機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-第3話からの登場人物-

-ヴァイス・ヴァレンタイン-
 33歳。ミシシッピ出身。開戦当初から戦い続けてきた叩き上げのベテランパイロットであり、冷静な判断力と熱い心を兼ね備えている。鹵獲機のズゴックに搭乗する。階級は中尉。
 ※原案はヒロアキ141先生。

-ネルヴァー・オム-
 22歳。エディンバラ出身。若手ながら幾度となく「四海竜」との戦いで生き延びている強運の持ち主であり、現在は海軍に転向して間もないヴァイスのサポートに徹している。フロッグボールに搭乗する。階級は軍曹。
 ※原案はリオンテイル先生。

-ガルダ・ゴードン-
 21歳。ダーバン出身。ネルヴァーと共にヴァイスのサポートに回っている若手パイロットの1人であり、鹵獲機に不慣れな上官を日々支えている。水中型ジムに搭乗する。階級は伍長。
 ※原案はダス・ライヒ先生。



第3話 呉須の剛竜 -ポルセ・イドゥール-

 ザクマリンタイプ。それはジオンの水中用MS開発の黎明期に誕生した機体であり、そのスペックはMSM-07「ズゴック」やMSM-04「アッガイ」といった完成形には遠く及ばないものとされている。

 

『ごぁあッ……!?』

『どうしたオラァッ! ズゴックまで持ち出しておいてそのザマかァ!?』

 

 だが、それは所詮「一般論」に過ぎず。特別にチューンナップされた「四海竜」専用のプロトタイプには、当て嵌まらない論理だったのである。

 

 ポルセ・イドゥールの専用機は、ヴァイス・ヴァレンタイン中尉が駆るズゴックの両腕を掴みながら、その顔面に両脚での蹴りを叩き込んでいた。あまりの衝撃に吹っ飛ぶヴァイス機のボディには、大きな凹みが出来ている。

 その左肩に描かれたガルーダのマークは、数多の死線を潜り抜けてきたエースの証なのだが。そんな彼の技量を以てしても、呉須色のザクマリンタイプが放つ蹴りはかわしきれなかったのだ。

 

『どうなっていやがる……! ガンキャノン以上のパワーがあるはずのズゴックが、ザク如きに力負けしてるってのか!?』

『生憎、こっちは特別製でなァ。ただの鹵獲機風情が互角に戦えるような仕上がりじゃあねぇのさッ!』

『ちッ……!』

 

 頭部の6連装24cmロケット弾や、両腕のメガ粒子砲を連射しながら距離を取ろうとするヴァイス機を追い、ポルセ機は再び接近戦を仕掛けようとしている。

 

『ヴァイス中尉、後退してください! 途中から来た補充要員のあなたには分からないかも知れませんが……奴のザクは、桁違いの出力なんです!』

『出やがったなァ、小僧。てめぇのツラもいい加減見飽きたぜ、そろそろこの辺でくたばっちまいなァッ!』

 

 ハイドロジェットを噴かしてヴァイス機の前に飛び出し、ニードルガンでの牽制射撃を試みるガルダ・ゴードン伍長。彼の乗機であるRGM-79[M]「水中型ジム」を目にしたポルセは、今度こそ(・・・・)引導を渡してやろうと狙いを切り替えていた。

 

『ガルダ、迂闊に近づくな! ヴァイス中尉、まだ戦えますか!?』

『おう……! 済まねぇな、お前ら!』

『揃いも揃って、雑魚共がワラワラと……! いいぜぇ、ズゴックよりは殴りやすそうなツラだからなァッ!』

 

 ガルダ機のサポートに回りつつ、ヴァイス機を守ろうとしているネルヴァー・オム軍曹も、愛機であるRMB-79「フロッグボール」から水中ミサイルを放ち続けていた。その弾頭を掻い潜り、ガルダ機に接近するポルセ機の肩を、ニードルガンの実体弾が掠めていく。

 

『おらよォッ!』

『うがあぁあッ!?』

『ガルダ! ……ぐぅうッ!』

 

 だが、命すら投げ打っている「四海竜」のMSが、その程度で止まるはずもなく。至近距離にまで近づいたポルセ機は、ガルダ機の頭を掴むとそのまま腕を振り上げ、ネルヴァー機目掛けて蹴り飛ばしてしまった。

 水中ミサイルの狙いを付けようと静止していたネルヴァー機は、咄嗟に射撃を中断して回避しようとするのだが。急発進でも間に合わず、吹っ飛ばされて来たガルダ機と衝突してしまう。

