-ディアン・バルトロード-
24歳。ハバナ出身。軽口が絶えない三枚目気質の女好きだが、実力は確かであり、遠距離からの砲撃を得意としている。鹵獲されたリックドムに搭乗する。階級は中尉。
※原案は妄想のKioku先生。
-マルティナ・テキサス-
24歳。テキサスコロニー出身。パリ防衛隊の任に就いていたが、「三獣鬼」の暴発を予感していたサワイに見出され、第1部隊に出向していた。ジーラインライトアーマー先行試作型に搭乗する。階級は中尉。
※原案は速水厚志先生。
戦前から人気を博していたスター選手だったこともあり、第1部隊の象徴として周囲を鼓舞していたマクスウェル。そんな彼がこの状況で倒れてしまったことは、機体の損傷以上の痛手となっていた。
普段からの暑苦しさに苦言を呈することはあっても、心のどこかでは頼りにしていた男が、倒れてしまったのだ。歴戦の強者揃いである第1部隊が、それだけで折れてしまうことはないのだが……それでも、少なからず士気には影響を及ぼしているのである。
『マクスウェル中尉まで……! 奴は一体、どれほどの怪物だというのですか……!』
『……例え怪物染みた強さであっても、本物の怪物というわけではないわ。ただ強いだけの「MS」と「人間」である限り、攻め続けていれば、いつか必ず限界が露呈する』
『セラ大尉……!』
『その時が来るまでに持ち堪えるのが、私達の務めよ……シルフィア!』
その1人であるシルフィアを励ましながら、セラ機も不安を振り切るように引き金を引き続けている。だが、彼女も根拠なしに部下達を鼓舞しているわけではない。
第1部隊の一斉射撃をかわし続けているダンテ機は、巧みにその全弾を紙一重で回避しているのだが――それは、推進剤の消耗を抑えるためでもある。
擦り傷を許してでも、「動力」を少しでも維持しようとしているのだ。1秒でも長く、彼の言う「祭り」を楽しむために。
つまり、そんな「温存」などしていられないほどの攻撃でゲルググを動かし、エネルギーを削って行けば。自ずと最後の猟犬は、MSとしての限界を迎えることになるのだ。
ゲルググの稼働限界が先か。第1部隊の全滅が先か。ここからは、泥沼の消耗戦なのである。
『そういうことなら、俺の出番ですかな? セラ大尉!』
『ディアン中尉……良かった、あなたはまだ動けるのね。他の子達の分まで、援護射撃をお願い!』
『了解! 麗しいレディーのお望みとあらば……このディアン、どんな敵も撃ち抜いてご覧に入れますよッ!』
『そういう大言壮語は、奴を仕留めてからにして頂けませんか……全く』
セラが見出した、その「勝機」を汲み取り飛び出して来たのは――MS-09R「リックドム」を駆る、ディアン・バルトロード中尉だった。軟派な振る舞いでシルフィアの顰蹙を買いながらも、颯爽と地表を駆け抜けていく彼の愛機は、その手にビームバズーカを握っている。
『……そういうこった。レディーに手を上げるような男には、一つ分からせてやらないとな』
『ハッ……満を持して、と言わんばかりにどんな奴が来たかと思えば、たかが鹵獲機のリックドムじゃねぇか。そんなお下がりで、この俺を止めるつもりかい?』
だが、すでにヘビーガンダムすら破っているダンテは、リックドムなど歯牙にも掛けていない。自機に向かって猛進してくるディアン機を一瞥する彼は、軽くあしらおうとビームライフルの引き金を引く。
『ただのリックドムかどうかは……今に分かるぜ』
『あぁん……!?』
その貌が変わったのは。瞬きする暇もなく、ディアン機がダンテ機の視界から消え失せた時であった。
あのリックドムはどこへ。そんな思考を巡らせるダンテが、カメラを左右に振った瞬間――眼前に、ビームバズーカの閃光が飛んで来たのである。
『――!』
推進剤の温存など、意識する暇もなかった。反射神経だけを頼りに、全速力の回避でその砲撃をかわしたダンテ機は、ようやくディアン機を捕捉する。
(おいおい……! なんだってんだ、この異様な加速はよ! しかもこの挙動……見覚えがあるッ!)
