機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-第8話からの登場人物-

-ロバート・エーカー-
 29歳。ホノルル出身。戦時中からヴァイスの片腕として彼を支えてきた元戦車兵であり、出撃前は必ずフリージャズを聴くジャズ好き。空間突撃仕様のジムキャノンに搭乗する。階級は准尉。
 ※原案はヒロアキ141先生。

-ジャスグル・ヤージュ-
 20歳。サイド3出身。狙撃手として様々な戦場を渡り歩いてきた歴戦のスナイパーであり、敵方の指揮系統を狙い撃つことに長けている。ダークグレーと紺を基調としている、スラスターを増設した専用のザクIスナイパータイプに搭乗する。階級は中尉。
 ※原案はリン・オルタナティブ先生。



第8話 星天の矢座 -ジャスグル・ヤージュ-

 スターイーグル隊と「黒死霊」の戦闘はより激しさを増しつつあるが――それをより強く実感しているのは、ムサイ級とMAから近い宙域に展開している「黒死霊」側のMS隊であった。

 

 つまりそれだけ、「黒死霊」の精鋭達が押され始めているということでもある。急先鋒のアズラ機が撃墜されたことに加え、ハナ機が捕獲されたことで機雷による防衛線の維持も失われたため、スターイーグル隊が一気に勢い付いてしまったのだ。

 

『……あの機体が隊長機か。たった1機でビグザム級に突っ込もうなんて大したタマだけど……私としちゃあ見逃すわけにも行かないんだよね』

 

 そんな中。リュウジ機のビグザム級に迫ろうとしていたヴァイス機に狙いを定める1機のMSが、その引き金を引こうとしていた。

 MS-05L「ザクI スナイパータイプ」を駆るジャスグル・ヤージュ中尉は、60mもの巨躯を前にしても全く怯む気配がないヴァイス機に敬意を払いながらも――あくまで、「黒死霊」の後方支援を担うパイロットとしての本分を全うしようとしている。

 

 ダークグレーと紺を基調としている彼女の愛機は、黄緑色の一つ目(モノアイ)を妖しく輝かせながら、ビームスナイパーライフルの銃口を指揮官機仕様のジムに向けていた。

 だが、その引き金を引いてヴァイス機を撃ち抜く――よりも疾く。眼前を遮るように飛んで来た邪魔者の砲撃が、ジャスグル機の狙撃を阻んでしまう。

 

『やらせるかよッ!』

『おっ……とッ!? こんなところにもお仲間が居たのかいッ!』

 

 右肩の360mmロケット砲と、バルザック式380mmロケットバズーカを連射しながら、ジャスグル機の前に飛び込んで来るRGC-80S――「ジムキャノン空間突撃仕様」。

 その中距離戦用機を駆るロバート・エーカー准尉も、ヴァイスの片腕という己の使命に殉じようとしていた。ジャスグル機の行手を阻むロバート機は、自分と同じ射撃戦を本領とする機体を前に、怒号を上げる。

 

『ヴァイス隊長に手出しはさせねぇよ、「黒死霊」共ッ! 俺の貴重なジャズタイムを平和もろともブチ壊しやがって、もうタダじゃ置かねぇッ!』

『やれやれ……苦手なんだよねぇ、君みたいなおアツいタイプ。こっちも仕事でやってるんだから……早急に落ちて貰おうかいッ!』

 

 狙撃、つまりは遠距離からの一方的な射撃に秀でているジャスグル機に対して、ロバート機は空間突撃仕様という名の通り、強化されたスラスターによる高い運動性を持ち味としている。

 お互いの位置を把握した一対一の戦闘においては、ザクIスナイパータイプの方が不利であることは明白であった。だが、スラスターを増設されている強化型なのはジャスグル機も同じこと。

 

『くッ……!?』

『威勢の良さは買うけど……この動きにも付いて来れるかなッ!?』

 

