機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-第10話からの登場人物-

-セラ・アルビオン-
 27歳。オンタリオ出身。ゼファー・アルビオンの姉であり、弟とは対照的に柔らかな物腰だが、戦闘の腕前は一流。スラスターを強化した、銀を基調とする専用のジムに搭乗する。階級は大尉。
 ※原案はカイン大佐先生。

-ユウキ・ハルカゼ-
 15歳。神奈川出身。数多の戦いを潜り抜けてきた歴戦の少年兵であり、地球で保護されているアストレア・ティルビッツの立場を守るため、最後の戦いに赴く。ロールアウトカラーのヘビーガンダム試作1号機に搭乗する。階級は曹長。
 ※原案は八神優鬼先生。

-ナース-
 年齢、出身、本名不詳。かつてはジオンの衛生兵だった若手の女傭兵であり、現在は第1部隊のサポート要員として雇われている。現地改修された高機動型ザクに搭乗する。傭兵であるため、階級を持たない。
 ※原案は蹴翠 雛兎先生。



第10話 白銀の聖女 -セラ・アルビオン-

 ヴァイス機とカイト機を圧倒するダンテ機のゲルググは、その手に握られたビームナギナタを振るい、とどめを刺そうとする。

 それをビームサーベルで間一髪防いだのは、銀を基調とする1機のジムであった。その機体を駆る銀髪の美女は、Gカップの胸を揺らして妖艶に微笑んでいる。

 

『あらあら……いけない子ね。それじゃあ、お姉さんが昂らせてあげましょうか』

『……へぇ。そこの男前2人がブッ転がされてんのを見ても、何も思わねぇのかい。肝が据わってるねぇ、あんた』

 

 かつて「三獣鬼」を率いていたバルド・シディスを、キャリフォルニアベースの戦いで打ち破ったゼファー・アルビオン。その姉にして、最前線を戦い抜いて来た猛者でもあるセラ・アルビオン大尉は、ダンテ機の猛威を前にしても、全く怯んでいない。

 むしろ、ビームサーベルでの鍔迫り合いを続けている彼女のジムは――強化されたスラスターの推力を利用し、ダンテ機を仰け反らせている。その勢いを利用しようと目論んだダンテ機は、セラ機の斬撃をいなして隙を作ろうとするのだが。

 

『ふふっ……肝が据わってる、とはちょっと違うのよね。これは、「怒ってる」っていうのよ』

『……ッ!』

 

 一瞬で体勢を立て直したセラ機は、ダンテ機が反撃の刃を振るうよりも疾く、回避した彼を追うようにビームサーベルを振るっていた。

 咄嗟に防御に回ったダンテ機のビームナギナタに、その光刃が激突する。そこで初めて、ダンテはコクピットの中で「冷や汗」をかいていた。

 

『……ハハッ。大人しそうな雰囲気出してる癖して、とんだ食わせ者じゃねぇかよ。このゲルググのスピードに付いて来るとはなァ……!』

『あの戦争では、あなた達が思っているよりもずっと……多くの人が傷付き、命を落としたの。犠牲の上にある平和なんて、私も好きではないけれど……せめて、今の穏やかな日々だけでも守ってあげたい。だから、私は怒るのよ。それすらも壊そうとする、あなたにね』

 

 一方、セラの脳裏には――先の戦争によって失われた、家族の姿が過っていた。遺体すら残さずに消えてしまった、義理の妹と甥。その幻影に苛まれてきたのは、ゼファーだけではないのである。

 淑やかな佇まいに隠された、燃え上がるような憤怒。その源泉は、跡形もなく消し去られた家族との思い出にあったのである。

 

『だったらグダグダ抜かしてねぇで、もっと怒れよ! さっさと俺を殺してみろ! 早くしねぇと……俺が先に殺しちまうぞッ!?』

 

 そんなセラによって齎された、間近に迫る「死」の感覚。並の人間ならば恐怖に駆られ、手元に狂いが生じる場面なのだが――ダンテはむしろその感覚に昂り、ますます神経を研ぎ澄ましている。

 彼のゲルググは怯むどころか、より無駄のない挙動でビームナギナタを振るい、セラ機を圧倒し始めていた。機動力を追求した設計であるが故に、「受け」に回ると弱い彼女のジムは、次第に追い詰められ、装甲を削り取られていく。

