機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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第1話からの登場人物-

-リューコ・タカスギ-
 18歳。京都出身。士官学校の「繰り上げ卒業」を果たした名門・タカスギ家出身の才媛であり、スタイル抜群で生真面目な美少女。ビームスプレーガン装備のジムに搭乗する。階級は少尉。
 ※原案はMrR先生。

-ミツヒサ・ヤマダ-
 28歳。京都出身。「繰り上げ卒業」を控えている士官候補生達に最後の訓練を課していた質実剛健な教官であり、彼らを逃すために単身でジオン軍のエースに挑み掛かっていた。鹵獲機のザクIIS型に搭乗する。階級は大尉。

-ジラハ・イモータル-
 30歳。サイド3出身。「十指」の精鋭達を護衛するための特殊部隊「パーブ」の隊長であり、京都基地の壊滅という任務に忠実である一方で、非情に徹し切れない一面も持っている。琥珀色を基調とする専用のザクIIJ型に搭乗する。階級は中尉。
 ※原案は影騎士先生。



外伝 キョート・フラワーズ -0079年11月20日-
第1話 京都の護者 -ミツヒサ・ヤマダ-


 

「な、何ということだッ……! こんな、こんなことがあっていいのかッ!? この歴史ある都が、こんなッ……!」

「ここはもうダメです、逃げましょうッ! ……ちくしょうッ、ジオンの奴らめぇッ……!」

 

 由緒正しき寺が、歴史ある町が、火の津波に覆い尽くされ、ただの消し炭と化していく。月夜の空を煌々と照らすその業火から逃れようと、大勢の人々が着の身着のままで駆けずり回っていた。

 

「あ、あいつら、あんな近くで暴れてるぞッ! に、逃げろぉおおッ!」

「きゃあぁあッ!」

 

 阿鼻叫喚となりながらも、懸命に生きようとする彼らの遥か後方では、鋼鉄の巨人達が互いの命を刈り取らんと激しく銃を撃ち合っている。その足元に横たわる無数の骸など、気にも留めていない。

 だが、それも当然なのだろう。僅か一瞬でも敵から視線を外そうものなら、その瞬間に「撃破」される。巨人の乗り手たるMSパイロット達が生きているのは、そういう世界なのだから。

 

 ――宇宙世紀0079、11月20日。地球連邦軍がオデッサを制圧してから、10日近くが過ぎていたこの頃。

 

 西暦の時代から長い歴史を積み重ねてきた、極東の古都――「京都」は、苛烈なる戦火の海に飲み込まれようとしていた。その地の文明も、歴史も、文化も土足で踏み荒らし、焼き尽くしていくジオン独立戦争の余波は、この都にまで及んでいたのである。

 

『貴様ら……一体どれだけ、この京都を燃やせば気が済むんだッ! これ以上の狼藉は、この俺がッ……ミツヒサ・ヤマダが絶対に許さんぞッ!』

 

 その侵攻を食い止めんと抗う、連邦軍京都基地のMSパイロット――ミツヒサ・ヤマダ大尉は、伝統ある都すら焼き払わんとするジオン軍のMSに向けて、怒りの咆哮を上げていた。

 彼が搭乗している鹵獲機ことMS-06S「ザクIIS型」は、かつての同胞に刃向かうかのようにヒートホークの切っ先を向けている。だが、京都基地の壊滅を目的に動いていたジオン軍の機体は、自分と同じ一つ目(モノアイ)の眼光を前にしても、全く怯んでいない。

 

『……だったら、こんなところに基地なんか造ってんじゃあねぇ。俺達の弾だって、関係ねぇ奴らを素通りするようには出来ちゃあいないんだからよ』

 

 それどころか、この京都を襲撃していたMS部隊の隊長機――MS-06J「ザクIIJ型」のパイロットは、呆れた様子でため息すらついていた。琥珀色を基調とする彼の愛機は、満身創痍のミツヒサ機に対してほとんど傷を負っていない。

 両陣営の機体はすでに隊長機を除く全機が撃破されており、今は双方の筆頭格が「一騎打ち」を繰り広げている状態なのだが。この京都基地を守護する連邦軍パイロットの代表たるミツヒサは、すでに瀕死であった。

 

 ジオン地上軍屈指のエースパイロット集団、「十指(じゅっし)」。

 その護衛と露払い(・・・)を主任務とする特殊部隊「パーブ」を率いていたジラハ・イモータル中尉の強さは、彼の部下達を倒してきたミツヒサをも遥かに上回っていたのである。

 

(……カーテナ、イクール、コルヴォ。皆、奴に殺られちまったようだな。スティレットの奴は辛うじて離脱出来たようだが、当分は戦える状態じゃねぇだろう。まさか、鹵獲機のザクを相手に一騎討ちに臨む羽目になるとはな。……たった1機で我が「パーブ」を壊滅の危機に叩き込むような強者が、こんな極東に潜んでいやがるとは思わなかったぜ)

 

