この素晴らしい奉仕部に祝福を!   作:149

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#12 自意識の化け物の変化

「知らない天井だ…」

 

俺は目が覚め人生で言ってみたいセリフを一応言ってみる。そして周りをよく見回すと

 

(…いや知ってるわ宿屋だわ)

 

ここがどこかわかり、周りを見ても誰もいないためもう一回寝ようとすると手に変な感触が伝わる。その感触が気になり手元を確認するため体を起こす。

 

(…?痛くない…?)

 

一応雷帝の反動を覚悟していたが、特に痛みも感じられない。それどころか体が軽い。

 

(もう治ったのか?まぁそれはおいおい確認しよう…)

 

取り敢えず手に伝わる感触が気になり手を見ると、ヌメヌメとした青いやつがいた。

 

(…?スライム?…由比ヶ浜のか?)

 

そこには前見た時よりも二回りぐらい小さいスライムが俺の手に巻きついていた。それを暫く眺め、不意にスライムを軽く撫でてみると、気持ちよさそうに身を捩り、俺に擦り寄る。

 

(何だこいつ可愛いな)

 

俺は夢中になり、スライムを撫で回し続けていると部屋の扉が勢いよく開かれる。

 

「「「「「「ヒッキー(お兄ちゃん)(比企谷君)(ハチマン)っ!」」」」」」

 

扉からは由比ヶ浜、雪ノ下、小町が勢いよく入ってきて、後ろからカズマ、めぐみん、ダクネス、アクアが入ってくる。みんな何かを言っていたが正直バラバラで何言ってるかわかんない。そしてびっくりした俺は少しきょどる。

 

「お、おおどうした」

 

勢いよく入ってきた先頭の三人は俺と目が合うと少し固まり、だんだんと目に涙を溜め、無言で俺に飛びつき抱きついてくる。

 

「え、いやちょっ」

 

一応抵抗しようとしたが

 

「「「黙って」」」

 

「はい……」

 

速攻で黙れと言われ俺はされるがままにされる。だって怖いんだよ。そして暫く時間が経つ。その間俺はずっと抱きしめられているわけで

 

(…やばい雪ノ下達の胸がすごく当たってる。めっちゃ押しつけられてて正直やばい。まじでやばい。何とは言わんけど、やっはろーしちゃう。社会的に殺されちゃう。まずい無心だ無心、無心になろう。もしくは別のことを…そうだ。あたってるのは材木座材木座材木座…………おえっ…)

 

俺は意識を逸らすためにとんでもないことを考え少し吐き気を催していると

 

「…て」

 

「…ん?」

 

「…撫でて」

 

「え、いや…」

 

急に言われ少し困るが

 

「だめ…?」

 

「まかせろ」

 

小町に上目遣いで頼まれ即答し、頭を撫でる。小町に上目遣いで頼まれて断れるはずがない。断る奴がいるならそいつは人間じゃないそして俺がこ…ちょっとあの世に行かす。俺が撫でると小町は気持ちよさそうに目を細め、尻尾をみると真上にピンと立てている。すると

 

「…」

 

その様子を見てた由比ヶ浜は俺の空いてる手を取り、そのまま俺の手を自分の頭に置き、無言で撫でろアピールをする。

 

(…撫でろってこと?え?後でセクハラとかで訴えないよね?え?)

 

俺が困惑していると上目遣いで俺を見て

 

「してくれないの…?」

 

そう言われ、ぎこちないながらも手を動かす。…断れるわけないだろ。すると由比ヶ浜も気持ちよさそうに目を細め、少し身を捩る。心なしか顔も赤い気がする。

 

(顔赤くねこいつ…まぁでも多分俺の方が赤いんですけどね!くそ!)

 

二人を暫く撫でていると雪ノ下がこちらに近づき由比ヶ浜を撫でてる手に頭を擦り付ける。

 

(え?雪ノ下さん?嘘でしょ?)

 

上目遣いで俺のことを見てずっと手に頭を擦り付けている。見れば由比ヶ浜と小町も俺のことを見ている。

 

(やれってこと?やれってことなの?)

