-ライミー・スノーフラワ-
22歳。サイド3出身。酒癖の悪さから最前線に左遷されていたエリート士官であり、常に酒の入ったスキットルを持ち歩いている酒豪。しかし情に厚い一面もあり、MSの操縦技術も経歴に恥じない練度に達している。スズランのエンブレムが描かれた、薄い青と白を基調とするドムマーメイドに搭乗する。階級は中尉。
※原案はアルキメです。先生。
-ラアス・リュレウ・ソボミ-
16歳。サイド3出身。違う世界の話をしているかのような不思議な言動が絶えない美少女であり、その浮世離れした佇まいに反して優れた操縦技術を持っている。キャリフォルニアベースで試作されていた、白と灰色を基調とするグフホバータイプに搭乗する。階級は軍曹。
※原案はX2愛好家先生。
『……火を消すには根元から吹き飛ばす。やっぱ、この手に限るねぇ』
2基の大型ファンエンジンと大型安定翼を背部に備え、その機能を以て水上を走行して駆け付けて来たMS-09M「ドムマーメイド」。
スズランのエンブレムを刻み、薄い青と白を基調とするこの機体に搭乗しているライミー・スノーフラワ中尉は、艶やかに舌舐めずりをしている。
『ホタル少佐とみこたんの2人だけじゃあ、あのMSの暴走は止められないだろうからねぇ……。けど……ああいう甘ちゃん達こそ、戦争が終わった後の時代には必要なんだ。この戦争がどんな結末になるとしても、こんなところで死なせるわけには行かない』
青みがかった黒髪と白い柔肌の持ち主である彼女は、ノーマルスーツを押し上げる豊満な爆乳をばるんっと大きく揺らし、妖艶な微笑を浮かべていた。その蠱惑的な佇まいは、濃厚な女の色香に満ち溢れている。
かつてエリートコースを約束されていた身でありながら、酒癖の悪さが災いして「大事な場」で「粗相」をしてしまい、最前線に左遷されてしまった「曰く付き」。そんな経歴がありながら、彼女は今も酒の入ったスキットルを持ち歩いている。筋金入りの酒豪にとって、酒はお守りのようなものなのだろう。
『ラ、ライミー中尉!』
『来てくれたんですねっ!』
『遅れて済まないねぇ、みこたん。それに……ホタル少佐も』
シュツルムファウストの一撃で「火元」となっていた辺り一帯を吹き飛ばして見せた、ライミー機のドムマーメイド。彼女の愛機が滑り込むようにこの場に駆け付けて来た瞬間、彼女の参戦にホタルとカンナギが安堵の笑みを溢していた。
『……ッ! 今度はドムタイプのMSか! 次から次へと死に損ないが……!』
その一方で、コスモスは「新手」の出現に警戒を露わにしている。火災の根源を消し飛ばしたシュツルムファウストの威力だけではない。パイロットの技量と戦意も、他の2人を大きく凌駕している。
今度ばかりは、先ほどまでのようには行かない。狂気の中にあっても、戦士としての本能がその事実を理解していた。このドムのパイロットは、「エース」なのだと。
『……!?』
その時。さらにもう一つの
そんな彼女の「予感」が的中した瞬間、1機のグフが
『……大丈夫です。この戦い、ジオンが勝ちますから。グラナダに、ソロモンなんか落っこちませんから……』
大海を割ったという旧約聖書の伝説のように、火の海を裂いて開かれた道。その活路を走り抜けていたMS-07H-6「グフホバータイプ」も、この場に勢いよく飛び込んで来た。白と灰色を基調とするこの機体を駆るラアス・リュレウ・ソボミ軍曹は、眠たそうな表情で奇妙な内容を呟いている。
外見は可憐な美少女である彼女だが、その不思議な言動故に周囲からは気味悪がられることの方が多く、「森夜叉」に配属されたのも厄介払いという理由が半分を占めていた。キャリフォルニアベースで試作されていたグフホバータイプの実験機を回されたのも、その一環なのだろう。
『え……? グ、グラナダにソロモンが……?』
『ラアス軍曹、それって……?』
『はぁ〜……お2人さん、そいつの話は軽く聞き流しといてくんな。いつものことなんだよ、そいつの妙ちくりんな与太話は』
ラアスが口にした内容には、ホタルとカンナギも困惑した様子で顔を見合わせている。そんな2人にため息を吐くライミーは、娘の言動を案じる母親のような表情でラアスを一瞥している。
