-シュヴァル(ヴァイス)-
14歳。サイド3出身。フラナガン機関で実験体にされていた美少女であり、「ヴァイス」という第2の人格を持っている。黒と白銀を基調としつつ、胸部や膝、肩の一部の右側が青、左側が赤に塗装され、赤と青の霊魂を連れた首無し騎士のエンブレムが描かれているガルバルディに搭乗する。階級は少尉。
※原案はRerere先生。
大破したギャロップの残骸が散らばっている、死の戦場。そこに舞い降りた最強の「刺客」は、アイアングース隊の精鋭すらも圧倒していた。満身創痍のジムナイトシーカーは自慢のスラスターもほとんど破壊され、ジリジリと追い詰められている。
『ちくしょうッ、なんなんだコイツは!? どこから出て来やがったんだ……!』
戦慄するレルフ機の前に立っている、奇妙な色遣いのガルバルディ。その両手に握られたビームランスとビームベイオネットは規格外のエネルギーを有しており、並のビームサーベルでは到底勝負にはならない。
『だからって……この俺がぁあ! アイアングースがぁッ……! 負けるわけには行かねぇだろうがよぉおぉッ!』
それでもアイアングース隊の意地に賭けて、レルフ機は必死に抵抗している。2本の大型ビーム兵器を軽々と振るうガルバルディ。その強烈な斬撃をビームサーベル1本で辛うじて防ぎながら、少しずつ後退して行く。
『あははっ、上手い上手い!
そんな彼の奮闘を嘲笑うかのように、1人の少女は無邪気な声を上げていた。黒と白のツートンカラーとなっている、腰まで伸びた髪を靡かせる美少女――シュヴァル。ガルバルディのパイロットである彼女は、赤い瞳でレルフ機の有様を冷たく見下ろしている。
(まぁ、どっちにしろ……
――親に捨てられ、スラムで孤児として暮らしていた彼女はある日、フラナガン機関によってニュータイプの素養があるとスカウトされ、実験体となった。しかし「特別な存在」と認められたことは、彼女にとっては初めての喜びでもあった。その思いは過酷な人体実験を経験した今でも変わっていない。
ようやく見つけた自分の居場所を守るためなら、彼女はどのような非情な任務も喜んでこなせてしまう。そんな彼女の危うさに心を痛めていたからこそ、ルークも極限まで彼女の存在を「切り札」として温存していたのだ。しかしその最後のカードは、すでに切られてしまっている。
(射撃戦と接近戦……それぞれで動きの雰囲気が全く違う! まるで別人が交代で操縦してるみてぇな動きだ! しかし複座式のMSには見えねぇ……どうなっていやがる!?)
一方。そんな彼女と対峙しているレルフは、相手のガルバルディから感じ取った奇妙な違和感に眉を顰めていた。こうして接近戦を仕掛けている時と、距離を取って射撃戦に切り替わった時とでは、動きの癖が全く異なるのだ。まるで、その瞬間だけ「別人」が操縦しているかのように。
『自己紹介くらいはしようかな……この子はガルバルディで、ボクはシュヴァル。とっても
『……自分を特別だなんて思いたいだけのガキがッ! のぼせてんじゃねぇぞッ!』
『おっ……と、なかなかやるねぇ。でもッ……!』
挑発的な態度を見せるシュヴァルへの苛立ちを募らせ、レルフは一気に勝負を仕掛けてしまう。残された2基のスラスターで一気に加速した彼の機体は、渾身の力でビームサーベルを振り抜いて行った。
『ビームの、威力がッ……うぐぉあぁあぁあッ!』
しかし、シュヴァルの操縦技術に合わせた改造によって出力を増強しているこのガルバルディが相手では、到底勝ち目などない。容易くレルフ機のビームサーベルを弾き飛ばしてしまったシュヴァル機は、そのまま徹底的にレルフ機を切り刻んでしまう。
『特別でもなんでもない君じゃあ……そこまでが限界、ってところかな? ふふっ!』
『ぐ、おぉッ……! てっ、めぇえッ……!』
手足を切り落とされ、立つことすらままならなくなったレルフ機は、そのまま力無く崩れ落ちて行った。特別な力など持たない只人の限界を突き付けるかのように、シュヴァル機はそんなレルフ機を容赦なく踏み付けている。
『レルフ中尉ッ! くッ……!』
『むぅ……ピシピシ遠くから鬱陶しいなぁ!』
だが、まだこの場には精鋭の狙撃手が残っている。ティオネ機のジムスナイパーIIがレルフ機を救うべく、ロングレンジビームライフルの引き金を引いていた。遥か遠方から飛んで来る強力なビームに、シュヴァル機もたまらずその場から飛び退いてしまう。
(ふふっ……なら
(……そうだね。頼んだよ、ヴァイス!)
