誰が為に鼓動は鳴る   作:断花葵

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先の出来事に少年は何を思うのか。
答えは見つからない。


3話 なにも出来なかった、次こそは

 「で、あれは一体何なんだ。」

 

 現場から逃げるように俺達は帰り道を歩きながら先程の出来事の話をしていた。

 

 「その前に名前を聞いてなかったね。私、高町なのはっていいます。」

 「ああ……五代映司だ。」

 「えっと、ぼくはユーノ・スクライアです。」

 

 ユーノ・スクライアか……フェレットなのにちゃんとした名前があるんだな。

 

 「じゃあユーノくんっていうね。私の事はなのはって呼んでね、映司くんも下の名前でいいでしょ。」

 「うん……なのは」

 

 なぜか勝手に決められてしまう。

 

 「まあ別にいいけど……」

 「じゃあ映司って呼ぶね、……二人とも助けてくれてありがとう。」

 「ううん、気にしないでね。」

 「俺は何もしなかったしな。」

 

 ユーノが律義に頭を下げながら感謝を述べた。

 

 「さっきの映司の質問に答えるとあれはジュエルシードって言って『ロストロギア』っていう危険な古代遺産なんだ。あれをぼく達の一族が発掘して輸送しているときに事故に遭ってここに散らばったのを探していたんだ。」

 「ロストロギアなんて聞いたことないが……どこの国の出身なんだ?」

 「……ぼくはこの世界の住人じゃないんだ、別の世界からやって来たんだ。」

 

 なんだって?別の世界から来た?

 だが渡さんもこの世界とか言ってたし、きっと色々な世界が存在するのだろう。

 うんうん悩んでいるとユーノが突然声を上げた。

 

 「お願いします!ジュエルシードを集める為に力を貸して下さい!」

 

 必死の表情をするユーノ。

 ……いきなり言われてもな。

 

 「うんいいよ、私もジュエルシードを探すのを手伝うの」

 「おい。」

 「でも、今日みたいに危険なことだってあるんだよ?」

 

 考える暇もなく答えるなのは。

 もう少し考えろよ。

 

 「……まあ俺も出来ることならやってやるから、大丈夫だろ。」

 「なのは、映司……ありがとう!」

 

 泣きながらユーノは答えた。

 

 「そういえばなのは。」

 「うん?」

 「お前こんな時間まで出歩いていいの?恭也さんとか心配するんじゃないのか?」

 

 辺りに沈黙が走る。

 

 「ああーーー!どうしよう映司くん!」

 

 なのはがようやく気付いたように俺に近寄った。

 

 「近いわ、……適当に誤魔化せ。」

 「無理だよ!……映司くんも一緒に来て?」

 

 なんでさ。

 あの人なのはが関わるとすぐ暴走するからな……

 

 「分かった分かった、俺も弁明してやるから。」

 「やったあ!」

 

 はあ……

 

 

 「……で、何か言いたいことはあるか映司?」

 「いや、なんにもありません……」

 

 なのはの家に戻るとそこには恭也さんと美由希さんが玄関に立っていた。

 何故か俺だけ恭也さんに連行され当人のなのははというと桃子さんと美由希さんにユーノを紹介していた。

 

 「まあ、二人とも無事だったから良かったよ。」

 「当然に決まってるだろ父さん、修行しててそんじょそこらの相手にやられたらメニューを増やすところだからな」

 

 士郎さんの言葉に安堵する

 ビバ平穏!これ以上きついメニューはやばいって!

 実をいうと俺は恭也さんに志願して一緒に修行をしている。

 俺用に作られた特訓メニューだがそれがきついのなんの。

 

 「ご心配をおかけしました。それでは俺はここで……」

 

 自分の家に帰ろうとすると桃子さんに止められる。

 ……以外に力強いなこの人。

 

 「もう夜も遅いし映司君泊まっていきなさい。」

 「そうだな、家も遠いし。」

 「いや、いいですよ。」

 

 士郎さんにも言われるが遠慮して帰ろうとする。

 だがしかし、前に進めない。

 

 「映司くんは私の家に泊まるの嫌……?」

 「おい、なのはを泣かせる気か?」

 

 悲しむなのはの後ろで恭也さんが鬼の形相でこちらを見てくる。

 

 「分かりましたよ……」

 「そう、良かったわ!映司君はなのはの部屋でいいわね!」

 「ってちょっと!」

 

 急なカミングアウトに恭也さんがそのままの顔で俺に近づいてくる。

 

 「なのはに手を出したら……分かっているよな?」

 「分かってますよシスコン恭也さん。」

 

 グーで殴られた。

 

 

 「そういえばユーノ。」

 「どうした映司?」

 

 なのはの部屋で籠の中でくるまってるユーノに質問する。

 なのはは風呂に入っている為この部屋には俺とユーノしかいない。

 

 「俺も魔法とか使えるのか?」

 「うーん、どうだろう。念話が聞こえたなら使えると思うけど……調べてみる?」

 

 ユーノは俺の方へひょこひょこと近寄ると背中に手を当てた。

 それと同時に体の内側がポカポカしてきた。

 

 「はい終わったよ。」

 「おう、ありがとう。」

 

 すぐに終わったのか俺の膝に座ってきた。

 

 「映司にも確かにリンカーコアがあったよ。」

 

 リンカーコアというのは魔力を生成する器官の事らしい。

 

 「でも……正直に言うとなのはの半分ぐらいしかない。」

 「そっか……」

 

 なのはの()()()()()()

