「やばい遅れる!」
長く家に居たせいかいつもより遅い時間に登校してしまった。
遅刻しないよう学校までダッシュで向かう。
戦った後だと疲れるな……
「よし、まだ先生来てないな。」
教室の近くまで行くとまだちらほらと生徒が立っているのを確認できた。
急いで扉を開けると、
「「「「……」」」」
何故かクラスメイトが俺の方を向いていた。
……どした?
「おい、お前なにしたんだよ?」
「は?」
一番近くにいた生徒から小声でそう質問される。
特に何もしてないんだが……
「よく見ろって!」
今までの出来事を遡っていると焦った声が隣から聞こえた。
訝しげに彼が指さした方向を見ると、
「ふーん、って事は昨日映司はなのはの家にいたのね?」
「そうなの、アリサちゃん!」
「っ、へえ……そうなのね。」
おっと失礼、幻覚でも見ているようだ。
今日は朝から修行だったしな疲れてい「映司君?」……るからなあ。
ギギギとまるで壊れたブリキのように横を向くとそこにはすずかがいた。
「なのはちゃんの話って本当?」
いつもと変わらない彼女。
ところがどっこいオーラというかなんというか良く分からないものが彼女から溢れ出していた。
「えーっと、すずか?」
「質問に答えて?」
有無も言わせてくれない。
これは本当の事を言わないとずっとこのままだな……
諦めて事実を説明する。
「……それについては本当、だけど言い出したのは桃子さんだからな。……他意はないぞ。」
「ふーん。」
疑心の目で顔を覗き込まれる。
おい待てなんか若干瞳が赤くなっているんだが!
それ以上は本気でまずい!
「本当だからな!それに恭也さんがいるの分かってるだろ?」
「そういえばそうだったね。」
うわ、恭也さん出したらすぐ信じやがった。
「映司!なのはの言ってること本当?!」
お次はアリサか。
「なのはの家に泊まった事だろ?本当だけどすずかにも言った通り何が起きた訳でもないからな。」
「ならこれはどういう事よ!」
なのはのケータイをひったくると俺に画面を見せてくる。
なになに?って、
「へ?」
「へえ……これはどういう事かな映司君?」
「なんでなのはと一緒に寝ているのよ!」
騒ぎ出すクラス一同、ええいこんな時ばっか騒ぐなよ!
画面に映し出されたのは寝ている俺の横でなのはが添い寝しているようにしていた写真だった。
は?全く身に覚えがないんだけど?
(ごめん映司……)
二人に迫られていると頭の内側から声が聞こえた。
(ユーノか、お前何か知ってるのか?)
(ごめん映司、僕が止められなかったばっかりに……)
ユーノの念話を元に話を纏めると敷布団で寝ていた俺になのはが横になる。
その後ユーノを使ってこの写真を撮ったのだとか。
しかも第三者視点で撮られている分余程たちが悪い。
「覚悟はいいわね映司……」
「うん、答えは聞いてないよ。」
「お前ら落ち着けって!なのはもなんか言えよ!」
助けを求めると何故か手を貸さずに俺達を見ていた。
「ダガマヂザァン!ナズェミテルンディス!」
別の言語が口から出る。
それでも二人は止まってくれなかった。
「おのれなのはぁ!」
次回、映司死す。
いや死なないから。
♦♦♦
「ふーん、美由希さんがねえ。」
「なんだ、びっくりした。」
あの後何でも言うことを聞くという約束を結ぶとようやく落ち着いてくれた。
後ろでにゃあにゃあ言ってきたなのはにはチョップをあげたが。
結局美由希さんが犯人ということでこの話は終わった。
ごめん美由希さん……何か買ってあげるから許して。
「で?そのフェレット……ユーノだっけ?その子はどうするの?」
「私の家で飼うことにしたんだ。」
飼う宣言されて若干落ち込むユーノ。
まあ……どんまい。
「じゃあ、あたし達はこっちだから。」
「バイバイ。」
「おう。」
「ばいばいアリサちゃん、すずかちゃん!」
車に乗り込むアリサとすずかに別れを告げる。
いつ見ても凄いな……
「じゃあ帰るか。」
「うん!」
帰り道へ歩き出した瞬間、
『キィン!』
少しの間だが空気がガラリと変わった気がした。
なのはを見ると同じように感じていたらしくそわそわしていた。
(ユーノ、今のは?)
