・退廃的な擦れた日常
・エセ関西弁注意
湿った煙草を蒸して、広いだけの部屋に息を吐く。京の方から送られてきた手紙には懐かしい女がいた。
「そないな格好でなにしとるん?」
煙草を落とした。幸いにも灰皿に落ちたが、そんなことには気が向かない。あんまりにも懐かしく眺めていたものだから白大福がいるのを忘れていた。それでやっと、言われたことを思い返してそんな言われ方をする様だったろうかと思い、顧みたが、思えば以前この白いのが来た際もこの身なりであった。前の髪は眼を覆う程に伸び、羽織った襯衣は縒れて皺ができている。別段、手前もあれもそういうものは気にしなかったから特に思うこともないけれど、年頃の娘ならば気になることもまた当然なのだろう。だからといってこのガワに弁明などないのだが。
「見て分かるやろ、手紙を読んでるんや」
「手紙ぃ? 誰からの」
「女」
「女って現抜かしてはるんか。文なんて貰えるんなら、なんで私がおるんや」
「なんや、妬いてるんか」
「嫉くか、阿保が。良いから銭出すついでに余りもんも出しぃ」
この大福も成る前とはいえ、十分な味になりはしたが、こういうところで満ち足りない。色も香も育っており、知や言もしなやかだが、それでいて心の広さが欠けている。まあ、それも拾ったときよりはマシだと思うことにして帯革を外す。そこで徐に白い肌が伸びてくるものだから、やはりマシにはなったと考えたが、大福に包まれたのは手紙の方だった。
「あんた、これ持ったままやるんか?」
「せやなぁ、そのまましてもうたらあかんわ」
「ほな、離しぃや」
「いやや、読み終えとらん」
「はあ? ふざけとんのか、ほいならどうするっちゅうねん」
「ほいやから、こうするわ」
空いた手で大福の縁を摘んでいただいた。孔から漏れる餡も溢さずいただいて、上の孔から吸うことすら忘れた白いのが赤く染まるまで続けた。
「……そんなん、ずるいわぁ」
「今日はこれでええよ。お代に紙二つ付けたるわ」
腰が砕けたように寝転がって覚束ない手つきで札を受け取った白大福がそのまま尋ねてくる。
「その女とくっつくんか?」
「くっつかへんよ。あれはええ女やけど、もう直接会うこともないやろなぁ」
「なんでや」
「黄昏と結婚するそうや」
「女やったんちゃうんか?」
「女やったで? でもなぁ、人間が愛せるんは一人やないねん」
「一人やろ、独りや。あんたは手前しか愛してないやないか」
「何言うとんねん、三人も愛しとるわ。あれと手前、そんでなれも幸せになって欲しい思うんが、エゴやなくて愛言うんやったら、きっちり三人とも愛しとる」
「……結局薄情もんやないか」
部屋に染みた白い香りが心にまで伸びる。薄らと感じられる程の風が何故かとても心地よかった。
作品を読んで「何でこの言葉?」みたいな疑問があったら感想欄でお答えします
ちなみに地の文と会話分の間を改行して読みやすくしないのは仕様です