-レゾルグ・バルバ-
33歳。サイド3出身。ザビ家への忠誠を絶対とする「五指」の1位であり、その性格は傲慢にして傍若無人。黒と金を基調とする専用のドップに搭乗する。階級は大尉。
-サナル・アキト-
21歳。サイド3出身。若年ながら数多くの戦場で活躍してきた「五指」の3位だが、非常に傲慢で自信過剰な人物。黒と濃緑を基調とする専用のドップに搭乗する。階級は大尉。
※ターレス名義で活動していた作者の過去作「機動戦士ヘビーガンダム(http://anotheridea.nobody.jp/HeavyG.htm)」のラスボス。
リーサ達の奮戦。そして、彼らが築き上げた絶好のチャンスをものにしたリューコ。彼女達の若き力が、ついに「パーブ」の隊長機を撃破したのである。
その隊長機である琥珀色のザクの中で、ジラハは独り己の甘さを嗤い、天を仰いでいた。
(……カーテナ、イクール、コルヴォ……スティレット。俺は……負けるべくして、負けたのかもな。俺が独りで嘆いている間に、こいつらは躊躇いを捨て、成長していた。経験の差なんざ、ひっくり返しちまうくらいに……)
救いの無い戦争の日々に摩耗し、かけがえのない部下達まで失い。心のどこかで「終わり」を求めていた彼の目は、
『……ザクのパイロット! すぐにハッチを開いて、投降しなさい! 南極条約に則り、あなたを捕虜としますッ!』
『怒りに任せた私刑に走ることなく、投降を勧告する……か。敵の俺が言うことではないが……よく出来た新兵だな、お前達は』
そんな彼の愛機を毅然と見下ろしていたリューコ機は、艶やかな美声を響かせ投降を呼び掛けている。激化していく戦況の中で、南極条約を無視するような蛮行を幾度となく目の当たりにしてきたジラハにとって、リューコの真っ当な対応はむしろ「新鮮」であった。
その可笑しさに口元を緩めながら、彼は自らハッチを開くと両手を上げてリューコ機の前へと姿を現す。彼の表情はどこか、憑き物が落ちたかのような色を湛えていた。
(……「十指」の懐刀として、許されるようなことじゃあないな。済まん、皆……この期に及んでも、俺にはまだ「未練」があるようだ)
互いに殺し、殺されて来たからこそ思うのだろう。自分を超えて見せた者達の、「先」を見てみたいのだと。
そんな彼の様子から、ようやく決着が付いたのだと実感したリューコが、深々と息を吐こうとした――その時だった。
彼女のジムが、ミサイルの接近を感知したのである。そのコンピューターが予測した着弾点は、ジラハ機のコクピットだった。
『――ッ!?』
何故。何が起きた。何のために。
そんな疑問を持つ暇もなかった。眩い爆炎の光が目の前で広がると、次の瞬間には琥珀色のザクが跡形もなく爆ぜていたのである。
リューコ機の目の前で。開いているハッチに撃ち込まれたミサイルが、ジラハ・イモータルという男の存在そのものを消し飛ばしてしまったのだ。30年という年月を歩んで来た命が、この一瞬で「無」となっていた。
『えッ……!?』
『そ、んなッ……!』
『こんな終わり方、あっていいのかよッ……!?』
リーサ達のジムは突然の事態に狼狽しながらも、ミサイルが飛んで来た上空を仰ぐ。彼らの視界に映るガウ攻撃空母はかなりの高度を飛行しており、これから退却するつもりなのか、旋回を始めていた。
あのガウは京都基地を街もろとも爆撃しながら「パーブ」の機体を投下していた空母だが、先程ジラハ機を破壊したミサイルはガウが落としたものとしてはあまりにも威力が小さ過ぎる。恐らく、ガウの誤爆ではない。
『……ッ!』
最も早く「真相」に気付いたのは、リューコだった。彼女のジムは上空を高速で飛行している2機の「戦闘機」を即座に捕捉していたのである。
大気圏内用戦闘機――DFA-03「ドップ」。京都を襲ったガウから発艦していたその2機が、ジラハをミサイルで抹殺したのだ。彼は、味方に殺されたのである。
『……なぜ、なぜ共に戦う仲間をッ……!』
その常軌を逸した攻撃に戦慄を覚えながらも、怒りに拳を震わせる彼女の頭上では――2機のドップを駆るパイロット達が、不遜な表情を浮かべていた。新兵に敗れた無様な敗者を、侮蔑するかのように。
『……連邦の新兵共に足元を掬われた挙句、自らその軍門に下るとは愚劣の極み。だが案ずるなイモータル、お前がこれ以上の生き恥を晒すことは永遠にない』
『「十指」の中でも屈指の精鋭たる「五指」……その俺達が、わざわざ
黒と金を基調とするドップを駆る、レゾルグ・バルバ大尉。
黒と濃緑に塗装されたドップに搭乗する、サナル・アキト大尉。
