機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-第11話からの登場人物-

-タクミ・ベルトライン-
 19歳。熊本出身。元はクリーニング屋だった現地徴用兵であり、鋭い勘を活かした格闘戦を得意とする。ホワイトディンゴ隊仕様のジムに搭乗する。階級は少尉。
 ※原案は魚介(改)先生。

-ショウヘイ・グスクマ-
 16歳。沖縄出身。ヨウヘイ・チネンの元部下である快活な若手エースであり、家族を戦場で失った今も、「命は宝」という上官の教えを大切にしている。黒を基調に緑色のラインを全身に施し、右肩にシーサーのエンブレムを刻んだ専用のジム改に搭乗する。階級は少尉。
 ※原案はエクシリオン先生。

-アイ・ヒナドリ-
 17歳。大阪出身。マコト・カザマやリューコ・タカスギとはかつての同期であり、育ての親が居る孤児院への仕送りのために、士官学校を休学してまで前線に身を投じていた心優しい少女兵。ジムに搭乗する。階級は伍長。
 ※原案はMrR先生。

-ストラ・ディバイリ-
 27歳。サイド3出身。ブリティッシュ作戦にも参加していた好戦的なエースパイロットであり、戦うことにのみ己の存在意義を見出している。限界まで装甲を削って機動力を高めた、専用の高機動型ゲルググに搭乗する。階級は少尉。
 ※原案は茸し先生。



第11話 慈愛の孤児 -アイ・ヒナドリ-

 アイリス機とマーカ機の交戦がより激しさを増して行く中、別の宙域における戦闘もヒートアップしつつあった。

 

 ビグザム級とムサイ級から近い位置に居る「黒死霊」のMSパイロット達は、最後の砦としての役割を担っている者も多い。

 それ故、攻撃に徹しているメンバーよりもさらに信頼の厚いエースが集まっているのだ。

 

『さすが、この最終防衛ラインにまで踏み込んで来た奴らだな……! 楽しませてくれるッ!』

 

 MS-14B「高機動型ゲルググ」。

 その高性能機を駆るストラ・ディバイリ少尉はブリティッシュ作戦にも参加していた古参兵であり、戦場にのみ己の存在意義を見出している修羅と化していた。

 

 生死を賭けた闘争の中にこそある高揚感に滾り、愉悦の笑みを浮かべる彼の愛機は、ビームと実弾が飛び交う戦場の宇宙を高速で駆け巡っている。

 

 その最後の砦を打ち崩さんとするスターイーグル隊の精鋭達も、高機動型ゲルググの常軌を逸した速さには手を焼いているようだ。

 規格外のスピードで飛び回りながら、自在にジャイアントバズを撃ち込んで来るストラ機の一撃離脱戦法の前に、防戦一方となっている。

 

『ちッ……! 高機動型ってのは速さが売りみたいなものだが、それにしたってあいつのスピードは異常だぞッ!』

 

 ホワイトディンゴ隊のサイウン・レツ兵長から受領した、暗灰色に塗装されている同部隊仕様のジム。

 その機体を駆るタクミ・ベルトライン少尉は、ビームスプレーガンでの射撃を容易く回避し続けるストラ機の、尋常ならざるスピードに瞠目している。

 

 かつては平凡なクリーニング屋であり、戦時下での徴用を経てMSパイロットとしての才能を開花させた彼は今、過去最大の窮地に陥っていた。

 

 格闘戦を得意とする自身の持ち味を活かせない状況であることにも、焦りと苛立ちを募らせているようだ。その隣でハイパーバズーカを連射している僚機のジム改も、ストラ機の動きを捉えきれずにいる。

 

『あのゲルググ、ただでさえ速い高機動型なのに……装甲も限界ギリギリまで削り切ってるみたいッスよ、タッくん! やっぱり母艦の守りを任されている奴なだけはあるッス……!』

 

 黒をベースとしつつ緑色のラインを全身に施し、両肩にシーサーのエンブレムを刻んでいるジム改。

 その機体を駆るショウヘイ・グスクマ少尉も、自機の砲弾が掠りもしていない現状に苦い表情を浮かべていた。

 

 ヨウヘイ・チネンの元部下であり、「命は宝」という彼の教えを胸に戦い抜いて来た少年士官は、家族や友人を奪ったジオンのMSを前に闘志の炎を燃やしている。だからこそ、ハイパーバズーカが全く当たらないこの状況が歯痒くて仕方がないのだ。

 

『お2人とも、焦ってはなりませんッ! いかに高機動型といえど、あのスピードもそれを使いこなす集中力も無限ではないはずッ! あちらの方が実力が上なのだとしても、諦めず攻撃を続行するべきですッ!』

 

 そんな中でも、通常機のジムを駆る女性パイロット――アイ・ヒナドリ伍長は、艶やかな声色で2人を励ましながら、ビームスプレーガンを撃ち続けていた。

 

『ほう、あの機体……なかなかやるようだな』

 

 まだ直撃こそしていないが、彼女の射撃は3機の中では唯一、ストラ機の各部を掠め始めている。極限まで速度を追求した愛機をも捉えかけている彼女の狙いには、ストラも要注意だと目を付けているようだった。

 

(マコト様、リューコ様……わたくしも必ず、あなた方のように強くなって見せます。大切な人達を、この手で守り抜けるようにっ……!)

