機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-第6話からの登場人物-

-ウィンストン・コサック-
 46歳。ベルジャーンシク出身。堅実な戦法で確実に敵の戦力を削り、部下達を救い続けて来た質実剛健なベテランパイロット。祖国の国旗をパーソナルマークとして胸に刻んでいる、ジムに搭乗する。階級は少尉。
 ※原案はG-20先生。

-ジーン・パチョレック-
 28歳。サイド3出身。連邦軍に雇われた元ジオン兵の傭兵であり、リュウジとも旧知の仲だったガダルカナル島の生き残り。コアブースターに搭乗する。傭兵であるため、階級を持たない。
 ※原案は神谷主水先生。

-ミランダ・ヴェルテ-
 20歳。テキサスコロニー出身。かつてガダルカナル島でリュウジと共に戦ったこともある、マルティナ・テキサスの従妹。ゲルググJの大型ビームマシンガンを装備した、専用のアクトザクに搭乗する。階級は曹長。
 ※原案は速水厚志先生。

-ミカエラ・マコーミック-
 18歳。サイド3出身。気弱で柔和な人柄から「弾除け要員」と馬鹿にされることもあるが、非常に優れた操縦技術の持ち主でもある。ザクⅡ改に搭乗する。階級は軍曹。
 ※原案はクルガン先生。



第6話 不動の鉄鎧 -ウィンストン・コサック-

 この戦火の中に消えたジムコマンドの爆発は、多くの同胞達が目撃していた。

 アズラ機の信号が消失したことにより、「黒死霊」のメンバー達は彼の戦死を確信する。

 

 だが、その中にショックを受けている者達など1人もいない。彼らは皆、この戦いが始まるまでにあまりにも多くのものを失い続けてきた者達ばかりなのだ。

 今さら、これしき(・・・・)のことで傷付くような繊細な心など持ち合わせてはいないのである。

 

『アズラ准尉が落とされた……か。さすが私達を追ってくるだけあって、相応の力は持っていたようだね。スターイーグル』

 

 MS-11「アクトザク」を駆り、ガダルカナル島からの付き合いであるリュウジと共に宇宙へと上がっていたミランダ・ヴェルテも、その1人であった。

 

 ゲルググJのものと同じ大型ビームマシンガンを主兵装とする彼女の愛機は、その巨大な銃身を手に戦場の宇宙を駆け抜けている。アズラの死を知った直後であっても、その素早い挙動には一片の乱れもない。

 

『あぁ……また1人、私達の仲間が倒れてしまったんですね……ミランダ曹長。私達の旅は一体、いつまで続くのでしょうか』

『投降すれば終わるかも知れないね。尤も、その時の終着点は死刑台だろうけど。……無駄口叩いてないで、しっかり付いて来なさい。ミカエラ』

 

 仲間の死を悼んでいるミカエラ・マコーミック軍曹の乗機――MS-06FZ「ザクII改」も、そんな彼女のアクトザクにぴったりと追従している。

 かつてはその気弱な人柄から「弾除け要員」などと馬鹿にされていた彼女も今は、紛れもない「黒死霊」の主力メンバーとして認められているのだ。

 

 そんな彼女達が操る2機のザクタイプは今、この宙域を縦横無尽に飛び回り――1機のジムを撹乱し続けている。数でも勢いでも優っている彼女達だが、まだこのジムを仕留め切れずにいたのだ。

 

『……お仲間が散華されたというのに随分と悠長だな、ご婦人方。もう少し勝負を急いだ方がいいのではないかね? このままでは君達が私を殺す前に、我らの隊長があのMAを墜としてしまうぞ』

 

 祖国の国旗をパーソナルマークとして胸に刻んでいる、1機のジム。

 その機体を駆るウィンストン・コサック少尉は、ミランダ機とミカエラ機の連携に追い詰められながらも、不敵な笑みを溢していた。

 

 すでに両脚はミランダ機の大型ビームマシンガンで撃ち砕かれており、携行していたシールドもミカエラ機のMMP-80マシンガンを受けたことで半壊してしまっている。

 そんな満身創痍の状態でありながら、ビームスプレーガンを握る彼の愛機は「継戦能力」を維持しているのだ。

 

『ふっ……そんな半死半生の状態で、よくそんな減らず口を叩けるね。心配しなくたって、あんな雑魚の量産機にビグザム級が負けるなんてあり得ないよ。あんたの死も、すぐそこまで来ていることだしね』

『そうかな? それにしては随分、その雑魚の量産機に手こずっているようだが。……賭けても良いぞ。私如きを瞬殺出来ぬような連中に、ヴァイス・ヴァレンタインが負けることは決してないのだとな』

『……ふぅん、言うじゃないか』

 

 ビームスプレーガンでの応射は2機のザクタイプを撃破出来るような手数ではないが、ミランダ達も彼を仕留め得る決定打を与え切れずにいた。

 

 如何なる不利な状況であろうと救援の到着を信じ、攻撃よりも防御を優先する。敵を撃破することよりも、生き残ることを優先する。たったそれだけの基本中の基本を、ウィンストン機は愚直なまでに忠実に守り続けているのである。

 

 防御と生存を最優先する、「堅実」の極致。その立ち回りを徹底し、ミランダ達を引き付ける陽動役を全うしているウィンストン機は、ただのジムとは到底思えないほどの「しぶとさ」を発揮していたのだ。