 

『……ッ!』

『ハァッ! スピードは互角かも知れねぇが、まるでパワーが足りてねぇぜッ! そんなに平和が好きだってんなら、そういう場所で静かに暮らしてりゃあ良かったのによォッ!』

 

 やがて左腕を斬り落とされたセラ機は、後方に飛び退きながらビームスプレーガンを連射する。が、その閃光はゲルググの装甲を僅かに掠めた程度であり、ダンテは最低限の動きで射線をかわしながら距離を詰めていた。

 

 伸びる光刃は逃げる暇も与えず、そのコクピットに向かっていく。セラ機の胸が貫かれるのは、時間の問題であった。

 

『そうやって……平和なところに逃げるわけにはいかないんだよ、僕達は! 戦場になってしまっている場所を、平和にする! そのために、僕達は来たんだッ!』

『ユウキ……!』

 

 ――その斬撃を、身を呈して防いだのは。白を基調とするロールアウトカラーで統一された、FA-78-2「ヘビーガンダム」試作1号機であった。

 

 同機は片腕を犠牲にしながらも、セラ機を庇うように立ちながら、ビームキャノンとビームライフルを連射している。その圧倒的な火力を間近で浴びるわけにもいかず、ダンテ機はシールドを構えながら後退していた。

 これまで破竹の勢いで進駐軍を圧倒していたゲルググが、一瞬とはいえ初めて引き下がったのである。それでも、ヘビーガンダムのパイロット――ユウキ・ハルカゼ曹長は油断することなく、ダンテ機を接近させまいと弾幕を張り続けていた。

 

『セラ大尉、下がっていてください! その機体の装甲では、もうあの攻撃は受け切れないッ!』

『ごめんなさい、ユウキ……! こんなことにさえならなければ、明日にも退役が認められて、地球に帰れるところだったのに……(ゼファー)になんて言えばっ……!』

『……僕は、僕の意思でここまで付き合ってるんです。ここで命を張らずに、けじめ(・・・)を付けたとは言えませんから!』

 

 (ゼファー)が常に気にかけていた、甥と同じ名を持つ少年兵。そんなユウキの身を案じるセラに対して、数多の死線を潜り抜けて来た戦士は、力強く応えていた。

 

 ジャブローにおける、ドップの編隊との戦い。キャリフォルニアベースでの、フランベ・ルジェイルとの一騎打ち。アストレア・ティルビッツとの出会い。そして、ア・バオア・クーで繰り広げられた、「魔王」レゾルグ・バルバとの死闘。

 その全てを乗り越えて来た彼はもう、セラが守らねばならないほど弱い子供ではないのである。ガンダムに振り回されるだけの少年兵だった彼は、もうここにはいないのだ。

 

『ガンダムタイプかァ……こいつは、ますます面白くなって来やがったぜ。てめぇをブチ殺せば、ちったァ祭りも盛り上がるってもんだ!』

『……確かに僕は、殺されて当然の人間かも知れないが。死に場所を選ぶ権利まで、あなたに明け渡した覚えはないッ!』

『じゃあさっさと決めちまいなァッ! 迷ってんなら、代わりに俺が選んじまってもいいんだぜェッ!?』

 

 ガンダムヘッドの類とは違う、正真正銘のガンダムタイプ。その「本物」が見せる火力の片鱗を見たダンテ機は、悦びと昂りを剥き出しにして、ユウキ機に襲い掛かっていた。

 片腕を失い、すでに窮地に陥っているユウキ機は、それでも屈するわけにはいかないとばかりに、残された腕でビームサーベルを振るっている。そんな彼の戦い振りを目の当たりにしたセラは、彼らの激突が生む余波を肌で感じ取り、声を張り上げた。

 

『ナースさん! 今のうちに、動けなくなっている機体を回収してください! このままでは、ユウキの戦闘に巻き込まれてしまいますっ!』

『……オッケー、このナースちゃんに任せなさい。傭兵たるもの、契約は遵守しなきゃねっ!』

 

 その声に応じて動き出したのは、MS-06RP「高機動型ザク」……のようにも見える、継ぎ接ぎだらけの現地改修機であった。透き通る声で溌剌と叫び、その機体を動かしていたのは、進駐軍に雇われた「傭兵」だったのである。

