機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-第6話からの登場人物-

-カズサ・カワカミ-
 32歳。熊本出身。戦場の主役がMSに代わった今も戦闘機に乗り続けている生粋のパイロットであり、親友のヴャチェスラフ・イワノヴィチ・ボブリコフに千人針の話をしたこともある女性パイロット。青い雷のパーソナルマークを翼に描いたGファイターに搭乗する。階級は中尉。
 ※原案は富幸先生。

-ジン・カキザキ-
 23歳。東京出身。元試験部隊の所属であり、ジャブローにて待機命令が出されていたが、火力の補強のために緊急出動して戦闘に参加。有人操縦式の試作型バストライナーに搭乗する。階級は少尉。
 ※原案はハートワン先生。



第6話 蒼雷の天翼 -カズサ・カワカミ-

 

 「天使の死神」ことボルド・リヒターが駆るグフフライトタイプと、その僚機であるレオンハルト・ベルガーの高機動型ザク。彼らの巧みな連携と一撃離脱戦法に翻弄され、プラチナファルコン隊は窮地に陥っていた。

 

『く、くそッ……! ヴィルヘルミーナ、エドガー! 生きてるかぁ!?』

『えぇ、なんとかねっ……!』

『だが……このままじゃあ、今度こそやられちまうっ……!』

 

 いくら装甲の厚いガンキャノンといえども、加速を乗せたヒート剣の斬撃を浴びればタダでは済まない。フランツ機とヴィルヘルミーナ機のボディには、大きな傷跡が残されていた。両腕をもがれたエドガー機のザクキャノンも、かなりの損傷となっている。

 

『ここまでだな……連邦のパイロット。大人しく私の手に掛かり、死んで貰おうか』

『……!? 待て、ボルド! さっき落とした輸送機の付近から、熱源反応が……!』

『なんだと……!?』

 

 そんな彼らを見下ろしていたボルド機とレオンハルト機は、再び急降下攻撃でとどめを刺そうとしていたのだが。不審な熱源反応をキャッチしたレオンハルト機から、警告の声が響いて来る。

 

 その反応はなんと、先ほど撃墜したはずの輸送機(ミデア)の辺りから出ているというのだ。想定外の事態に、ボルドも思わず瞠目してしまう。あの爆発から生き残っている機体があるとは、さしものボルドも予測出来なかったのだ。

 

『あの爆発から……まだ生き延びていた奴らがッ!?』

 

 黒煙と猛炎に包まれたミデアの残骸。その付近から飛び出した二つの影を目にした瞬間、ボルドは驚愕の声を上げる。レオンハルト機に届いていた熱源反応は、故障などではなかったのだ。一つは森林の隙間を駆け抜け、もう一つは夜空を舞い飛んでいる。

 

『……なんという生存能力! 連邦軍の兵器は化け物か……!』

 

 この二つはいずれも、ミデアが墜落する寸前にコンテナから脱出していたのだろう。絶体絶命の窮地から生き延びた二つの「機影」に、ボルドは驚嘆の表情を浮かべていた。

 彼が搭乗するフライトタイプは、そのうちの一つ――夜空を駆ける重戦闘機に一つ目(モノアイ)の輝きを向ける。かつて戦闘機乗りとして名を馳せた男にとって、最も無視出来ない相手であった。

 

 本来はガンダムのために開発されたサポートメカである、G-P.A.R.T.S.計画から誕生した重戦闘機「Gファイター」。

 翼部に「青い雷」のパーソナルマークを描いているその機体は、ボルド機から放たれた実弾をひらりとかわし、大きな弧を描くように飛行している。その派手な動きは、フランツ達に自身の生存をアピールしているかのようだ。

 

『あれは……カズサのGファイター!? 無事だったのか!』

『勝手に殺してんじゃないよ! 私に死に場所なんてものがあるなら……それは、この戦場の空さ! コンテナの中で蒸し焼きなんて御免だよッ!』

 

 夜空を仰ぎ驚愕するフランツの声を耳にした女傑――カズサ・カワカミ中尉は、自身のタフネスを主張するかのように勝気な声を張り上げている。生粋の飛行機乗りを自称する彼女は、あの窮地から愛機のGファイターで脱出していたらしい。

 

『まぁ尤も……こんなところで死ぬつもりはないんだけどねぇ?』

 

 彼女の愛機は唸りを上げて急上昇すると、自分達を苦しめた仇敵であるボルド機に狙いを定めて行く。厚く艶やかな唇をペロリと舐める絶世の美女は、鋭い切れ目を細めて不敵に微笑んでいた。ヘルメットの内側には、ウェーブが掛かった黒髪が押し込まれている。

 

(……ああもうっ、またスーツがキツくなって来ちまったよ。これ以上大きく(・・・)なってどうするってんだい、全く)

 

 豊満に実った釣鐘型の乳房も、ノーマルスーツの上からでもその存在感を激しく主張していた。ヴィルヘルミーナをさらに凌ぐ爆乳と巨尻のせいで、彼女のノーマルスーツはぴっちりと張り詰めており、今にも内側から破けてしまいそうだ。鼠蹊部にもスーツが深く食い込んでおり、彼女の股間はくっきりとしたYの字を描いている。

 

(……それにしても、人一倍小心者だったアイツ(・・・)が最前線の宇宙に上がろうとしてるなんてねぇ。それなら私だって、負けちゃいられないよ……!)