 この京都を戦場とする死闘の中で次々と部下を失い、唯一生き残っている最後の同胞とも離れ離れになってしまったジラハも、奪われる苦しみを知る者の1人だ。生まれ故郷を火の海にされたミツヒサの胸中が、決して分からないわけではない。

 「十指」の命を受け、京都基地を市街地もろとも壊滅させることになったジラハとしても、この戦いは不本意なものであった。部下達を失ったのも、大勢の民間人を巻き込んでしまったことへの報いなのかも知れない。内心でそう自嘲しながらも、彼は「パーブ」としての責務を果たさんとしていた。

 

 せめて、同じ十字架を背負わされた同胞達の無念だけは、死ぬ前に晴らしておかねばならない。今はそれのみが、彼の背を押しているのだ。

 

(奴ら……「パーブ」とか言ったな。かの「十指」の護衛を担う部隊だという話だが、噂を遥かに凌ぐ強さだ……! しかもこのザク、俺が倒してきた他の奴らとは「格」が違う……! だが、例え俺の命に代えても「教え子達」に手を出させるわけにはいかんッ! 奴だけは必ず、相討ちになってでも仕留めねばッ!)

(「十指」の懐刀……それが俺達「パーブ」の使命であり、誇りだ。見てろよカーテナ、イクール、コルヴォ、スティレット。このジラハ・イモータル、お前達の想いを決して無駄にはさせん)

 

 この京都に存在する連邦軍基地の壊滅を目的とする「十指」の懐刀として、彼にも果たさねばならない任務がある。

 散って行った同胞達の仇討ちだけが理由ではない。ミツヒサがそうであるように、ジラハにも決して譲れないものがあるのだ。

 

『うぉお、おおおぉおッ!』

『……奪って、奪われるのが当たり前。それが戦争ってものよ』

 

 やがて、長い睨み合いの果てに。スラスターを噴かした2機のザクは、互いに京都を焼く陽炎を突き破ると、同時にヒートホークを振るう。

 その「一閃」を制したのは――ジラハ機だった。瞬く間にミツヒサ機の上体を両断する灼熱の刃は、崇高なる信念をも「力」でねじ伏せていく。

 

『無、念ッ……!』

『俺にとっても――あんたにとってもな』

 

 命令とは言え、多くの民間人が居る街を焼くことになった自分とは違い、最期の瞬間まで「守る」ために戦い続けていた男の末路。その行く末を見届けるジラハ機の前で、ミツヒサ機が爆散したのはそれから間も無くのことであった。

 

(……これは、報いだったのかも知れねぇな。済まん、皆。この大火が鎮まらないうちは……お前達に花を手向ける暇もなさそうだ)

 

 市街地と隣接していた、この京都基地での戦闘が始まってから約1時間。ジラハ率いる「パーブ」は壊滅し、ミツヒサが戦死したことにより、連邦軍の正規部隊も事実上の「全滅」となった。

 これ以上、ここに留まる理由はない。そう判断したジラハ機が、燃え盛る京都の街から離れようとした――その時だった。

 

『行かせるかあぁぁーッ!』

 

 連邦軍の量産機ことRGM-79「ジム」が、ビームスプレーガンを連射しながらジラハ機目掛けて突撃して来たのである。正規部隊は全滅させたはずなのに、まだ「生き残り」が隠れていたのだ。

 京都基地の方向から急接近してきた「新手」の機影に目を剥いたジラハは、咄嗟に操縦桿を倒して愛機をその場から退避させる。琥珀色のザクが立っていた場所には、ビームスプレーガンから放たれた閃光が次々と撃ち込まれていた。

 

『教官のッ……! ヤマダ教官の仇ィッ!』

『連邦の生き残り……? いや、他の奴らとはどこか違うな……新兵か』

 

 激しい怒号を上げているジムのパイロット。その声色は、紛れもなく「少女」のものであった。これまで相手にして来た連邦軍の正規部隊とは違う何かを感じていたジラハは、即座に「彼女」が訓練を終えて間も無い新兵であることを看破する。

 

『よくも……よくも教官をッ! あなただけは許してはおけないッ……! リューコ・タカスギ、推して参りますッ!』

『……なるほど、さっきの奴の教え子か。勇気は買うが、生き延びることの大切さは学べなかったようだな。教官殿に何を教わったんだ?』

 

 ビームスプレーガンを連射しながら距離を詰めて来た新兵こと、リューコ・タカスギ少尉。彼女の乗機はエネルギーが尽きたスプレーガンを投げ捨てると、即座にビームサーベルを引き抜いていた。

 正規部隊ほどの技量はないが、その判断力と思い切りの良さは、彼らには無い力強さと気迫がある。そう感じたジラハは紙一重で斬撃をかわしながら、深々とため息をついていた。

 

(あの男はきっと……こうなる(・・・・)のが嫌で、俺に挑んでいたはずなのによ)

 

 これほどの素質があるというのに。自分にどこまでも食い下がっていた、あの男(ミツヒサ)の教え子だというのに。彼が命を懸けて自分を阻止していたのは、リューコを含む教え子達を守るためだったのだろうに。