 

 僅かでも隙を見せれば、その瞬間に抹殺出来る容易い相手だというのに。その僅かな隙が、見出せない。

 

 力押しで装甲を削って追い詰めることは出来るが、ビームスプレーガンを侮れば手痛いダメージにも繋がりかねない。そんな絶妙な「やりにくさ」が、ミランダ達の攻勢を揺るがしているのである。

 

『確かに見上げたタフネスだけど、所詮は浅い装甲の量産機。私達で一気に畳み掛ければ、撃破は容易い。……少々のダメージは覚悟しなきゃならないけど、いいね? ミカエラ』

『は、はいっ! これ以上、あの人に足止めされるわけには行きませんものっ……!』

 

 だが、これ以上ジム1機に手をこまねいているわけにはいかない。

 それに口先では「あり得ない」と言い張りはしたが、一隊員のジムですらこれほど粘り強いのであれば、隊長(ヴァイス)機のジムがリュウジ機を本当に仕留めてしまう可能性についても、真剣に考慮しなければならなくなる。

 

 次の戦闘に向けての温存、という考えは捨てなければならない。自分達の機体が全損するリスクを覚悟してでも、このジムを仕留め切らねばならない。

 その決意に至ったミランダ機とミカエラ機が、同時に各々の銃口をウィンストン機に向けた――次の瞬間。

 

『そこまでだぜ、ミランダ曹長さんよォッ!』

『なッ――!?』

 

 ビグザム級のものではないメガ粒子砲の閃光が、ミランダ機とミカエラ機に襲い掛かって来たのである。

 

 聞き覚え(・・・・)のあるその声の主は――FF-X7-Bst「コアブースター」に搭乗して駆け付けて来た、ジーン・パチョレックのものであった。ジオン軍を抜けていた彼は今、高額の報酬を条件に連邦軍の傭兵として働いていたのだ。

 

 ガダルカナル島で共に「炎葬隊」と戦ったこともある、かつての戦友との思いがけない再会。

 その予期せぬ形に瞠目するミランダ機の前を横切ったジーン機は、ミカエラ機が放つMMP-80マシンガンの銃弾を巧みにかわし、この宇宙を自在に飛び回っていた。

 

『新手の……戦闘機ッ!?』

『クガちゃんといい、あんたらといい……一体いつまで戦争やってる気だいッ!? 新聞くらいちゃんと毎日読めってんだよッ!』

 

 大型ビームマシンガンとMMP-80マシンガンによる弾幕を回避しながら、ジーン機はメガ粒子砲とミサイルの同時射撃で2機のザクタイプを牽制している。

 

 遠慮というものを知らないその攻撃と、ジオン残党を煽るような発言を目の当たりにしたミランダは、殺意を露わにした表情でコアブースターを睨み付けていた。

 

『パッキー……! 久方振りの再会だっていうのに、随分なご挨拶じゃない。そんなのに乗って私の前に来たからには……覚悟は出来てるんだろうね?』

『……曹長さん。人生の先輩として一つ、役に立つ豆知識を教えてやるぜ。世の中、都合のいい時に都合よく頭空っぽにした奴が勝つのよ』

 

 だが、その殺気をぶつけられてもジーンは飄々とした佇まいを崩すことなく、愛機をウィンストン機の側へと移動させていく。激しく損傷し、機動力も失っている僚機の「足代わり」になるためだ。

 

『つーわけで……待たせたな、ウィンストンの旦那。ヴァイスの旦那がクガちゃんとケリ付けるまで、俺達2人でレディーをもてなしてやろうぜ?』

『ふっ……そろそろ限界だと思っていたところだが、元ジオンの君に美味しい場面を攫われては私の立つ瀬が無くなってしまうな。良かろう、もう少しだけ付き合おうではないか……パッキー君』

 

 そんな彼の意を汲んだウィンストン機は深く頷くと、半壊したシールドを手放し――コアブースターの機体上部に掴まった。共に飛行する体勢を取ることで、失われた機動力を補おうというのだ。

 

 ウィンストン機を乗せたジーン機はやがて一気に加速すると、ミランダ機とミカエラ機目掛けて容赦なく襲い掛かって行く。かつての仲間が相手であろうと、手加減する気は毛頭ないようだ。

 

(……悪いな、ミランダ曹長。こんな俺にだって、譲れないものがあるんだよッ……!)

 

 家族を養うためにも彼には今、「高額の報酬」が必要不可欠なのである。都合よく頭を空にする、という先程の発言を、彼は今まさに実践しようとしているのだ。

 

『……上等だよ、パッキー。そんなに死にたいなら、遠慮なく掛かって来なさい』

 

 そんな彼の突撃に身構えている、ミカエラ機と共に。アクトザクのコクピット内で、ミランダは冷酷な笑みを溢していた。

 

 かつての仲間への情を断ち切った彼女は今、ジーンを完全なる「敵」として認識したのである。大型ビームマシンガンの銃口が容赦なく火を噴いたのは、その直後であった――。

 




 1stガンダムやビルドファイターズトライのアニメに登場する「Gスカイやコアブースターの先端部にある、ガンダムのサイズに対して異様にデカいコアファイター」は1/144旧キットのGアーマーでもお目に掛かれます。趣のある面白いキットなので個人的にはオススメですお(゚ω゚)
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