 

少し迷い雪ノ下の頭にも手を置き撫で始めると少し目を細めていた。何だこいつ可愛いかよなどと考えていると俺に見られるのが嫌なのかそれに気付き少し顔を俯かせる。やっぱ嫌だったか?と思い、よくみると耳まで真っ赤になっている。気持ちよさそうな顔を見られるのが嫌だったのだろう。

 

(何なのこいつらほんとに…多分俺も顔やばいことになってるし…)

 

そんな光景をダクネスとアクアとめぐみんはずっとニヤニヤしながら眺めてくる。覚えとけよこいつら…後カズマその手に持っているナイフはおさめようか今すぐ。そして俺は三人が満足いくまで頭を撫で続けた。

__________________________________________________________

 

「…満足か?」

 

「「「うん…///」」」

 

満足した三人は俺から離れ頬を染めている。俺はと言うと撫で疲れてゲンナリしていた。何なで疲れるって。

 

「いやぁいいものを見せてもらったな」ニヤニヤ

 

「ええそうですねデレるハチマンも見れたことですし」ニヤニヤ

 

「ハチマンさん撫でてるとき超真っ赤だったんですけど!あれでも私撫でてた時顔赤くなかったような…」ムスッ

 

「「「「///」」」」

 

その指摘に俺を含め四人とも顔を赤くし、俺はそっぽを向く。純粋に恥ずかしさがこみ上げてきたからだ。

 

(何やってんだろ俺…黒歴史確定じゃん…)

 

「て言うかよく俺が起きたってわかったな」

 

俺がそう言うと由比ヶ浜が答える

 

「それならこの子のおかげだよ」

 

そう言い魔法陣からスライムを出す。

 

「…?二体目をテイムしたのか?」

 

今この場には俺の手元のスライムと今由比ヶ浜が召喚した二体のスライムがいた。

 

「いや?違うよ?ほらスーちゃん元に戻って」

 

由比ヶ浜がそう言うと二体のスライムは近寄り、混ざり合うと一つのスライムになった。

 

(なるほど一体のスライムが分裂してたのか。)

 

「それで二体のスーちゃんは、分かれてるけど繋がってる?えっと……まぁそんな感じでヒッキーが起きたら私たちのところにいるスーちゃんに振動するようにお願いしたの。それでさっきみんなで集まってたらスライムが振動して…急いでここにきたらヒッキーが起きてて…嬉しいのといろんなのが混ざって…あぅ…」

 

俺に抱きついたことを思い出したのかまた顔を赤くする。みると他の二人もまた赤くしている。そんな反応されるとこっちまで心にくるんですけど…そんな空気を暫く続きおさまったときに

 

「ヴヴン…ところでハチマン、お前がやってたあれはなんなんだ?」

 

カズマが咳払いをし、話題を変える。その話題が出た直後空気が一気に凍る。俺は冷や汗を流しながらゆっくりと女性陣の方を見ると目の色が変わっている。さっきまで顔を赤くしていた三人も表情を変え、こちらを向く。怖いめっちゃ怖い。

 

「そういえば忘れていたわね……比企谷君、説明…してくれるわよね?」

 

「はい…」

 

俺は『雷帝』に関して説明を始めた。筋繊維一本一本に意識して電撃の力で刺激し、機動性と力を強制的に引き上げる技だと。痛みが生じることは伏せて説明をした。だけど

 

「お兄ちゃん…それだけじゃないよね?」

 

小町の一言に俺は更に冷や汗を流す。

 

「…これだけだぞ?」

 

なんとかごまかそうとするが

 

「「「「「「…」」」」」」

 

「…小町にお兄ちゃんの嘘がわからないとでも?」

 

そう言い俺の目をじっと見つめる。他のみんなもそれだけじゃないだろと言わんばかりに俺をじっと見ている。俺は打つ手がなくなり無言になっているとずっと顎に手を当て何かを考えていたであろう雪ノ下が口を開く。

 

「…そのあなたの『雷帝』という技は、筋繊維にそのまま刺激を送っているのよね?」

 

「あ、ああ」

 

「……あなたあれを使うと激痛がはしるのではないのかしら」

 

「っ!?」

 

俺は図星を突かれ、驚き思わず表情に出す。

 

「図星…ね」

 

「…ユキノどう言うことなんだ?」

 

ダクネスがそう聞くと雪ノ下は説明を始めた。

 

「全部推測なのだけれど…その『雷帝』を使った直後の動き、あれはどう見ても人間の域を超えてるわ。確かに電撃で刺激すれば身体能力は上がるとは思うけれど、それにしてもあの動きは人並み外れすぎているわ。それにあんな動きをして体がついていけるはずがないはずよ。動いた瞬間に骨は折れて、筋肉はボロボロに傷付き裂けるはずよ」

 

