-リュータ・バーニング-
主人公。20歳。東京出身。ジャブロー防衛任務に就いた第7陸戦小隊の隊長にして、士官学校を卒業して間もない新兵。経験は少ないが、それを補い得る砲撃の腕を持つ。オデッサ作戦では陸戦型ガンダムに搭乗し、現在はガンタンクの砲手を担当。階級は少尉。
-ヴィヴィアンヌ・ル・ベーグ-
ヒロイン。17歳。パリ出身。リュータの部下として、ジャブロー防衛任務に加わっている第7陸戦小隊の隊員。兵士を募る広報用として、グラビア撮影に駆り出されていたほどの美女。ガンタンクの操縦手を担当。階級は伍長。
-ソノ・カルマ-
20歳。ニューヤーク出身。リュータ達と共にジャブローの防衛に当たっている連邦軍パイロットであり、若手ながら数々の戦場を渡り歩いてきた。第6陸戦小隊の隊長代理を務めており、ジムに搭乗する。階級は軍曹。
※ターレス名義で活動していた作者の過去作「機動戦士ヘビーガンダム(http://anotheridea.nobody.jp/HeavyG.htm)」の主人公。
第1話 焦熱の爀弾 -リュータ・バーニング-
――人類が増え過ぎた人口を宇宙に移民させるようになり、半世紀以上もの年月が過ぎた頃。地球から最も遠く離れた宇宙都市・サイド3は「ジオン公国」を名乗り、地球連邦政府に宣戦を布告した。
宇宙世紀と呼ばれる時代に起きた、後に「一年戦争」と称される人類史上最悪の大戦である。
30倍もの戦力差を物ともせず、連邦軍を圧倒する人型兵器「
総人口の約半数を、死に至らしめながら。
そして宇宙世紀0079、11月30日。南米に位置する連邦軍本部・ジャブローを舞台とする総力戦が幕を開け、この戦争は大きな分水嶺を迎えるのだった――。
◇
薄暗い洞窟の奥深く。そこから響き渡るキャタピラの駆動音と共に、両肩に砲台を乗せた人型――とは言い切れない機動兵器が現れた。
「ヴィヴィー、近辺に敵影は見えるか?」
「現時点では確認できません。……少尉のお力なら、当然の結果ですよ」
「はは、ありがとな」
その
それら全ては、砲手を務めるリュータ・バーニング少尉によって仕留められた獲物達であった。操縦手を任されているヴィヴィアンヌ・ル・ベーグ伍長は、敬愛する上官の射撃能力を透き通る声で称賛する。
「ま、これくらいはやってのけないとな。『
「……そのようなこと、仰らないでください」
だが。本人が口にしたその
◇
――宇宙世紀0079、11月30日。後に「1年戦争」と呼ばれる、地球連邦軍とジオン公国軍の戦いは佳境を迎えていた。
連邦軍本部ジャブローを攻略するべく、ジオン軍は上空から大勢のMSを差し向けるという、降下作戦を試みていたのだ。連邦軍もこれを迎撃し、この大自然の要塞を舞台とする攻防は、激しさを増す一方となっている。
その渦中。ジャブロー防衛のために出撃した大勢の連邦軍パイロットの中に1人、
「焦熱の爀弾」こと、リュータ・バーニング少尉。士官学校を卒業して間もない新米でありながら、11月9日に決着を迎えた先のオデッサ作戦において、数多の敵MSを撃破した期待の新星――とも、言われている男だ。
例え赤熱するほど銃身が焼け付いても、暴発を恐れることなくジオンの兵を撃ち続けた、彼のあまりに苛烈な戦いぶりからその異名が生まれたのだと言われている。その真相
当時の鬼気迫る彼の戦闘を目撃していた同僚達を中心に、噂は尾鰭に尾鰭を重ねて歪んでいき――いつしかその名は、「己の命すら顧みない真性の狂人」を指す言葉として、浸透してしまったのである。
オデッサ作戦当時、新任の小隊長として赴任した直後、未熟さ故に部下達を全員喪った彼は。ただ己の無力さを呪い、命を削っていたに過ぎない。
こんな時代でもなければ、虫も殺せないような男なのだ。戦友として、彼の人となりを知る者達ならば、狂人だという噂など一笑に付している。
だが。当人と接点を持たない大多数の兵士は噂を鵜呑みにして、彼を避けるようになっていた。
挙げ句の果てには「戦場のどさくさに紛れて、気に入らない上官も殺している」などという噂まで出始めたことで、今では佐官までもが悍ましい化け物を見るような目を向けている。
口実さえあれば、誰もが彼を
