-ヴァイス・ヴァレンタイン-
32歳。ミシシッピ出身。第28突撃機動戦隊「スターイーグル」の隊長であり、開戦当初から戦い続けてきた叩き上げのベテランパイロット。指揮官機仕様のジムに搭乗する。階級は中尉。
※原案はヒロアキ141先生。
-リュウジ・クガ-
28歳。サイド3出身。「
※原案はサンシタ先生。
第1話 因縁の凶星 -リュウジ・クガ-
――宇宙世紀0080、1月1日。地球連邦政府とジオン共和国の間に、終戦協定が結ばれた。確かにその日、「戦争」は終わったのだ。
だが、それは決して終わりなどではなかった。むしろ、「始まり」だったのだろう。
人類の過半数が滅び去るほどの戦争が終わったらと言って、その「戦後」を人々が容易く受け入れられるとは限らないのだ。
家族、友人、同僚、恋人。つい最近までは隣に居た大切な誰かが、さも当然のことのように居なくなる。
そんな不条理がありふれていた時代に慣らされてしまった人間達が、今更この終戦を受け入れることなど出来るわけがなかった。
星一号作戦を生き延びた連邦軍の兵士達が、その現実と向き合うことを余儀なくされたのは――宇宙世紀0080、1月20日の正午であった。
◇
かつてはソロモンと呼ばれていた宇宙要塞、「コンペイトウ」。第13ブロックと呼ばれているその内部のエリアで、突如大爆発が起きたのだ。
一瞬のうちに騒然となる連邦軍の兵士達を飲み込むように、爆炎が要塞の内側から広がっていく。とある広大な格納庫へと続いている第13ブロックは、瞬く間に阿鼻叫喚の煉獄と化していた。
『なんだ!? 一体何が起きてるッ!? 第13ブロック、今のは何の爆発だッ!?』
『ジオンの奴らだッ! ジオンの残党共がこのコンペイトウに……ぐわぁあぁああッ!』
『ジ、ジオンだとッ……!? 奴ら、終戦協定を知らんのかッ!?』
この騒乱がジオン残党組織による奇襲攻撃だと明らかになったのは、最初の爆発から約30秒後のことであった。その僅かな時間の間に――1機のジオン製MSが、スラスターを噴かして格納庫へと通路を駆け抜けて行ったのである。
火災の鎮火に当たる中で、緑を基調とするその機体のシルエットを目撃した兵士達は。肩部に刻まれた黒い幽霊のエンブレムを目にして、思わず声を上げる。
『まさか……「
このコンペイトウ付近の宙域で相次いで目撃されている、ジオン残党組織。民間、軍用を問わず、自分達の航路に居合わせた艦艇を襲い、海賊行為を働いている悪鬼の群れ。
それがコンペイトウに所属する連邦軍部隊が耳にしていた、「黒死霊」と呼ばれる組織の全容なのだ。その亡霊達が今まさに、この要塞を襲撃しているというのである。
『……無防備無防備、ノーガードもいいところだな。高級品の腕時計を着けて、スラム街を歩いてるようなものだぜ? 平和ボケするには、ちと早過ぎるだろうがよ』
その「黒死霊」を率いる実戦リーダーことリュウジ・クガ大尉は、今の愛機であるMS-09R「リックドム」を奔らせ、不敵な笑みを溢していた。
ガダルカナル島における「
爆音と共に爆ぜる隔壁。その向こうに待ち受けていたのは――かつてソロモンと呼ばれていたこの要塞に君臨していた、最凶のMAを想起させる巨体であった。
全長にして、およそ60m。その想像を遥かに超える威圧感に呑まれかけたリュウジは、頬を引き攣らせ固唾を飲む。だがその眼は恐れることなく、巨体の雄々しさに引き寄せられていた。
『その上……これほどの「ブランド物」と来たものだ。後生大事に隠されていたとしても、ぶん取りたくなっちまうね』
――MA-08「ビグザム」。
先のチェンバロ作戦において、ドズル・ザビ中将が搭乗して猛威を振るった鋼鉄の牙城。その威光を彷彿とさせる超大型のMAが、この広大な格納庫に隠されていたのである。
だが、これは「本物」ではない。そこに至るまでに生み出され
Iフィールドバリアすら有していないこの機体では、あの戦場に飛び出したところでただの大きな的になっていたのだろう。その機能を有していた「本物」でさえ、事実上の「特攻」で終わったのだから。