 

 先の戦争を生き抜いた、ジャブロー所属の第5陸戦小隊に居るマコト・カザマ伍長。京都士官学校を繰り上げ卒業し、星一号作戦にも参加したリューコ・タカスギ少尉。

 彼らの同期であり、孤児院育ちでもある彼女は、育ての親が居る孤児院に寄付するためだけに、士官学校を休学してまで前線に参加していたのである。

 

 そして戦争が終結した今ならばと、京都の士官学校に復学しようとしていた矢先に、この事件が起きてしまったのだ。地球の孤児院で帰りを待っている家族達に会うためにも、こんなところで死ぬわけにはいかない。

 

『アイ……あぁ、そうだな。俺達が焦ってる場合じゃない。ショウヘイ、同時に仕掛けるぞッ!』

『そッスね……! アイさん、心配掛けてスンませんッ! 今度こそ、俺達3人のコンビネーションで叩き落としてやりましょうッ!』

『えぇ……! よろしくお願いします、タクミ少尉、ショウヘイ少尉ッ! 3機同時射撃ならば、あの高機動型といえど容易くは避け切れないはずですッ!』

 

 その想いこそが、ストラ機すら捉えるほどの集中力を発揮しているのだ。アイの激励に奮起するタクミとショウヘイも、気を取り直し同時攻撃へと移行する。

 

『むッ……奴ら、連携が安定し始めているのか……! まさか、この戦い中で成長ッ――!?』

 

 そんな彼らの「変化」にストラが気付いた頃には。すでに第1波となるタクミ機の連射が、眼前に迫ろうとしていた。

 

 ストラ機の「行き先」を予測したアイ機のデータに基づいた偏差射撃。その閃光を辛うじて回避したストラ機に、第2波のハイパーバズーカが撃ち込まれて行く。

 

 だが、ショウヘイ機によるその砲撃も「真打ち」となる第3波に繋げるための布石でしかない。その第3波に相当するアイ機のビームスプレーガンが、ついにストラ機に「命中」したのだった。

 

『うぐぉあッ!?』

『今ですッ!』

『……ぬぁあぁああッ!』

 

 それでも、肩部を貫通したに過ぎない。撃破には程遠い。

 故に間髪入れず、アイ機の合図に応じて一気に接近したタクミ機とショウヘイ機は、同時にビームサーベルを振り抜いて行く。だがストラ機も負けじとビームナギナタを抜き、その二つの光刃で2本のビームサーベルを受け止めていた。

 

『……むぅうんッ!』

『くッ、あぁあぁッ!?』

 

 スピードのみならず、パワーでも優位に立っているのか。ビームナギナタで2機からの斬撃を凌いで見せたストラ機は、ショウヘイ機を回し蹴りで吹っ飛ばしてしまう。

 そして体勢を立て直す前にとどめを刺してしまおうと、ビームナギナタを猛回転させながらスラスターを全開にしていた。

 

『ショウヘイ少尉ッ! くッ……あの高機動型、まだ加速出来るというのですかッ!?』

『ハハハハッ、さしものお前でもこの最高速度は捉えられんだろうッ!』

 

 吹っ飛んでいる最中のショウヘイ機にも追い付きかねないその疾さは、偏差射撃に秀でたアイ機でさえも捉え切れずにいる。そのまま誰にも邪魔されることなく直進して行くストラ機は、ビームナギナタを振るいジム改を貫こうとしていた。

 

『てめぇの思い通りになんざ……させるかよッ!』

 

 ジム改を庇うようにストラ機の前に立ちはだかったタクミ機はビームスプレーガンを連射して牽制するが、真正面からの射撃を回避することなど造作もないのだろう。ストラ機は紙一重でビームの閃光をかわしながら、瞬く間に間合いを詰めて行く。

 

『そんな粗い狙いで俺のゲルググが落とせるかッ! 今とどめをッ――!?』

 

 だがストラ機は、その連射が「布石」であることに気付かないままタクミ機の懐に飛び込んでいた。ビームスプレーガンの乱射に気を取られるあまり、彼はタクミ機の手元(・・)を見落としていたのである。

 

『――馬鹿が』

 

 ビームスプレーガンを構えている右手。その真下から右手を支えている左手には、待機状態のビームサーベルが握られていたのだ。逆手持ち(・・・・)となっていたそのビームサーベルの()は、ストラ機に向けられていた。

