『隊長ぉおーッ!』
森に向かって墜落して行く、フランツ機のガンキャノンII。その機体を見下ろしながら、カズサは思わず声を上げていた。そんな彼女のGファイターに飛び乗ったルーク機は、反撃不可能なこの状況で確実に仕留めるべく、コクピット目掛けてヒートホークを振り上げている。
『戦友の仇などと身勝手なことは言わんよ。だが敵として俺の前に現れた以上、「覚悟」はして貰うッ!』
『……冗談じゃないよッ!』
だが、このまま黙ってやられるカズサ・カワカミではない。彼女は豊満な爆乳をぶるんっと大きく揺らしながら操縦桿を傾け、Gファイターを素早くバレルロールさせる。
機体を反転させられたルーク機は、その回転によって振り落とされて行った。が、体勢を乱されながらも振り抜かれたヒートホークの刃は、Gファイターの片翼を切り裂いて行く。回転の最中に片方の翼を斬られたカズサ機は、大きく姿勢を狂わされてしまった。
『くぅはぁあぁあッ!?』
『カズサッ……もういい、退避しろ! その状態じゃあ、奴と戦うのはもう無理だ!』
『くふぅうっ……! す、済まない隊長っ……! ここまで来ておいて癪だけど……後はあんた達に任せたよっ……!』
苦悶の声を上げながらも辛うじて体勢を立て直したカズサ機は、片翼飛行でなんとか飛び続けている。撃墜こそ免れたものの、もはやそんな状態ではこのルーク機と戦うことは不可能だろう。
そんなフランツ機からの言葉に従い、カズサ機は悔しげにこの場から飛び去って行く。しとどに汗ばむ肉体をシートに預けたまま、カズサは独り唇を噛み締めていた。ルーク機もそれ以上深追いはせず、カズサ機の退却を静かに見届けている。
高所から墜落してもなお、戦闘機能を保っていたフランツ機のガンキャノンII。そんな彼の機体が、ふらつきながらも立ち上がって来る様子を見守っていたルーク機は、ここからが本番だと言わんばかりに身構えていた。
『さて……これで条件は
『互角、だと……!?』
『聞き間違いかァ? ……3対1でようやく俺達と対等だって言ってんのかよ、てめぇはぁあッ!』
大火力のメガ粒子砲と、圧倒的な機動性を誇るGファイター。その危険因子を排除した今なら、ようやく
彼のガンキャノンIIはビームキャノンを連射しながら、得意の格闘戦に持ち込むべくルーク機に接近して行く。しかしルーク機は回避に徹するどころか、それ以上の速度でJ.J.機に肉薄して来た。
『……そうだが?』
『こ、こいつッ……!』
その圧倒的な機動性に瞠目しながらも、至近距離まで近付かれたJ.J.機は咄嗟に鉄拳を突き出して行く。だが、ルーク機は突き出されたJ.J.機の鉄腕を小脇に挟み込み、関節を極めながら相手の体勢を崩してしまう。
そして左肩のスパイクアーマーで、下から突き上げるかのようなショルダータックルを繰り出した。さながら、八極拳の
『覚えておけ。MSでの徒手空拳とは、こうやるのだ!』
『ぐぉあぁあぁッ!?』
型破りな喧嘩殺法を想起させるJ.J.機の動きとは真逆であり、むしろ武術のように繊細かつ鋭利な挙動。MSの格闘技において、ルークの技量はJ.J.のそれを遥かに上回っていたようだ。鈍い衝撃音と共に、スパイクアーマーの棘がガンキャノンIIのボディに減り込んで行く。
『
離反という経緯とはいえ、部下を失う形となったJ.J.に対して思うところがあったのか。彼の機体に強烈な一撃を決めたルークは、独り自嘲の笑みを溢していた。
『ミラ、ンダッ……!』
『……この俺のようにな』
コクピット付近にスパイクアーマーの一撃を叩き込まれたJ.J.機は、そのまま崩れるように倒れてしまう。ガンキャノンIIの機体そのものに大したダメージは無いのだが、パイロットであるJ.J.自身が軽い脳震盪を起こしたのだ。今や漂浪の叛徒となったミランダの幻影に、震える手を伸ばしながら。J.J.は力尽きたかのように、前のめりに倒れ込んでしまう。
『ジェッ……J.J.ッ!』
『なんてパワーとスピードだ……! ありゃあ、ただのザクなんかじゃないぜッ……!』
精鋭揃いのアイアングース隊を実力で纏め上げているJ.J.が、為す術もなく一方的に叩きのめされている。その光景に戦慄を覚えているラゼルとフランツは、険しい面持ちでルーク機のザクを見据えていた。だが、自分を信じてここまで送り届けてくれた仲間達のためにも、引き下がるわけには行かない。
