懐かしい夢を見ていた。
あの日の出来事から早十年、俺は小学三年生としてこの世界で暮らしてきた。
なぜあの世界の俺ではないのかというと彼が言うにはそのままの状態だと情報が大きすぎて世界から修正がかかってしまうそうだ。
そのためなるべく少なくしなければいけないということで俺が覚えているのはあの出来事と『世界を救う』、その言葉しか覚えていなかった。
その為最初の頃は今の現実とのギャップにひどく悩まされた。
狂人と化していなかったのはひとえに親父のおかげだろう。
朝食を食べながら時計を見るとあと少しで登校の時間に針を伸ばしていた。
俺は急いで食べ、準備へと向かった。
「おーい、映司くん!」
学校行きのバス停で待ってると向こうから髪を両端に結わえた少女がやってきた。
家まで走ってきたのだろうか息を絶えながら俺の所まで走ってきた。
「おはようなのは、今日は寝坊しなかったな。」
「にゃはは、そんなことしないの。おはよう、映司くん。」
彼女の名前は高町なのは、親父が彼女の父の知り合いらしく昔から家族ぐるみでお世話になっていた。
「そんなこと言ってるけど……こっち向きなよ。制服のリボンがずれてるぞ。」
なのはのリボンを直しながらそう言うと彼女はその顔を赤くしていた。
「んにゃ!大丈夫だよ映司くん!自分でやるから平気なの!!」
「いいから、ほらこっちをちゃんと見なって。」
慌てる彼女を取り押さえながらリボンを直す。
……これでいいだろう。
「ハイ終わり。次はちゃんとしてから登校してきてね。」
「そういうのはもっと大人になってからというか、私はいつでもいいんだけど……」
……なんだかどこかへトリップしてるようだ。
俺は悶絶している彼女を横目にバスが来るのを確認していた。
「ほら早くしてなのは、もうバス来たよ。」
「駄目だよ映司くんそんな所でこんなことしちゃ……ってほえ?」
まだどこかへ行ってしまったなのはの手を掴みバスへと乗り込む。
やれやれ……朝からこんな調子か。
「おはようなのはちゃん、映司君。」
「まったく、あんた達朝からイチャイチャするんじゃないっての。」
バスの運転手に挨拶すると一番奥の席から二人の声がした。
「ようアリサ、すずかもおはよう。」
「おはようアリサちゃん、すずかちゃん。別にイチャイチャなんてしてないの!」
金髪の少女の名前はアリサ・バニングス、どこぞの大企業の一人娘で明るく活発な子だ。
そしてその隣に座っているのは月村すずか、名家の少女でアリサとは対照的に物静かな子だ。
二人はなのはと親友同士でいつも一緒にいる。
俺?俺とは……まあ友達かな。
ぶっちゃけこいつらといると他の男子の視線の視線が刺さる。
まあ容姿がこんなに整っているとそうなるのも当たり前か。
「どうしたの映司?さっきから私たちの方をじろじろ見て。」
「大丈夫映司君?具合でも悪いの?」
考え事をしていたせいか二人が俺の顔を覗いていた。
「いや何にもない、心配してくれてありがとうな。」
「当たり前でしょ!友達なんだからするに決まっているでしょ!」
「そうだよ、でも平気なら良かった。」
俺の返事を聞いて安堵する二人。
その横でジッとした目で見てくるなのは。
「映司くんてば二人に照れちゃって。アリサちゃんたちの方がイチャイチャしてるの。」
「そんなことないぞ、なあ二人とも。」
なぜか不機嫌ななのはをなだめようと二人にそう聞く……が。
「っ///はあ?そんなことあるわけないでしょ!」
「私はそんなことないかなあ///」
「ってあれ?」
なんだこの状況。
「うう……映司くんの馬鹿!」
なんで俺が怒られなきゃいけないのか。
授業が終わった後の昼休み。
俺たちは昼食を食べに屋上に来ていた。
「将来の夢ね……」
さっきの授業は将来の夢について話していた。
将来の夢か……、俺の使命でもある『世界を救う』こと。
これは将来の夢といえるのだろうか。
「アリサちゃん達は将来の夢はもう結構決まっているんだよね。」
「まあ、あたしはお父さんの会社を継ぐことだし。」
「私は機械系のことが好きだから……工学系の学校に行くことかな。」
「そっか……二人ともすごいなあ……」
将来について考えていると二人から小学生とは思えない凄い答えが返ってきた。
……こいつら本当に小学三年生か?
「で、映司はどうなのよ。」
考えているとアリサから声をかけられた。
「どうってなにが?」
「話聞いてなかったの!あんたの夢よ!なのはがないっていうから参考までに聞きたいんだって。」
「うん、教えてほしいな映司くん。」
なのはも聞いてくる。
本当のことを言ったところでな……
適当にごまかすか。
「将来の夢?そんなこと考えたこともないな。まあいつかは見つかるんじゃないのか。」
「……あんたも同じこと言うのね。」
そういうとアリサがこっちを向いて。
「じゃあ、あたしの秘書になりなさいよ!」
「……はあ?」
なんてことを言うんだこの娘は。
「それはダメなの!映司くんは私の喫茶店で働いてもらうの!」
お前もかなのは……
本人のことなんて関係ないのかなのはとアリサが言い争っている。
「……すずか、何とかあいつらをとめてくれないか。」
「しょうがないなあ。」
そういうとすずかは言い争っている二人に向かって。
「駄目だよなのはちゃん、アリサちゃん。映司君は私の執事になって貰うから。」
「「それはダメ!!」」
まさかのすずかも伏兵だったとは……
まあ……こんな日常も悪くはないかな。
三人娘が言い争っているのを無視して空を見上げた。