 「ナース」という通り名に相応しい衛生兵(メディック)としての技能を持っている彼女は、セラの要請に応じて負傷者達を救助するべく、手足をもがれて行動不能に陥っている機体の回収に動いていた。

 

 機体の損傷度からパイロットの状況を瞬時に判断し、より傷が深い機体から救助することで、戦闘の巻き添えによる「死亡」を回避する。それは容易い作業ではなく、素性も年齢も定かではない彼女が、それでも傭兵として進駐軍に雇われている理由の一つであった。

 

 しかしそれは当然ながら、ユウキ機とダンテ機が激闘を繰り広げている最前線に飛び込むことを意味している。

 死屍累々と横たわる機体を、その腕に抱えて走り回る鹵獲機のザク。そんな「格好の的」を、わざわざ見逃すダンテではない。

 

『目障りなポンコツが、なァにをウロチョロしてやがるッ!』

『うひぃっ! ちょ、ちょっとぉ! 衛生兵(メディック)を撃つとか正気ぃ!? ……さっすが、地球に行けなかった狂犬共はやることが違うわねっ!』

 

 すでにユウキ機の攻撃パターンを見切っていたダンテ機は、「余所見」をしながらビームサーベルの斬撃をかわしていたのである。

 彼は戦闘を目的としていない衛生兵の機体であろうと、視界に入れば容赦なくビームを撃ち込んでいた。そんな彼の相変わらずな乱暴さに、かつてのジオン兵は回避に徹しながらも、悪態をつき続けている。

 

 そのナース機のザクは、様々なMSの部品を繋ぎ合わせた、急造の機体だ。そのため決して防御力も高いとは言えず、まともにビームライフルでの一撃を喰らえばひとたまりもない。

 

 それでも彼女は、救助対象の機体を抱えながらも、決して手放すことなく走り続けるしかないのである。

 確かに、当たれば死ぬ。だが、それを恐れて「命」を見捨てることこそが、自分にとっての本当の「死」なのだと。

 

 無論、そんな彼女の窮地を黙って見ているセラではない。雇い主として、友人として彼女を救うべく――先程までダウンしていた2機に素早く指示を飛ばす。

 

『カイト中尉、ナースさんを守ってあげてッ! ヴァイス中尉はユウキをお願いッ!』

『了解ッ! ユウキ……お前だけに、何もかも背負わせはしないッ!』

 

 ユウキ機の姿に奮起し、ようやく体勢を立て直したヴァイス機とカイト機も、雪辱を果たすべく動き出していたのだ。ブルパップマシンガンとハイパーバズーカを手にしたヴァイス機は、他の第1部隊のMSと共に、ユウキ機の援護射撃に移っていく。

 

『俺が盾になる、救助を急いでくれ! ……傭兵など信用ならんと思っていたが、今回ばかりは俺も考えを改めねばならんようだ』

『あらぁっ、すっごく優しくてカッコいい騎士様が来ちゃったわね! お姉さんキュンキュンしちゃいそう!』

『前言撤回されたくなかったらキリキリ働け!』

 

 カイト機もナース機を守るべく、ガーディアンシールドを構えて彼女の傍らに立ち、ダンテ機から放たれるビームを防ぐ傘となっていた。

 

『アストレアを守るためにも、ゼファーさんとのけじめ(・・・)を付けるためにも! ローズマリーさん、カタヤイネンさん、バルソー中佐……! そして、リュータさんと……こんな僕を導いてくれた、皆のためにもッ! 必ず、あなたを止めて見せるッ!』

『何をそんなに気負ってんのか知らねぇが……冥土の土産に教えてやるぜ。想いの強さなんざで勝ち負けが変わるほど、本物の殺し合いは甘かねぇってことをよォッ!』

 

 彼らの支援に背を預けるユウキ機は、残された右腕でビームサーベルを振り上げ。「十指」すら凌ぐ「三獣鬼」最強の猟犬に、敢然と立ち向かっていく。

 

 ――例えそれが、勝ち目のない戦いだったのだとしても。

 




 先日の5月1日00:00を以て、今回のキャラ募集企画は終了となりました。今回もたくさんのご応募を頂き、誠にありがとうございます!(*≧∀≦*)
 これから閃ハサ公開までには完結させられるように、モリモリ書いていこうと思いますので、ラストまでは今しばらくお待ちくださいませ〜٩( 'ω' )و
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