それを聞くと由比ヶ浜とアクアを除き、確かにという風に頷く。

 

「だから普通はあんな芸当出来ないのだけれど、もし肉が千切れようと骨が折れようともその怪我の速度を上回る回復力があったら…」

 

「…!まさか…」

 

「ええ比企谷君にはその上回る回復力があるのよ。だからあんな動きをして、体に無茶を強いて骨が折れても、筋肉がボロボロになろうとも、その回復力で全てを無かったことにする。恐らくその繰り返しで成り立つ技なのよ。でもそんなことをすれば治るとはいえ一瞬痛みがはしるわ。しかもあんな動きをするくらいだから身体中に。そしてその技を使う限り永続的に」

 

それを聞いた全員が身を震わせる。恐らくその痛みを想像したのだろう。なんか別の意味で震えたやついる気がするけど気のせいだ。そして身を震わせた後、全員が俺をみる。

 

「ここまでがあなたの技のデメリットの推測なのだけれど、どうかしら?」

 

そういい俺の方を向く。流石としか言いようがない程完璧に見破られている。俺は図星で押し黙るしか無かった。

 

「……ユキノ、デメリットってことはメリットもあるんですか?その…超パワーとか以外に特に見当たらないと思うのですが…」

 

「ええ…推測が正しければあるわ。この効率最優先の男がこれだけなはずがないもの。……それでメリットに関してなのだけれど、比企谷君をよく見たらわかるのだけど少しゴツくなってないかしら?」

 

雪ノ下がそう言うと全員が俺の方を見る。

 

「…確かに言われてみれば筋肉がついてるような…?」

 

「ええ確かに言われてみれば少しゴツくなった気もします」

 

俺をじっくりと眺めた後、全員が納得したように声を上げる。

 

「ところで貴方たちは筋肉の超回復ってものを知ってるかしら」

 

「…筋肉の…?…………なるほど」

 

「…めちゃくちゃ強引なことするなお前」

 

カズマとダクネスは分かったのか呆れた顔でこちらをみる。その他の奴らは、ずっと頭に?を浮かべている。それを見兼ねて雪ノ下は説明を始める。

 

「筋肉の超回復は、筋トレによって破壊された筋繊維を休息によって回復し、筋トレ前よりも筋肉が肥大化する現象のことよ。そして比企谷君のあの技は、筋繊維が千切れて回復千切れて回復を繰り返し、筋肉の超回復を無理やり引き起こしているのよ。それに使えば使うほど筋肉は補強されて力と強度は増し筋繊維は千切れにくくなり、デメリットである痛みも少なくなる。しかもその『雷帝』を使った時の能力もあの時よりも上がるはずよ。徹底的に自分への被害を無視した効率重視の技ね。魔王と言う存在を倒す事を目標とするのなら、恐らく最善の選択なのでしょう。それでも………」

 

そこで沈黙が発生した事で俺は顔を上げ雪ノ下の顔を見ると、雪ノ下は目に涙を溜めこちらを睨んでいた。

 

「それでも…私は使うことに反対よあんな技。貴方は知らないでしょうけど、気絶した後ずっと吐血して鼻血も出して止まらなかったのよ。アクアさんが回復魔法をかけても無反応だしほんとにどれだけ私達があの時心配したと思ってるの」

 

状況を聞けば、どうやら俺は気絶した後口からも鼻からも血が出て止まらなかったらしい。そのあとアクアが泣きながら俺に回復魔法をかけるが、血も止まらず反応もないため、小町と由比ヶ浜と雪ノ下は泣きながら俺を呼び、めぐみんとダクネスは悔しそうに顔を歪め、カズマは俺の血を輸血するためいろんなところを走り回ったらしい。そしてその雪ノ下の言葉に、他のみんなも次々と反応を示す。

 

「私も反対だよ。今の説明を聞いても難しくてよくわかんなかったけどヒッキーが危ない事をしてるのは伝わった。…私はヒッキーに危ないこともして欲しくないし傷ついても欲しくないの。なのに人の心配を無視して危ないことするんだからもうやめてよぉ…」

 

「小町も絶対反対です。あの時止めなかった事をどんだけ後悔したと思ってるの…心配したと思ってるの…」

 

二人も目に涙を溜めらがら俺を見つめ、小町は俺の服の裾を掴み、由比ヶ浜は目をぬぐっている。

 

「私も反対だ。聖騎士として仲間が傷付くのは見過ごせないからやめてほしい」

 

