機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

12 / 177
-第1話からの登場人物-

-カリュブス・トゥーケス-
 26歳。サイド3出身。「四海竜」と呼ばれるエースパイロットの1人であり、仲間と共にキャリフォルニアベースから退却する同胞達を守り抜いてきた豪傑。蘇芳色を基調とするザクマリンタイプに搭乗する。階級は曹長。

-アスピード・ハブラ-
 21歳。サイド3出身。「四海竜」と呼ばれるエースパイロットの1人であり、カリュブスの片腕として仲間達を纏めながら付き従ってきた。白桜色を基調とするザクマリンタイプに搭乗する。階級は伍長。

-ポルセ・イドゥール-
 25歳。サイド3出身。「四海竜」と呼ばれるエースパイロットの1人であり、戦闘狂ではあるものの仲間達への情を忘れない一面もある。呉須色を基調とするザクマリンタイプに搭乗する。階級は軍曹。

-イーサン・アリヴァー-
 18歳。サイド3出身。「四海竜」と呼ばれるエースパイロットの1人であり、寡黙ながら仲間達のためならば身を呈することも厭わない熱血漢。瑠璃色を基調とするザクマリンタイプに搭乗する。階級は伍長。



外伝 コバルト・キャリバー -0080年4月7日-
第1話 蘇芳の海竜 -カリュブス・トゥーケス-


 ――宇宙世紀0080、4月7日。

 

 後の歴史に「一年戦争」として記録される、ジオン独立戦争の終結から4ヶ月余りが過ぎている現在においても。ジオン残党による抵抗は、世界各地で繰り返されていた。

 先の戦争で北米のキャリフォルニアベースを奪還されて以来、宇宙への脱出も叶わないまま散り散りになった残党達は、その多くがすでに悲惨な末路を迎えている。故郷への想いを馳せる数多の兵士達は、次々と見知らぬ地で斃れて行ったのだ。

 

 だが、キャリフォルニアベースから逃げ延びた全ての残党が、為す術もなく抹殺されたわけではない。

 

 連邦軍の潜水艦「Ⅶ型潜水艦」をベースに改装された、ジオン軍潜水艦「ユーコン」。

 キャリフォルニアベースから脱出したその無数の艦影を追い、洋上に繰り出した連邦海軍は、終戦協定が結ばれている現在においても「追撃」の手を緩めていないのだ。

 

 昨年の12月に基地の奪還を果たした時から、5ヶ月もの時を経た今になっても。まだ、確保できていない艦があったのである。

 仲間達の艦を逃すための「殿」を引き受けていながら、幾度となく連邦海軍の追手を退けてきた4人のエースパイロット。その猛者達を乗せた艦が、未だに捕まっていなかったのだ。

 

 彼らの「働き」により、他のユーコンで脱出していた敗残兵の大半が、艦を乗り捨てて各大陸のどこかへと身を隠してしまっている。無数の残党を逃された連邦海軍にとって、彼らはまさしく不倶戴天の「宿敵」であった。

 

 そして、今日。「四海竜(しかいりゅう)」と呼ばれる、その宿敵をついに追い詰めた連邦海軍は。

 長きに渡る因縁に決着を付けるべく、最後の決戦に臨もうとしていた――。

 

 ◇

 

「……ハッ。奴さん、とうとう本気で潰しに来やがったな」

 

 東シナ海に該当する某海域を潜航している、ユーコン級潜水艦の艦内で。敗残兵達を率いるカリュブス・トゥーケス曹長が、静かに呟く。

 その言葉を耳にした艦内の兵士達は、すでに「戦闘」の始まりを予感し、剣呑な雰囲気を纏っていた。

 

 だが、その眼にはもはや「以前」ほどの力強さは宿っていない。かつては気勢に溢れた精強なる特殊部隊だった彼らは、度重なる戦闘と逃避行に消耗し、疲れ果てているのだ。

 

 共にキャリフォルニアベースを脱出した仲間達を救うため、積極的に連邦海軍の陽動を引き受けていた彼らにとって、この5ヶ月に渡る航海は修羅の旅路であった。

 脱出当時は50人ほどだった乗組員も、今や十数人程度。艦の機能を維持するのも限界に達しようとしている状況なのだ。

 世界各地に点在している残党軍の支援を受けながら、ここまで海を渡り続けてきた彼らの力も。今まさに、尽きようとしている。

 

「けど、これを乗り切れば皆の生還は確実です。……俺達にとっての『勝ち』が、決まりますね」

 

 だが、カリュブスの隣で不敵な笑みを浮かべているアスピード・ハブラ伍長の貌に、不安の色はない。彼の言う通り、まだ生き延びる希望は残っているのだ。

 

「沖縄にさえ辿り着きゃあ、後は現地の同胞達が拾ってくれる。ほら、お前ら! この期に及んでメソメソしてんじゃねぇ! いつかこういう日が来るってのは、分かりきってたことだろうがよッ!」

 

 アスピードに続き、豪放な声を上げているポルセ・イドゥール軍曹の言葉に、生き残りの乗組員達は拳を握り締めている。その誰もが、覚悟を決めた男の貌を覗かせていた。

 

「……沖縄本島に潜伏している残党軍はすでに、お前達を受け入れる準備を進めている。決して躊躇わず、そこに向かって突き進め。俺達が、どうなろうとな」

 

 乗組員達を見渡しながら、静かに、そして厳かにそう告げているイーサン・アリヴァー伍長も。周囲の同胞達の視線を浴びながら、不遜に鼻を鳴らしている。

 