『……?』
『……全く、あんたってばこれだから……』
しかし当のラアスは可愛らしく小首を傾げるばかりで、自分の発言に問題があるとは全く思っていない。そんな手の掛かる部下に頭を悩ませているライミーは、呆れた様子で目を細めていた。
『……私が見た連邦のMSには、盾がいっぱい付いていました。あの機体はむしろ、身軽になるために盾を無くしています。装甲はかなり薄いはずかと……』
『やれやれ、言ってるそばからこれだ。私もズゴックに乗ってあちこち転戦して来たが、そんなMSは見たことがないよ。……まぁ、装甲が薄そうってところは同意見だけどねぇ』
ラアスが観た「世界」には、多くの盾を装備したMSが居たらしい。だがライミーが各地を転戦していた頃も、そのような機体に遭遇したことはなかった。ジムライトアーマーの外装を観察しつつ、ライミーはラアスの「与太話」を一蹴している。
『ライミー中尉、ラアス軍曹! お2人の機体に、あの人の
『……ありがとうございます』
『おう、助かる助かる。……それじゃあ、ホタル少佐はみこたん准尉に付いててあげてください。ここからは、この私達に任せて貰おうじゃあないか!』
そんな時、カンナギ機のカメラガンで撮影された映像記録が、ライミー機とラアス機に転送されて来た。その記録を素早く確認した両機は、カンナギ機を庇うようにコスモス機の前に立ちはだかる。ライミー機は撃ち終わったシュツルムファウストの筒を投げ捨て、
『ライミー中尉……!』
『2人共……どうか死なないでっ!』
ホタル機のザクが、カンナギ機のそばに寄り添うと同時に。ライミー機とラアス機は、コスモス機目掛けて同時に走り出して行った。ホバー移動にスラスターの推力も加わり、ドムマーメイドとグフホバータイプは凄まじい速度を発揮している。
ホタルとカンナギが心配げに声を上げる中、ライミー機とラアス機は鮮やかな挙動で地を滑り、コスモス機に急接近していた。ナパーム弾によって作られた火柱を左右にかわし、両機は全く減速することなく間合いを詰めようとしている。
『蒼き、清浄なる、大地の、ためぇえッ!』
『こんなに戦火を撒き散らしておいて、清浄も何もあるかいッ! このままじゃあせっかくの大地が、丸ごと焼け野原になっちまうッ!』
『……すでにこの人は壊れています。対話の余地、見受けられません』
『んなこたぁ見りゃ分かるってんだよ!』
カンナギ機から得たデータを元に相手の動きを見切り、2機はさらに接近して行く。対するコスモス機も、ライミー機の胸部から放たれた拡散ビームをかわし、ハイパーバズーカを構えていた。しかし彼女のジムライトアーマーが照準を定めるよりも速く、ドムマーメイドとグフホバータイプは左右に素早く移動して射線をかわしてしまう。コスモスの先読み能力に、ジムライトアーマーの機体が追い付いていないのだ。
『ジオンめぇッ……消えて無くなれぇえッ!』
『……嫌になる相手だねぇ。これじゃあ、どんな酒も不味くなっちまうよ』
『中尉。みこたん准尉のデータによれば、次の動きは……』
『あぁ……! これ以上火の手を広げられる前に、ケリを付けようじゃあないかッ!』
先ほどのシュツルムファウストの一撃で、ある程度は火の勢いは抑えられたが、まだ完全に鎮火されたわけではない。仲間達の退路を確保するためにも、これ以上の延焼を許すわけには行かない。カンナギ機から与えられたデータを駆使して、ライミー機とラアス機はコスモス機の動きを掴もうとしていた。
『中尉……!』
『分かってらぁッ! 急かすんじゃあないよッ!』
ライミー機とラアス機はナパーム弾の発射を阻止するべく、MMP-80マシンガンでの牽制射撃を仕掛けていた。その際にライミー機はマシンガンに装備されていたグレネードを発射し、爆煙でコスモス機の視界を遮断してしまう。
『ぐ、ぅッ……!?』
『その装甲の薄さじゃあ、この弾幕は堪えるだろう!?』
『次、あの槍での攻撃ッ……』
この好機に乗じて、ライミー機とラアス機はコスモス機の懐に飛び込んで行く。だが、コスモス機には大型のツインビームスピアがある。その光刃による刺突を予感した両機は、相手がカウンターを繰り出す瞬間を狙い澄まして回避行動に出ていた。