それほどの不利益を被っていながら、リュータ本人が噂を否定しようとしていない理由は――今まさに生死を共にしている、彼の部下にある。
オデッサ作戦で隊員達を喪った彼の部下として、新たに着任したヴィヴィアンヌ・ル・ベーグ伍長。彼女はその突出した美貌とプロポーションが仇となり、幾度となく
ウェーブが掛かったブラウンの髪からは、絶えず甘い匂いが漂い。透き通るような白い柔肌と桜色の唇、そして余りにも豊満な胸が、男の情欲を掻き立てる。そんな彼女の容姿は、災難ばかりを呼ぶほどの麗しさだったのである。
新兵を募るための広報用と称して、水着姿での撮影を強いられる――などというのは、序の口。その肢体に喉を鳴らす上官や兵達が、彼女を手に入れようと目論んだのは一度や二度ではない。
彼女自身も
それ以来。彼女を苛んでいた欲深な男達の手が、瞬く間に途絶えてしまったのだ。誰1人として明言はしなかったが、「焦熱の爀弾」という
人が最も恐れるのは、腕力が強い者でも権力者でもない。何をするか分からない、怪物なのである。
だからこそ。リュータは部下達を守れなかった自分への罰として、「爀弾」の名を背負い。その悪名を使ってでも、今度こそ部下を守ろうとしているのである。
「……」
そんな彼の思いを知るが故に。感謝の念ともどかしさを抱えながら、操縦桿を握るヴィヴィアンヌは――憂いを帯びた貌で、前方のモニターを凝視していた。
守られているだけの新兵でいるうちは、想いを告げる資格などないのだと。
『俺達第6小隊はこのまま、残存兵力の排除に向かう。リュータ少尉とヴィヴィアンヌ伍長も、気をつけてくれよ』
「あぁ、分かってる。お前こそな、カルマ」
『おう。……腐るなよ、俺達はちゃんと分かってんだから』
一方。リュータはガンタンクの隣を歩むRGM-79「ジム」に目を向け、そのパイロットである第6陸戦小隊のソノ・カルマ軍曹と通信していた。
先のオデッサ作戦で、「爀弾」と呼ばれるに至ったリュータの戦いに救われた、理解者の1人として。階級の差を超えた、戦友として。
通信を切る間際まで、カルマはリュータを案じるような声を滲ませていた。狂人として扱われてきた男が、その優しげな色に頬を緩めた――次の瞬間。
「――!?」
遥か彼方の闇の果てから、砲撃音が鳴り響く。それがこちらを狙った「敵襲」であることは、文字通り火を見るより明らかであった。
戦闘濃度に散布されたミノフスキー粒子のせいで、レーダーが役に立たない中。有視界での戦闘を強いられているMSパイロット達は、己の五感であらゆる攻撃を察知せねばならない。
「ヴィヴィー!」
「は、はいッ――!」
それは、ガンタンクの操縦手であるヴィヴィアンヌも重々承知していることだが――彼女の回避能力を以てしても、キャタピラの機動力では到底間に合わない弾速であった。
『リュータッ!』
ガンタンクの装甲なら、その一撃を浴びてもすぐに沈むことはない。そうと知りながらも、カルマ機のジムは考えるよりも先に身を挺していた。
視界外から飛んでくる砲弾を両脚に浴びたジムは、地を踏む術を失い前のめりに倒れてしまう。その威力を目の当たりにしたヴィヴィアンヌは、咄嗟にキャタピラを回転させ、岩陰にガンタンクの機体を隠していた。
「カルマッ! ヴィヴィー、カルマは無事か!?」
「パイロットの生存を確認! カルマ軍曹、生きてますっ!」
ヴィヴィアンヌの言葉を証明するかの如く。両脚をもがれたジムは腕の力で身を引き摺り、最後の力を振り絞るように別の岩陰へと退避している。
だが、もはや満足に戦えるような状況ではない。砲撃のダメージなのか無理な退避が祟ったのか、ビームスプレーガンを握る手が震えている。マニピュレーターが故障しているのは、明らかだ。
「カルマ! 直ちにここへ救援を呼ぶ、そこから動くなよ!」
『……へっ、そんなヒマがあるかよ。
「なに……!?」
カルマの言葉に反応した瞬間、リュータはハッと顔を上げる。砲弾が飛んで来た方向から響いて来たのは――キャタピラの駆動音だった。
その時点で、今まで第7小隊や第6小隊が戦って来たMSとは、別物であることは判明している。ザクでもゴッグでも、ズゴックでもアッガイでも、アッグガイでもない。
ならば、ジオン軍戦車の「マゼラアタック」か。確かに先程カルマ機が受けた砲弾の威力は、マゼラトップ砲のそれに近い。