『くッ、そぉおぉおッ!』
フランツ機のガンキャノンIIは勇ましく走り出し、ビームキャノンとビームライフルを同時に連射する。火力と手数にモノを言わせる、圧倒的な砲火の嵐だ。しかし即座に反応したルーク機は左右に素早く跳び回り、その悉くを容易くかわしてしまう。
『さっきの蹴りだけでは足りなかったようだな。ならば、もう1発だ!』
『うぐあぁああッ! メ、メインカメラがッ……!』
そして至近距離まで接近されてしまい、ルーク機に頭部を蹴り飛ばされてしまう。フランツ機の首は力無く夜空に舞い、森の中へと落ちて行った。メインカメラを失ったフランツ機は直前に受けたダメージもあり、姿勢を制御出来ず転倒してしまう。
『……くそったれぇえーッ!』
だが、まだ終わりではない。戦友達を倒された怒りを糧に、ラゼル機はブルパップマシンガンを連射する。その牽制射撃を浴びせられたルーク機は、フランツ機へのとどめを断念して大きく後ろへと飛び退いた。
そこへ畳み掛けるように、ラゼル機はマシンガンを連射しながらルーク機へと接近して行く。ビームサーベルを装備しているジムスナイパーIIを相手に接近戦は分が悪いという判断なのか、ルーク機はクラッカーを投げ付けて来た。
『ぐぅうッ!? これくらいでッ……!?』
『その反射神経が命取りだッ!』
ラゼル機は咄嗟にクラッカーを撃ち落とすが、その際の爆煙で視界を封じられてしまう。これが接近戦を避けるための牽制ではなく、意図的な目眩しなのだと彼が悟った頃には、すでにルーク機は爆煙を突き破るようにラゼル機の眼前に現れていた。
『ぐはぁあぁあぁッ!』
『ラ、ラゼルーッ!』
全速力でスラスターを噴かして繰り出された、己自身を砲弾とする渾身のショルダータックル。その一撃をまともに喰らってしまったラゼル機は、友の身を案じるフランツが叫び声を上げる中、転倒したまま地面を滑り木々に激突してしまう。
戦闘開始から僅か1分足らずで、3人のエースパイロットを圧倒して見せたルーク機のザク。その異様な戦闘力に息を呑むラゼル達は、驚愕の表情を浮かべて操縦桿を握り締めていた。
『……お、おいッ……! ラゼル、フランツッ……! このザク、一体なんなんだよッ……! こいつぁどう見てもッ……!』
『外装がザクというだけで、内部機構は最新式……そういうケースも幾つか目撃例がある。だが……それにしたってコイツは……!』
『その中においてもぶっちぎりの特注品、ってところか……!』
まだ辛うじて継戦能力を維持している3機は、ふらつきながらもゆっくりと立ち上がって来る。そんな彼らの並々ならぬ闘志を目の当たりにしたルークは、鋭く目を細めて操縦桿を握り直していた。
(……早くこの者達を無力化させねば、俺のJ型も過剰なパワーにボディが耐え切れず自壊してしまうだろう。だが、俺に託された役割は時間稼ぎの囮。長期戦に向かない機体で殿を引き受ける以上、こちらも撃破されないギリギリまで出力をセーブする必要がある……ということか。……いや、そんな甘い考えではこちらが先に殺られる。元より死は覚悟の上……出し惜しみは無しだ!)
ルーク自身にとっても、これほど
『さぁ……来るがいい、連邦の精鋭達よ。シンダー達を倒した時のお前達は、この程度ではなかったはずだ。俺達「森夜叉」をここまで追い詰めた、その武勲を讃えて……この「漆黒の戦闘鬼」、ルーク・アルフィスと戦う栄誉を与えよう』
その危機感故に、ルークは敢えて
(……奴の動きはもう見切った。俺達3人が力を合わせれば、勝てる見込みは必ずある!)
(だが、奴のザクを倒し切るまで……)
(俺達の機体は、保つのか……!?)
――ゴールドホーク隊。プラチナファルコン隊。アイアングース隊。そして、「森夜叉」。それぞれの部隊を率いていた男達は今、己の命と誇りを賭けた最後の戦いに臨もうとしていた。
次回からは再び場面が変わり、まだ未登場だった読者応募キャラ達にスポットを当てて行く予定です。物語も終盤に近付きつつありますので、最後まで見届けて頂ければ幸いですm(_ _)m
Ps
ジークアクスの物語もついに完結……と思ったら、今度は閃光のハサウェイ最新作「キルケーの魔女」の発表! 今年は宇宙世紀がアツゥい!(*^ω^*)