『……おのれぇえぇッ!』
『あのビームの槍はかなりのリーチ……! だけどッ!』
『所詮は1本の白兵戦用兵器……。2機同時に対処は出来ない』
グレネードによる爆煙を突き破るように現れた、ツインビームスピアの切っ先。その眩い光刃を間一髪でかわしたライミー機は、槍の長い柄をスパイクシールドで受け流す。その隙を突き、滑り込むように「間合い」に入ったラアス機は、コスモス機の脇腹にブーストナックルによる打撃を繰り出した。
『……ッ!』
『ぐあぁああッ!? ジオンめぇえッ……! あれほどのことをしておいてッ……まだ、まだ殺し足りないというのぉおぉッ!?』
『私達だって……大勢殺されたさッ! 戦争だからなッ! だからこそ私達は……最後まで生きて、戦いの終わりを見届けなきゃあならないんだよッ! 一足早く死んで行った、皆の分までねぇえッ!』
装甲の薄いジムライトアーマーにとって、この一撃は大きなダメージとなる。ホバーとスラスターによる加速を乗せたラアス機の打撃でコスモス機が怯んだところへ、ライミー機が一気に踏み込み、スパイクシールドで2度目の打突を繰り出した。
『……死者の声も聞こえないくせに、知った風な口を利くなぁあぁあッ! 貴様らにこの狂おしい断末魔が、聞こえるのかぁああッ! 死んで行った人達のぉおぉッ、悲しみがぁあぁあッ! 嘆きがぁあぁあぁあッ!』
『くッ……!?』
しかし、このままでは終わらない。コスモス機は咄嗟にスラスターを噴かして後方に飛び退き、ライミー機の追い討ちをかわしていた。そして懐に入り込んで来た2機を一網打尽にするべく、ツインビームスピアを水平に薙ぎ払う。
ライミー機が咄嗟にヒートホークで受け止めるが、そのまま力任せに押し出され、真横に居たラアス機に衝突してしまった。轟音を響かせて大きくよろめく、ドムマーメイドとグフホバータイプ。その両機を纏めて仕留めようと、コスモス機は鬼気迫る勢いでツインビームスピアを振り抜こうとしている。
『貴様らはそうやって……死者を都合よく利用して、自分達だけ狡賢く生き延びようとしているだけでしょうがぁあッ! なんて汚いッ! なんて見苦しいッ! その卑劣さ、万事に値するぅうぅッ!』
『ぐぁあッ……ラアスッ!』
『……く、ぅッ!』
だが、ここでやられるわけには行かない。ライミー機のボディをぶつけられながらも、ラアス機はスラスターの噴射で辛うじて体勢を維持していた。
そんな彼女に向けられたライミーの叫びに応えるように、グフホバータイプは意を決して一気に「前進」する。姿勢の維持を諦めてでも攻撃を優先し、最後の力を振り絞るように。
『は、ぁっ……あぁあぁあッ!』
ライミー機の重量によって体勢を狂わされながらも、ラアス機は一直線に全ての推力を集中させる。両脚のホバーも、背部のスラスターも、真っ直ぐに突き進むためだけに使われていた。
ヒートホークでツインビームスピアの光刃を受け止めつつも、そのまま押し込まれる形でラアス機にのし掛かっていたライミー機。そんな上官の機体を下から潜り抜けるように、ラアス機は真正面に飛び出して行く。
『こ、こいつまだッ……!』
『……あなただって、勝手に死者を戦う理由にしているッ! そんなの、許してはおけないッ!』
前のめりに倒れ込むような、急加速。その一瞬のうちにブーストナックルを突き出したラアス機は、その打突でコスモス機を後方に突き飛ばしていた。
『あうぅうッ……! こッ、これくらいでぇッ、この私がッ……!?』
ジムライトアーマーの身軽さが災いしたのか、吹っ飛ばされたコスモス機は炎の海に頭から突っ込んでしまう。そんな中でも彼女は戦意を失うことなく、すぐさま立ち上がろうとしたのだが――機体にダメージを負っていたジムライトアーマーにとって、この炎はあまりに致命的だった。
『あっ……あぁあぁあぁあッ!?』
大火に包まれた機体が火花と黒煙を上げ、破損箇所から機体の内部にまで火の手が及ぶ。戦闘の傷で外装を剥がされ、内側の機構が露出していたコスモス機は、すでに火の海に耐えられる状態ではなかったのである。
『そ、そんな……そんなぁあぁあッ!』