彼らはジラハ達「パーブ」を従えていた「十指」のエースであり――その中においても別格とされている「五指」の一角であった。彼らはリューコ達に敗れ、投降しようとしていたジラハを速やかに抹殺するためだけに、専用のドップで出撃して来たのである。
すでに壊滅状態にある京都で戦闘を続行する意味は薄い。それに惰弱な裏切り者を消すだけなら、わざわざMSで降下するまでもない。故に彼らは最も手っ取り早い手段で、ジラハを
自分達のために命を賭して戦ってきた「パーブ」の者達を、駒とすら思っていない鬼畜の所業。彼らはまるで息をするかのように、それを実行に移していた。
『自分達の仲間まで……殺すというのですか……!?』
『一体何を考えていやがるんだ、あいつらッ!』
『それにしても、ザクの装甲を木っ端微塵に吹き飛ばすなんて……あの2機の
経験が浅くとも直感で理解出来てしまうその異常性に、リーサ達も戦慄を覚えていた。彼らが感じている通り、レゾルグとサナルのドップは「五指」専用機としてチューンナップされた特別機であり、ミサイルの威力も通常機のそれを大きく上回っているのだ。
パイロットも機体も、明らかに普通ではない。むしろ、ジラハ機すらも遥かに凌ぐプレッシャーを感じる。たかが戦闘機、などとは全く思えない。
『……許せない。あなた達のような人だけは、決してッ!』
そんな得体の知れない「新手」を見上げる新兵達の中で――リューコ機は躊躇うことなく、60mmバルカン砲による対空射撃を開始していた。
どんな相手だろうと、臆するわけにはいかない。そんな師の背中を、追い掛けるかのように。
『ほう……? 見てみろ、レゾルグ。あのひよっこ共、どうやら俺達にも勝てる気でいるようだぞ』
『……放っておけ。あのような弱卒如き、戯れにもなるまい。すでに京都基地は壊滅したのだ、雑魚相手に燃料を浪費することもなかろう』
『確かにな……だが、数機掛かりとはいえイモータルを倒すような奴らだ。このまま場数を踏んで成長すれば、厄介な邪魔者にもなり得る』
『あの弱卒共が我々の障害になると? ……ふん、ならばお前の好きにするがいい。ドップの航続距離も長くはないのだ、あまり手間を掛けるなよ』
『ふっ……あぁ、分かっているとも』
ジラハの始末を終え、ガウに帰還しようとしていたレゾルグ機とサナル機は、リューコ機のバルカン砲を容易くかわし続けていたが――サナルの方は、リューコ達を今後の障害となり得る「危険因子」と見做し始めていた。ジラハを降伏に追い込んだ新兵達の「可能性」は、潰しておく必要があると考えたのだ。
航続距離の短さが弱点の一つであるドップでは、長く戦うことは出来ない。それでなくとも通常は、戦闘機でMSを相手にするのはかなりのリスクがある。しかも相手は4機。本来ならば圧倒的に不利な状況であり、戦おうなどとは考えもしない場面だ。
だが、それだけのハンデがあってもなお勝利を確信出来るほどの、パイロットとしての絶対的な「格」の違いがあるのだ。
「パーブ」よりも遥かに格上である「十指」の中でも、選りすぐりの精鋭とされている「五指」の3位。そんなサナルに対して、リューコ達は士官学校を「繰り上げ卒業」したばかりの新兵。経験、技量、全てにおいて隔絶された「格」の違いというものがある。
故にサナルは、ドップで4機のジムを始末するという暴挙にも出られるのだ。彼の愛機は急速に旋回すると、ガウを目指して飛び去って行くレゾルグ機とは真逆の方向へと猛進して行く。
その先で待ち構えているリューコ達は、見た目からは想像も付かない気迫と殺意を纏ったドップに対し、戦慄の表情を浮かべていた。ジラハ機との戦いで消耗していた心身を引き摺るように、4機のジムが素早く身構える。
『来る……! 皆、気を付けてッ! あの戦闘機のパイロット、何もかも普通じゃないッ!』
『感謝するがいい、連邦の新兵。「五指」の恐ろしさを思い知る暇もなく、終わらせてやる。……このサナル・アキトがなッ!』
「五指」の3位と、4人の新兵。決して「勝負」として成り立たない戦いが、始まってしまった――。
ハーメルン広しといえども、ドップ如きがボス敵を務めるガンダムSSなんてこの作品くらいのものでありましょう。残りの3名も次回で登場しますので、どうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و
Ps
「ドラゴン・ライズ」で明らかになっている所業も含め、本作特有のジオンの悪事はだいたいサナルのせいという感じになっておりますな。此奴ならどんなゲス野郎に描いてもいいという風潮(´-ω-`)