『……こんなデカいだけの産業廃棄物ですら、メガ粒子砲はしっかり積んでるっていうんだから勿体ねぇ話だぜ。お前もそう思うだろう? 「魔王の遺産」よ』
その「存在」を戦場という混沌の中で耳にして以来、欲深く追い求めてきたリュウジは。感慨深げに眼前のMAに語り掛け、「魔王の遺産」という機体の異名を口にする。
ビグザムに通じる外観を持つこの機体は、「五指」の1位とも呼ばれていた「魔王」――レゾルグ・バルバ大尉がテストパイロットを務める予定だったのだ。彼の死後も残り続けているからこその、「遺産」なのである。
生前、師であるブルース・ゲイボルグ大佐と共にMAX-03「アッザム」や、その原型機であるG87「ルナタンク」の試験運用を担っていたレゾルグは、MSパイロットとしても一流だったが、その手腕が最も活きる分野はMAの制御であった。
MS-06Z「サイコミュ試験型ザク」の運用を任されていた、「十指」の6位ことマデラス准尉。彼と同様に、僅かながらニュータイプとしての素養も有していたレゾルグは、実戦投入されたほとんどのMAの試験運用に関与していたのである。
故に彼は、最も適性があったMA-04X「ザクレロ」を最期の乗機としたのだが。それでも連邦軍のエース達を蹂躙するには至らず、ケンジロー・カブト少尉の前に敗れ去ったのである。
だが、「勇者」の華々しい勝利で全ての幕が降りるほど、この世界は甘いものではない。「魔王」が倒れても、その手で生み出されてきたものは残り続けているのだ。
その最たるものが、「魔王の遺産」たるこの名も無き機体――レゾルグ・バルバ専用MAなのである。
共に数多の戦場を駆け抜けてきた愛機をあっさりと捨てたリュウジは、ノーマルスーツの背面バーニアを噴かして素早くMAのコクピットへと乗り込み、その巨体を我が物としてしまう。
『ククク……いいねぇ、しっかり
長き眠りから目覚めたかのように、妖しく
するとそこへ、事態を把握した1機のMSが飛び込んで来る。すでにMAが起動していることを知りながらも、その機体のパイロットは恐れることなく、60mもの巨体を真っ向から睨み付けていた。
『待ちやがれッ! てめェッ……ア・バオア・クーに居たリックドムのパイロットだなッ!?』
『……!』
腕部に星のエンブレムを刻み、
一方、MAのコクピット内で彼の声を耳にしたリュウジも、聞き覚えのある「宿敵」の声にハッと顔を上げていた。
先の戦争の命運を左右していた、星一号作戦の渦中。レゾルグの母艦であるグワジン級戦艦を狙っていたサラミス級巡洋艦――「キョートフラワーズ」を、リュウジのリックドムが狙おうとしていた時のことだった。
1機のRGM-79/GH「ガンダムヘッド」が、そのリュウジ機のジャイアントバズを、瞬く間に2本のビームサーベルで斬り落としてしまったのである。妹であるリーサ・ヴァレンタイン少尉の母艦を守るべく、当時のヴァイス機はサラミス級の護衛に徹していたのだ。
彼の双刃に行手を阻まれたリュウジはサラミスを沈められないまま、グワジン級の撃沈を許してしまったのである。彼のリックドムもヴァイス機の頭部を吹き飛ばすことには成功したものの、そこで決着を付けることは終ぞ叶わなかったのだ。
その時のパイロットが今再び、自分の前に立ちはだかっている。そんな奇妙な因縁を目の当たりにしたリュウジは、懐かしむように頬を緩めていた。
『そういうあんたはあの時……俺の邪魔をしてくれたガンダム頭の旦那じゃあないか。見ない間に愛機のツラも随分と可愛らしくなったなァ?』
『誰のせいだと思っていやがる……! 頭に来る野郎だぜ、終戦早々こんなところまで来やがってッ! やっと俺達が掴み取った平和を土足で踏み荒らして、一体何がしたいんだッ!』
『おうおう、怒れ怒れ。俺としてはそっちの方が好みだぜ? ……楽に殺せそうでよ』
だが、仲良く語らうつもりもなければ、そんな暇もない。リュウジ達「黒死霊」には、このMAを手土産に、エギーユ・デラーズ大佐の残存艦隊と合流するという目的があるのだから。
故に、彼は躊躇うこともなく。ヴァイス機のジムが居る方向にMAを移動させると――大型メガ粒子砲の砲口を向ける。
『てめ、ぇッ――!』
『――消し飛びな』