 

 フラッシュライトを逆手に持った左手を支えにして、交差するように右手の拳銃を構える「ハリエステクニック」。その要領でビームサーベルを密かに構えていたタクミ機は、ビームナギナタを振るうストラ機が間合いに飛び込んで来た瞬間、必殺の光刃を作動させたのである。

 

『ぬぐぉッ!? ……味な真似をするッ!』

『この近距離でもかわしやがるのかッ……!? ショウヘイ、一気にカタを付けるぞッ!』

『……了解ッス! さっきはよくもやってくれやがったな……いつまでもいい気になるんじゃあねぇッ!』

 

 反射的に上体を真横に逸らしたことで、辛うじてコクピットへの直撃だけは回避したが、攻撃のタイミングを乱されたことでストラ機には大きな隙が生まれてしまった。その機に乗じて体勢を立て直したショウヘイ機は、怒りのままにビームサーベルを振るって猛反撃を開始する。

 そんなジム改の攻勢に応じて、タクミ機も手首をスナップさせるようにビームサーベルを構え直しながら、接近戦へと移行して行く。再びタクミ機とショウヘイ機、そしてストラ機の剣戟が始まるのだった。

 

『戦争なんてとっくに終わってるってのに……なんだってこんなことが出来るッ! お前達に、どういう理由があるってんだッ!?』

『……戦う理由など、些末事だろう。我々に求められているのは敵を殺すこと……それが出来れば、別に何だろうと構わん』

『そうかそうか……そんなに死にたいなら望み通りにしてやるッ! 死んでも恨むなよッ!』

 

 激しい鍔迫り合いの中で、男達の怒号が響き渡って行く。特に、家族や友人をジオン軍に殺されたショウヘイの怒りは、殺意に発展するほどにまで昂っていた。

 

 そんな中、タクミ機とショウヘイ機の視界に――ビグザム級に迫らんとする、ヴァイス機のジムが映り込む。両脚をもがれながらも、スラスターを噴かして突撃して行く隊長機の姿には、2人も目を丸くしていた。

 

『……! ヴァイス隊長……!』

『あれはヴァイス隊長のジム……!? いくら隊長だからって、1機でアレに突っ込むなんて無茶にも程があるッスよッ!』

 

 昔から無茶や無謀は当たり前の隊長だったが、今回ばかりはそれでは済まない。ビグザム級にも臆さず突撃して行く隊長機を案ずる2機は、思わず攻撃を中断して引き下がってしまう。

 

『……行ってください、タッくん。ちょっと悔しいッスけど、この中で1番腕が立つタッくんならきっと、ヴァイス隊長を助けられるはずッス。このゲルググは必ず、俺とアイさんで食い止めて見せますから』

『ショウヘイ……』

 

 ただ、不幸中の幸いと言うべきなのか。憎しみだけに囚われかけていたショウヘイは人を思いやる心を取り戻し、真摯な面持ちでタクミ機に視線を向けていた。

 彼もジオンへの怒りに燃えている1人ではあるが。その憎しみの炎が、仲間を想う気持ちを凌駕することはないのだ。

 

『……アイ。無茶ばかりさせないように、しっかりこいつを見張っててくれ。俺も、あのデカブツを隊長と一緒に片付けたらすぐに戻る』

『了解しました、タクミ少尉。……ショウヘイ少尉は、必ずお守りして見せます』

『へへっ、大丈夫ッスよタッくん。無茶なんてするまでもなく、生き残って見せますから』

『ふん……大きく出たな、ショウヘイ。帰った時に怪我でもしてたら、承知しないぞッ!』

 

 そんな彼の胸中を汲み、アイ機とも深く頷き合ったタクミ機は、スラスターを全開にしてその場を飛び去って行く。

 独り死地に飛び込んで行く、ヴァイス機の後を追うかのように。

 

 その離脱を見送ったショウヘイ機とアイ機は、ビームナギナタを構えるストラ機と改めて向き合い――第2ラウンドにもつれ込もうとしていた。

 

『さて……別れの挨拶は十分かな? では、もう少しばかり「憂さ晴らし」に付き合って貰おうか……連邦兵士諸君』

『アンタにも帰りを待つ人が居るはずだろうが。「命は宝」だ、大人しく退け』

『退かないと……後悔しますよ、「黒死霊」』

 

 互いに一歩も譲ることなく、睨み合う3機のMS。タクミ機の機影がこの宙域から完全に消え去ったのは、その激突が始まってから間も無くのことであった――。

 




 高機動型ゲルググの旧キットはパーツがゲルググキャノンとの2択になってるんですよねー。買った当時は「デザート・キングダム」に登場したジョウ・ヒューガ機のゲルググキャノンを作りたかったのでそっちを選んでたのですが、これを機に高機動型のストラ機にもチャレンジしてみたいと思います( ^∀^)
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