(ジュエルシードが発動したんだ。すぐ向かうから!)
念話を終えると俺は急いで、
「分かったかなのは……っておい!」
声をかけようとしたがあいつは先に走っていった。
あいつ……正気か?
俺も後に続くように追いかけた。
♦♦♦
「ハァハァ……ようやく追いついた。」
神社の境内に入るとそこではなのはが既に戦闘を始めていた。
傍にいたユーノに話を聞く。
「おいユーノ!どうなってるんだ!」
「幻獣生物を取り込んでいたんだ、昨日のとは訳が違う!」
「はあ!?あいつは分かってんのか?」
ユーノを叱責するがそれで現状は変わらない。
なのはを助けようとするとユーノに止められる。
「駄目だよ映司!君はデバイスを持ってないし何より魔法はまだ使えないでしょ!行ったら死んじゃうよ!」
そうだ、俺はまだ魔法を使えていない。
「っ、だけど!」
「大丈夫だよ、なのははぼくより凄い魔力を持っている。それにレイジングハートがいるから。」
その言葉に大人しく待つことを決めた。
実際、俺がいなくてもなのはのみでジュエルシードを相手していた。
だが戦いとは不定である。
二人の思いもむなしく彼女は、
「うわあーーーー!」
凄まじいスピードで神社の壁にぶつかっていた。
思考が止まる。
「なのはぁ!」
目の前の敵に突進する。
しかし相手は蠅でも叩くかのように俺をなぎ倒した。
「ぐはぁ!」
「「映司(君)!!」」
二人の声が聞こえる。
だが先程の攻撃が頭に当たったのか意識が朦朧としてる。
……俺はまた死ぬのか、あの時と同じように。
『本当に?』
ああ。
『本当に?』
そうだと言ってるだろ。
『本当に?』
いい加減にしろ。
『本当に諦めるのか?』
……俺は
『あの力を貰ってまでいるのに本当に諦めるつもりか?』
嫌だ、俺は……
「俺は……あいつを守りたい。」
「ようやく覚悟を決めたね。」
目の前に映り出されたのは……
「なら叫びなさい。」
ああ……分かっているさ。
やる事は分かり切っている。
俺がすること……すべきこと。
意識が覚醒する。
♦♦♦
【side なのは】
「映司くん!目を覚まして!」
動けなくなりながらも大声で叫ぶ。
私を助ける為に身を挺してまで立ち上がった。
今はユーノ君があれの気を引いている。
「何とかして助けないと。」
体に無理やり鞭を打って動かす。
さっきのせいか思ったように動かない。
「なのは!」
叫ぶユーノ君。
その方向を見るとジュエルシードが私達の方へ襲い掛かっていた。
ああ……私死んじゃうのかなあ……
目を閉じる。
しかし何時まで経っても痛みが来なかった。
そっと目を開くと、
「……大丈夫かなのは。」
「映司くん……。」
ボロボロになりながらも彼が立っていた。
その瞳はあの日みたいに、炎の様に燃え盛っていた。
「見てろ、今あいつを倒すから。」
そう言うとあれに向かってキックするとポケットから指輪を取り出した。
儀式のように指輪を心臓に持っていく。
私はその光景を黙って見ることしか出来なかった。
「いくぞ……変身。」
眩い光が彼をジュエルシードごと包みだす。
光が収まるとそこにいたのは、
「……綺麗。」
私のヒーローが鎧を纏って立っていた。
少年は覚悟を決める、彼女の為に。