誰が為に鼓動は鳴る   作:断花葵

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今ここに新たなる伝説が。


6話 戦いが明けて

 力を貰ってから俺は全てを救えると思っていた。

 だけどそれは幻で実際は何もできなかった。

 今起きていることは虚構かもしれない。

 それでも……

 

 

 

 (あれは何なんだ)

 

 意思があるのか実体を持った幻獣は目の前の相手に恐れていた。

 先程まで五月蠅い羽虫だった存在が、光に包まれるや否や強大なモノへと進化したではないか。

 幻獣はあれを敵として判断したのか襲い掛かる。

 

 しかし映司はそれに臆せずカウンターを仕掛ける。

 一撃は相手の体を震わすほどの威力だった。

 敵わないと判断したのかそれとも野生の勘か、幻獣は逃げ出そうとするがそれを映司が先回りした。

 

 ……1

 

 幻獣を地面に叩きつける彼。

 先程の仕返しと同じ様に。

 

 ……2

 

 すぐさま立ち上がり吠える獣。

 それはまるで自分を鼓舞している様にもに見えた。

 自分は弱くないと。

 

 ……3

 

 だが獣は聞こえなかった。

 死のカウントダウンが。

 

 「……ライダーキック。」

 

 天から地へと下り、蹴りを入れる。

 その衝撃から地面が揺らぐ。

 気絶したのか幻獣は動かなくなると。

 

 ジュエルシードへと元に戻っていた。

 彼の眼にはもはや何も映ってはいなかった。

 

 

 

 「嘘だ……」

 

 今起きているのは現実なのか。

 あれを映司がやったのか?デバイスもない、魔法も使えない彼が?

 混乱していると電池切れの機械の様に彼が停止した。

 

 「映司くん!」

 

 なのはの後を追い急いで駆けつけるとどうやら突然の魔力使用で体が疲れたのか眠ってしまったようだった。

 彼女が慌てて彼を抱える。

 

 それに……あの姿。

 一見バリアジャケットにも見えたがあれは異質だ。

 鎧姿のバリアジャケットは管理世界でも見たことはあるけど……

 まるで幾重の歴史が重なっていて見ただけで体が動かなかった。

 

 「……とりあえずジュエルシードを封印しないと。」

 

 彼が起きたら話を聞こう。

 

 

 

 ―――夢を見ていた

 

 「また会ったな。」

 

 「ええ、先程の戦いは素晴らしかったですよ。」

 

 思わず苦笑する。

 後ろに気配を感じるがどうにもそちらへ顔を向ける事が出来ない。

 諦めてそのまま話を続ける事にした。

 

 「しかしこれはあくまでリップサービスみたいなものです。次に変身する時は先の様な姿ではありませんので。」

 

 「なんでだ?」

 

 「貴方は確かに覚悟を決めた、ようやくと言っていいほど。しかしあくまでも入り口に立っただけです。本当の覚悟というものを貴方は理解してはいない。」

 「私達の力はそこまで安くはない。」

 

 「……じゃあどうすればいいんだ。」

 

 見えない相手に質問する。

 

 「それは秘密です。……ですがヒントを与えましょう。貴方はこれから様々な選択を強いられますが、抗うことをお勧めします。」

 

 「おい!それって……」

 

 話を聞こうとするが辺りから闇が広がり出す。

 空しくもそれに包まれてしまった。

 

 ♦

 

 「っは!」

 

 意識が覚醒する。

 気を失っていたのかさっきまで戦っていた神社ではなく自分の部屋にいた。

 カーテンから射す光は茜色に染まっていて時間の経過が伺えた。

 先程からやけに腕の方が重いと感じていると。

 

 「むにゃむにゃ……」

 

 俺の手を握ったままなのはが寝ていた。

 ……なんでここにいるんだ?

 

 「なのはがここまで運んできたんだよ。」

 

 下からユーノの声が聞こえる。

 ぴょんとベッドの上に飛び乗ると怒った顔をして。

 

 「なのはも、僕も心配したんだよ。」

 

 「……ごめん。」

 

 そう返すしか出来なかった。

 

 「手伝って貰っている僕が言える事じゃないけど……無茶しないでよ。」

 

 急にしおらしくなる彼。

 俺が悪いのに。

 

 「分かった……次は気を付ける。」

 

 「うん。僕もサポートするから。」

 

 俺の返事に満足したのか話を切り替えた。

 

 「映司、さっきの姿は何だったの?デバイスも持っていたみたいだけど……」

 

 「デバイスは何でか分からないけど。あの姿は……何というか……」

 

 うまく言葉が出せない。

 本当の事を言ってしまっていいのか。

 言えば必然的に関わる事になってしまう。

 

 それは駄目だ。

 

 「……言えない事なら言わなくていいよ。誰だって秘密はあるものでしょ。」

 

 「……ありがとう。」

 

 場が静まる。

 

 「そういえば映司の家族は?この家には誰もいなかったけど……」

 

 「……俺の家族は死んだんだ、昔に。」

 

 「……ごめん。無神経だった。」

 

 「いいよ別に。」

 

 またもや気が落ち込むユーノ。

 そんな彼の頭を撫でながら言葉を続ける。

 

 「母さんは体が弱くて俺を産む時に、親父は事故で俺を庇って死んだ。」

 

 両親は散々だろう。

 自分の息子が本当は別の人物だったのに。

 いつも考えてしまう。いくら世界を救えと言われたからって、本当は……

 

 「俺は……居なかったほうが良かったのかもしれない。」

 

 「そんなことないの!」

 

 いきなりなのはが叫ぶ。

 驚いている俺に詰め寄ると訴えるように、

 

 「そんなこと言っちゃ駄目なの!映司くんが居なかったら私はずっと独りぼっちだった。君が私の希望なの!だからそんな事……言わないでよぉ!」

 

 泣きながら俺に抱きつく。

 ……そっか、俺は彼女の希望だったのか。

 

 「ごめんなのは。」

 

 親父、母さん。

 親不孝者でごめん、だけど俺には。

 

 守る人がいるから。




あとがき―
 きりが良かったので……短くてすみません。
 三人称視点に挑戦してみましたが書くのが難しい(;'∀')
 他にも文章構成を少し変えてみましたがどうでしょうか?
 今回は彼の初バトル&核心に迫る話でした。
 少し触れましたがあくまでも彼は小学三年生であり前世の記憶があるせいかそれに引っ張られてしまっています。
 さて、次回はこの続きを書いたら少し話を飛ばします。
 モチベ維持の為ですが……いいですよね?(笑)
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