機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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最終話 灼熱の魔弾 -エルヴィン・ケーニッヒ-

 ビームサーベルを刺し込んだ場所を中心に広がっていく大爆発が、3機のジムをビグザム級の巨体から跳ね飛ばした瞬間。60mの巨躯はついに力尽き、爆炎に包まれていた。

 

『ぐ、ぉあ、あッ……!? く、くそッ……たれがァァアッ……!』

『……! 待ちやがッ……ぐぉあッ!?』

 

 その燃え盛る機体から命からがら脱出していたリュウジは、ノーマルスーツの背面バーニアを噴かしてビグザム級から離れようとする。

 コンペイトウを火の海に叩き込んだ因縁の宿敵が、まんまと逃げ果せている光景を目にしたヴァイス機は、咄嗟に彼を捕まえようと手を伸ばすが――その手は、ビーム兵器の閃光によって焼き切られてしまうのだった。

 

『もうそのMAは持たないッ! 離脱するぞ、急げリュウジ!』

『チィッ……! 高い授業料だぜ、全くよォッ……!』

 

 エルヴィン機のザクフリッパーが持つ、ロングレンジビームライフルに救われたリュウジの身柄は、そのまま同志達の機体に回収されていく。

 

『ヴァイス隊長、下がってください! ビグザム級の爆発に巻き込まれますッ!』

『離せ、離せよお前らッ! あいつは、あいつだけはッ……!』

『あんたが死んだら何にもならねぇだろうがッ! 何がなんでも生き残れって、俺達に言い続けて来たのはあんただろうがよォッ!』

 

 それでも宿敵を追い掛けようとしていたヴァイス機は、両脇を固めるエイジ機とタクミ機に肩を掴まれ、制止されていた。

 母艦(サラミス)や部下達からの援護射撃に守られながら、満身創痍の隊長機は徐々に後退して行く。

 

 もはや彼のジムをはじめとするスターイーグル隊の機体も、まともに継戦出来る状態ではないのだ。これ以上の深追いは、禁物と言わざるを得ない。

 対する「黒死霊」も目的だったビグザム級を撃破された挙句、母艦の「サープリス」まで失ってしまっている。さらにスターイーグル隊の後方からは、準備を整えたコンペイトウ所属の増援部隊が迫りつつあった。

 

 それでもこの場で、どちらかが全滅するまで戦い続ける選択肢もあっただろう。

 だがスターイーグル隊も「黒死霊」も、隣で命を預け合っている仲間達を犠牲にしてでも、勝利に固執する道だけは選べなかったのだ。宿敵である前に、修羅である前に、彼らはやはり人間だったのである。

 

 どちらか一方を勝者とするには、どちらもあまりに傷付き過ぎた。ならば、今もなお生き残っている者達こそが勝者であると定義することも、あながち間違いではない。

 生存に勝る勝利なし。彼らはそこに、自分達が存在している意義を見出したのだ。

 

 エイジ・レンフォードと、タクミ・ベルトラインのジム。

 ツバキ・シバのジムスナイパーII。

 ミネルヴァ・マーズのジムスナイパーカスタム。

 ディアーヌ・デュボアのジムスナイパーII。

 ヴャチェスラフ・イワノヴィチ・ボブリコフのジム。

 アオオニのゲルググ。

 ミキエラ・バルボッサのジム改。

 カタリナ・キャスケットのジムスナイパーII。

 ウィンストン・コサックのジム。

 ジーン・パチョレックのコアブースター。

 キニス・エイグザンドのガルバルディα。

 ティルク・ディルクのゲルググ。

 ロバート・エーカーのジムキャノン空間突撃仕様。

 アカツキ・トウジョウのジムインターセプトカスタム。

 アイリス・ベルガモットのジム。

 ショウヘイ・グスクマのジム改。

 アイ・ヒナドリのジム。

 ギルス・スォードの高機動型ザク。

 

 スミル・ダジャのザクキャノン。

 エルヴィン・ケーニッヒのザクフリッパー。

 トキノ・カズラのリックドム。

 フェオドラ・アドリアーノヴナ・ペトルーシュキナのゲルググ。

 ガノン・ギルバードのリックドムII。

 ヴェローニカ・シェーンベルクのザクIIS型。

 ミランダ・ヴェルテのアクトザク。

 ミカエラ・マコーミックのザクII改。

 ジャスグル・ヤージュのザクIスナイパータイプ。

 マーカ・トウェインのリックドムII。

 ストラ・ディバイリの高機動型ゲルググ。

 

 大破寸前となっている両陣営のMSは、険しく睨み合いながらも少しずつ距離を取り、戦闘宙域から離脱していく。これ以上戦い続けても悪戯に犠牲が増えるだけだと、互いが理解していたのだ。

