-シェルーザ・ファウラース-
19歳。サンディエゴ出身。「疫病神」という異名で呼ばれているベテランパイロットであり、「三獣鬼」をはじめとする多くの格上を相手にしながらも、終戦まで生き延びてきた強者。鹵獲されたゲム・カモフに搭乗する。階級は准尉。
※原案は秋赤音の空先生。
-ユニ・メニッサ-
27歳。カストリーズ出身。ジオン製MSの解析に携わっていた冷静沈着なパイロットであり、近接戦を得意としている実力者……なのだが、最近は結婚に焦りを覚えている。ズムシティに保管されていたグフカスタムに搭乗する。階級は大尉。
※原案は団子狐先生。
-リュート・カドクラ-
21歳。シドニー出身。かつてはスペースノイドへの復讐に囚われていたが、ア・バオア・クーでの戦いで憎しみを乗り越え、無辜の民のために立ち上がる。マグネットコーティングを導入したジムライトアーマーに搭乗する。階級は中尉。
※原案はサンシタ先生。
ダンテ機を包囲する第1部隊の猛者達は、ここに来てようやく「疲弊」の色を見せ始めたゲルググを仕留めるべく、一気に畳み掛けていた。
シールドを失い、防御能力も大きく下がっている今なら、回避が難しい接近戦で優位に立てる確率も上がる。その可能性に賭けた、1機の鹵獲MS――MS-07B-3「グフカスタム」は、ここぞとばかりにダンテ機目掛けて急接近していた。
『民間人をこれ以上巻き込まないためにも……あなたは必ず、ここで仕留めます』
ジオニック社が携わっていたMSの解析を任務としていた、ユニ・メニッサ大尉。ズムシティに保管されていたグフカスタムを持ち出し、この作戦に参加していた彼女は、同機の扱いにも精通していたのである。
『あなた方が生み出した、電気ショック……如何ですか?』
『ぐおぉッ……! ちょ、うし……くれてんじゃあねぇぞッ!』
ユニ機の手首から飛び出すヒートロッドは、シールドを失ったダンテ機の左腕に巻き付き、その全身に凄まじい電撃を浴びせていた。
だが、ゲルググは怯むどころか。逆にヒートロッドを左手で掴むと、圧倒的な腕力を以て――逆にユニ機を力任せに振り回してしまう。
『あうっ……!?』
『大丈夫ですか、大尉! ……結婚するまで死ぬわけには行かないんでしょう? ここは私達に任せて、中距離からの援護射撃に移ってください!』
その規格外のパワーに翻弄され、投げ飛ばされそうになっていた彼女の機体を、身を挺して受け止めたのは――ジオン製の偽装MS「ゲム・カモフ」だった。
本来ならジムを受領するはずが、補給隊の手違いで同機に搭乗することになってしまったシェルーザ・ファウラース准尉は、装甲の薄さも顧みずにユニ機を抱き止めている。外観こそジムに似せられた歪な機体だが、グフカスタムを受け止めているその勇姿だけは、紛れもなく「本物」であった。
ゲム・カモフを受領してしまったことをはじめとする、様々な不幸に巻き込まれてきた彼女は、「疫病神」とも揶揄される曰く付きの隊員だったのだが。そんな肩書きを抱えながらも、終戦まで戦い抜いて来られたのだから、その意味では幸運の持ち主とも言えるのかも知れない。
ユニもそう考えている者達の1人であり、ダメージを覚悟の上で自分を受け止めた彼女の姿に、微笑を浮かべていた。
『……ありがとうございます、シェルーザ准尉。「疫病神」の異名は、今度こそ返上ですね』
『あんな奴と戦うことになった時点で、当分は無理ですよ。……だからといって、諦める気もありませんけどね!』
シェルーザも強気な笑みを浮かべながら、ブルパップマシンガンの銃口をダンテ機に向けていた。そんな彼女と同時にザクマシンガンを構えたユニ機も、反撃の体勢に入っている。
やがて2機は実弾の豪雨をゲルググに降らせ、絶え間ない回避運動をさせるべく、弾幕を張り始めていた。推進剤を消耗させ、確実に仕留められるよう動きを鈍らせるためだ。
『チッ……なかなかイイ感じに狙って来やがる! 特にあの紛い物の方……俺の動きを的確に読んでいやがるな……!』
『私だって、伊達に「疫病神」だなんて呼ばれてないんだよねぇ……! 生憎、「経験値」だけなら負ける気がしなくってさぁ!』
ダンテ機はますます狙いが正確になっていく両機の射撃に、口元を引き攣らせていた。特にシェルーザ機の射撃は、まるで弾が吸い寄せられているかのように、ダンテ機の装甲を正確に削り続けているのである。