 

 打ち上げ準備中のサラミス級に搭載されているスターイーグル隊。その一員にして、カズサの友人でもあるヴャチェスラフ・イワノヴィチ・ボブリコフ軍曹は、気が小さい臆病者と罵られながらも、勇気を振り絞って宇宙に向かおうとしている。

 

『んっ、ふぅっ……! はぁ、あぁっ……!』

 

 そんな彼に負けてはいられない。その一心で、カズサは細く優美な手指を操縦桿に絡めて行く。武者震いを鎮めて冷静さを保つため、両手の指先で操縦桿をスリスリと撫でている彼女は、艶やかな唇から悩ましい吐息を漏らしていた。ジャブローの男達を惑わせて来た魔性の色香が、汗ばむ肉体から分泌されて行く。

 

『くぅっ、んっ、はぁうっ……!』

 

 グラマラスな肢体はノーマルスーツの内側でしとどに汗ばみ、芳醇な匂いが熟成されて行く。成熟した果実は戦闘の興奮で甘い熱を帯び、唇から漏れ出る声は扇情的に上擦っている。

 

『は、あぁあ……っ!』

 

 集中力を乱す雑念を体内から排除するため。弓なりに背を仰け反らせて、釣鐘型の爆乳をぶるんっと揺らした彼女は、妖艶な肢体を艶めかしく痙攣させた後――蠱惑的な音色の息を、一気に吐き出して行く。

 

『……んんッ!』

 

 そして、全ての雑念から解き放たれた瞬間。キッと鋭く眼を細めて操縦桿を握り締めた彼女は、勢いよく「戦士」の貌を露わにする。その双眸は、獲物を捉えた狩人のようであった。

 

『……さぁてッ! 挨拶代わりも兼ねて、さっきのお礼と行こうじゃないかッ!』

『ぬぅッ!? ビーム兵器を積んだ重戦闘機だと……!? あの火力と飛行速度……侮り難しッ!』

 

 カズサ機のGファイターはボルド機から展開される弾幕の隙間を潜り抜け、一気に接近して行く。そして、搭載されていた2連装メガ粒子砲と対空ミサイルを同時に発射していた。

 

『ぐぉおおッ……!?』

『天に近付き過ぎると翼は焼かれちまうものさ! 尤も、焼くのは太陽じゃなくて私のミサイルだけどねぇ!』

 

 咄嗟に射撃を中断して回避に転じたボルド機だったが、1発のミサイルを肩部に受けたことで体勢を乱されてしまう。その隙にボルド機とすれ違ったカズサ機は、大きく旋回して次の攻撃に移ろうとしていた。

 乗機の激しい挙動によってコクピットを揺さぶられ、カズサの爆乳も左右にぶるんっと大きく弾む。ノーマルスーツを緊張させる彼女の豊満な肉体も、より熱く汗ばんでいた。細い指を絡めた操縦桿を艶めかしい手付きで握り、カズサは大きく上体を傾ける。

 

『空を飛ぶ機体に乗っている以上、あんただって嫌でも分かるだろう? 自分より速く飛んで来る奴の恐ろしさが!』

『……ふふふ、恐ろしいとも。だがそれ以上に……血が騒ぐ! お前のような戦闘機乗り(ファイターパイロット)が相手とあらば、なおさらだ!』

 

 この光景はまるで、先ほどまでフランツ達が受けていた一撃離脱戦法の意趣返しのようであった。しかし、かつてない強敵を前にしてもなお、ボルドは好戦的な笑みを露わにしている。

 豊満な乳房を揺らしているカズサも、ヘルメットの下で不敵に嗤っていた。どうやら戦闘機乗り同士、ボルドとはどこか通じ合うものがあったようだ。下腹部から脳天へと衝き上げられるような高揚感にゾクゾクと背筋を震わせるカズサは、両手の指先で操縦桿を摩りながらにやりと薄ら笑いを浮かべている。

 

『……! ボルド、下だ! もう1機が下から来るッ!』

『なにッ……!?』

 

 だが、このまま一騎打ちとは行かない。レオンハルト機からの通信にボルド機が反応した瞬間、地上から凄まじい火力のビームが迫って来た。

 

『うぉおぉおッ!?』

『何の光ぃいッ!?』

 

