誰が為に鼓動は鳴る   作:断花葵

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無印編 ~覚醒~
prologue~あの日の貴方へ~


 ―――――――――夢を見ている。

 

 

 いや、夢を見ていたというのが正しいか。

 子どもの頃はなんにでもなれると信じていた。

 プロスポーツ選手はもちろんのこと医者や花屋に歌手、そして()()()()()()()

 画面上のヒーローは孤独に戦いながらも弱きを助け悪を挫き皆を助けていくその姿。

 私もそんな者たちに憧れていた。

 しかし、いつの日か大人になるとその幻想は消え現実へと歩んでいった。

 

 

 ――――――――――場面は切り替わる。

 

 

 私はあの頃の夢が忘れられず警察官になっていた。

 少なからず『正義のヒーロー』に近い存在。

 職務を全うし仲間と助けながら悪を逮捕していく、そんな日々に私は満足していた。

 だが人生は何が起きるかは分からない。

 

 「しっかりしてください先輩!」

 

 遠くから誰かの声が聞こえる。

 

 「目を覚ましてください!俺の顔分かりますよね?!」

 

 嗚呼……視界が霞んでいるのかうまく焦点が合わない。

 だがこの声は分かる、私の最初の部下の声だ。

 なんだそんなに慌てて、昇進したってのにそんなんじゃ駄目だな。

 

 「先輩今から救急車来ますから!それまで持ちこたえてください!」

 「おい■■■■!!死ぬんじゃねえぞ!!」

 

 警部の声も聞こえてくる。

 皆して声を荒げているが一体どうしたのだろうか、うまく喋れないのか掠れた音しか喉から出せない。

 何とかして声を出そうとするが代わりに出てくるのは血だった。

 

 「■■―■!無―――じゃ――ぞ!」

 

 だんだんと聞こえなくなっていく。

 そんな悲しい顔をしないでくれ、私はそれが嫌だから警察官になったのに。

 力が抜けていくのか瞼も閉じていく。

 私は死ぬのか、だが後悔はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当にそうだろうか?

 後悔ならある。私は……否、俺は『正義のヒーロー』になりたかった。

 それがどんな戯言かは俺自身が一番わかっている。

 それでも諦めずにはいられなかった。

 俺は……死にたくない。

 

 「なら、この手を掴みますか?」

 

 警部でもなく後輩でもない声がした。

 俺はなんとか力を振り絞って声がした方向に視線を合わせた。

 そこにいたのは……

 

 「この手を取れば貴方は世界を救わなくてはならない。」

 

 紅渡。『()()()()()()()()』の主人公がそこにはいた。

 だが、彼は本来ならここにはいない人物のはずだ。

 そんな疑問もつゆ知らずか彼は話を続けた。

 

 「力を授かれば貴方の人生は世界の為に使わなければならない、それは=死ともいえる。このまま死んでいったほうが幸せなのかもしれない、それでも貴方は僕の手を取りますか?」

 

 目の前に差し出された手。

 確かに彼の言葉が本当ならその手は死神の鎌と同じかもしれない。

 それでも……俺は……

 彼の手を迷うことなく掴む。

 

 「ありがとう、それでは契約成立です。貴方にこの力を授けましょう。」

 

 その途端、体の芯から何かが入っていくような感触がした。

 暖かいような冷たいようなそんな気がした。

 

 「では行きなさい、あなたに幸運があらんことを。」

 

 俺は立ち上がりその言葉に頷いた。

 その瞬間、どこからか光が溢れ彼を包んでいった。

 逆光でよく分からなかったが彼の後ろには19人の人物が立っていた。

 ……そうか、彼らもいたんだな。

 迫ってきた光が自分も包む。

 

 その日、ある世界で一つの命が消えた。

 そしてまた、ある世界で一つの命が灯った。

 

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