 

『ネルヴァー、ガルダッ!』

『……仲間達を逃がす。ジオンの未来を繋ぐ。ただそのためだけに、俺達はこの命を使いに来てんだ。故郷を守るために勝てねぇ戦いにも挑んだ、「大和」のようにな。てめぇら如きに邪魔はさせねぇぜ!』

 

 そして、ガルダ機とネルヴァー機を蹴散らしたポルセ機は、今度こそとどめを刺そうとヴァイス機に接近し、再び両腕を掴み上げてしまう。

 この体勢ではメガ粒子砲も使えず、アイアンネイルを活かした接近戦も出来ない。すでに深刻なダメージを受けている今の状態で、もう一度先程のような蹴りを入れられてしまえば、ズゴックの装甲でも持たないかも知れない。絶体絶命であった。

 

 コバルトキャリバー隊に合流してから日が浅く、ズゴックの操縦経験もそれほど多くはないヴァイスにとって、自分よりも乗機に詳しい「四海竜」はまさしく「天敵」だったのである。

 

『……目眩がするぜ』

『目眩だァ? ハハッ、水中戦の素人はこれだから困ったもんだぜ! これしきの衝撃で目眩だなんて――!?』

 

 だが。それでも、彼の「眼」は屈していない。

 ポルセ機に両腕を掴まれたまま、彼のズゴックは水流ジェットを全力で噴射し、拘束の手を振り解こうとしていた。あまりに強いポルセ機の握力に軋むヴァイス機の両腕が、悲鳴を上げる。

 

『戦争ならとっくに終わった。さっさと降伏して、お互い楽になりゃあいいってのに。……この期に及んで、悲劇のヒーローみてぇなこと抜かして気取ってるてめぇらに! 目眩がするって言ってんだよダボがァッ!』

『こいつッ……!?』

 

 その体勢から、乗機を縦に回転させるように加速した瞬間。ヴァイスは自身の操縦で、ズゴックの両腕を捻じ切ってしまうのだった。

 

 アイアンネイルとメガ粒子砲。ズゴックの主力武器であるその二つは、どちらも腕部にある。にも拘らず彼は、ポルセ機の手から脱出するためにそれらを犠牲にしたのである。

 意表を突いたヴァイス機の挙動にポルセ機が瞠目する瞬間、その僅かな隙を縫うように両腕をもがれたズゴックが急発進する。呉須色のザクマリンタイプは受け止める暇もなく直撃し、吹っ飛ばされてしまうのだった。

 

『ぐぅおッ……! 連邦のクセして、味な真似しやがるじゃねぇかッ! 手加減はもうナシだ、てめぇだけは念入りにブチ殺して……!?』

 

 すぐさま体勢を立て直したポルセ機は、今度こそヴァイス機にとどめを刺そうと機体を前傾させる。

 だが、ヴァイス機だけに気を取られたまま「前進」の体勢を取ったことが、彼にとっての命取りであった。

 

『もう終わっているはずの戦いを悪戯に長引かせておいて、何が未来だ!』

『「大和」が沈んだのは、時代の犠牲になってでも戦争を終わらせるためだ! 終わってもなお銃を捨てなかったお前達とは、違うッ!』

『て、てめぇら如きがッ……!』

 

 ガルダ機のニードルガンとネルヴァー機の水中ミサイル。その集中砲火が、視界の外側から一気に飛んで来たのである。

 ヴァイス機に集中するあまり、前傾姿勢からの回避運動が遅れたポルセ機の両脚は、実体弾に貫かれてしまうのだった。さらに水中ミサイルの爆発を受けた彼の機体は、大きく体勢を崩してしまう。

 

『……なにッ!?』

 

 さらに。ポルセ機に狙いを定めていた「増援」の攻撃も、呉須色のザクマリンタイプに次々と降り掛かって来るのだった。彼を仕留めんと動いていた連邦海軍の部隊は、コバルトキャリバー隊だけではないのである。

 ロウアー機のグラブロが被弾した際に放り出した、巨大なカーゴ。そこから出撃した別働隊のMSが、この場に駆け付けて来たのだ。

 

『アクアジムとは勝手が違うけど……当ててみせるッ!』

『ズゴックの扱いならこの「白鯨」に任せてくださいよ、ヴァイス中尉! ブチ抜いてやりますからァッ!』

 

