-マクスウェル・コンドウ-
42歳。ブルックリン出身。元ヘビー級ボクシングの世界チャンピオンであり、友好大使としても人気を博している黒人の巨漢。量産型ガンキャノンに搭乗する。階級は中尉。
※原案は黒子猫先生。
-シルフィア・ラウテル-
21歳。ユトレヒト出身。礼儀正しく知性的な佇まいだが、歯に絹着せない物言いも多い女性パイロット。ジムスナイパーカスタムに搭乗する。階級は少尉。
※原案はクルガン先生。
ダンテ機のゲルググに対して、果敢に接近戦を挑むユウキ機のヘビーガンダムを中心とする、第1部隊の包囲網。その猛攻に晒されている最後の猟犬は、眼前のユウキ機を相手にしながらも、涼しげな佇まいで全ての援護射撃を回避している。
この短時間で彼は、見切っていたのだ。サイド3進駐軍の精鋭ばかりを集めた「虎の子」である、第1部隊の能力までも。
『はじめは何発か貰っちまったが……ようやくエンジンが掛かってきたようだぜ』
『なにッ……!?』
ダンテが呟いた言葉の通り、援護射撃が始まった当初は、避け切れずに被弾することもあったのだが――今となっては、掠めることさえ稀なほどとなっている。
この異常なまでの敵状把握の早さ。これこそが、ルウム戦役からソロモンまでのブランクを抱えていたはずの「三獣鬼」が、無類の強さを発揮していた所以なのだろう。
『ほら、そろそろ来るぜ!』
『な、何をッ……がぁあッ!』
次にビームが飛んで来る方角とタイミングを予測していたダンテ機は、ビームサーベルを握るユウキ機の腕を掴むと――その方向へと、彼の機体を放り投げてしまう。
射撃の中止が間に合わず、ユウキ機の両脚が味方のビームに撃ち抜かれたのは、その直後であった。力無く墜落するヘビーガンダムの姿は、第1部隊にさらなる戦慄を齎している。
『ユウキッ!』
『……いちいち癪に障る真似をしてくれますね。今に蜂の巣にして差し上げます……!』
ビームスプレーガンを連射しているセラ機から、短い悲鳴が聞こえてくる中で。彼女の隣に座している狙撃用MS――RGM-79SC「ジムスナイパーカスタム」を駆るシルフィア・ラウテル少尉は、冷ややかな声色に隠された憤怒を燃やし、引き金を引く。
『おっ……と。へっ、やるじゃねぇか。俺の読みを上回って来るとは……あんたもスロースターターなクチかい?』
『あなたと一緒にしないで頂けますか。心底、不愉快です』
その手に握られたロングライフルから放たれる弾雨は、ダンテ機の左肩に命中していた。破損したのはアーマーのみだが、ダンテは予測以上の精度での射撃を仕掛けてきたシルフィア機を、「脅威になる得る存在」として認めている。
『そう連れねぇこと言ってくれるなよ。俺の視界に「敵」として映れるなんて、なかなかないんだぜぇ? あんたも楽しめよ、最後の最後までな!』
『く、うッ……!』
彼の手にあるビームライフルは、狙撃体勢を取っていたシルフィア機を確実に捉えていた。咄嗟に回避行動を取ったシルフィア機も、直撃は免れたものの――完全には避け切れず、片足を撃ち抜かれてしまう。
このままでは回避すらままならず、撃破されてしまうだろう。そうはさせじと飛び出して来たRX-77D「量産型ガンキャノン」は、両肩の240mmキャノン砲を連射しながら、ダンテ機に猛接近している。
『女性の誘い方がなっちゃいないな、「三獣鬼」! 男たる者、女性の柔肌は労るものだぜッ!』
『……別に柔肌を傷付けられたわけではないのですけど』
その機体を駆る、元ヘビー級ボクシング世界チャンピオン――マクスウェル・コンドウ中尉は、かつての己自身を再現するかのように、鋼鉄の拳を突き出していた。そんな彼の、良くも悪くも豪快過ぎる戦法に、部下のシルフィアもため息を零している。
『ヒューッ! おいおい、ズムシティの「
『ほほう、ボクサー時代の異名まで知っているとは……さてはお前、かなりのファンだな! こんな形になってしまったのは残念だが、せめて餞別として、この俺の拳をくれてやろうッ!』
一方で、友好大使としてズムシティのアリーナでも人気を博しているスターの登場に、ダンテも口笛を吹いていた。余興のつもりなのか、ダンテ機も敢えてビームナギナタを使わず、マクスウェル機の鉄拳を掌で受け止めている。
撃っても当たらないのなら、当たる距離まで近付けばいい。そんな単純明快な戦術だからこそ、有効だったのだろう。近距離から放たれるマクスウェル機の砲撃までは避け切れず、ダンテ機はシールドでの防御を強いられていた。
そこから始まった、量産型ガンキャノンとゲルググの殴り合い。それは一見、拮抗しているようにも見えていたのだが……最終的にパワーで勝ったのは、ダンテ機の方であった。
至近距離の砲撃すらかわされ、渾身の拳までも見切られてしまったマクスウェル機は、自慢の鉄腕を引き千切られてしまう。
『ぬぅッ……!』
『楽しいお遊戯だったぜぇ、「黒鬼」さんよォ。生身でのやり合いだったら、ちったァ長めに楽しめたかもなァ』
『生憎だが……俺にも引けん理由ってもんがある! チャンピオンだった男として、「負けた」などと嫁さんには報告出来んからなァッ!』
それでも、このズムシティで出会った妻のためにも、敗れて帰るわけにはいかないのだと。マクスウェル機は残された片腕で最後の鉄拳を振るう。
その脳裏には自分の子を身籠っている、トランジスタグラマーな愛妻の笑顔が過っていた。やがて、交差する互いの拳が、双方の顔面に炸裂する。
『だったら勝者のこの俺が、後であんたの嫁さんに「勝った」と報告してやるよォ!』
『ぐおぉッ……!』
量産型ガンキャノンのバイザーが砕かれ、ゲルググの角がへし折れる。膝から崩れ落ちたのは――マクスウェル機の方だった。
生身の殴り合いだったなら、チャンピオンの圧勝に終わっていただろう。だが、これは誇りを賭けた崇高な試合などではない。ただの汚い、殺し合いなのだ。
『この俺と真っ向勝負がしたいってんなら……ガンダムタイプの一つや二つ、引っ提げてから掛かって来いッ!』
膝を着いたマクスウェル機を掴み上げたダンテ機は、とどめとばかりに再びストレートの鉄拳を顔面に叩き込み、量産型ガンキャノンの頭部を完全に粉砕してしまう。
チャンピオンを打ち破った挑戦者の如く、高らかに挑発的な言葉を叫ぶダンテの貌は――愉悦の色に満たされていた。