 

『……いつかケリ付けようぜぇ、旦那ァ……!』

『てめぇだけは必ず、この俺がァッ……!』

 

 そして、双方のリーダー達は相手の姿が完全に見えなくなるその瞬間まで。研ぎ澄まされた殺意の眼差しを交わし合い、歯を食いしばっていた――。

 

 ◇

 

 ――戦闘宙域から生還した「黒死霊」の残存部隊。彼らは母艦(ムサイ)を失いながらも、辛うじて他の残党組織との合流を果たし、連邦軍の追撃からも奇跡的に逃げ果せていた。

 

 共にエギーユ・デラーズの艦隊に加わろうとしている彼らの旅路は、新たな局面を迎えようとしている。その道中にいたリュウジとスミルは、苦虫を噛み潰したような表情で言葉を交わしていた。

 

『……当てが外れたな、リュウジ。「魔王の遺産」さえ手に入れば、俺達「黒死霊」にも相応の()が付いていたところだったのだが』

『奴らを舐め過ぎた俺の落ち度さ。……情けねぇ話だぜ、仮にもビグザム級のMAだったってのに』

 

 ビグザム級という特大の価値を持つ、レゾルグ・バルバ専用MA。

 その機体を手土産にデラーズ艦隊と合流し、組織内で優位に立とうとしていたリュウジ達「黒死霊」の目論見は、ヴァイス率いるスターイーグル隊によって完膚なきまでに粉砕された。

 

 それどころか母艦のムサイ級「サープリス」をはじめとする、甚大な被害を被ってしまったのである。「黒死霊」きっての過激派にして武闘派だった、アズラ・R(レイズ)・アルカリアを失った穴は、あまりに大きい。

 

『しかし、デラーズ大佐も酔狂が過ぎるな。俺達のような残党組織ばかりか……あの「三獣鬼(さんじゅうき)」を部下にしようなどとは。正気の沙汰とは思えん』

 

 そんな中。スミルはデラーズが集めようとしている「候補」の中に、到底許容し難い相手が含まれていたことについても懸念の意を示していた。リュウジも同意見なのか、その副官の言葉には深く頷いている。

 

 ――「三獣鬼」。

 先の独立戦争におけるブリティッシュ作戦に参加していた3人組のエース集団であり、ルウム戦役でも劇的な戦果を残していた豪傑達なのだが。常軌を逸するほどの凶暴さ故に、一度も地球に派遣されることがなかったという、曰く付きの連中なのだ。

 

 現在はサイド3の防衛を担うジオン共和国軍に籍を置いているという噂なのだが、まともな神経を持った者ならばまず関わろうとはしない相手だ。戦いとは、腕さえ良ければいいというものではないのだから。

 

『奴らは……もう「人間」とすら呼べねぇ、正真正銘の「悪魔」だってことを知らねぇのさ。俺達「黒死霊」ですら、奴らだけは誘おうとも思わなかった。理性のカケラもねぇ、殺し合うだけが能のケダモノなんざ……味方にとっても害でしかねぇからな』

 

 そして他の残党組織よりも遥かに、腕の良さに重点を置いている「黒死霊」でさえ、彼らだけは避けていたのである。終戦協定を無視したテロで大勢の死者を出した、「黒死霊」という絶対的な「悪」。それすらも霞むほどにまで穢れ果てた、さらにどす黒い「邪悪」。「三獣鬼」とは、そういう男達なのだ。

 それほどの魔物が潜んでいるというサイド3の方角を一瞥するリュウジは、宿敵(ヴァイス)の今後に独り思いを馳せている。

 

『……もし奴らとカチ合うようなことがありゃあ、さしもの旦那も御陀仏かもなァ。ま、そんな最悪過ぎる偶然なんざ、狙ったって起こりゃあしねぇがよ』

 

 地上に降りる機会が無かったのにも拘らず、「三獣鬼」はその全員が「五指」の精鋭達にも匹敵すると言われている。万一、どこかで彼らとの戦闘に発展するようなことがあれば、スターイーグル隊を率いていた男でも無事では済まない。

 

(……あばよ、旦那)

 

 その可能性に複雑な心境を抱きながらも――彼は「黒死霊」の同胞達と共に、次の戦場を目指して旅立って行く。

 

 彼らがエギーユ・デラーズと共に立ち上がり、改めて連邦軍への宣戦を布告することになるのは、今から約3年後のことであった。

 

 ◇

 

 かくして、「魔王の遺産」を巡る一連の大事件はようやく一応の決着を迎えたのだが。今回の事件で甚大な被害を被った連邦軍は、ジオン残党に対する掃討作戦の重要性を再認識し、より強硬な「弾圧」へと傾倒し始めるようになっていた。

 

