-ダンテ・ヴォルフルク-
24歳。サイド3出身。「三獣鬼」と呼ばれるエースパイロットの1人であり、非常に優れた戦闘能力の持ち主である一方で、常軌を逸した残忍さも持ち合わせている。蓬色を基調とするザクIIに搭乗する。階級は軍曹。
-ゼレド・ケルベルガー-
25歳。サイド3出身。「三獣鬼」と呼ばれるエースパイロットの1人であり、一見すると冷静沈着な物腰だが、その内面には飢えた闘争心を抱えている。銀灰色を基調とするザクIIに搭乗する。階級は軍曹。
-グルス・ガルムート-
28歳。サイド3出身。「三獣鬼」と呼ばれるエースパイロットの1人であり、ダンテ以上に獰猛で好戦的なことに加えて、他者に「痛み」を与えることに固執する異常者。常盤色を基調とするザクIIに搭乗する。階級は軍曹。
第1話 蓬色の猟犬 -ダンテ・ヴォルフルク-
宇宙世紀0079、2月5日。ブリティッシュ作戦――即ち「コロニー落とし」と呼ばれる人類史上最悪の惨劇から、約1ヶ月の時を経たこの日。
「ダンテ・ヴォルフルク軍曹。ゼレド・ケルベルガー軍曹。グルス・ガルムート軍曹。以上3名に、サイド3への転属を命ずる」
ムサイ級軽巡洋艦の艦内にて、3人の兵士達がサイド3の防衛任務に就くよう命じられていた。だが、内地での勤務という「栄転」であるにも拘らず、この場にいる誰もが険しい表情を浮かべている。
「……ほぉ。つまるところ、俺達は地球には行けねえ……ってことですかい? 曹長殿」
「何の不服がある。これは名誉なことなのだぞ、ヴォルフルク」
その命令を言い渡している下士官も、命じられている兵士達も。この転属命令に秘められた「真意」を理解しているが故に、睨み合っているのだ。
3人のうちのリーダー格が、口角を吊り上げ皮肉混じりに呟くと。他の2人も薄ら笑いを浮かべつつ、獰猛な眼差しで上官を射抜いている。
彼ら3人の殺気を一身に浴びている下士官も、怯むことなく毅然とした佇まいで睨み返しているのだが。その眼に宿る感情は殺意というよりは、諦観に近しい色を湛えていた。
彼らを真っ当に説き伏せるのは、もはや不可能なのだろう――と。
「サイド3の防衛を担える大役など、誰にでも務まるものではない。少なくともニコラ・バルヒェット少佐は、それほどまでにお前達を評価してくださっているのだ」
「……バルド曹長。そろそろ、もっともらしい御託はおやめになってはいかがですかな」
「どうせニコラ少佐の御命令とあっては、俺達だって逆らいようがねぇんだ。いい加減、腹ァ割って話ましょうや」
つい先日、ジオン軍は地球方面軍の設立を公表したばかりであった。それに伴い、これから始まる大規模な地球降下作戦には、多くの兵士が参加することになる。
誰よりも闘争を好むこの3人も、その最前線に加わることを望んでいたのだ。それが叶わなかった今、その命令を告げに現れた上官――バルド・シディス曹長に怒りをぶつけるしかなかったのである。
「……この先の地球降下作戦は、困難の連続となるだろう。それこそ、猫の手も借りたいほどにな」
「だが、悪魔の手は借りない。……そういうことですかい」
サイド2のコロニー「アイランド・イフィッシュ」。そこに毒ガスを注入し、数千万もの住民を虐殺した作戦に携わった実行部隊は、そのほとんどが正確な内容を把握していなかった。
現場で部隊を指揮していたシーマ・ガラハウでさえ、使用するのは催眠ガスだとしか言われていなかったのだ。その結果、ガスの注入に関わったジェイコブ・ホーク曹長やバルドのように、同作戦に参加していた多くの兵士が、その心に深い傷を残すことになったのである。
――だが。現場でガスを扱っていた隊員の全てが、そうだったわけではない。この虐殺に纏わる真実を握っていたのは、シーマに全ての業を背負わせたアサクラ大佐だけではなかったのだ。
彼の直属の部下――即ち、事実上の「私兵」として扱われていた3人の男達は。他の隊員達とは違い、最初から毒ガスだと知った上で、嬉々として虐殺に手を染めていたのである。
ダンテ・ヴォルフルク。
ゼレド・ケルベルガー。
グルス・ガルムート。
彼らに課せられた任務には、途中でガスの正体に気付いた隊員が逃げ出さないよう、監視することも含まれていたのである。事実を悟り、実行を拒むような「裏切り者」を始末するために。
そんな彼らの「監視」と「粛清」もあり、ガスの注入は作戦通りに完遂され――やがて、誰もが知る大惨事が現実のものとなったのだ。
戦況を大きく変えた作戦の成功に、貢献していたことには違いない。だが、民間人だろうと味方だろうと容赦なく抹殺出来てしまう彼らの狂気を、肯定するわけには行かなかったのだ。