セラ機と交戦した時以来――否、それ以上の「冷や汗」がダンテの頬を伝う。ビームバズーカの火力は「紙一重の回避」でかわせるものではなく、ゲルググの肩部は掠めただけで無惨に溶解していた。
だが、ダンテが脅威と見做していたのはその威力だけではない。自分の眼からも逃れるほどの、尋常ならざるスピード。それを実現し得る機体の存在を知っていたからこそ、柄にもなく焦っているのだ。
ホバー走行による緩急自在の加速と、圧倒的火力のビームバズーカ。
その性能とパイロットの技量を合わせ、かつてはソロモンの戦場に災厄を齎していたという機体を――ダンテは、知っていたのである。
(やはりな……こいつのリックドム、ただのマイナーチェンジってわけじゃねえ。あの「五指」の2位とも呼ばれていた……「聖騎士」ジルベルト・ロードボルトの専用機だった機体だ! ソロモンでの戦いで失われたと聞いていたが……まさか、こんな形でお目に掛かることになるとはなッ!)
あまりにもピーキーな性能故に、ジルベルト以外は誰にも扱えない代物だったはず。ディアンはそれを、見事に乗りこなしているのだ。
まるで、「聖騎士」の生霊をこの場に呼び寄せているかのように。
『……ジルベルト大尉の機体だから、とは言えねぇな。それを使いこなしてんのは、間違いなく奴自身の力だ』
『おおっと……愛機を傷物にされたからって、そう怒るなよ。コーヒーでも飲んで一息入れたらどうだい? それともミルクの方が好みか?』
『ハッ、面白え。……だったら一息入れる前に、ほんの数秒だけ
相手にとって不足はない。だが、長く戦っていては推進剤がすぐに尽き、「祭り」が終わってしまう。
出し惜しみなどしていられないのなら、せめて最速で決着を付ける。それがダンテの下した判断であり――彼のゲルググは、電光石火の如き疾さで間合いを詰めていた。
『……ッ! まだ、抑えてたってのかッ!』
『すぐに終わるさ……苦しむ暇もなくなッ!』
もはや、回避するための動作すら惜しいというのか。敢えてビームバズーカをシールドで受け、その大楯を犠牲にしながら急接近するダンテ機は、さらなる加速を披露している。
『こいつで……いい加減くたばりなッ!』
『レディーの前で……情け無い死に様なんて晒せるかよッ!』
やがて勢いよく振るわれたビームナギナタは、ディアン機が視認する間も無くバズーカの砲身を斬り落としていた。だが、そのスピードを以てとどめを刺す前に――胸部の拡散ビーム砲が火を噴く。
『ぐ……!?』
『……持ち味のスピードも、その脚では満足に生かし切れまい。随分と、手間を掛けさせてくれたな』
その牽制射撃に後退を余儀なくされたダンテ機の大腿部を、実弾の嵐が撃ち抜いていったのはその直後だった。RX-81LA「ジーラインライトアーマー」の先行試作型に搭乗する、マルティナ・テキサス中尉が、ついにダンテ機を捉えたのである。
『当たった……! 行けるぞ、皆!』
『どれほど強くても、相手はたったの1機なんだ! 絶対に諦めるなッ!』
試作用のジムライフルから立ち登る硝煙が、ゲルググの視界に映り込む頃には。まだ動ける第1部隊の精鋭達が、続々と間合いを詰め始めていた。
『貴様らの暴走を予感していたサワイ少佐の要請に応じて、わざわざパリから出向いて来たのは無駄ではなかったらしい。……これほど、無駄であって欲しいと願ったことはなかったがな』
『へっ……そうかよ。遠路はるばる、ご苦労なこったぜ』
彼らは、ようやく掴み始めていたのである。この戦いを制する、「勝機」の片鱗を。
やっと物語も終盤に差し掛かって参りました。ゴリゴリの消耗戦も、ようやくラストが見えて来ましたぞー。もうちょっとだけ苦しい戦いが続きますが、何卒、最後まで見届けて頂けると幸いです!٩( 'ω' )و
Ps
ダンテが見たジルベルトの面影を「生霊」と表現しているのは、時系列的にはまだ彼が存命だからっていう理由だったりします。大変ややこしいのですが、ジルベルトが初登場した第1.5部の内容は、このお話からさらに後の出来事ですからねー(ノД`)