「私も反対です。確かにすごい技でしたけどデメリットがデカすぎますし仲間が傷付くのは見たくないですし、心配するのでやめてください。あとダクネスは騎士としてみたいなこと言ってますけど、ここ数日常にそわそわして落ち着きがなかったんですよ」

 

「なっ!?めぐみん!それは…。それを言うならめぐみんだっていつもの日課の爆裂魔法に行かずにスライムをじっと見ていただろう!」

 

「なっ!?言ってくれましたね!?心配だったの一言くらい言えばいいのにツンデレみたいなことしてるからでしょう!」

 

反対の意思を伝え勝手に取っ組み合いを始める二人。

 

「ハチマンさんが傷つくのはなんか嫌。だから私も反対よ」

 

真面目な表情で言う。

 

「俺も反対だな。めぐみんが言ったようにデメリットが大きすぎる。それにそんなことしなくても、うちのパーティーには雪の下さんと由比ヶ浜さんに小町もいるんだ。今のままでも十分強いし、無理して使う必要もないだろ」

 

一人一人の発言を聞くたびに何故か心がざわつく。そして取っ組み合いをしていた二人は、いったん休戦し、アクアも交えて抗議する。

 

「「「何故そこに私達の名前がないんだ(ないのよ)(ないんですか)」」」

 

そう三人がハモって言うとカズマは眉間をピクピクさせ、顔が引きつっていた。そして

 

「今の所活躍が不安定すぎるんだよ!そんなん頭数に入れられるか!何自分たちは戦力ですけどみたいな顔してんだ!この爆裂バカと筋肉バカとバカ女神!」

 

「な…!バカって言った!カズマさんがバカって言ったー!…ハチマンさんハチマンさんカズマったら恥ずかしくて言わないけどダクネスみたいにここ数日ずっとそわそわしてたのよ」

 

「待てカズマ別にそんな筋肉マッチョというわけでは…というかアクアそれはあんまり言わないでほしいんだが…」

 

「ほう!私をバカにするとはいい度胸ですね!受けて立ちましょう!…黒より黒く…」

 

「うるせぇよ!てかめぐみん詠唱始めんな!お前の場合シャレに何ないんだよ!あとそわそわしてねえし!」

 

ぎゃーぎゃーとやかましくなる。いつも通りの光景に雪ノ下達も笑みが溢れている。そんな中俺は怒られることを覚悟して喋り始める。

 

「善処は…する。でもいざと言うときは使うこれだけは譲れない」

 

俺の言葉に全員が一瞬呆気に取られため息をつく。あれ怒られない?

 

「まぁ、お兄ちゃんだし、はなから止められると思ってないし…」

 

「ええそうね…全くこの男は」

 

「まぁヒッキーだしね…」

 

違うなこれ呆れられてるだけだな。

 

「ハチマンは優しいですからね。どうせ止めても無駄だろうなとは薄々思ってましたよ」

 

「やめてほしいのは変わらないがな」

 

「ほんとお人好しだなお前」

 

「そうよそれに少しは私たちの意見に耳を傾けなさいよ」

 

(アクアにだけは言われたくないんだけど)

 

「お兄ちゃんこれだけは言わせてもらうけど、みんなほんとにずっと心配してたんだよ。それだけは覚えておいて」

 

年を押し俺にそう伝える小町。俺はそれを聞き、また心がざわつく。

 

「取り敢えずハチマンも起きてみたところ大丈夫そうだし、準備してギルドに行こうぜ」

 

「あ、あぁ」

 

他の全員も賛同し、部屋を出ようとするとまた心のざわめきが増す。そこで気付く。

 

(あぁ、あんなに認められて、求められて、心配されて、嬉しかったんだ。だからずっと心がざわついていた。勘違いだと馴れ合いだと切り捨てればそれまでなのかもしれない。でも俺はもう疑えない疑いたくない。これが俺の嫌っていた馴れ合いだとしても嬉しかったんだ。)

 

自分の思っていることに気付いたと同時に俺は、全員を呼び止めていた。

 

「ま…まってくれ」

 

「「「「「「「?」」」」」」」

 

急に俺に呼び止められた七人は俺の方を振り返り、首を傾げる。俺はいきなり呼び止めたが何を言えばいいか分からず少し逡巡する。俺は覚悟を決め、もう言いたいことを言えばいいと開き直り、全員の名前を呼ぶ。

 

「雪ノ下、由比ヶ浜、小町、めぐみん、カズマ、ダクネス、アクア」

 