 そして、コンペイトウに属する全ての連邦軍部隊が、事件の事後処理と犠牲者達の追悼に奔走している最中。「黒死霊」から離反し、スターイーグル隊に投降して来たライミューダ・アゲインをはじめとする捕虜達の移送も、間も無く始まろうとしていた。

 

 共和国軍に属するギルス・スォードからの口添えもあり、ライミューダ派の捕虜達は全員、裁判を受けるためにサイド3のズムシティへと移送されることになったのである。

 一時的とはいえ、テロリストである「黒死霊」に加担していた罪を清算した時こそ、彼女達は真の自由を勝ち取れるのだ。

 

 一方。ハナ・モリイズミはティルク・ディルクの付き添いの元、ズムシティの総合病院へと入院することになった。裁判が出来るようになるまでは、ティルクに介護されながら療養の日々を過ごすことになる。

 身体以上に深く傷付いている彼女の心を癒すため、どんな形であろうと必ず側に居る。ティルクはそこに、新たなる使命を見出していた。

 

 元学徒兵のヴォルフガング・ミューゼルも、アカツキ・トウジョウの養子として引き取られることになり。連邦軍に対して当初から協力的だったアンドラ・グレースは、裁判にかけられることもなく釈放され、現在はズムシティで就職活動に励んでいるのだという。

 

「皆……それぞれの道を、必死に生き抜いてるんですね。……もしかしたら、『黒死霊』の奴らも同じだったのでしょうか」

「だとしても。また敵として出会うのなら、その時こそ全力を以て叩き潰すまでだ。……これまでも、これからも変わらねぇ。せっかく掴んだ平和を守るために、俺達はMSに乗ってるんだからよ」

 

 そして――ライミューダ達の移送任務を兼ねて、サイド3進駐軍への転属を命じられたヴァイス・ヴァレンタインとエイジ・レンフォードは。

 スターイーグル隊の証である、黒を基調としたフライトジャケットを仲間達に託すと。共に命を預け合った戦友達に見守られながら、サイド3を目指して旅立って行くのだった。

 

 ――その旅路の先に潜む、「三獣鬼」の影など知る由もなく。

 

 ◇

 

 一方。ヴァイスに代わり隊長の座を引き継いだディアーヌ・デュボワが率いる新体制のスターイーグル隊は、その後もジオン残党の追討任務に当たっていた。元広告塔(アイドル)という「箔」を持つディアーヌの人気もあり、一時はコンペイトウ最強のMS部隊としてもその名を馳せるようになっていたのである。

 だが、非常に「癖」の強い隊員達に纏わる問題行動の噂も後を絶たず。ついには手を焼いた上層部から「コンペイトウ基地の風紀に関わる」という評価を下され、約3年後に開催される観艦式への参加は許されなかったのだという――。

 




 今話を以て、外伝「ブラック・スペクター」はめでたく完結となりました! 最後まで本章を見届けてくださった読者の皆様、キャラ募集企画にご協力頂いた参加者の皆様、応援誠にありがとうございますー! おかげさまで、本章も無事に完走となりました!(*≧∀≦*)

 連載2周年企画でもある本章は、第3部「フルメタリック・メテオシャワーズ」のラスボスを務めた、レゾルグ・バルバの「遺産」を巡るお話でした。前回「キョート・フラワーズ」の時と同様に、シリーズの中でも重要な章である第3部をベースにした外伝エピソードとなりましたね(о´∀`о)
 さらに今回のキャラ募集企画は久方振りとなる陣営選択式であり、皆様のおかげで2周年記念に相応しい大変賑やかな章となりました。あのキャラとこのキャラだからこそ、この掛け合いや対決が出来た……という素敵な巡り合わせもたくさんありましたし、企画主としても大変楽しませて頂きました。改めてまして、この度も拙作の企画にご協力頂き誠にありがとうございますm(_ _)m

 そしてこの後は、1周年記念企画だった外伝「ダーティー・ウルフ」へと繫がって行くことになりますな。あれからもう1年も経っちゃったのかぁ……と懐かしみつつ、しばらくの間はゆっくり休ませて頂こうと思いまする〜_(┐「ε:)_

 また、第1話公開時にお知らせした通り、本章は後ほど外伝「キョート・フラワーズ」と外伝「ダーティー・ウルフ」の中間辺りに移動させる予定です。ご了承くださいm(_ _)m
 ではではっ、本章を最後まで楽しんで頂き、誠にありがとうございましたー! いつかまた、どこかでお会いしましょうー!٩( 'ω' )و


【挿絵表示】


Ps
 スターイーグル隊のフライトジャケットは多分、アルビオン隊のものに近い感じだと思います。あれに星のエンブレムを足した感じですねー(゚ω゚)
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