「ななな何でもないですよええ」
「そそそうだぞハチマン乙女の会話に入ってくるんじゃない」
「お、おおすまん」
なんか怒られたんですけど…
「あー、そのアクアさんちょっとお話が…」
「?」
首を傾げるアクアにオリの弁償が必要なことを告げる。それに二十万かかることも…すると
「な、何でよおおおおおおっ!」
「……どうしたんだよ一体」
そこにカズマが顔をしかめながら帰ってくる。
「借りたオリは私が壊したんじゃないのに!?何で私が弁償しないといけないのよ!」
しばらく文句を言っていたが、諦めたのか明らかにテンションが落ち込む。さすがにちょっとかわいそうなので
「…アクア」
「…ん?」
「ほれこれ」
俺は財布から二十万近くをだし、アクアに渡す。
「!!ハ、ハチマンサン!本当にいいの!?」
「ま、まぁ今回はお前悪くないしな。別に好きな時に返せばいいよ。それにキャベツ討伐の金は手につけてないから結構あるし」
そう実はキャベツ討伐のお金は大して手もつけてないし、一応貯めてはいるが使い道は特になく、そんなに困らないのだ。
「ありがとうハチマン様!!神よ神!ハチマンは神よ!」
女神に神様認定されたんですけど…
「あの男、今度あったらゴッドブローを喰らわせてやるわっ!そしてオリの弁償代払わせてやるから!!」
とアクアが悔しげに嘆く中。
「ここにいたのかっ!探したぞ、佐藤和馬!腐り目!」
ギルドの入り口には例のミツルギさんとパーティーメンバーが立っていた。確かに名前教えてないけど腐り目って…てかカズマも名乗ってない気がするんだけど…ミツルギは俺たちに近寄り机を叩く。
「佐藤和馬!君の事は、ある盗賊の女の子に聞いたらすぐに教えてくれたよ。パンツ脱がし魔だってね。腐り目のことは聞くと濁されたけど。それに君は他にも、女の子を粘液まみれにするのが趣味な男だとか、色々な人の噂になっていたよ。鬼畜のカズマだってね」
「おい待て、誰がそれ広めてたのか詳しく」
エリス様ぁ…プライバシーもくそもねえ…まぁ俺のこと言わなかったから全然いいですけど。取り敢えず俺はカズマをなだめる。
「落ち着けカスマ」
「いやでも…待てお前今何つった」
「……アクア様。僕はこの男から魔剣を取り返し、必ず魔王を倒すと誓います。ですから……。ですからこの僕と、同じパーティーぐぶえっ!?」
「「ああっ!?キョウヤ!」」
アクアは無言でミツルギを殴り飛ばす。殴られた理由がわからないミツルギは狼狽え、アクアはそんなミツルギに近寄り胸ぐらを掴み上げると。
「ちょっとあんたオリ壊したお金払いなさいよ!おかげで私が弁償することになったんだからね!五十万よ五十万、あのオリ特別な金属と製法で出来てるから高いんだってさ!ほら、さっさと払いなさいよっ!」
これあれだよな?女神と勇者だよね?恫喝するチンピラといじめられっ子とかじゃないよね?ミツルギは殴られたところを押さえ、アクアに気圧されながら素直に財布からお金を出す。ミツルギから金を受け取ったアクアは、俺の方を向いて静かに親指を立て、メニューを取り注文を始めた。やめろこっち向いてグッジョブすんな。共犯みたいだろ。
「……あんなやり方でも、僕の負けは負けだ。そして何でもいうことを聞くと言った手前、こんなことを頼むのは無視がいいのも理解している。…だが、頼む!魔剣を返してはくれないか?あれは君が持っていても役には立たない物だ。君が使っても、そこらの剣よりは斬れる、その程度の威力しか出ない。……どうだろう?剣が欲しいのなら、店で一番いい剣を買ってあげてもいい。……返してはくれないか?」
…こいつ虫が良すぎる。勝負を仕掛けておいて負けたら返して欲しいなんて舐めてるとしか思えない。どうやら雪の下も気に食わないみたいで杖を構えていた。だからやめろマジでほんとに
「私を勝手に景品にしておいて、負けたらいい剣を買ってあげるから魔剣返してって、虫がいいとは思わないの?それとも、私の価値はお店で一番高い剣と同等って言いたいの?無礼者、無礼者!仮にも神様を賭けの対象にするって何考えてるんですか?顔も見たくないのであっちへ行って。ほら早く、あっちへ行って!」
メニュー片手にシッシと手を振るアクアの言葉にミツルギは青ざめる。ていうかアクアが正論を言っている…?
「ままま、待ってくださいアクア様!別にあなたを安く見ていた訳では……っ!」
慌てるミツルギにめぐみんが袖を引く。
「……?なにかな、お嬢ちゃん……、ん?」
ミツルギの注意を引いためぐみんはそのままカズマを指す。…?…あれあいつ…
「…まず、この男が既に魔剣を持っていない件について」
「!?」
そいやここにくる前にどっか行ってたなまさか…
「さ、佐藤和馬!魔剣は!?ぼぼぼ、僕の魔剣はどこへやった!?」
顔中脂汗塗れでカズマに縋り付くそんなミツルギにカズマが一言
「売った」
「ちくしょおおおおおおおおお!」
ミツルギは泣きながらギルドを飛び出した。
「……一体何だったのだあいつは。……ところで。先ほどからアクアが女神だとか呼ばれていたが、一体何の話だ?」
まぁ…あんだけ騒げば当たり前か。どうするのが気になり二人を見ると何やら目を合わせ頷く。おそらく話す気なんだろう。
「今まで黙っていたけれど、あなたたちには言っておくわ。……私はアクア。アクシズ教団が崇拝する、水を司る女神。…そう、私こそがあの、女神アクアなのよ…!」
「「ていう、夢を見たのか」」
「違うわよ!なんで二人ともハモってんのよ!」
…そりゃこうなるよな…
その時
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっっ!』
緊急か…最近多いな…
「またかよ…?最近多いな、緊急の呼び出し」
次から次へともうやだ。…サボろうかな、サボってもバレねえだろ。
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!…特に、冒険者サトウカズマさんとヒキガヤハチマンさんとその一行は、大至急でお願いします!』
え、名指し?さぼれないじゃん…。…待てよ俺らが名指しってことはまさか…
後書き
今回も読んでいただきありがとうございます。とうとう次回はデュラハン戦です。自分は学生で受験生なので投稿頻度は低くなるかもしれませんが待っていただければ幸いです。ではまた次回お会いしましょう。