装甲も強化されているとはいえ、シールドを失った今のゲルググでは、その全弾を浴びればただでは済まない。両肩のアーマーは、ついにダメージに耐えきれず剥がれ落ちてしまう。
『……やってくれるじゃねぇか。てめぇらにまで舐められるとは思わなかったぜ!』
『あうッ!?』
『きゃあッ!』
だが、機体のパーツが削ぎ落とされたことで却って身軽になったのか。これまでよりもさらに疾く跳び上がり、弾雨から脱出したダンテ機は、瞬く間にユニ機とシェルーザ機を撃ち抜いてしまう。
条件反射で機体を逸らした両機はコクピットへの直撃こそ免れたが、片脚を破壊され勢いよく転倒してしまった。そんな仲間達の窮地を目の当たりにしたマルティナ機は、最新鋭のライトアーマーに秘められた加速力を全開にして、ダンテ機を追う。
ミサイルランチャーと試験用ジムライフルが、同時に火を噴いていた。
『……貴様のような絶対悪を、これ以上のさばらせるわけにはいかん。戦争が終わった今、降伏したところで捕虜として丁重に扱う理由もない。覚悟はいいな!』
『絶対悪? 敵さんにそう言ってもらえるなんて、最高の褒め言葉だぜ。こんなことまでした甲斐があるってもんだ!』
ミサイルの嵐と、実弾の雨。その狙いはさらなるスピードを得た今のダンテ機を以てしても、かわし切れるものではなかった。
全身のあらゆる装甲が破壊され、内側の機械が剥き出しになっていく。それでも何事もなかったかのように戦闘を続行する姿は、さながらゾンビのようであった。
『文字通りの死兵だな。……そうなってまで戦おうとしている貴様らの考えだけは、まるで理解できる気がせんよ!』
『捨て駒にすらしてもらえなかった奴らの気持ちなんざ、分からねえ方がいい。分かっちまったら、あんたもこっち側だぜ!』
装甲を削られ、内部の機構が露出する無防備な状態になり、各部からは火花まで散っている。そんな状況に立たされたパイロットの多くは、絶体絶命の窮地だと思うだろう。
しかし、ダンテは違う。確実な死に近付けば近付くほど、より身軽になれると喜んですらいるのだ。その常軌を逸する思考回路には、歴戦のパイロットであるマルティナでさえも恐怖を覚えている。
その恐怖という感情――即ち、死に対する防御本能に従い。マルティナ機はダンテ機から飛んで来るビームライフルの閃光を、必死にかわし続けていた。
向こうは何発撃ち込まれても嗤いながら撃ち返して来るが。こちらはライトアーマーという特性上、1発でも被弾すればただでは済まない。
しかもダンテ機は、出力もかなり強化されている。ゲルググ自体がガンダムタイプに匹敵するスペックなのだが、彼の乗機はそれをも凌いでいるのだ。
このまま一対一で撃ち合っても、いずれは火力の差と装甲の薄さで、競り負けてしまう。その展開を予感してしまったマルティナ機に、直撃コースのビームが飛んで来た――次の瞬間。
『諦めるなッ! まだ俺達は……負けてはいないッ!』
『……! リュ、リュート中尉ッ!』
かつてア・バオア・クーで共に戦った、リュート・カドクラ中尉の愛機――RGM-79L「ジムライトアーマー」が、最高速度で飛び込んできたのである。回避が遅れたマルティナ機を突き飛ばした彼の愛機は、左腕を瞬く間にもぎ取られていた。
磁力コーティングによって機体の反応速度を上げる「マグネットコーティング」を施された、リュート機のスピードがなければ。今頃マルティナ機は、コクピットを撃ち抜かれ爆散していただろう。
『済まない、世話をかけた……!』
『奴のスピードに付いていけるのは、もう俺達だけだ。何としても、今ここで墜とすぞ!』
『ああ!』
マルティナ機のジムライフルとリュート機のショットガンが、同時に火を噴きダンテ機の装甲を削っていく。もはやゲルググの外装は、半分以上破壊されていた。
『なァんだ、まだ遊べる奴が残ってたんじゃねぇか。いいぜぇ、何人掛かりでも文句はねぇ。全力で来いよ!』
『俺達を……楽に狩れると思うなッ!』
『楽ぅ? 冗談じゃねぇよ! 殺し合いってのはなァ、楽じゃねぇから楽しいんだろうがッ!』
