-アイゼナッハ・トト-
47歳。サイド3出身。「森夜叉」の母艦である高速陸戦艇ギャロップの艦長であり、ルークの親友。故障により機動力を失った母艦と運命を共にする覚悟で、ルーク達の戦闘を支援している。前線に出ているルークに代わり、森林迷彩仕様のギャロップを指揮している。階級は中佐。
※原案はリオンテイル先生。
アイアングース隊の一番槍として、常に先陣を切って攻撃を仕掛けて行く荒くれ者のレルフ。そんな彼を背後から的確にビーム狙撃でサポートしているティオネ。
彼らのコンビネーションは「森夜叉」の護衛機さえも翻弄し、母艦のギャロップを徹底的に追い詰めていた。あまりに苛烈な猛攻に、ギャロップの牙城は音を立てて崩れ落ちようとしている。ティオネ機からのビーム狙撃は、ギャロップの艦体さえ穿つほどの火力を見せているのだ。
「弾幕を絶やすな! 少しでも長く敵を引き付けるのだ! この『大物』に奴らが少しでも食い付いてくれれば、その分キャリフォルニアベースに下がれる部隊も増えるというもの……!」
それでも、1機でも多くの友軍機を逃がすための「殿」として。アイゼナッハ・トト中佐が艦長代理を務める森林迷彩のギャロップは、最後の力を振り絞るように弾幕を張り続けている。縦横無尽に飛び回るレルフ機に攻撃されている、エンジ機とアズレト機を助けるために。
「……!」
だが。意地一つで踏ん張るには、アイアングース隊はあまりにも強過ぎた。ギャロップの援護射撃がレルフ機に集中している間に、遠方から飛んで来たティオネ機のビームが、艦体に直撃したのである。あまりの衝撃に艦内で爆発が発生し、「森夜叉」の母艦は火だるまになり始めていた。
「うわぁあぁあぁッ!?」
「ぐぉおぉッ……! こ、ここまでか……!」
爆発の余波で
(……熱帯雨林を薙ぎ倒しながら移動するなど、何処にいるかを教えているようなものだ。制空権も失っている以上、どう足掻いても逃げ切れん……!)
最大の持ち味だった脚回りも故障している今、このギャロップはもはや死を待つばかりの巨大な棺桶でしかない。そして現状の戦力で、レルフ機とティオネ機を撃破することなど不可能であることは火を見るより明らかであった。
「中佐、もう持ちません! 我々も早く脱出しなくては……!」
「……お前達はもう行け。このギャロップはもはや的にしかならん。私は艦長代理として、全乗組員の退艦を見届ける義務がある」
「し、しかし……!」
「お前達がさっさと降りんと、私も逃げられんと言っておるのだ。私のためを思うつもりなら、早くここから出て行け」
「りょ、了解ッ!」
「中佐ッ、必ず後で会いましょう!」
絶体絶命の窮地に乗組員達が狼狽する中、アイゼナッハは鋭い双眸で遥か前方を見据えている。そんな彼に敬礼した後、乗組員達は艦内に残していたPVN.4/3「ワッパ」に乗り込み、続々と脱出して行った。
(……ルーク大佐。どうやら私は、死に場所を見つけたようです)
森の向こうに飛び去って行く部下達を見送った後。アイゼナッハはこの局面でありながら、悠然とした佇まいで前を見つめていた。炎上して行くギャロップに包まれながら、彼はまだこの場に残っている部下達に対し、最期の命令を下す。
「……アズレト中尉、エンジ中尉。よくやった、もう十分だ。お前達もこの戦線から離脱しろ」
『なッ……!? アイゼナッハ中佐、まだ俺達はやれますよッ!』
『そうですぜ! 中佐をこんなところで死なせるわけには行きませんッ!』
「だからこそだ。お前達は
『……ッ!』
アイゼナッハからの退避命令に反発するエンジとアズレトは、レルフ機を睨み付けながら戦い続けようとしている。そんな2人を冷静に諭しているアイゼナッハは、自分達「森夜叉」に託された使命を問い掛けていた。