――だが、違うのだ。確かにキャタピラ音が聞こえて来るのだが、マゼラアタックのそれとは全く違う。
オデッサ作戦で何度も同機と交戦して来たリュータやカルマが、聴き間違えるはずもない。暗闇の先から轟く、地を走る重兵器の音。それはマゼラアタックとは、比べ物にならない重々しさを感じさせていたのだ。
「……!?」
「リュ、リュータ少尉、あれって……!」
『おいおい……! ジオンの連中、あんなものここに降ろして何がしたいんだ……!?』
そして、ついに件の重兵器が視認出来る距離にまで接近した瞬間。その姿形を目撃したリュータ、ヴィヴィアンヌ、カルマの3人は思わず絶句する。
マゼラベースより二回りほども大きなキャタピラの上部には、MS-07B「グフ」の上半身。両腕には、マゼラトップ砲と105mmマシンガン。さらに背面の腰部には、ジャイアントバズらしき砲身も窺える。
一度撃破されたMSに、持てる限りの武装を詰め込んで強引に蘇らせた、
「あんなの、見たことありません……!」
『チッ……! こうなったら、動けない俺が食い止めるしかねぇッ! お前らはその隙に後退して、応援を要請しろッ! モルモット隊でもホワイトディンゴ隊でも、ブランリヴァル隊でも何でもいい! こんなイカれた奴を野放しにしておくわけには行かねぇだろッ!』
「カルマ軍曹、そんなことッ……!」
「……ヴィヴィーの言う通りだ。カルマを置いて逃げるわけには行かない。奴は今この場で、俺達の手で倒す」
『な、なんだって……!?』
その現地改修機を見据えるリュータは、カルマの言葉を遮るように――両肩の120mm低反動キャノン砲と、両手の4連装ボップミサイルランチャーを構えていた。
静かに、それでいて力強く厳かに。交戦を宣言してキャノピー越しに現地改修機を睨む、リュータの眼は――上半身を構成するグフのボディを射抜いていた。
――先のオデッサ作戦で陸戦型ガンダムに搭乗し、初陣を飾ったリュータ。彼がその激戦区で遭遇した1機のグフは、他の機体とは比にならない実力の持ち主だったのだ。
部下達を全滅させたそのグフは、リュータ機との一騎打ちに敗れ去ったが――それからも仲間を喪った新任少尉の慟哭が止むことはなく、彼が「焦熱の爀弾」と揶揄される所以に繋がっている。
その時のグフが。見間違えようのない、あの時倒したはずのグフが。件の現地改修機の一部として、蘇っていたのだ。
そして、今まさに。悪名に頼らねば今の部下すら守れない自分にも、理解を示してくれた掛け替えのない戦友を――あの生ける屍が、奪おうとしている。
許せるわけがない。引き下がれるわけがない。それにカルマの言う通り引き下がったところで、ガンタンクの機動性では逃げ切れる可能性は低い。
攻撃は最大の防御。ならばヴィヴィアンヌを守るためにも、あの現地改修機を倒すしかない。それを成し得る砲火は今、己の双肩に懸かっている。
「ヴィヴィー。見ての通り、カルマは戦える状態じゃない。僚機の陽動なしに仕掛けるのはこれが初めてになるが――俺に、賭けてくれるか」
「……わかりました。このヴィヴィアンヌ、リュータ少尉の望まれるままにお応え致します」
『あぁ……クソッ、お前らってホントこれと決めたらテコでも動かねえんだから……!』
それを自覚しているリュータはヴィヴィアンヌと力強く頷き合い、攻撃準備へと移行していく。そんな2人の、色んな意味で
「……ッ!?」
そして。現地改修機に狙いを定めたリュータを運ぶべく、ヴィヴィアンヌが操縦桿を握り締める――その時。
背後から彼らの頭上を飛び越していく、複数の機影がその存在を露わにしていた。識別反応は、連邦軍。
『……あ、あんた達は』
その機影の横顔を目の当たりにしていたカルマは、思わぬ
「……まさか!」
「リュータ少尉、この人達って!」
それを理解した瞬間。リュータも瞠目し、ヴィヴィアンヌはつぶらな瞳を輝かせていた。
当人だけが、知らなかったのである。
――「焦熱の爀弾」は狂人などではないと知る理解者は、カルマ1人ではなかったのだということを。
キャラ募集の締め切りが5月29日なので、完結はそれ以降になります。暫しお待ち下さいませ(´・ω・`)