「四海を制するジオンの竜。そんな謳い文句で担がれていた俺達も、今やただの残党……テロリスト同然ってか。へっ、こりゃあ傑作だぜ。死神だなんだと嫌われていた『氷魔(ひょうま)蒼弾(そうだん)』の方がよっぽどマシに聞こえちまうなァ」

「俺達4人の撃墜数(スコア)を全部合わせても、ガリウス中尉には遠く及びませんからねぇ」

 

 ――ルウム戦役の頃から無類の強さを発揮し、地上に降下してからは水中戦の分野でその実力を発揮してきた、4人のエースパイロット。「四海竜」と呼ばれ、恐れられてきた彼らは今日、最期(・・)の出撃に臨もうとしていた。

 

 キャリフォルニアベースから脱出し、同じ境遇の仲間達を救う為に奔走してきたこの艦も、もはや限界。生き延びるためには、この先にいる沖縄本島の同胞達と合流し、補給を受けるしかない。

 だが、すでに連邦海軍の追撃部隊は目前に迫ろうとしている。彼らを退けなければ、待っているのは共倒れという結末なのだ。

 

 しかし、如何に「四海竜」と言えども。強力な水中用MSのほとんどを失っているこの状況下で、連邦海軍を撃退するのは容易ではない。

 

 残っている機体はたったの4機。それも、水中用MS開発の黎明期に試作された、MSM-01「ザクマリンタイプ」のプロトタイプなのだ。いずれも「四海竜」に合わせてチューンナップされている特別機ではあるが、それでも一騎当千と呼べるほどの戦力には至らない。

 その程度の代物で出撃しても時間稼ぎが限界であり、まず帰還は絶望的であると言っていい。しかし、それ以外に打つ手がないことも事実であった。

 

 このユーコンと、生き延びた乗組員達を沖縄まで送り届けるには。「四海竜」がそれぞれ専用のマリンタイプを駆り、連邦海軍に「特攻」を仕掛けるしかない。

 それは、とうに「四海竜」を含む全員が理解し、覚悟していたことであり。その時を迎えた4人の男達は、迷うことなくMSの格納庫へと足を運んでいた。

 

「……どんな理念があろうが、なかろうが。正しかろうが、そうでなかろうが……結局死ねばそれまでよ。生き延びさえすれば、マシな人生ってヤツを拝めるかどうかの賭けにも挑める」

「そのためのテーブルを用意するってのが、俺達の役割ってことだ。……悪くねぇ末路じゃねぇか。なぁ、皆」

 

 そんな彼らに敬礼し、見送る乗組員達は次々と声を掛けていくのだが。そのいずれも、涙ぐむあまり言語の体すら成していなかった。

 だが、言いたいことは分かりきっている。それ故に「四海竜」の男達は、多くを語ることなくただ頷き、敬礼を返していた。

 

「隊長代行として、最後の命令を各員に伝達する。……生きろ! 以上だ!」

 

 そして、5ヶ月に渡り同胞達を率いてきたカリュブスが、その一言を放った瞬間。4人の男達は、それぞれのマリンタイプへと一気に乗り込んで行く。

 

 瑠璃色のイーサン専用機。白桜色のアスピード専用機。呉須色のポルセ専用機。そして、蘇芳色のカリュブス専用機。

 最も付き合いの長い彼らの愛機は今、ユーコンを逃すための最後の切り札として。開かれたハッチから、戦場の大海へと漕ぎ出して行くのだった。

 

『作戦内容は至ってシンプルだ。……奴らを止める。以上!』

『了解ッ!』

 

 4方向に散開した「四海竜」のマリンタイプは、同時に連邦海軍の「追手」を捕捉する。皮肉なことに連邦海軍が運用していたのは、キャリフォルニアベースで鹵獲されていた同型艦(ユーコン)であった。

 かつてはⅦ型潜水艦を奪われ、ユーコンに改装されていた連邦軍が、そのユーコンを利用してカリュブス達を追い詰めていたのだ。それはさながら、意趣返しであるかのように。

 

 そして、連邦軍仕様として運用されているユーコンのボディには――コバルト色の刀身を持つ、剣のエンブレムが描かれていた。その「見慣れた好敵手」の証に、カリュブスは口元を吊り上げている。

 この5ヶ月にも及ぶ航海の中で、幾度となく激突してきた因縁の追撃部隊。その宿敵が最期の相手として現れたことに、喜びと高揚感すら覚えているのだ。

 

『……海の怪物を退治しに来た、正義の聖剣ってか。いいねぇ、やって見せろよ「コバルトキャリバー」!』

 

 RAG-79「アクアジム」の開発にも携わっていたとされる部隊。地球連邦海軍所属、第9海上MS実験小隊――通称、「コバルトキャリバー」。

 その好敵手達が送り出して来るMSに思いを馳せ、カリュブスが吼えた瞬間。敵方のハッチが、轟音と共に開かれたのだった。

 

 大海原を舞台とする、この因縁に終止符を打つために。

 

 ◇

 

 そこは。北緯30度43分、東経128度04分。

 

 かつて、守るべき者達のために「特攻」という道を選んだ戦艦――「大和(やまと)」が沈んだ場所として言い伝えられている、運命の海であった。

 




 現在、作者の活動報告にて本章に登場する新キャラを募集しております! 機会があればお気軽に遊びに来てくださいませ〜(о´∀`о)

Ps
 本章は完結後、第1部と第1.5部の中間辺りに移動させる予定です。ご了承くださいm(_ _)m
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。