-ゼファー・アルビオン-
24歳。オンタリオ出身。鋭い眼光を持つ元テストパイロットであり、寡黙で不器用ながら情に厚い熱血漢。水中戦用に改修された蒼銀を基調とするザクIIに搭乗する。階級は中尉。
※原案はカイン大佐先生。
-ミコト・
20歳。東京出身。エースパイロットである2人の姉を持つ中性的な美女であり、クールな佇まいに反した熱い正義感の持ち主でもある。黒とネイビーブルーを基調とする水中型ガンダムに搭乗する。階級は少尉。
※原案はMegapon先生。
-ヴィオレッタ・エバーグリーン-
18歳。ローマ出身。元戦災孤児の寡黙な少女兵であり、「菫色の戦乙女」という異名で呼ばれるエースの1人。ヒートナイフを装備した、菫色を基調とするアクアジムに搭乗する。階級は軍曹。
※原案は赤犬先生。
『コバルトキャリバー……お前達の力は紛れもなく本物だよ。だが、この潜航速度にはさしものお前達でも付いて来れまいッ!』
イーサンとポルセが散華してもなお、勢いを失うことなく戦い続けている「四海竜」のMS。そのうちの1機は
白桜色の機体を操るアスピード・ハブラは、「四海竜」のNo.2に恥じない技量を以て、コバルトキャリバー隊のMSを翻弄している。彼の愛機は両脚に大型のハイドロジェットエンジンを搭載しており、通常機を遥かに上回るスピードを発揮しているのだ。
『ただ速いだけではない……! 円形に泳ぐことで、自分の噴射による水泡の中に紛れ込んでいるのかッ! 「四海竜」め、何と往生際の悪いッ!』
『ゼファー中尉、ここはボクに任せて下がっていてください! その機体で不意打ちを受けたら、タダでは済みませんよ!』
蒼銀に塗装されたボディと、死神のエンブレムを持つMS-06「ザクII」。水中戦用に改修されたその機体を駆るゼファー・アルビオン中尉は、水泡に姿を眩ましているアスピード機の機影を捉え切れずにいる。
ミコト・
彼らがアスピード機と遭遇し、交戦を始めてからすでに10分以上が経過しているのだが。両機は未だに、白桜色のザクマリンタイプに擦り傷すら与えられていない。
数ヶ月に渡り「四海竜」と戦い続けてきた2人は、この最終決戦で初めて彼ら「四海竜」の「本気」を目の当たりにしているのである。
『ぐぅッ!』
『ミコト! ……おのれッ!』
ゼファー機とミコト機を取り囲む、巨大な水泡の輪。その中から不規則に飛び出して来るサブロックガンの弾頭が、ミコト機のシールドに直撃した。
辛うじて機体そのものへのダメージは避けられたが、アスピード機はまだかなりの弾数を残している。形勢の不利は、変わらない。
『くッ……!』
『速過ぎる……! ボク達ですらも捉え切れないなんてッ……!』
ゼファー機とミコト機も、ザクバズーカと偏向ビームライフルで反撃を試みているのだが。発射された弾頭とビームは水泡の軌跡を描くのみであり、アスピード機には全く当たる気配がない。
(ソニア
同じ連邦軍のMSパイロットとして、自分よりも先に数多の戦地を渡り歩いて来たベテランである2人の姉。そんな「先達」の背に手を伸ばすように、ミコト機は偏向ビームライフルを突き出しながら、ハイドロジェットを噴かして前進して行く。
自機の被弾率が上がるとしても、命中率を高めるため。彼女はより水泡の輪に近い位置からビームを放とうとしているのだ。
『このまま徐々に装甲を削って行けば、奴らと言えども……なにッ!?』
そんな彼女の水中型ガンダムが1番の脅威であると認識していたアスピード機は、先にその機体から撃破するべくサブロックガンの銃口を彼女に向ける。だが、彼が注意するべき相手はミコト機だけではなかった。
水中型ガンダムにとどめを刺そうとしたアスピード機が、「第3の刺客」に気づいた時には。すでにその機体が、水泡の輪の中へと飛び込んでいたのである。
『俺の「輪」に……紛れ込んで来ただとッ!?』
『……申し訳ありませんが、あなた達の思い通りにさせるわけにはいきません』
『くッ! 「菫色の戦乙女」かッ……!』
透き通るような女性の声が響き渡った瞬間。アスピード機の片足にヒートナイフの刃が沈み、その挙動に乱れが生じる。体勢を立て直すために彼がその場を離れたことで、水泡の輪もたちまち霧散してしまうのだった。
2本のヒートナイフを握っている、RAG-79「アクアジム」改修型。菫色を基調とするその機体を駆る、ヴィオレッタ・エバーグリーン軍曹の仕業であった。
アスピード機が高速で旋回を繰り返すことによって発生している、水泡の輪。彼女はその中に飛び込み、向かって来るアスピード機の足をすれ違いざまに切り裂いたのだ。
一歩間違えれば、高速で移動しているザクマリンタイプと正面衝突しかねない危険な作戦なのだが。彼女はそれを、こともなげにやってのけたのである。「菫色の戦乙女」という彼女の異名も、伊達ではないのだ。
『水泡の輪が消えた……!? ヴィオレッタがやったのか!』
『なんて無茶を……! もしあんなスピードで動いてる奴と衝突するようなことがあったら、アクアジムの装甲でもタダでは済まないんだよ!?』