だが、内部機構が露出している箇所の方が多いくらいだというのに。ダンテ機はそれでも戦闘機能を維持したまま、ビームライフルで撃ち返している。
『……
『憎しみだけじゃない……! 俺達には……背負ってるものがあるんだッ!』
『だったらさっさと殺してみやがれッ! 綺麗事で勝てる戦いなんて、この世のどこにもありゃしねぇよッ!』
だが、飲まれるわけにはいかない。マルティナ機とリュート機は弾切れになった得物を投げ捨て、接近戦に切り替えた。
振り抜かれたマルティナ機のビームサーベルを、ダンテ機がビームナギナタで受け止めた瞬間――その懐に飛び込んだリュート機のヒートナイフが、ついに脇腹へと突き刺さる。
『ぐおおぉッ!?』
『沈めぇえぇッ!』
『墜ちろおぉおぉッ!』
そのまま畳み掛けるように、マルティナ機とリュート機はバーニアを全開にする。この流れに乗って、一気に押し切るために。
だが、ダンテ機の底力は――まだ、これが全てではなかったのだ。
『……ハッハハハハハァッ! たぁのしいぜぇえぇえッ!』
『ぐあぁあぁッ!?』
『こ、こいつッ……がぁあッ!』
顔の半分が崩壊している、ゲルググの
四肢を切り落とされ、墜落するジーライン。その姿に気を取られたリュート機も、矢継ぎ早にヒートナイフを握る両腕を切り落とされ、蹴落とされていく。
かつては「五指」の5位とも呼ばれた、「氷魔の蒼弾」――ガリウス・ブリゼイド。そんな彼とジャブローで渡り合っていた、マルティナでも。
ア・バオア・クーの激戦区では、「五指」の1位たる「魔王」レゾルグ・バルバとも戦っていた、リュートでさえも。
「三獣鬼」最強の猟犬を仕留め切ることは、叶わなかったのである。それでも、何も出来なかったわけではない。
『……ちッ、推進剤が……!』
高速で襲い掛かって来るマルティナ機とリュート機に対抗するため、出し惜しみせずに全速力で稼働していたゲルググは、ついに推進剤を切らしてしまったのである。
半死半生の身でふらつきながら、辛うじて焼け野原の上に着地したダンテ機は、もはやまともに動いているのが奇跡とも言える状態であった。これまでの総攻撃が、ついに彼をここまで追い詰めたのである。
『……動ける者は今すぐ立てぇッ! 奴を……この戦域から逃してはならんッ! 我々の戦いは、まだ終わってはいないッ!』
『おぉっ……!?』
しかも。これまでダンテ機に蹂躙されてきた進駐軍の兵士達は、まだ力尽きてはいなかったのである。
首と両腕をもがれながらも、辛うじて動く両脚とバーニアを頼りに、ゲルググ目掛けて体当たりを敢行している――リュ・ルゥトゥのジムスナイパーII。そんな彼の決死の叫びと行為に、他のMSも呼応するように動き始めていたのだ。
『おいおい……! てめぇら、どこまで俺をワクワクさせりゃあ気が済むんだよ……! 最高だ、最高だよてめぇらァ!』
生ける屍の如く、戦いを続けようとしているのは、ダンテ機だけではなかったのである。動いていること自体がにわかには信じられないような状態で、それでも彼らは立ち上がってきていた。
そんな進駐軍の底力と意地を目の当たりにしたダンテ機は、歓喜に打ち震えながらビームナギナタを振り上げる。いの一番に捨て身で突っ込んで来たルゥトゥ機から、血祭りに上げるために。
『やらせないッ……! リュータさんのようには行かないけど、それでもッ!』
『……味な真似するじゃねぇか、小僧。気に入ったぜッ!』
そのビームナギナタを瞬く間に破壊したのは――ユウキ機のビームライフルであった。ヘビーガンダムが最後に見せた「意地」に敬意を表するダンテ機は、返礼とばかりにユウキ機が達磨になるまでビームを撃ち込んでいく。
『うわぁあぁッ!』
『……てめぇもなァッ!』
『ぐぉあぁあッ!』
ビームナギナタを失ったことも意に介さず、ルゥトゥ機を片手間で蹴り倒しながら。
『……ッ!』
その光景を目撃した進駐軍の兵士達は、弾かれたように動き出していた。もう戦術を立てられるだけの余力もなく、撤退できるほどの足もない。
ならばもう、前に進むしかないのだと。この命を投げ打ってでも、この怪物の行手を阻止するしかないのだと、覚悟を決めて。
『随分と好き勝手にしてくれてっ……もう絶対に許さないッ!』
『貴様だけは絶対に……ここで仕留めるッ!』