 機体の特性上、手数はロバート機の方が優っている。だが単純な火力ならば、ビームスナイパーライフルを有しているジャスグル機の方が遥かに高い。

 ならば確実な一撃さえ決めて仕舞えば、ジムキャノンが相手であろうと負けることはないのだ。そこに勝機を見出したジャスグル機は縦横無尽に飛び回り、ロバート機を撹乱していく。

 

『うあッ……!?』

『丸見えなんだよ、そんな動きじゃあなァッ!』

 

 だが、彼女の愛機がロバート機の背後に回り込み、ビームスナイパーライフルを構えた瞬間――スラスターを噴かして体勢を上下に反転させたジムキャノンが、反撃の砲弾を撃ち放って来た。

 

『くうッ……!』

『うぉお危ねッ……!』

 

 刹那、ビームスナイパーライフルの閃光とロケット砲の弾頭が、互いのコクピット付近を掠めて行く。確実に仕留めたつもりでいたジャスグルは、ロバート機の手慣れた挙動に瞠目していた。

 

 敵MSに近距離まで接近された場合の対処法が、あまりにも手慣れているのだ。一瞬のうちに間合いに入り込まれるような死線を何度も潜っていなければ、あれほど素早く判断して動くのは難しい。

 

『……あんた、さては狙撃一本で生き抜いて来たタイプだな? ここまで近付かれた経験はほとんど無いと見えるぜッ! あのMAに近い宙域に居れば遠くから安全に撃てるってハラだったんだろうが……甘いってもんよッ!』

 

 それは――無茶な突撃を何度も繰り返しては紙一重のところで生き残って来た、ヴァイス・ヴァレンタインの片腕である彼ならではの経験値だったのだろう。

 隊長の無謀に幾度となく巻き込まれ、それでも首の皮一枚で生き抜いて来た彼だからこそ、可能とする芸当だったのだ。

 

 一方。そんなロバート機の反応速度を目の当たりにしたジャスグルは、これほど厄介な相手にここまで(・・・・)近付かれていることに少なからず焦りを覚え始めていた。

 

 そもそも、狙撃を専門とするジャスグル機の目前にまで敵機が迫っているという今の状況が、すでに危機的なのだ。

 ビグザム級とムサイ級が控えている最後部に近しいこの宙域にまで、スターイーグル隊のMSが進撃している。つまりはそれだけ、エース揃いであるはずの「黒死霊」のパイロット達が追い詰められているということになる。

 

『チィッ……! この御仁……中距離支援用機のはずだってのに、随分と無遠慮に突っ込んで来るッ! ここにまで防衛線が下がってるなんて、あいつらが居ながらどうしてッ……!』

 

 ビグザム級に積まれている無数のメガ粒子砲も、ムサイ級の連装メガ粒子砲も、絶えずスターイーグル隊を狙い続けている。サラミス級も援護射撃しているとはいえ、単純な火力ならば「黒死霊」側が圧倒的に優っているはず。

 「黒死霊」のパイロット達も先の戦争を生き延びた歴戦の猛者ばかりであり、数でも練度でも敵方には負けていない。にも拘らず、押し負けているのだ。

 

(まさか……負けているとでも言うの? 数だけでなく、質においても……!)

 

 開戦当初から、物量面で圧倒的に劣っていたジオン軍は、その「質」で如何ともし難い差を覆して来た。だが、MSの概念をはじめとするその「質」を学んだ連邦軍は徐々に、しかし確実に、そのアドバンテージを奪いつつあったのである。

 

『喰らえぇえッ!』

『ハッ!? し、しまッ――!』

 

 その「縮図」をこの戦場に見出したジャスグルの背に、凍てつくような悪寒が走った時には――ロバート機が放つ砲弾の嵐が、ザクIスナイパータイプのコクピット付近を掠めていた。九死に一生を得たジャスグルは、その瞬間に確信する。

 決着を急がねば、自分達「黒死霊」はこの場で全滅しかねないのだと。

 

 




 ジムキャノン空間突撃仕様のガンプラと出会ったのも去年の今頃でしたなぁ。レビル艦隊仕様のタイプばかり置いていたので、そのうちの一つを通常機カラーにわざわざ再塗装したのは良い思い……出?(゚ω゚)
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