機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-第13話からの登場人物-

-ライミューダ・アゲイン-
 20歳。サイド3出身。元ガダルカナル島補給基地の責任者であり、リュウジとも旧知の仲だった女性艦橋士官。「黒死霊」が保有するムサイ級巡洋艦「サープリス」の乗組員だったが……。階級は中尉。
 ※原案は秋赤音の空先生。



第13話 亡霊の叛徒 -ライミューダ・アゲイン-

 

『な、んのつもりだ、てめぇらッ……!?』

 

 各宙域での戦闘が激化していることもあり、スターイーグル隊も「黒死霊」も、ほとんどの機体はまだムサイ級の「裏切り」には気付いていない。

 

 だが、ヴァイスのようにその瞬間を目撃していた一部の機体は、リュウジと同様に信じ難いものを見る目でムサイ級に注目していた。

 

『……まさか、ほぼ被害なしで奪取できちゃうなんて予想外だったわ。あなたにとってもそうでしょう? リュウジ』

 

 そのムサイ級――「サープリス」の艦橋(ブリッジ)に立っているライミューダ・アゲイン中尉は、近距離からのメガ粒子砲を受けて満身創痍となっているビグザム級を見遣り、不敵な笑みを浮かべている。

 

 かつてはガダルカナル島補給基地の責任者であり、リュウジと共に「炎葬隊」と死闘を繰り広げていた同志であるはずの彼女は、誤射ではなく自らの意思で、ビグザム級を撃つ指示を出していたのだ。

 

 彼女の足元には、先ほどまで「サープリス」の艦長を務めていた「黒死霊」の幹部達をはじめとする、主戦派の乗組員(クルー)達の骸が転がっている。

 今のムサイ級は、ライミューダを筆頭とする「裏切り者達」によって掌握されている状態なのだ。

 

 突然の裏切りに、リュウジは驚愕と怒りを露わにした表情で振り返っている。そんな彼を見つめるライミューダの眼にはもう、かつての仲間への情けは失われていた。

 

『て、めぇ……ライミューダ、何を考えていやがるんだァッ……!?』

『……私達はね、あなた達と違って闘争を生き甲斐に出来るほど酔狂じゃあないのよ。あなた達の「犯罪」に、いつまでも付き合ってはいられないわ』

 

 ――ガダルカナル島の基地が「炎葬隊」の攻撃によって壊滅した後。不利な戦況から早急に脱するべき判断し、リュウジと共に宇宙に上がったライミューダ。

 そんな彼女にとって想定外だったのは、身を寄せることになった「黒死霊」の面々が終戦後に投降せず残党と化したことであった。

 

 「黒死霊」では艦橋士官の一員として連邦軍の情報分析を主に行っており、コンペイトウに隠されていたレゾルグ専用MAを発見したのも彼女だったのだが――その真の目的は、首領格たるリュウジとは異なるものだったのだ。連邦軍の情報分析を務めていたのは、各部隊の性格を把握し、投降した場合に安全に受け入れられる部隊を探すため。

 そしてビグザム級のデータを発見し、奪取計画を意見具申したのは――重要拠点への強襲によって主戦派の実戦部隊を損耗させ、その隙に投降する機会を作るためであった。

 

 何かと情に絆されやすいスターイーグル隊という絶好の「受け入れ先」を見つけた今、もはやかつての仲間だろうと容赦はしない。

 どんな手段を使ってでも生き延びる。その一心の元に集った「ライミューダ派」の乗組員達は、自分達の手で奪い取ったサープリスのメガ粒子砲でビグザム級にとどめを刺すべく、再び砲口を首領格へと向けて行く。

 

『いいかお前達、決して躊躇うな! 今なら戦後の犯罪の責任は全部、外の連中に押し付けてサイド3に帰れるんだッ! 機会を逃すほど帰れなくなるんだッ! 目標、ビグザム級……斉射ァッ!』

 

 その砲口から放たれたメガ粒子砲の閃光は、Iフィールドバリアを持たないビグザム級の全身に命中し、その巨体を機能停止寸前にまで追い込んでいく。

 例え強大なMAであろうと、ビーム兵器に対する防御手段を持たないまま近距離からのメガ粒子砲を浴びせられては、ひとたまりもないのだ。

 

『ぐ、ぉ、おぉおぉ……ッ!』

 

 だが、まだ沈んではいない。

 リュウジ機は苦悶の声を漏らしながらも機体の体勢を持ち直し、ムサイ級の方向に旋回しようとしていた。

 

 メガ粒子砲を立て続けに喰らいながらも、ビグザム級はまだ、その戦闘機能を維持していたのである。

 生ける屍(リビングデッド)の如き、その歪な姿を目の当たりにしたライミューダは、想定以上のタフネスを発揮しているリュウジ機に驚愕していた。

 

(……! Iフィールドバリアも積んでいない、ただの移動砲台のくせに……なんて耐久力ッ! メガ粒子砲をこれほど撃ち込んでも、まだ沈まないというのッ!?)

 

 激しく損耗しながらも、ゆっくりとこちらに向き直ろうとしているビグザム級は、正面の大型メガ粒子砲で「サープリス」を消し飛ばそうとしている。到底、再発射は間に合わない。

 

『くッ……総員退艦、退艦ッ! コムサイで全員脱出だッ! あの亡霊ッ……まだ動いて来るぞぉおおぉおおッ!』

 

 そう判断したライミューダは自分に恭順する乗組員達と共に、焦燥を露わに艦橋から飛び出して行く。

 もしビグザム級が、大口径の大型メガ粒子砲による「粛清」に拘らなければ、彼女達はとうに消し飛ばされていたのだろう。

 

 そして、ライミューダ達を乗せた脱出用の宇宙往還機――「コムサイ」が、間一髪で発艦した瞬間。

 

『……この裏切り者共がぁあぁあーッ!』

 

 天を衝くような憤怒の絶叫と共に。

 リュウジ機のMAから放たれた大型メガ粒子砲が、母艦である「サープリス」を跡形もなく抹消してしまうのだった。

 




 ちなみに「サープリス」という艦名も秋赤音の空先生の考案でした。ムサイ級……お前そんな名前だったのか……(;´д`)
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