『大佐にばかり無茶をさせていては……ヴィオラに顔向け出来んッ!』
キアラ・パーシングのジムと、ダイト・アロンのガンダムヘッドに、ジルバート・ブーガンヴィルのジムコマンド。
『これ以上……悲劇を繰り返させたりなんか、しないッ!』
『昂ってるのは、こっちも同じよッ!』
エイジ・レンフォードのジムガードカスタムに、ダフネ・ガルシア・ペレスのジムコマンド。
『「三獣鬼」……! この命に代えても、貴様らだけは必ず倒すッ!』
『これ以上……仲間達はやらせねぇッ! 「命」って、「宝」だけはァッ!』
『いつまでもいい気になってるんじゃあないよッ!』
アクセル・ウィルマンのジムドミナンスに、ヨウヘイ・チネンのジム改。彼らを率いる、イクサ・アンクブレスのザクII。
『行くぞ、アルダー! もう少しだけ……俺の無謀に付き合えッ!』
『へっ……言われるまでもありませんぜ。あの燻った「火種」、吹き飛ばしてやりましょうやッ!』
ブラッドリー・マーズのジム改と、アルダー・サモンドのジムスナイパーカスタム。
『もうこれ以上……ジオンの残党に! この平和を、壊させるかぁあぁあッ!』
『……潰すッ……!』
『全機突撃ッ! 第3部隊、私に続けぇッ!』
マコト・クズミのジム後期生産型に、イヴァーナ・コジェドゥーブのジムライトアーマー。その先陣を切る、ジャレッド・ジャッカルのゲルググ。
『今度こそ葬ってやるよ……「三獣鬼」ッ!』
『手負いだと思って、楽に勝てると思うなァッ!』
ヴァイス・ヴァレンタインのジム指揮官機仕様と、カイト・マクラウドのペイルライダーデュラハン。
『もう手出しはさせない……! ユウキにも、皆にもッ!』
『ちょ、ちょっとセラさんっ! ……ああもう、世話の焼ける人達なんだからッ!』
セラ・アルビオンのジムと、彼女の無茶に付き合うナースの高機動型ザク。
『チャンピオンの意地……今こそ見せてやるぜぇッ!』
『レディーが命張ってるって時に、前に出れなきゃ男じゃねぇッ!』
『……暑苦しい人達ですね、全く!』
マクスウェル・コンドウの量産型ガンキャノンと、ディアン・バルトロードのリックドム。彼らのサポートに徹する、シルフィア・ラウテルのジムスナイパーカスタム。
『「疫病神」を……舐めるなぁぁあッ!』
『民間人への被害は……もう絶対に! 出させないッ!』
シェルーザ・ファウラースのゲム・カモフに、ユニ・メニッサのグフカスタム。
四肢が動く機体は、持てる限りの火力を解き放ち。腕がない機体や、脚すら残っていない機体は、バーニアを噴かして体当たりを仕掛けている。
文字通り、この場にいる進駐軍兵士全員の底力を賭けた、捨て身の総攻撃であった。
『楽しいなァ……楽しいなァア! これだよ、これェッ! 恥も外聞もねぇ、全部剥き出しの殺し合い! 俺は……俺達はずっと! こんな戦いがしたかったんだァアァアッ!』
そんな彼らの尽力に嘆息し、狂喜の声を上げながらも――ダンテ機は容赦なくビームライフルで迎撃し、次々と迫り来る「生ける屍」を撃ち落としていく。ビームの弾雨をくぐり抜けてきた猛者には、渾身の鉄拳を見舞いながら。
◇
――そして、数分後。この焼け野原に、再び静寂が訪れた時。
『……最っ、高だったぜぇ……てめぇら』
「死」の一歩手前まで擦り切れた、ダンテ機のゲルググの周囲にはもう、両の脚で立っているMSは1機たりとも残ってはいなかった。全員、コクピットの中で一命を取り留めてはいるが、誰一人として戦える状態ではない。
サイド3進駐軍第8部隊、第6部隊、第3部隊、そして第1部隊。彼らはこの瞬間、事実上の「壊滅」を迎えたのである。
だと、いうのに。
待ち望んでいた「死闘」を心ゆくまで堪能し、余韻に浸っていたダンテ機の背後では。
『……まだ、俺達、はッ……!』
この期に及んで、未だに諦めていない最後の1人を乗せたジムキャノンが――軋む音と共に、立ち上がろうとしていた。
鬼滅の刃の無惨戦を読んでると、敵味方全員瀕死の泥試合もカッコいいよなぁ、としみじみ思います。結構長めに続いてきたダンテ戦も、次回でいよいよ決着です。お楽しみに!٩( 'ω' )و
Ps
一応外伝枠なのに、気付けばシリーズ最長のエピソードになりそうな感じですね。1周年記念に相応しいお話に出来るよう頑張りますぞ(*'ω'*)