『……申し訳ありません、ミコト少尉。このような場合は、僚機の救援を優先するべきと判断しましたので』
『き、君という娘は……ふふっ、それも「育ての親」の教えなのかい? 全く、君には敵わないな』
その身を案じての追及にも、真顔でそう答えてしまうヴィオレッタの佇まいに、ミコトは「敵わない」と苦笑する。ある士官に拾われ、MSパイロットとして育てられた戦災孤児であるとは聞いていたが、恐らくその天然ぶりは生来のものなのだろうと。
そんなヴィオレッタは艶やかな金髪を靡かせ、サファイアのように輝く碧眼でアスピード機を射抜いている。表情が滅多に変わらないことから人形のようだと評されている美少女は、澄んだ声色で投降を呼び掛けていた。
『……このままあなた方のユーコンが沖縄まで辿り着けたとしても、有益な結果にはなりません。連邦海軍はすでに、沖縄に集結しつつある残党の存在をキャッチして動き始めています。あなた方「四海竜」が殿を務めたところで、戦局には何ら変化はないのです。速やかに降伏してください』
『そうか……だが、俺達はもう
『ボク達の言葉が信じられない、ということかい?』
『敵同士である以上、無理からぬことかも知れん。だが、それでも聞け! もう戦争は終わっているんだ!』
ヴィオレッタが言う通り、すでにユーコンの航路から「四海竜」の思惑を察知していた連邦海軍は、沖縄に集結している残党を叩く用意を進めているのだ。アスピード達がどれほど激しく抵抗したとしても、大局に大きな変化が現れることはないのである。
ゼファーもミコトも、ヴィオレッタに続くように説得を試みていた。だが、アスピード機の
『……いいや。5ヶ月にも渡って殺し合ってきた仲なんだ。この期に及んで、お前達がそんなつまらん嘘を吐くとは思っていない。無論敵同士ではあるが、ある意味では「戦友」と呼んでも差し支えない関係だろう? 俺達は』
『ならば、なぜ……!』
『戦争が終わってもなお銃を捨てられなかった時点で、俺達はすでにジオンという国家に認められた正規軍ではない。畜生にも劣るテロリスト……と言ったところだろう。当然、南極条約の守備範囲外というわけだ』
『……!』
『降伏した俺達を丁重に扱いたい……それがお前達の本意だとしても、お前達の
例えコバルトキャリバー隊に、「四海竜」を含むジオン残党を救済したいという思いがあるのだとしても。ひとたび彼らの上層部が「殲滅」を命じれば、誰もそれに抗うことはできなくなる。
その可能性を残している彼らに、仲間達の命を託すことはできない。それがアスピードの口から語られた、降伏に応じない理由であった。
『言葉で分かり合える。そんな綺麗事を信じていられるのは、お前達が連邦の法という安全圏に守られた、勝者の側にいるからだ。……敗者の俺達には、もはや情けを乞う資格すらないんだよ!』
『……! 俺達が、安全圏……だと?』
『そうだ! だから俺達は、全てを覚悟の上で戦う道を選んだ、カリュブス曹長に続くんだ! イーサンや、ポルセ軍曹のようになッ!』
突き放すような雄叫びを上げて。アスピード機は救いの手を振り払うように、サブロックガンの引き金を引く。
その弾頭を肩部のシールドで凌ぎ、ザクバズーカで応射しながら。ゼファーはコクピットの中で、怒りの声を滲ませていた。
コロニー落としにより妻子を失い、かつてはジオンそのものを激しく憎みながらも。復讐鬼には堕ちまいと、己の心に滲む憎しみと戦い続けてきた彼にとって。
アスピードのその発言だけは、聞き捨てならなかったのである。
『お前は先程、「戦友」のようなものだと言ったな。ならば分かるはずだ! 俺達コバルトキャリバー隊も、お前達のようにこの命を懸けて来たのだとッ!』
このコバルトキャリバー隊が、安全圏などと呼べるような場所にいるはずがない。それは、愛機のミサイルランチャーで撃ち返しているヴィオレッタも同様の思いであった。
『……連邦であろうと、ジオンであろうと。私達は皆、同じ時代を歩んで来た人間です。あなたの尺度で、全てを理解した気にならないでください』
『なんだと……!?』
『辛いのは君達だけじゃない……! ボク達も、皆も苦しみながら、それでも戦わなければならなかったんだ! だからもう、今日で終わりにしなきゃいけないんだよッ!』
ミコト機も偏向ビームライフルを連射し、この因縁に終止符を打とうとしている。サブロックガンの弾頭が各部に命中し、爆音と共に激しくコクピットを揺さぶられても、その怜悧な眼差しに恐れの色はない。
ショートカットに切り揃えられた黒髪を振り乱し、中性的な佇まいに反したHカップの巨乳を弾ませながらも、ミコトの眼は真っ直ぐにアスピード機を捉えていた。
本来なら今話のアスピード戦も1話で完結させる予定だったのですが、思いの外長くなりそうなので2話に分けることになりました。次回こそアスピード機との戦いにも決着が付く……はず! お楽しみに!٩( 'ω' )و
Ps
同じ上官の下で働いていた時期もあったので、ミコトとヴィオレッタは結構仲良しという裏設定があったりなかったり(о´∀`о)