改めて名前を呼ばれ七人はさらに怪訝な顔をする。いざ言うとなると身構えてしまう。それでもなんとか言葉を紡ぐ。

 

「その…心配をかけた。心配してくれて嬉しかった。だから…」

 

ただ簡単なことを言うだけなのに心臓がうるさい。これ以上ないほどに血圧が上がってる気がする。でもその反対に表情は自然と変わっていく。

 

「だからその…ありがとう」ニコ

 

この時自分の表情は見えなかったけど俺は人生で初めて自然に笑えた気がした。

 

「「「「「「!?///」」」」」」

 

(…誰だこいつ)

__________________________________________________________

 

ハチマンの準備が終わるのをまっている間宿屋の前で女性陣がさっきのことで話をしていた。ちなみにカズマはハチマンの部屋に残っていた。

 

「さっきのなんなのかしらほんとに」

 

「ええほんとにその…色々破壊力が凄かったです」

 

「普段笑ってもふひひみたいな感じなのにあんな感じで笑えるんだ…」

 

「私は笑った顔すら見たことなかったんだが、普段とのギャップが凄かった。それに…」

 

「何より目が…」

 

「ええ…本人が自負している通り腐ってないとイケメンなのね…」

 

「あぁ…私は面食いではないんだが、少し…いやなんでもない」

 

そんなダクネスに奉仕部三人はまさかと言う視線を送る。

 

「い、いやほんとになんでもないんだ。ほんとだぞ?」

 

さらに疑いの視線を送る三人。その視線に居た堪れなくなりそっぽを向くダクネス。

 

「まぁあれは正直ただのたらしですよ。私も面食いではありませんが、あのハチマンは…」

 

「俺がどうかしたか?」

 

「ひゃあああ!」

 

ハチマンにタイミング悪く話しかけられて素っ頓狂な声を出すめぐみん。

 

「あなたは毎度毎度なんなんですか!タイミングというものがあるでしょう!」

 

「お、おうすまん」

 

謎に怒られ疑問符を浮かべるハチマン。

 

「はちまんさんはちまんさん実はめぐみんとダクネスが…はぐぅ」

 

話の内容を話そうとするとダクネスとめぐみんはアクアの口を塞ぎ

 

「な、なんでもないなんでもないよなめぐみん!」

 

「ええ!なんでもないですよ!気にしないでください!」

 

「そ、そうか元気だな」

 

若干引き距離を取る。

 

「お兄ちゃんほんとに体大丈夫?」

 

「おう今のところ異常はない大丈夫だぞ」

 

「そっかよかった」

 

小町と雪乃と結衣は一安心と言うふうに息を吐く。

 

「それじゃ行くか…」

 

__________________________________________________________

 

冒険者ギルドにつきドアを開けるとむせ返るような匂いが鼻をつく。思わず顔をしかめ、日本人組もカズマ以外同様に顔をしかめる。人の熱気と酒の匂いが、俺が開けた入り口に向かって流れ出してくる。魔王軍幹部を討ち取った記念に連日連夜冒険者達が宴会を開いているらしい。

 

「あ!カズマ達だ!…おいハチマンもいるぞ!」

 

ギルドに足を踏み入れた俺たちに気付いた一人の冒険者が周りに聞こえるように声を張る。それに呼応するかのように喧騒は倍以上に膨れ上がる。

 

「おー!英雄の登場だ!」

 

「ハチマンデュラハンとの一対一あれは男として燃えたぜ!すげえなお前!」

 

至る所から称賛の声が、飛び交う。正直目立ちたくない俺は、すごい肩身の狭い思いをしていた。すると後ろから背中を叩かれる。

 

「今日くらい胸をはれ、お前はそれだけすごいことをしたんだ。それと…」

 

俺を叩いたダクネスはそう言うと、俺の耳元まで顔を近づけ吐息が俺の耳にかかる。

 

(近いいい匂い近い近い)

 

吐息がかかるだけでくすぐったいがそれに耐えていると

 

「あの時助けてくれてありがとう」

 

ボソボソと俺の耳元で喋る。俺はすぐ飛び退きダクネスと距離を取る。くすぐったいし恥ずかしいしいい匂いだしやめてほしい。あとそれ耳元じゃないとダメ?俺は耳が弱点なんだよ。そんな思いを込めて恨めしく見ていると悪戯が成功した子供のような表情を浮かべる。

 

「仕返しだ」

 

(俺なんかしましたかね…てか何で耳弱点なの知ってんの?小町か?小町だな?)