 その教え子自身が、恩師の挺身や己の才能を水泡に帰してしまうような、無謀な突撃に走ってしまっている。そんなリューコの怒りも理解出来るからこそ、ジラハもまた、歯痒さを深めているのだ。

 

 逆巻く炎の中でビームサーベルを振るうリューコ機をあしらうように、ジラハ機は回し蹴りを放つ。光刃を振り抜くより先に襲い掛かってきた衝撃に耐え切れず、新兵のジムは尻餅をついてしまった。

 

 その弾みで背中を強く打ち付けたリューコの頭から、ノーマルスーツのヘルメットが勢いよく外れていく。艶やかな黒髪のボブヘアーがふわりと宙を舞い、Gカップの巨乳がたわわに揺れていた。

 成長中の乳房(バスト)臀部(ヒップ)にスーツの更新が追い付いていないのか、彼女のノーマルスーツはその抜群のスタイルをありのままに浮き立たせている。

 

『あぅッ……!?』

『確かに俺よりも筋はいい。磨けば光るものがある。だが、それで覆せるほど経験の差というものは軽くはない』

『そうだとしても……このまま逃げ出して、生き恥を晒すわけには行かないッ! 私には今、命を懸けねばならない理由があるッ!』

 

 尻餅をついた状態のままスラスターを全開にして、強引に体勢を立て直したリューコ機はビームサーベルを構え直すと、即座に攻撃を再開していた。

 技量の差を見せつけられてもなお、屈することなく挑み続ける彼女にも、師の敵討ちだけではない「理由」があるのだ。

 

 ――戦局の激化を受け、実戦に参加出来るMSパイロットの補充が急がれる中。京都士官学校の士官候補生達は、「間に合わせ」の新任少尉になるための「繰り上げ卒業」を間近に控えていた。

 

(マコト……!)

 

 その1人にして首席候補でもあるリューコには、決して負けられない「同期」がいるのだ。士官学校を休学し、ジャブロー所属の第5陸戦小隊に加わったマコト・カザマ伍長である。

 同期達の中でも特に臆病だったはずの彼は、日々戦況が悪化していく中、勇気を振り絞って「繰り上げ卒業」すら待たずに実戦への参加を志願していたのだ。そんな彼に刺激されたリューコ達は皆、卒業の日を今か今かと待ち侘びていたのである。

 

 士官への道を自ら絶ってでも、前線に加わろうとしている同期。「間に合わせ」の自分達を厳しくも温かく、鍛え抜いてくれていた教官。彼らへの想いを武器に、リューコ機はビームサーベルを振るっているのだ。

 

『……生き恥、か。ならば、生き抜くことを恥と思ったのがお前の死因だ。リューコ・タカスギ』

『……ッ!』

 

 だが。想いの強さだけでは、MSでの戦闘を制することなど出来ないのである。

 リューコ機の斬撃を容易くかわすジラハ機は、ビームサーベルを持ったジムの右腕を掴み、ヒートホークを振り上げた。武器を持つ手を斬り落とし、戦意を奪うために。

 

『ぬッ……!?』

 

 だが、その狙い通りに事が運ぶことはなかった。ジラハ機がヒートホークを振り下ろすよりも先に、その機体が新たな「熱源」を感知したのである。

 それはリューコ機が携行していたものと同じ、ビームスプレーガンによって撃ち放たれた閃光であった。その一閃をかわすために攻撃を断念したジラハ機は、スラスターを噴かして咄嗟にその場から飛び退いてしまう。

 

『あれは……』

 

 ビーム攻撃の雨から逃れた琥珀色のザクは、その一つ目(モノアイ)で迫り来る数機のジムを捕捉していた。もはや、疑う余地もない。

 

 何としてでも生き延びろ、という教官(ミツヒサ)の教えに背くことになろうとも。その散華を目の当たりにしていながら、逃げ出すことなど出来ない。

 ――その一心で飛び出したリューコに感化された同期達までもが、配備されて間も無いジムで駆け付けて来てしまったのである。正規部隊にも引けを取らない気迫はあるが、その挙動には新兵ならではの荒削りさが残っているようであった。

 

『……士気と練度の高さは認めよう。だが、やはりお前達が受けた教育は間違っていると言わざるを得んな。生き恥という言葉はどこまで行っても、死にたがりの美化に過ぎんというのに』

『み、皆っ……!』

 

 若さと情熱を頼りに、師の仇を討つべく突撃して来る数機のジム。その勇姿に希望を見出しているリューコとは裏腹に、ジラハは苦い表情を浮かべていた。

 

 自分はこれから、芽生えたばかりの花々を摘まねばならないのか――と。

 




 現在、作者の活動報告にて本章に登場する新キャラを募集しております! 機会があればお気軽に遊びに来てくださいませ〜(о´∀`о)

Ps
 本章は完結後、第3部「フルメタリック・メテオシャワーズ」と外伝「ダーティー・ウルフ」の中間辺りに移動させる予定です。ご了承くださいm(_ _)m
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