 これから分かるのは俺ではなのはの足を引っ張ってしまうということだ。

 

 「でも、なのはがすごいだけだから!映司も十分に才能はあるよ!」

 「はは、ありがとよ。」

 

 慰めてくれてるのか慌てて言ってきた。

 分かってはいるけどやはりくるものがある。

 

 「本当はもう一つデバイスがあればいいんだけど……」

 「ないものねだりしても仕方ないだろ。レイジングハートは元々ユーノのものだったんだし。」

 

 ユーノが言うデバイスとは魔法執行の補助をする端末で、レイジングハートみたいに自律思考するものをインテリジェンスデバイスというそうだ。

 普通魔導士はデバイスというのを持っているのだが、

 

 「そういや、ユーノはデバイスなしでも魔法使えていたよな。なんでだ?」

 「あれくらいの魔法なら訓練すれば出来るよ。」

 

 なんとデバイスなしでも魔法は使えるのか。

 

 「なら、俺に魔法を教えてくれ。足手纏いってのもあれだからな。」

 「いいよ、簡単なものなら教えてあげる。」

 

 ユーノと話ながらなのはが戻るのを待っていた。

 

 

 【side なのは】

 「魔法かあ……」

 

 お風呂に入りながら呟く。

 さっきまでの事が嘘のように思えてきた。

 でも頬をつねってみても痛みがあるから本当の事なんだろう。

 

 『はいマスター、ですが私もいます。』

 「そっか、ありがとレイジングハート。」

 

 脱衣所にいるレイジングハートに答える。

 正直に言うとやっぱり怖い。

 でも……

 

 「この力があれば映司くんを守れる。」

 

 頭に思い浮かぶのは自分の部屋にいる少年の事。

 いつも彼に守られてきた。

 今度は自分が守る番だろう。

 

 「そういえば映司くんが泊まるのも久しぶりだなあ。」

 

 必然的にあの頃を思い出す。

 

 

 私がもっと小さかった頃。

 あの時はお父さんが大きな怪我で入院していて働くお母さん達に迷惑をかけないようにいつも公園にいた。

 だけど友達なんかいなくてずっと一人で遊んでいた。

 

 「ふえええん……」

 

 孤独に耐え切れずブランコに座りながら泣いていると、

 

 「大丈夫か?」

 

 横から声がした。

 隣を見ると同じくらいの男の子がこっちを覗いていた。

 私は目を擦るとその子向かって、

 

 「うん、何でもないよ。」

 

 何でもないようにそう言った。

 私はいい子にしなくちゃいけないから。

 

 「そう。」

 

 その子はそう呟いた。

 

 「……じゃあ俺と一緒に遊ぼう。引っ越してきたから友達いないんだ。」

 「……え?」

 

 突然そんなことを言い出した。

 急な発言にびっくりしたけど。

 

 「いいの?」

 「もちろん。」

 

 男の子が私の手を取ると滑り台に向かって引っ張っていった。

 

 

 「あー、楽しかった。」

 

 気が付けば辺りは夕焼けに染まっていた。

 一緒に遊んでいる時間が短いように感じたほど久しぶりに心の底から楽しめた気がした。

 

 「もうこんな時間だ……君は家に帰らなくて平気か?」

 「うん……大丈夫。」

 

 嘘だ。

 本当はまだ家に帰りたくないから公園で待ってるつもりだ。

 

 「そっか。」

 

 黙ってしまう。

 

 「おーい映司!」

 「ちっ、親父だ。」

 

 迎えにきたのだろうか男の子のお父さんが私たちの方へ走ってきた。

 彼のお父さんは元気なの……

 もやもやしていると彼のお父さんが声をかけてきた。

 

 「映司と遊んでくれてありがとう。俺は五代祐樹、君の名前は?」

 「……なのは、高町なのはです。」

 

 答えると何故か悩んだ表情をした。

 

 「高町……まさかあいつの子どもだったとは……こんな時間まで放置とか何してるんだあいつは。」

 

 悶々としている表情を見てると男の子が顔近くまで迫ってきた。

 

 「ああなのはっていうんだ、俺の名前は五代映司。」

 「よ、よろしくなの……」

 

 急な接近にたじろいでいると、

 

 「じゃあ……なのはって呼ぶな、やっとこれで()()だな。」

 「え?」

 

 彼の発言に耳を傾げた。

 友達?私と彼が?

 

 「……私たちって友達なの?」

 「当たり前じゃん、名前を聞いて一緒に遊んだら友達に決まってるだろ?まあ今回は逆だったけど。」

 

 なにいってんだこいつみたいな顔をする彼。

 初めてだ、こんなこと言われるのは。

 

 「もしかして……嫌だったか?」

 「こちらからもよろしく頼むよなのはちゃん!こいつ碌に友達いないからさ!」

 「うっせーよ!」

 

 返事をしなかったせいか祐樹さんと喧嘩する彼。

 

 「そんなことない!嬉しい……!」

 「なら良かった。」

 

 はにかむ彼、その顔は一生忘れないだろう。

 

 

 あの後、映司くんの他にもアリサちゃんやすずかちゃんと友達にもなったりした。

 それでもあの日がなければ私はずっとどこか我慢していたのかもしれない。

 私は彼に救われた。

 だからこそ魔法という力がある今、皆を……。

 

 「よろしくね、レイジングハート。」

 『こちらこそ。』

 

 彼を守るんだ。




少女は覚悟する。
あの日の記憶を思い出して。
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