 羽の髪飾りが特徴の美少女――ティア・ローレンス少尉のアッガイと、自らを「白鯨」と称するバレェン・ホワイツ兵長のズゴック。そんな鹵獲機コンビによるメガ粒子砲の一斉射撃が、ポルセ機の両脚を跡形もなく消し飛ばしてしまう。

 

『くッ! 俺達ジオンの機体で好き放題暴れやがって……ぐおッ!?』

『……捕らえたぞ、ノーフェイス。信用して欲しいのなら、報酬に見合う働きをして見せろ』

『無論だ。……傭兵とは、そういうものだからな』

 

 黒とダークグレーのツートンカラーに塗装され、水中用に改修されたMS-05B「ザクI」。そのパイロットを務めるショウ・マカベ曹長は、ハンドアンカーでポルセ機を捕らえながら、ハープーンガンを左腕に撃ち込んでいた。

 そんな彼の僚機として同行していた、RB-79K「ボールK型」をベースとする水中用戦闘ポッドも、機体上部の2連装キャノン砲を連射している。ノーフェイスと呼ばれているパイロットの男は、正確無比な狙いでポルセ機の頭部を吹き飛ばしていた。

 

『ぬぐぁあッ!? あのポッド野郎ッ……!』

『死に向かう貴様らとは違って、俺は生きるために戦うのが仕事でな。……命すら投げ打つような連中に、傭兵が負けるものか』

『……ふん。腕は確かなようだが、俺としたことが得体の知れん傭兵をアテにしてしまうとはな。ヒダカの奴に知れたら、何と言われるか分かったものではない』

 

 彼は身元不明の傭兵でありながら、不足している戦力を補うためとして、連邦海軍に雇われている身だ。その信用を得るためにも、外すわけには行かなかったのである。

 ノーフェイスの手腕を目の当たりにしたショウが鼻を鳴らす頃には、すでにポルセ機は満身創痍となっていた。彼の脳裏には、ジャブローにいる幼馴染(ヒダカ・アマサキ)の顔が過っている。

 

『まだ終わっちゃいねぇ……! まだ俺達の戦いは! 全然ッ! 終わっちゃいねぇんだよォッ!』

 

 だが、1機も道連れに出来ないまま終わるわけには行かない。

 真っ向から猛進して来る、ヴァイス機のズゴック。頭部からロケット弾を連射しながら突っ込んで来る彼を迎え撃つべく、ポルセ機は最後の力を振り絞り、残された右腕を腰に回した。

 

『いいや……終わった! もうとっくに終わってんだよ! 認めねぇってんなら、俺が終わらせてやる! 今、ここでなァッ!』

『黙りやがれぇえぇえッ!』

 

 サブロックガンを引き抜いたポルセ機の弾幕が、ヴァイス機に襲い掛かる。だがヴァイス機は全く避けようとはせず、勢いを殺すことなく突進し続けていた。

 幾度となく直撃し、内部機構が露出するまで装甲を削られても。爆散すら恐れることなく、さらに加速していく。まるで、人を乗せた魚雷のように。

 

『クソッ……タレがぁあぁあッ!』

 

 全ての弾頭を撃ち尽くしても止まらないヴァイス機に向けて、サブロックガンを放り投げたポルセ機が、鉄拳を振り上げる。

 だが、その拳が満身創痍のズゴックを打ち砕く前に――魚雷と化したヴァイス機の体当たりが、ザクマリンタイプのボディを粉砕してしまうのだった。

 

 やがて爆散する呉須色の機体が、水泡を纏い海の底へと沈められていく。宇宙から来た魂がまた一つ、先祖達が待つ地の果てへと還ろうとしていた。

 その様子を見送ったヴァイス達は、暫し顔を見合わせた後。残りの残党を確保するべく、さらに先の海域へと移動して行く。

 

『……これでやっと、終わったのですね』

『あぁ。……だが、まだそれを認めてねぇ奴らがいる。全員分からせるまで、のんびり休んでる暇なんてねぇぞ』

『もちろん、俺達は初めからそのつもりですよ。行きましょう!』

 

 海中を漂い、薄暗い闇の中へと消えていく呉須色の残骸。その全てに、背を向けて――。

 




 今回もコバルトキャリバー隊の隊員達や、連邦海軍の別働隊が大暴れしてくれました。最近ヒロアカ映画を観て来たこともあり、作者も少年漫画的なテンションがモリモリしておりまする(`・ω・´)
 次回は「四海竜」のNo.2、アスピードとの戦いになりますね。そちらのバトルもどうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و


Ps
 ボールにも色々あるんだなぁ(*´꒳`*)
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