瞬く間に火だるまと化し、灼熱の中に飲み込まれて行くジムライトアーマー。やがてコクピットにまで侵入して来た炎が、コスモスの肉体を焼き尽くし始めていた。
珠のような白い柔肌が、地獄の業火に包まれて行く。彼女の断末魔が、その中心から機体の外にまで轟いていた。
『あ、あははは……! 燃える、世界が燃える……蒼き清浄なる大地……大地よ……!』
全ての業を飲み込む炎の中で。コスモスは狂気の笑顔を咲かせて涙を溢し、愛機と運命を共にして行く。やがて、彼女が居た地点で大きな爆発が起こると――そこはすでに、何もない黒ずんだ死の大地となっていた。
皮肉にも、コスモス機の爆散によって火災の根源が消し飛ばされたのだ。彼女に死を齎した爆発によって、火の勢いはさらに衰え始めている。さらに頭上からは、激しい大雨が降り始めていた。この調子ならば、翌朝には全ての炎が絶え果てていることだろう。
『……自分の炎で焼かれるなんて、皮肉なもんだねぇ。せめて弔いの一杯でも捧げてやりたいところだが……生憎、今の私達にはそんな暇もない』
『……』
この豪雨は、戦争で死んで行った死者達の涙なのだろうか。そのように思いを馳せるライミーは、神妙な表情を浮かべてコスモスの最期を見届けていた。そんな彼女の隣に立つラアスも、どこか浮かない様子で黒ずんだ地面を見下ろしている。
「……少佐、友軍の撤退もかなり進んでいます。私達もそろそろ、ルーク大佐の元まで引き上げましょう。あなたの『夢』のためにも、今は何がなんでも生き残らないと!」
『みこたん……。うん、分かった……! 私、生きるよ……何があっても……!』
コスモスを救えなかったホタルも、コクピットの中で悲しげな表情を浮かべていた。だが、ここで立ち止まっているわけには行かない。自身を励ますカンナギの言葉に頷き、ホタルは涙を振り切るようにキッと顔を上げる。
そんな彼女の想いに応えるように、ホタル機のザクは
『さぁ……私達もそろそろ行こうかねぇ。無事に帰れたら、1杯やるかい?』
『……私、未成年なので』
彼女達の護衛として同行することに決めたライミー機とラアス機も、その後に続く形で退却し始めていた。何としても、この森から生き延びるために――。
◇
火の海が森を焼き、暗雲から豪雨が降り注ぐ混沌の戦場。そこは絶えず戦闘の轟音が響き渡る、苛烈な激戦区のようであった。その真っ只中の河川を潜航している1機の水陸両用機――MSM-04「アッガイ」は、濁った水中から
この機体は「森夜叉」の所属機ではない。友軍機の撤退を支援するため、単独での破壊活動で連邦軍を撹乱し、追撃の動きを足止めする極秘任務に就いていた機体だ。その帰還途中で、偶然にもこの現場に居合わせていたのである。
『……うわぁ、これは参ったなぁ。厄介な現場に巻き込まれちまったみたいだ……』
単騎でありながら「森夜叉」に勝るとも劣らない活躍で、人知れず友軍の退却に貢献していた一匹狼。連邦軍から「黒坊主」と呼ばれ、恐れられていたこのアッガイのパイロットは、気怠げな佇まいでため息を吐いている。
『コイツらを野放しにしたら、どれほど友軍に被害が出るか分かったもんじゃないし……仕方ない。ちょーっとだけ……
しかし、その飄々とした様子とは裏腹に。サングラスに隠された彼の鋭い双眸は、友軍にとっての脅威となる連邦軍の猛者達――ゴールドホーク隊を「獲物」として捉えている。彼を乗せたアッガイは音も無く、河川からゆっくりと浮上し始めていた。より高性能な「プロトタイプ」のパーツを流用しているアッガイの
◇
「コ、コスモスのライトアーマーが
「……ほう?
「なッ……!? あ、あなたはまさか、あの『北欧の荒鷲』の……!? ダ、ダブリンにいらしたのでは……!?」
「ジャブローでの戦闘が終わったと聞いて、『お忍び』でヴィルヘルミーナに会いに来ていてね。それより……今の話、詳しく聞かせて貰えるかな?」
「そ、それはッ……!」
「私に話せないような内容、ということかね? 連邦議会に籍を置く、この私に」
世界はホタルのように優しくはない……。次回は「森夜叉」の母艦を攻撃しているアイアングース隊の視点となります(´-ω-`)