その時。苛立つシュヴァルを宥めるように、彼女の「内側」に居たもう一つの「人格」が囁いて来た。ヴァイスと呼ばれるその人格にシュヴァルが己を委ねた瞬間、先ほどまで赤かった彼女の瞳が青色に変化する。
フラナガン機関での人体実験がきっかけで覚醒した、シュヴァルの第2人格「ヴァイス」。射撃戦を得意とする彼女が、接近戦のエキスパートであるシュヴァルに代わって、その肉体とガルバルディを制御するようになったのだ。
(ボクとヴァイスなら……)
(私とシュヴァルなら……)
――どんな相手にも、絶対に負けない!
人格が変われば、操縦の癖も変わる。文字通り「別人」が操縦しているのだから、それも当然と言えるだろう。彼女
二つの人格を自在に切り替え、接近戦も射撃戦も高度にこなす無敵の兵士。これが、「森夜叉」が隠し持っていた「切り札」の正体なのである。
二振りの近接武器を納めたガルバルディは、そのまま流れるように射撃戦に切り替えようとしていた。右肩にマウントされていた大型ビームライフルに持ち替えたガルバルディは、素早く遠方のティオネ機に狙いを定めて行く。
『……ッ! また動きが変わった!? 速いッ……!』
『落ちなさい……蚊蜻蛉ッ!』
遠方から飛んで来たビームの狙撃を紙一重でかわし、ヴァイス機は高速で移動しながら精密な一閃を撃ち放っていた。動きながらの射撃だというのに、その正確無比な狙いは森の中に潜んでいたティオネ機のボディを確実に捉えていた。
『……ッ!?』
一方、腰を落として狙撃姿勢を取っていたティオネ機は、どうしても回避行動が遅れてしまう。咄嗟に腰を上げてその場から飛び退こうとした彼女だったが――僅かに間に合わず、片脚を撃ち抜かれてしまう。
『きゃあぁあぁああッ!?』
スラスターを噴かしてジャンプしようとした瞬間の被弾だったため、空中で体勢を崩してしまった彼女の機体は、そのまま木々を薙ぎ倒して倒れ込んで行く。豊かな乳房をぷるるんっと揺らしながら悲鳴を上げた彼女は、予期せぬ衝撃で気を失ってしまうのだった。
『ふん……我々と同じ
僅か一瞬の撃ち合いの中で、ティオネの内に眠るニュータイプの素養を感じ取っていたのだろう。どこか複雑な様子でティオネ機を見つめていたヴァイス機は、未練を断ち切るように踵を返していた。
◇
――かくして。3箇所の地点に現れた3機の「増援」により、すでに消耗していた連邦軍の精鋭達は絶体絶命の窮地に陥っていた。
現地に残っている戦力では、到底この「増援」には太刀打ち出来ない。それは、直に彼らと対峙した連邦兵達も肌で理解していた。
自分達はこのまま、圧倒的な力で嬲り殺しにされるしかないのか。誰もが、そう諦めかけた時だった。
『……!?』
ジャブローから飛び立っていた3機のミデアが、同時に各地の上空に飛来して来たのである。予期せぬ「新手」に誰もが顔を上げた時、開かれたコンテナから
『ユリネ・ダイゴ……ジムスパルタン、発進する!』
ゴールドホーク隊の頭上から颯爽と飛び出した、RGM-79S「ジムスパルタン」。その機体はガンダムタイプの頭部に換装されており、RX-79[G]F「スライフレイル」の装備であるビームジャベリンを装備している。
『ゲッカ・ヨナミネ! ジムストライカー、行っくぞぉ!』
プラチナファルコン隊の窮地には、RGM-79FP「ジムストライカー」が駆け付けて来た。ビームライフルを装備しているその機体の全身には夜間迷彩が施されており、左肩には三日月とデイゴの花のパーソナルマークが描かれている。
『準備はいいな! フィーネ・エイム、ジム改出るぞ!』
『……ラウラ・ヴァンクリーフ。ジムドミナンス、行きます』
そして、アイアングース隊を救うべく降下して来たのは、RGM-79C「ジム改」とRGM-79DO「ジムドミナンス」だった。
ジム改は右手に100mmマシンガン、左手にバズーカを装備しており、背部にシールドを背負っている。ジムドミナンスは白と黒を基調としており、そのボディには眼帯を付けた黒猫のエンブレムが描かれていた。
基地に居た彼女達は、プラチナファルコン隊とアイアングース隊が足早に無断出撃して行く中、敵方の底力を早期に察して着々と「準備」を整えていたのだ。そして今まさに、万全の状態でクラーク達の前に降り立ったのである。
――この戦いを、終わらせるために。
今話で全ての読者応募キャラ達の顔見せも終わり、いよいよ物語もクライマックス。もうちょびっとだけ続きますので、最後まで見届けて頂ければ幸いですm(_ _)m