その巨大な地獄の門と、全方位に搭載された28門のメガ粒子砲に光が灯ったのは、それから間も無くのことであった。
MAを中心に広がる眩い閃光が、激しい爆発と爆炎を生み。第13ブロックを中心とする激しい炎が、コンペイトウを内側から焼き尽くさんと広がっていく。
緊急作動した隔壁によって爆発と炎の被害は最小限に食い止められたが――「内側」に取り残された人員の運命は、語るまでもないだろう。
『ハッ……見晴らしの良い景色だぜ。お前達がやってきたことに比べりゃあ、お綺麗なもんだろう?』
第13ブロックを彩る火の海。その中を悠然と闊歩し、要塞の外へと向かっていくMAの中で――リュウジは独り、不遜な笑みを浮かべていた。
眼前の惨状に「炎葬隊」の所業を重ねる彼を乗せて。魔王の遺産は機体下部のスラスターを噴かし、コンペイトウの外部へと飛び去って行く。「黒死霊」のMS隊によってすでに撃沈されていた近辺の艦隊では、その行手を止める術などない。
『……「炎葬隊」のクズ共によろしくな、連邦の間抜け共』
コンペイトウの一部から上がる火の手を一瞥し、嘲笑を浮かべて去り行くリュウジ機。彼が向かう先で待機していた「黒死霊」のムサイ級巡洋艦も、離脱の準備を進めていた。
『リュウジ……やはり、追って来る奴らは居たようだぜ』
『ハッ……そうだろうな。それくらいの肝っ玉は持っててくれなきゃあ、こっちも暴れた甲斐がない』
――だが。そのままで終わらせる連邦軍ではないことも、彼らには分かっている。ムサイ級の
MAが振り返った先には――こちらを追って来るサラミス級の艦影が映し出されていたのである。さらにその周囲と艦上には、MSの機影も窺えた。
ビグザムの概念実証機であるレゾルグ専用MA。その威力を正確に把握した上で、即座に追撃を試みるなど自殺行為に等しい。「まともな部隊」ならば、掃討に必要とされる戦力が揃うまでは迂闊に動こうとはしない。
だが、そのような行儀の良い連中に討たれることほどつまらない末路はない。そんな思考回路が多数派である「黒死霊」のならず者達にとって、これほど素早く自分達を追撃して来る命知らずな連中というのは、まさしく絶好の
『おい……どこに行こうってんだ。暴れるだけ暴れやがってよッ……!』
両脚を消し飛ばされながらも、辛うじてメガ粒子砲を回避していたヴァイス機のジム。その後方には、星のエンブレムを刻んだ1隻のサラミス級巡洋艦が続いていた。
さらにその艦上には、何機ものMSが待機している。ヴァイス機にあるものと同じ星のエンブレムを持つそのMSは全て、ヴァイス機と同じ第28突撃機動戦隊――通称「スターイーグル」の所属機であった。
『ハハッ……どうやら連中、ビグザム級が相手だろうがお構いなしらしいぜ? こんなにイキの良い奴ら、戦時中でもなかなかお目に掛かれなかったってのによォッ!』
対するリュウジ機の後方にも、MAの援護に当たる「黒死霊」のMS隊が展開している。ムサイ級から続々と出撃してきた彼らにとっても、「相手にとって不足なし」……ということらしい。
『……てめぇらだけは、俺達「スターイーグル」が絶対に許さねぇ。今度こそ決着を付けてやるぜ、2度と化けて出て来れねぇようになァアッ!』
『いいねぇ、最ッ高だぜ旦那ァ! 俺達と殺し合うのに相応しい……最高のバカ共を連れて来やがったァッ!』
連邦軍きっての「命知らず」が集まったスターイーグル隊と、ジオンの亡霊達が集って生まれた「黒死霊」。
戦後間もない宇宙を舞台に――「平穏」が似合わぬ者達の激突が、幕を開けるのだった。
活動報告にある通り、連邦軍及びジオン軍の新オリキャラ募集企画は4月24日12:00まで続いております。機会がありましたらお気軽にどうぞー(о´∀`о)
ちなみに本章は完結後、外伝「キョート・フラワーズ」と外伝「ダーティー・ウルフ」の中間辺りに移転させる予定です。あらかじめご了承ください(´ω`)
Ps
第3部連載当時はレゾルグ専用ビグザムがラスボスになる予定であり、さすがにやりすぎかなぁー……という判断から、ザクレロに切り替わったという経緯がありました。今回はその没案をサルベージした形になりますなー(´Д` )