 

「何やってんだお前ら…早く報奨金をもらいに行くぞ」

 

呆れたように俺たちを見ながら声をかけ、全員でカウンターに向かう。カウンターに着くと俺たちを見て受付のお姉さんが微妙な表情を浮かべた。

 

「ああ、その…。サトウカズマさんにヒキガヤハチマンさん一行、ですね?お待ちしておりました。」

 

何となく違和感を覚え嫌な予感がする。

 

「あの……。まずはそちらの方々に報酬です。」

 

お姉さんは、そう言って小さな袋を俺とカズマ以外に手渡した。あれ、俺たちのは?疑問に思っているとお姉さんが。

 

「……あの……。ですね。実は、お二方のパーティーには特別報酬が出ています」

 

「え、何で俺たちだけが?」

 

カズマがそう呟くとどこからともなく答えが聞こえてくる。

 

「今回のMVPがいなきゃデュラハンなんて倒せなかったんだからな!」

 

その声にそうだそうだと騒ぎ出す酔っぱらい達。取り敢えず俺とカズマは前に出て代表として、特別報酬を受け取ることに。受付のお姉さんがこほんと一つ咳払いをして

 

「えー。サトウカズマさん及びヒキガヤハチマンさんのパーティーには、魔王軍幹部ベルディアを見事討ち取った成績を称えて……。ここに、三億エリスを与えます」

 

「「「「「「「「さっ!?」」」」」」」」

 

俺たちは思わず絶句し、周りの冒険者もシンと静まり返る。そして

 

「おいおい三億ってなんだ、奢れよ!」

 

「うひょー!カズマ様ハチマン様おごっておごってー!」

 

冒険者の奢れコールが始まる。するとカズマが

 

「おい聞け!お前らに一つ言っておくことがある!俺は今後、冒険の回数が減ると思う!大金が手に入った以上、のんびりと安全に暮らしていきたいからな!」

 

「おい待てっ!強敵と戦えなくなるのはとても困るぞっ!?というか、魔王退治の話はどうなったのだ!?」

 

「私も困りますよ、私はカズマについていき、魔王を倒して最強の魔法使いの称号を得るのです!」

 

騒ぎ抗議の声を上げる二人の声をかき消すほど盛り上がっていくギルド内。まぁ俺も正直働かなくていいなら働きたくないしカズマに賛成ではある。そんな中、申し訳なさそうに受付のお姉さんが一枚の紙を手渡してくる。それはゼロがたくさん並んだ紙。少しどころかとてつもなく嫌な予感がする。

 

「ええと、ですね。今回、カズマさん一行の……、その、アクアさんの召喚したたいりょうのちずにより、まちのいりぐち付近の家々が一部流され、損壊し洪水被害がでておりまして……。」

 

俺はここまで聞き嫌な予感は確信に変わり、回れ右し去ろうとするとダクネスに肩を掴まれる。やめろ聞きたくないんだ俺は。

 

「……まぁ、魔王軍幹部を倒した功績もあるし、全額弁償とは言わないから、一部だけでも払ってくれ……と……」

 

受付のお姉さんはそう告げると、目を逸らしそそくさと奥に引っ込んでいく。カズマの手に握られている紙を見て、まずめぐみんが逃げ出した。次いでアクアが逃げ出そうとするがカズマがアクアの襟首を素早く掴む。俺も逃すまいとめぐみんのマントを掴む。俺たちの雰囲気で請求の額を察したのか、周りの冒険者達も目を逸らす。請求を見ていたダクネスは俺と俺が掴んでいるめぐみんを引きずりながらカズマの方に手をおき

 

「報酬三億。……そして、弁償金額が三億四千万か。……カズマ。明日は、金になる強敵相手のクエストに行こう。」

 

ダクネスはそんなことを言いながら、心底嬉しそうないい笑顔で笑いやがった。こうして俺たちの借金生活が始まるのであった。……ふざけんな!!

 

 




後書き
投稿遅れてすいません。今回は雷帝のデメリットメリット長々と書いてありますがまた設定で簡単にまとめようかなと思っています。総武勢の参加については方法次第では概ね賛成という意見が多かったです。もしこの先参加させてほしい!という意見が増えるようでしたら、少し考えます。それといつもいいねやコメントをくださる皆さんありがとうございます。とても励みになっています。これからもどうかよろしくおねがいします。ではまた次回お会いしましょう
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