「動けなくなったこの艇はもはや、死を待つだけの泥舟に過ぎん。未来ある生者の足を引っ張るわけには行かんのだ」
『だけどッ……!』
『アイゼナッハ中佐ッ……!』
「この戦線における、我々『森夜叉』の任務は何だ。答えてみろ」
『……友軍の撤退を、支援することですッ……!』
「その通りだ。さぁ、さっさと行け。ジオンの軍人ならば、託された任務を果たして見せろ」
『……了解ッ……!』
彼が指揮するガウ攻撃空母に乗り込み、東南アジア戦線で共に戦っていた頃から。隊員達にとっては、頼り甲斐のある父親のような存在だったアイゼナッハ。
そんな彼の言葉に反論し切れなかったエンジ機とアズレト機は、命令通りに「森夜叉」の使命を果たすべく、この場から走り去って行く。
「……『健康と美容のために食後に一杯の紅茶を』、か。やれやれ、最後だというのにしょうもないことが引っ掛かるな」
ホバー移動で闇夜の森を疾走している、エンジ機とアズレト機。そんな「ドラ息子達」の生還を見届けたアイゼナッハは満足食満な笑みを浮かべ、おもむろに紅茶を淹れ始めていた。最期の1杯を堪能するように瞼を閉じ、彼は感慨深げにカップに口を付ける。
「一体、どの本の言葉だったか……」
愛読していた古典文学の言葉を引用し、穏やかな微笑を浮かべて紅茶を嗜むアイゼナッハ。そんな彼が独り残っている艦橋にまで、ギャロップを焼き尽くす猛炎が迫って来る。それでも火の手が上がる艦橋の中で、彼は最期の1杯を堪能し尽くしていた。
そんな彼に対する「介錯」だったのだろうか。アイゼナッハの全身に炎が迫る寸前――ティオネ機から撃ち放たれたビームが、ギャロップの艦橋内に直撃した。
◇
『……アイゼナッハッ……!』
自分達「森夜叉」の母艦だったギャロップの
――そんな中。一足早くギャロップから「脱出」し、「炎葬隊」から派遣されていた増援のジム部隊を壊滅させていた2機のMSが、ギャロップを焼き尽くす業火を見上げていた。この機体のパイロット達は鋭い表情で火柱を仰ぎ、アイゼナッハの死を噛み締めている。
『……やってくれたね、連邦。ボク達の帰る場所を……』
2本のビームダガーを携えた、RX-78XX「ピクシー」。連邦軍のガンダムタイプであるはずのこの機体はダークブルーに塗装されており、右肩にはパーソナルマークの十字架がより濃い青で塗られている。
『戦争って、こういうモノなんだろうけどさ。こうなったからには……ボク達も
MS-17「ガルバルディ」。
右肩にマウントされた大型のビームライフル。そして、両手に握られたビームランスとビームベイオネット。それらの物々しい武装からも、この機体が纏う悍ましい殺気が滲み出ている。2本の光刃が、闇夜の密林で妖しい輝きを放っていた。
『……
『ボクはボルド大尉を殺った連中を始末しに行く。それじゃあシュヴァル、ヴァイス……また後でね』
無邪気なようで、どことなく妖艶でもある微笑を溢して。この2機のパイロット達は、同胞達の仇に狙いを定めようとしている。豪雨が止み、束の間の静寂が訪れた瞬間。
――フラナガン機関によってニュータイプの素養を見出された、「森夜叉」最強の刺客。その出自故、ルークも戦力として起用することを躊躇していた、真の切り札。
『それじゃあ……』
『始めようか?』
そんな彼女達が、ついに動き出したのだ。ガルバルディはギャロップが沈んだ地点に飛び、ピクシーはボルド機が墜とされた場所へと向かって行く。自分達に仇なす愚か者達を、徹底的に蹂躙するために。
連ジDXのギャロップは絶妙にすばしっこいんですよねー……。次回はまたまた場面が変わり、ルーク機の視点に移ります(´-ω-`)