 咄嗟に散開して熱線をかわした2人は、そのあまりの威力に瞠目する。そのビーム攻撃はまさに、戦艦級の火力だったのだ。間一髪直撃を免れた彼らは、焦燥を露わに地上を見下ろす。

 

『なんだアレは……移動砲台か……!?』

 

 驚愕するボルド達が目にしたのは――地上用移動砲台「バストライナー」。Gファイターと同じく、MSを補助するために開発されたサポートメカだ。どうやらこの移動砲台が、ミデアから脱出していた二つ目の影の正体だったらしい。

 

『……くッ! ミデアに居た皆を、よくも……! ここまでされて、黙ってはいられない! そうですよね、フランツ隊長!』

 

 大型ビームランチャーでの牽制射撃で、ボルド達を驚愕させたバストライナー。その機体に搭乗しているジン・カキザキ少尉は、自分達を乗せてくれたミデアの乗組員達の死に心を痛め、唇を噛み締めていた。

 敵討ちに燃える彼はフランツ機を一瞥しながら愛機を走らせ、木々の隙間を巧みにすり抜けて行く。若手でありながら、数多の戦場をホバートラックで走り抜けて来た彼は、そこで培った操縦技術を遺憾無く発揮していた。

 

 本来、バストライナーはそれを使用するMS側から制御する仕様であり、これ自体は有人機ではない。だが、カキザキの「古巣」である試験部隊で運用されていた試作機は、単独でも射撃が行えるようにと有人操縦式に仕上げられていたらしい。

 機体背部のスラスター推力で疾走する砲台は、再び強大なビームを撃ち放ち、ボルド達を牽制していた。その隙に闇夜の森を走り抜けた彼は、ついにフランツ達との合流を果たす。

 

『カキザキ! お前、よく無事だったな!?』

『良かった……! 私達、てっきりあの爆発で……!』

『墜落してる最中に整備士の皆が……コンテナのハッチを開けてくれたんです。でも、そうしている間にミデアの皆は脱出が遅れて……!』

 

 フランツやヴィルヘルミーナが安堵の声を漏らす中、後ろを振り返りミデアの残骸を見つめているカキザキは、鎮痛な表情を浮かべている。輸送機を焼く大火の中に消えた、何人もの仲間達。彼らの献身を思い出すたびに、カキザキは操縦桿を握る手を震わせていた。

 

『……泣き言はその辺にしておきな、カキザキ。あいつらがそれ(・・)を選んだのなら、俺達に言えることはもう何もねぇ』

『エドガー中尉……』

『死んで行った奴らの生命に、どんな意味があったのか。あいつらの死に価値はあったのか。それは、今生きている俺達に懸かってんだ。メソメソしてる暇なんか……ねぇんだぞ』

『くッ……!』

 

 長く前線に身を置き、多くの「死」を目の当たりにして来た年長者として、そんな若者を放っては置けなかったのだろう。穏やかな声色でカキザキに語り掛けるエドガーは、今も生きている者としての務めを果たすべきだと説いている。彼の双眸は、上空を制しているボルド機とレオンハルト機を捉えていた。

 

『そのためにも……って言いてぇところだが、生憎俺のザクキャノンは腕がこの有様でよ。悪いが、ここで砲台になるのが精一杯だ。それで構わないか? 隊長』

『……十分過ぎるくらいさ、エドガー。ヴィルヘルミーナ、今度は俺達がミデアの皆に応える番だ。分かってるな?』

『ええ、もちろん。……アレ(・・)で行く、ってことでしょ?』

 

 自嘲するように乾いた笑みを溢すエドガーは、自機の両腕を見遣りながら砲台役に徹しようとしている。そんな彼の意を汲んだフランツは、「反撃」に転じるべくヴィルヘルミーナと視線を交わす。フランツの意図を察しているヴィルヘルミーナは、蠱惑的にウインクして応えていた。

 

『……実戦ではまだ一度も試したことがないフォーメーションだが、俺達ならやれるはずだ! カキザキ、お前はヴィルヘルミーナを乗せてくれ!』

『了解! 行くわよカキザキ!』

『は、はいッ!』

『エドガーは地上からの援護を頼む! カズサは俺とだ、いいな!?』

『あいよ隊長、任せなッ!』

『分かってるさ! そろそろ決着を付けてやろうじゃあないかッ!』

 

 まだ実戦では使ったことがない、付け焼き刃の新戦術。そこに一縷の望みを賭けたフランツ機からの号令に、全員が勢いよく応えていた。

 

『……お望み通り、見せてやろうじゃないか。俺達プラチナファルコン隊の本当の力を!』

 

 仲間達の弔い合戦。その一点に心を合わせた彼らは、最後の攻撃を仕掛けようとしている。必勝の信念を帯びた、強気な笑みを浮かべる彼らは、同時に上空のボルド達を睨み付けていた。

 




 Gファイターの旧キットはちょっとずんぐりしてて可愛いんですよねー(*´ω`*)
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