そこで。彼らの「人事」を預かることになったニコラ・バルヒェット少佐は、サイド3への栄転という「建前」を利用して、この3人を地球降下作戦に加えないことを決断したのである。
「……ハッ、こりゃあ傑作だぜ。聞いたか、お前ら。俺達に
「さすがですな、バルド曹長。やはり上層部のお考えは、一味も二味も違うようだ。あの
「俺達なんざ居ても居なくても変わらねぇってことかぁ? ハハッ! どうやら殺した数が足りなかったみてぇだなァ。あの
「上」の者達が下した、その判断への怒りと嘲り。それだけに満ちた男達の嗤い声が、この艦内に響き渡っていた。
その不気味な姿に戦慄を覚えながらも、バルドは険しい顔付きで服従を強要する。人面獣心の修羅達は、敢えて露骨に逆らうような態度は見せず、下卑た笑みを浮かべていた。
「……好きなように思え。この決定にどのような思惑があろうと、我々は軍人として命令に従うのみだ。これはニコラ少佐だけでなく、あのブルース・ゲイボルグ大佐の御意向でもあるのだからな」
「へいへい……あのゴリラジジイのお望みだってんなら、どうぞお好きになさってくださいや。……ただ、後悔だけはしないでくださいよ」
「それだけはあり得んと、バルド・シディスの名に懸けて誓おう。お前達に全ての業を押し付けた私に出来ることなど、その程度が関の山だからな」
そんな彼らの姿に、己が犯した「罪」を重ねたバルドは。目を背けるように、この場を後にしていく。
哀愁の色を滲ませたその背を、冷ややかに見送る3人の男達は、やがて忌々しげな表情で反対の方向へと歩み出していた。さながら、袂を分かつかのように。
「ハッ……この期に及んで、善人ヅラとは恐れ入るぜ。リュウジ・クガの旦那が聞いたら、さぞ大笑いしていることだろうよ」
その筆頭であるダンテの呟きには、押し殺された怨嗟の念が溢れていた――。
◇
その後の戦局は多くの者が知る通り、ジオン軍の侵攻を跳ね除けた連邦軍の勝利に終わり。ジオン本国を守る最後の防壁だったア・バオア・クーの陥落を以て、ついに戦争は終結した。
エギーユ・デラーズ大佐を含む一部の残存勢力は、再起を期して要塞を脱出し、独自に「継戦」の用意を進めていたが。最後まで戦うことを選んだ者達のほとんどは、暗黒の大海にその命を散らしていた。
地球降下作戦から外されていた3人の男――「
……はず、だったのだ。彼らは敵だけでなく味方からも、そうなることを望まれていた。
地球での戦いを経験していないため、かなりのブランクがあった彼らは、ソロモンやア・バオア・クーにおける激戦区で必ず戦死するはずだった。そう、期待すらされていたのだ。
にも拘らず。彼らは、生き残ってしまったのである。
待ち望んだ闘争に狂喜し、自ら弾雨に飛び込むような戦いを繰り返した上で。
生きたまま、終戦を迎えてしまった。それは本人達にとっても、生き地獄だったのである。
やっと力の限り戦える日が来たと思えば、すぐに戦争が終わってしまい。自分達は牙を抜かれた「ジオン共和国」の護りに就かねばならないというのだから。
その後、間も無く。彼らの噂を聞きつけたデラーズの部下達は、「三獣鬼」と称される貴重なエースパイロット達を、自分達の「同胞」として誘おうとしたのだが。
鎖から解き放たれた猛獣達の手綱を握ることは、叶わなかったのである。
すでに気が遠くなるほど「待たされてきた」彼らは、もう1秒たりとも耐えらなくなっていたのだから。
「すいませんねぇ……デラーズ大佐。俺達はあんたのタイミングに付き合えるほど、もう大人しくは出来ねえんだよ」
蓬色を基調とする、ダンテ機のザクと。
「もはや我々に、これ以上耐えようなどという選択肢はありえないのです。あなた方よりも遥かに、我々はすでに待たされてきたのですから」
銀灰色のボディを特徴とする、ゼレド機のザクと。
「そういうわけだから、俺達は俺達の好きにさせてもらうぜぇ。……共和国もデラーズも、知ったことかよ。俺達はなァ、暴れてぇから暴れるんだ」
常盤色に塗装された、グルス機のザクは。
あまりにも無意味で、無差別な破壊行為によって。闘いに飢えた自分達の心を、満たさんとしている。
その矛先は今、護るべき故郷であるはずのサイド3へと向けられていた。
熟成された怨嗟に囚われた彼らにとっては、もはや「ジオン」すらも道具でしかないのである――。
◇
――そして。彼らの強さを知る者達は、口々にこう語っていた。
もし、あの3人が地球に降り立っていたら。「
MSパイロットとしての純粋な強さだけなら。「
現在、作者の活動報告にて本章に登場する新キャラを募集しております! 機会があればお気軽に遊びに来てくださいませ〜(о´∀`о)
Ps
本章のコンセプトは「ベタベタの勧善懲悪」。なので本章のヴィランである三獣鬼も、なるべくわかりやすいド外道として書かせて頂いております(´-ω-`)